税金・確定申告

ステーキング報酬・レンディング利息・エアドロップの申告上の扱い|受取時の時価評価を記録する方法

※本記事にはアフィリエイト広告(A8.net)を含みます。記載の内容は2026年8月時点で国税庁の公開情報および各公式サイトを確認した一般的な解説であり、個別の税務判断については税理士または所轄の税務署にご確認ください。

ステーキング報酬は「売っていないから関係ない」ではありません

暗号資産の税金というと、「売却して利益が出たときに考えるもの」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。現物の売買だけをしている場合は、おおむねその理解から出発できます。しかし、ステーキング報酬・レンディング(貸暗号資産)の利息・エアドロップのように、暗号資産そのものを「受け取る」タイプの取引では、事情が変わります。

国税庁が公開しているFAQでは、マイニングやステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合、その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)を、所得の金額の計算上総収入金額に算入するという取扱いが示されています。日本円に換金していなくても、報酬を受け取った時点で、その時価相当額が収入として扱われるということです。

取扱いのルール自体は、FAQを読めば把握できます。実務上の本当の難所は別のところにあります。ステーキング報酬やレンディング利息は「少額・高頻度」で発生するため、受け取った日時とその時点の時価を全件記録するという作業が、手作業では成立しにくいのです。本記事では、国税庁FAQの該当箇所を原文ベースで確認したうえで、受取時の時価評価をどのように記録していくかを整理します。

国税庁FAQの該当箇所を確認する

根拠となるのは、国税庁が公開している「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」です。平成30年11月に公表されて以降、改訂が重ねられている文書で、本記事の執筆にあたっては令和7年12月最終改訂版(令和7年12月1日現在の法令・通達等に基づくもの)を確認しました。FAQ本文のPDFは国税庁サイトからどなたでも閲覧できます。

このFAQの「1-7 マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合」には、次のように書かれています。

いわゆる「マイニング」、「ステーキング」、「レンディング」など(以下「マイニング等」といいます。)により暗号資産を取得した場合、その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額(法人税においては益金の額)に算入され、マイニング等に要した費用については所得の金額の計算上必要経費(法人税においては損金の額)に算入されることになります。

(国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-7より)

この一文から読み取れるポイントは三つあります。

  • 取得時点の時価が総収入金額に入る:売却や換金をしたかどうかは問われていません。受け取った時点の時価で収入が認識されます。
  • 要した費用は必要経費に算入される:ステーキングやレンディングのために直接要した費用があれば、経費側に計上する余地があります。
  • 対象は「マイニング等」という例示列挙:マイニング・ステーキング・レンディング「など」とされており、暗号資産を報酬として取得する類似の取引も同じ考え方で整理されるものと読めます。

受取時の時価は、その暗号資産の「取得価額」にもなります

同じFAQの「1-5 暗号資産の取得価額」では、取得の方法ごとに取得価額の考え方が整理されています。購入した場合は支払った対価の額(購入手数料など購入のために要した費用があれば加算)、贈与により取得した場合は贈与時の価額(時価)といった区分が並び、マイニングなどにより取得した場合は「その取得時点の価額(時価)」が取得価額になるとされています。

つまり、受取時の時価というひとつの数字が、二つの場面で使われます。

場面 受取時の時価の役割 影響する年分
報酬を受け取ったとき 総収入金額に算入する収入の額 受け取った年
その暗号資産を後日売却したとき 売却損益を計算する際の取得価額(原価)の基礎 売却した年

受取時の時価を記録し損ねると、受け取った年の収入計上が漏れるだけでなく、将来売却したときの原価計算まで狂うことになります。ひとつの記録漏れが二つの年分に波及する、という構造です。

ステーキング・レンディング・エアドロップ、それぞれの整理

ステーキング報酬

プルーフ・オブ・ステーク型のブロックチェーンで、暗号資産を預け入れて(ステークして)ネットワークの検証に参加し、対価として同じ銘柄などの暗号資産を受け取る取引です。FAQ1-7に「ステーキング」と明記されているとおり、受け取った報酬は取得時点の時価で総収入金額に算入する整理になります。

実務上の特徴は付与の頻度です。チェーンやサービスによって、エポックと呼ばれる周期ごとに自動で付与されるもの、取引所が日次や週次でまとめて付与するもの、自分でクレーム(請求)操作をして初めてウォレットに入るものなど、付与の形態はさまざまです。付与の態様によって「どの時点で取得したと考えるか」の判断が分かれる場合もあるため、自動付与かクレーム式かといった仕組みの違いは、記録の際にメモしておき、判断に迷う場合は税理士に確認するのが安全です。

