税金・確定申告

暗号資産の総平均法と移動平均法の違い|同じ取引でも計算結果が変わる仕組みを実例で解説

※本記事にはアフィリエイト広告(A8.net)を含みます。記載の内容は2026年8月時点で国税庁の公開情報および各公式サイトを確認した一般的な解説であり、個別の税務判断については税理士または所轄の税務署にご確認ください。

暗号資産(仮想通貨)の売却益を確定申告するとき、避けて通れないのが「譲渡原価(売った暗号資産の取得コスト)」の計算です。この譲渡原価の計算方法には「総平均法」と「移動平均法」の2つがあり、どちらを使うかによって、まったく同じ取引をしていても、その年の所得金額が変わります。

本記事では、国税庁が公表している「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」(令和7年12月版)と届出手続の案内をもとに、2つの計算方法の仕組みと届出の制度を整理したうえで、同一の取引例(年内に3回購入・2回売却)を両方の方法で実際に計算し、結果がどう変わるのかを数表で確認していきます。

総平均法と移動平均法とは

暗号資産を売却したときの所得は、大まかに「売却価額 − 譲渡原価(− 必要経費)」で計算します。譲渡原価は「1単位当たりの取得価額 × 売却数量」で求めますが、同じ銘柄を何度も買い増ししていると、購入のたびに単価が異なるため、「1単位当たりの取得価額をいくらとみるか」を決めるルールが要ります。それが評価方法であり、所得税では次の2つが定められています(所得税法48条の2、所得税法施行令119条の2)。

総平均法

その年の1年間に取得した暗号資産の取得価額の総額(前年から繰り越した分があればその評価額と数量も加算)を、取得数量の合計で割って、年間を通じた1つの平均単価を算出する方法です。国税庁のFAQでは「年初時点で保有する暗号資産の評価額とその年中に取得した暗号資産の取得価額との総額との合計額をこれらの暗号資産の総量で除して計算した価額」を年末時点の1単位当たりの取得価額とする方法と説明されています。

1年分の購入をまとめて平均するため計算はシンプルですが、単価が確定するのは年間の取引がすべて終わったあと、つまり12月31日を過ぎてからという特徴があります。

移動平均法

暗号資産を購入(取得)するたびに、「その時点で保有している暗号資産の簿価総額 ÷ その時点の保有数量」で平均単価を計算し直す方法です。売却時には、直近に計算した平均単価を使って譲渡原価を求めます。取得の都度単価が更新されていくため、年の途中でも「今売ったら損益はいくらか」を把握しやすい一方、取引回数が多いと計算の手数は増えます。

届出の制度|届出がなければ個人は総平均法

どちらの評価方法を使うかは自由に毎年切り替えられるものではなく、税務署への届出によって選定する制度になっています。国税庁の「A1-20 所得税の暗号資産の評価方法の届出手続」および「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」で公表されている内容を整理すると、次のとおりです。

  • 届出書の名称:「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」(様式の正式名は「所得税の(有価証券・暗号資産)の評価方法の届出書」で、有価証券と共通の様式です)
  • 提出が要る場面:①初めて暗号資産を取得した場合、②これまで保有していたものと種類(名称)が異なる暗号資産を取得した場合
  • 提出期限:その取得した年分の確定申告期限(原則:翌年3月15日)まで
  • 提出先:納税地を所轄する税務署長(e-Taxまたは書面)
  • 届出をしなかった場合:評価方法は「総平均法」になります(所得税の法定評価方法)
  • 選定の単位:暗号資産の種類(名称)ごと。たとえばビットコインは総平均法、イーサリアムは移動平均法、という選定も制度上は可能です

つまり、個人の方で移動平均法を使いたい場合には「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要で、何も届け出ていなければ自動的に総平均法で計算する、というのが所得税の建て付けです。なお、法人税では法定評価方法が移動平均法とされており(総平均法を採用する場合に届出等が要る)、個人とは初期値が逆である点は混同しやすいところです。

一度選んだ評価方法の変更には承認申請が要る

選定した評価方法(届出をせず総平均法になっている場合を含みます)を変更したいときは、変更しようとする年の3月15日までに、「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出して、承認を受ける必要があります。国税庁FAQの注記では、変更前の評価方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときや、変更後の方法では所得金額の計算が適正に行われ難いと認められるときは、申請が却下される場合があるとされています。また、申請した年の12月31日までに承認または却下の通知がない場合は、その日に承認があったものとみなされます。

