税金・確定申告

仮想通貨が損失でも損益計算が必要な理由|雑所得内の通算と繰越不可を整理

※本記事にはアフィリエイト広告(A8.net)を含みます。記載の内容は2026年8月時点の情報です。税制は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁の公表情報および各公式サイトでご確認ください。

相場が下がった年は、「今年は損をしたから税金の心配はない」と考えて、損益計算も確定申告の検討もやめてしまう方が少なくありません。結論からいえば、その年の損益がマイナスであれば、仮想通貨の利益に対する所得税はかかりません。ただし、ここには見落とされがちな前提があります。「損失かどうか」は、損益計算をして初めて確定するということです。

この記事では、仮想通貨(暗号資産)で損失が出た年の税金の考え方を、4つの論点に分けて整理します。①損失でも計算が要る理由、②雑所得の中での通算(内部通算)、③株式・FXとの決定的な違いである「繰越控除の不可」、④損失年にこそ取引履歴の保存が重要になる理由、の順に見ていきます。

目次

「損失なら税金ゼロ」の前に確認すべきこと

仮想通貨の売買などで生じた利益は、原則として雑所得に区分され、総合課税の対象になります。この取り扱いは国税庁のタックスアンサーNo.1524「暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」で確認できます。所得がプラスでなければ、その所得に対する税金は発生しません。ここまでは直感どおりです。

問題は、「自分の今年の損益がマイナスである」と言い切れるかどうかです。仮想通貨の損益は、売却価額から取得価額(取得単価×数量)と手数料を差し引いて求めます。そして取得単価は、総平均法または移動平均法という決められた計算方法で算出します。つまり、次のような状況では、計算してみないと損失かどうか判断できません。

  • 年内に何度も売買を繰り返している
  • 複数の取引所やウォレットに資産が分かれている
  • 前年以前から持ち越したコインを今年売却した
  • 仮想通貨同士の交換(例:BTCでETHを購入)をしている
  • ステーキング報酬やエアドロップなど、売買以外の受け取りがある

特に注意したいのは、仮想通貨同士の交換や決済利用も課税対象の取引になる点です。日本円に換金していなくても、交換した時点での時価と取得価額の差が損益として計上されます。「日本円に戻していないから今年は何もない」という判断は、計算の代わりにはなりません。また、ステーキング報酬は受け取った時点の時価で所得になるため、売買では損をしていても報酬分の所得が積み上がっていることがあります。報酬まわりの記録方法はステーキング報酬の税金と記録方法の解説記事で詳しくまとめています。

口座残高が減っていても、計算上は利益が出ているケース

「資産評価額が年初より減ったのだから損失だろう」という体感は、税金の計算とはしばしば食い違います。理由は2つあります。

1つめは、含み損は損失に含まれないことです。保有したまま値下がりしているだけのコインは、売却していない限り損益計算に入りません。評価額が大きく減っていても、それが含み損によるものであれば、税務上の損失は生じていないことになります。

2つめは、取得単価の計算方法によって、売却分に利益が出ることがあるためです。例を挙げます。前年に1BTCを300万円で購入し、今年の年初に1BTCを900万円で買い増したとします。総平均法では2BTCの平均取得単価は600万円です。今年の途中、価格が下がる前に1BTCを800万円で売却していた場合、体感としては「900万円で買った直後に下がって大損」でも、計算上は800万円−600万円=200万円の利益が実現しています。年末時点の残り1BTCがどれだけ値下がりしていても、それは含み損であり、この200万円の利益を消してはくれません。

このように、総平均法か移動平均法かという計算方法の違いも結果に影響します。同じ取引でも方式によって年間損益が変わる仕組みは、総平均法と移動平均法を同じ取引で計算し比べた実例記事で確認できます。

取引の回数が多い方ほど、この確認を手計算でやるのは現実的ではなくなります。損益計算ツールを使えば、取引所の履歴を取り込むだけで年間損益が算出されます。たとえばクリプタクトの無料プランは、年間の取引が50件以内であれば損益計算の結果表示まで利用できるとされています。年に数回の売買であれば、無料の範囲で「今年は本当に損失なのか」を確かめられます。詳しい範囲はクリプタクト公式サイトで無料プランの内容を確認してください

雑所得の中での通算(内部通算)はできる

計算の結果、仮想通貨の損益がマイナスだったとします。この損失は使い道がまったくないわけではありません。同じ年の、総合課税の雑所得の中でなら差し引きできます。これを内部通算と呼びます。