レンディング(貸暗号資産)の利息

保有する暗号資産を取引所や貸暗号資産サービスに貸し付け、利用料(利息に相当する暗号資産)を受け取る取引です。こちらもFAQ1-7に「レンディング」と明記されており、受け取った利用料はその取得時点の時価で収入として扱う整理になります。

付与の頻度はサービスによって異なり、月次で付与されるもの、貸出期間の満了時にまとめて付与されるものなどがあります。ステーキングに比べると件数は少なくなりやすい一方、複数のサービスに分散して貸し付けていると、付与日や数量の管理が分散してしまう点は同じです。

エアドロップ

プロジェクトからトークンが無償で配布される、いわゆるエアドロップについては、FAQに独立した項目は設けられていません。ただし、FAQ「1-6 暗号資産の分裂(分岐)により暗号資産を取得した場合」の中に、「所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基にして所得金額を計算します」という一般的な考え方が示されています。

この考え方に照らすと、受け取った時点ですでに取引相場が存在するトークンの配布を受けた場合には、その時価を基に所得を計算することになると考えられます。一方、同じ1-6では、分裂(分岐)により新たに誕生した暗号資産のように取得時点で取引相場が存在しないものは、その時点では所得が生じず、取得価額は0円となり、売却又は使用した時点で所得が生ずるという取扱いも示されています。相場のない新規トークンのエアドロップをこの取扱いに準じて考えられるかどうかは、配布の経緯やトークンの性質によって判断が分かれやすいところです。金額が大きくなりそうな場合は、自己判断で処理せず税理士や所轄の税務署に確認することをおすすめします。

三つの取引をまとめると、次のようになります。

取引の種類 FAQ上の位置づけ 受取時の扱い 記録面の難所
ステーキング報酬 1-7に明記 取得時点の時価を総収入金額に算入 付与が高頻度で件数が膨らむ
レンディング利息 1-7に明記 取得時点の時価を総収入金額に算入 サービスごとに付与日・履歴形式が異なる
エアドロップ 独立項目なし(1-6の一般的な考え方が参考) 取引相場があるものは取得時点の時価を基に計算すると考えられる 受取日時の把握と、相場の有無の確認

所得区分と収入時期の考え方

暗号資産取引により生じた利益の所得区分について、FAQ「2-2 暗号資産取引の所得区分」(令和7年12月更新)では、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されると整理されています。そのうえで、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、取引に係る帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として雑所得(業務に係る雑所得)に区分される、という基準も示されています。帳簿書類の保存の有無が区分の分かれ目に関わってくる点は、記録の重要性を裏づける材料といえます。

収入をどの年分に計上するかについては、FAQ「2-1 暗号資産取引による所得の総収入金額の収入すべき時期」で、雑所得(その他雑所得)の収入すべき時期は、その収入の態様に類似する他の所得の収入すべき時期に準じて判定するという考え方が示されています。報酬の受取時の時価を収入とする以上、「いつ受け取ったか」は年分の帰属に直結します。特に12月末から1月初めにかけて付与された報酬は、日時の記録がないとどちらの年分か判別できなくなるため、日付だけでなく時刻まで残しておくと確認がしやすくなります。

「受取時の時価」の記録が、手作業では破綻しやすい理由

ここまで見たとおり、ルールの骨格は「受け取った時点の時価で収入計上、その時価が取得価額になる」というシンプルなものです。難しいのは理屈ではなく、記録の量と質です。手作業を前提にすると、次の四つの壁に突き当たります。

  • 件数の壁:ステーキングには日次で付与される銘柄やサービスが少なくありません。仮に1日1回付与されるだけでも、単純計算で年間365件の「受取記録」が発生します。銘柄やサービスが複数になれば、その掛け算で増えていきます。
  • 時価データの壁:取引所の履歴には付与された数量が載っていても、その時点の円建て時価まで記載されているとは限りません。海外サービスやウォレットへの直接付与では、時価は自分で調べて突き合わせることになります。
  • レートの一貫性の壁:どの取引所・どの時点の価格を時価として使うかがバラバラだと、計算全体の整合性を説明しにくくなります。取得時点の価額を合理的に把握し、根拠を一貫させる必要があります。
  • 事後復元の壁:確定申告の直前に1年分をまとめて処理しようとすると、過去の日時ごとの価格を全件さかのぼって調べることになります。件数が数百件規模になると、この作業だけで現実的な時間を超えていきます。

さらに、受け取った暗号資産を後日売却すれば、今度は売却損益の計算に入ります。個人の場合、譲渡原価は総平均法または移動平均法で計算し、選択しない場合は総平均法によるとされています(FAQ1-1の注記)。受取時の時価の記録が欠けていると、この原価計算の入力データそのものが欠けることになります。計算方法の違いと選び方は、別記事「総平均法と移動平均法の違い」で詳しく解説しています。