たとえば、会社員の方が副業の原稿料で雑所得20万円を得ていて、仮想通貨で30万円の損失が出た年を考えます。

項目 金額
副業(原稿料)の雑所得 +20万円
仮想通貨の損益 ▲30万円
通算後の雑所得の金額 0円(マイナス10万円分は切り捨て)

仮想通貨の損失20万円分が原稿料の所得を打ち消し、雑所得は0円になります。ただし、相殺しきれなかった10万円分の損失は、給与所得など他の所得区分から差し引くことはできず、その年限りで切り捨てになります。

もう1つ重要な注意点があります。同じ「雑所得」という名前でも、申告分離課税のFX(外国為替証拠金取引)や先物取引の損益とは通算できません。FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」として分離課税の枠にあり、総合課税の雑所得である仮想通貨とは別の箱で計算されるためです。「FXで利益、仮想通貨で損失」という年でも、両者を相殺することはできない取り扱いです。

なお、給与所得・事業所得など他の所得区分の黒字と雑所得の損失を相殺すること(損益通算)も認められていません。損益通算の対象になる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つに限られており、雑所得の損失は含まれていないことが、国税庁のタックスアンサーNo.2250「損益通算」に示されています。

株式・FXとの違い:損失を翌年に繰り越せない

株式投資の経験がある方ほど誤解しやすいのがこの論点です。上場株式やFXでは、その年に引ききれなかった損失を確定申告によって翌年以降3年間繰り越し、将来の利益から差し引く「繰越控除」の制度があります。しかし、総合課税の雑所得である仮想通貨の損失には、この繰越控除がありません。今年の損失は今年限りで消え、来年の利益とは相殺できません。

3つの投資対象で損失の取り扱いを比べると、次のようになります。

項目 仮想通貨(暗号資産) 上場株式等 FX(店頭・取引所)
所得区分・課税方式 雑所得(原則)・総合課税 譲渡所得等・申告分離課税 先物取引に係る雑所得等・申告分離課税
税率 累進税率(住民税と合わせて最大55%程度) 一律20.315% 一律20.315%
損失と他の利益の相殺 総合課税の雑所得の内部でのみ可 上場株式等の譲渡損益・配当等の枠内で可 先物取引に係る雑所得等の枠内で可
損失の翌年への繰越 不可 3年間可(連続して申告が要件) 3年間可(連続して申告が要件)

この差が実務で効いてくるのは、大きな損失を出した翌年に相場が回復した場合です。株式やFXであれば前年の損失を差し引いた残りにだけ課税されますが、仮想通貨では前年にどれだけ損をしていても、翌年の利益には最初から課税されます。翌年に利益が出れば、給与所得のある会社員の方なら20万円という申告基準との関係も出てきます。この基準の正確な意味は「20万円ルール」の解説記事で整理しています。

「繰り越せないなら、損失の年は税金について何もすることがない」と結論づけたくなりますが、次の章で述べるとおり、それは半分だけ正しい理解です。

損失の年こそ取引履歴の保存が重要な理由

損失は翌年に繰り越せません。しかし、年末に保有しているコインの取得価額は翌年に引き継がれます。総平均法でも移動平均法でも、その年の計算で確定した年末保有分の取得原価が、翌年の期首の残高として計算のスタート地点になります。国税庁が配布している暗号資産の計算書(Excel)も、年末残高を翌年分に転記する前提の作りになっています。

つまり、損失の年の取引記録が抜け落ちると、困るのは翌年です。翌年に売却して利益が出たとき、その利益額を計算するための取得単価が「損失だった年の計算結果」に依存しているからです。損失年の記録がないと、翌年の正しい損益が計算できないという形で問題が表面化します。

さらに、取得価額を証明できない場合の取り扱いとして、売却価額の5%相当額を取得価額とみなす方法が国税庁のFAQで示されています。実際には高い価格で買っていたのに履歴を失ってしまうと、この5%ルールによって、実態よりはるかに大きな利益が計算されてしまうおそれがあります。300万円で買ったコインを350万円で売った場合、履歴があれば利益は50万円ですが、取得価額を示せなければ350万円×5%=17万5千円が取得価額とされ、利益は332万5千円として扱われかねません。

損失の年にやっておきたいことは、次の3点です。

  • 各取引所の年間取引報告書・取引履歴CSVを取得して保存する:取引所の退会やサービス終了後は履歴を取得できなくなることがあります。使わなくなった取引所ほど、先に履歴を確保しておくのが安全です
  • その年の損益計算を実行し、年末保有分の取得単価を確定させておく:翌年の計算の起点になります
  • ウォレット間の移動記録も残す:送金自体は損益を生みませんが、残高の整合を確認する材料になります

損益計算ツールに履歴を取り込んでおけば、この「翌年への引き継ぎ」はツール側が自動で処理します。損失の年に履歴を入れておくと、翌年は続きから計算できるため、単価の断絶が起きません。取引履歴の集め方からツールでの計算までの全体手順は損益計算を自動化する方法のまとめ記事で解説しています。自分の使っている取引所が取り込みに対応しているかは、クリプタクト公式サイトで対応取引所の一覧を確認してください

損失年でも申告を検討したほうがよいケース

仮想通貨の損失しかない年であれば、その損失のためだけに確定申告をする義務は生じないのが一般的な取り扱いです。ただし、次のようなケースでは申告や計算の確認をおすすめします。

  • 他に総合課税の雑所得がある方:副業収入や個人年金などの雑所得がある場合、仮想通貨の損失と内部通算することで課税される所得が減る可能性があります。通算はご自身で申告に反映して初めて効果が出ます
  • 医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする方:申告をする以上、その年の所得は漏れなく記載する前提になります。仮想通貨の損益がマイナスであっても、計算結果として把握しておく意味があります
  • 「損失のつもり」の精度に自信がない方:前述のとおり、体感と計算結果は食い違うことがあります。実は利益が出ていたのに申告しなかった、という事態を避けるためにも、計算による確認が土台になります

どのケースに当たるかの最終判断は個別の状況によります。迷う場合は税理士または所轄の税務署に相談してください。

よくある質問

Q1. 損失なら確定申告はしなくてよいのですか?

仮想通貨の損失だけで、他に申告すべき所得や申告する理由がない場合、その損失のために申告する義務は生じないのが一般的な取り扱いです。ただし「損失である」と言えるためには計算が前提になりますし、他の雑所得との内部通算で税額が変わる方や、別の理由で申告する方は状況が異なります。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。

Q2. 今年の損失を来年の利益から差し引けますか?

差し引けません。総合課税の雑所得に区分される仮想通貨の損失には、上場株式やFXのような繰越控除の制度がなく、その年で切り捨てになります。一方で、年末に保有しているコインの取得価額は翌年に引き継がれるため、損失年の計算と記録は翌年のために残す意味があります。

Q3. 給与所得やFXの利益と相殺できますか?

どちらもできません。仮想通貨の損失は給与所得など他の所得区分と損益通算できず、また同じ雑所得でも申告分離課税のFX(先物取引に係る雑所得等)とは課税の枠が別のため通算できません。相殺できるのは、同じ年の総合課税の雑所得(副業収入など)との間に限られます。

Q4. 損失の年の取引履歴は、いつまで残すべきですか?

翌年以降のコインの売却が終わるまでは、少なくとも取得単価の根拠として必要です。加えて、確定申告に関する書類の保存期間の考え方からも、数年単位で保存しておくのが安全です。取引所のサービス終了や退会で履歴が取れなくなる例もあるため、年が変わる前にCSVを取得して手元に保管しておくことをおすすめします。

まとめ

  • 損失なら税金はかからないが、「損失かどうか」は損益計算をして初めて確定する。含み損は損失に含まれず、総平均法・移動平均法の計算次第では体感と逆に利益が出ていることもある
  • 仮想通貨の損失は、同じ年の総合課税の雑所得(副業収入など)とは内部通算できる。給与所得や申告分離のFXとは相殺できない
  • 株式・FXにある「損失の3年繰越」は仮想通貨にはなく、その年の損失はその年で切り捨てになる
  • 年末保有分の取得価額は翌年に引き継がれるため、損失の年こそ履歴の保存と計算が翌年の申告の土台になる。履歴を失うと売却価額の5%を取得価額とみなす取り扱いになり、不利になるおそれがある

損失の確認だけであれば、無料で始められる範囲でも足りることがあります。年間取引50件以内なら結果表示まで無料とされているので、まずはご自身の履歴で試してみてください。→ クリプタクト公式サイトで無料アカウントを作成する

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【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人の状況に対する税務アドバイスではありません。税制は改正されることがあります。実際の申告にあたっては、必ず国税庁の最新の公表情報をご確認のうえ、税理士または所轄の税務署にご相談ください。

Bitcoin Analyze 編集部