時価の記録を自動化する:損益計算ツールという選択肢

この「少額×高頻度×時価の突き合わせ」という構造に対して、現実的な対処になるのが暗号資産の損益計算ツールです。国内で広く使われているものにクリプタクト(cryptact)があり、取引所からダウンロードした取引履歴ファイルの取り込みやAPI連携、ウォレットアドレスの読み込みなどを通じて、取引ごとの時価を参照した円換算と損益計算をまとめて行う仕組みが提供されています。

ステーキング報酬やレンディング利息のような「受取型」の取引で重要になるのは、まず自分が使っている取引所・ブロックチェーン・サービスにツールが対応しているかどうかです。対応状況はサービス側で随時更新されるため、最新の情報はクリプタクト公式サイトで対応取引所・対応コインの一覧を確認するのが確実です。

また、取り込んだ取引をステーキング報酬・レンディング利息などの種別として整理できるか、DeFi取引やウォレット連携がどのプランで使えるかは、利用規模によって変わる部分です。年間の取引件数や使いたい機能と照らして、クリプタクト公式サイトで料金プランごとの機能範囲を確認すると、自分の取引スタイルに合うかどうかを判断しやすくなります。

損益計算ツールにはクリプタクト以外にも選択肢があり、対応取引所・料金・操作性の比較観点は「暗号資産の損益計算ツールの選び方」にまとめています。ツール選びから検討したい方は、そちらから読み進めてみてください。

ツールに読み込ませる前に:データの入口を整える

自動計算といっても、元データが揃っていなければ計算は始まりません。受取型の取引を漏れなく処理するために、入口側で整えておきたいことが三つあります。

  • 取引履歴を定期的にダウンロードしておく:取引所によっては、履歴の取得期間に制限があったり、古いデータの取得に手間がかかったりする場合があります。年末にまとめてではなく、四半期や月ごとなど区切りを決めて取得しておくと、欠落に気づきやすくなります。取引所ごとの取得手順は「取引所別のCSVダウンロード手順」を参照してください。
  • ウォレット直付与はアドレスを控えておく:ステーキング報酬やエアドロップがウォレットに直接届く場合は、対象のウォレットアドレスとチェーン名を一覧にしておくと、ツールへの連携やチェーン上の履歴確認がスムーズになります。
  • 「何の取引か」のメモを残す:同じ入金でも、ステーキング報酬なのか、レンディング利息なのか、単なる自分の資金移動なのかで扱いが変わります。履歴だけでは判別しにくい入金には、その時点でひと言メモを残しておくと、後の仕分けが楽になります。

データの入口さえ整っていれば、時価の参照と円換算という一番件数の多い作業はツール側に任せられます。導入を迷っている段階でも、履歴のダウンロードとメモの習慣だけは先に始めておくと、後からの選択肢が広がります。実際の登録から履歴取り込みまでの流れは、クリプタクト公式サイトで利用開始までの手順を確認するとイメージがつかみやすいはずです。

まとめ:ルールはシンプル、勝負は記録の仕組み化

本記事の内容を整理します。

  • 国税庁FAQ1-7により、マイニング・ステーキング・レンディングなどで取得した暗号資産は、取得時点の価額(時価)を総収入金額に算入する取扱いが示されています。換金していなくても対象です。
  • 受取時の時価は、その暗号資産の取得価額にもなります(FAQ1-5)。記録が欠けると、受取年の収入と売却年の原価の両方に影響します。
  • エアドロップはFAQに独立項目がなく、経済的価値のあるものを取得した場合は取得時点の時価を基に所得金額を計算するという一般的な考え方(FAQ1-6)が手がかりになります。判断に迷うケースは税理士や税務署への確認が安全です。
  • 所得区分は原則として雑所得(その他雑所得)で、収入金額や帳簿書類の保存状況によって区分の整理が変わる基準も示されています(FAQ2-2)。
  • 少額・高頻度の受取と時価の突き合わせは手作業では破綻しやすく、損益計算ツールと「データの入口を整える習慣」の組み合わせが現実的な対処になります。

ステーキングやレンディングは、始めるのは簡単でも、記録の仕組みを持たないまま続けると申告時期に一気に負担が集中します。今年の報酬が積み上がりきる前に、クリプタクト公式サイトで自分の取引環境に対応しているかを確認するところから、記録の自動化を検討してみてください。ツールの比較検討から始めたい方は「暗号資産の損益計算ツールの選び方」もあわせてどうぞ。

Bitcoin Analyze 編集部