要するに、評価方法は「一度選んだら継続して適用するのが原則」であり、毎年有利なほうへ乗り換えるような使い方は想定されていない制度です。

取引例の設定|年内に3回購入・2回売却

ここからが本題です。次の同一の取引を、総平均法と移動平均法のそれぞれで計算してみます。数値は計算の仕組みを分かりやすくするための仮の例で、売買手数料は考慮していません。前年からの繰越保有はないものとします。

取引日 取引 数量 金額 取引単価(1BTC当たり) 取引後の保有数量
2月10日 購入 0.5 BTC 3,000,000円 6,000,000円 0.5 BTC
4月20日 購入 0.3 BTC 2,400,000円 8,000,000円 0.8 BTC
6月15日 売却 0.4 BTC 3,600,000円 9,000,000円 0.4 BTC
9月5日 購入 0.4 BTC 3,300,000円 8,250,000円 0.8 BTC
11月25日 売却 0.3 BTC 3,900,000円 13,000,000円 0.5 BTC

年間の合計を先にまとめておきます。

  • 購入合計:1.2 BTC / 8,700,000円
  • 売却合計:0.7 BTC / 7,500,000円
  • 年末(12月31日)時点の保有:0.5 BTC

総平均法で計算すると

総平均法では、年間の購入額の総額を購入数量の合計で割り、1つの平均単価を求めます。

項目 計算 金額
① 年間の取得価額の総額 3,000,000円 + 2,400,000円 + 3,300,000円 8,700,000円
② 年間の取得数量 0.5 + 0.3 + 0.4 1.2 BTC
③ 平均単価(① ÷ ②) 8,700,000円 ÷ 1.2 BTC 7,250,000円
④ 譲渡原価(③ × 売却数量) 7,250,000円 × 0.7 BTC 5,075,000円
⑤ 売却価額の合計 3,600,000円 + 3,900,000円 7,500,000円
⑥ 所得金額(⑤ − ④) 7,500,000円 − 5,075,000円 2,425,000円
⑦ 年末保有分の評価額(③ × 0.5 BTC) 7,250,000円 × 0.5 BTC 3,625,000円

検算として、国税庁FAQの計算手順(譲渡原価 = 年間の取得価額の総額 − 年末時点で保有する暗号資産の評価額)に当てはめても、8,700,000円 − 3,625,000円 = 5,075,000円となり、④と一致します。

移動平均法で計算すると

移動平均法では、購入のたびに平均単価を計算し直します。単価の動きを順に追うと次のようになります。

時点 計算 平均単価 保有状況
2月10日 購入後 3,000,000円 ÷ 0.5 BTC 6,000,000円 0.5 BTC(簿価3,000,000円)
4月20日 購入後 (3,000,000円 + 2,400,000円)÷ 0.8 BTC 6,750,000円 0.8 BTC(簿価5,400,000円)
6月15日 売却後 単価は変わらず(売却では再計算しない) 6,750,000円 0.4 BTC(簿価2,700,000円)
9月5日 購入後 (2,700,000円 + 3,300,000円)÷ 0.8 BTC 7,500,000円 0.8 BTC(簿価6,000,000円)
11月25日 売却後 単価は変わらず 7,500,000円 0.5 BTC(簿価3,750,000円)

この単価を使って、2回の売却それぞれの損益を計算します。

売却日 売却価額 譲渡原価 損益
6月15日 3,600,000円 6,750,000円 × 0.4 BTC = 2,700,000円 +900,000円
11月25日 3,900,000円 7,500,000円 × 0.3 BTC = 2,250,000円 +1,650,000円
合計 7,500,000円 4,950,000円 +2,550,000円

こちらも検算すると、年間の取得価額の総額8,700,000円 − 年末保有分の評価額3,750,000円(7,500,000円 × 0.5 BTC)= 4,950,000円で、譲渡原価の合計と一致します。

結果の比較|同じ取引なのに125,000円の差

2つの方法の結果を並べます。

項目 総平均法 移動平均法
1単位当たりの取得価額 7,250,000円(年間で1つ) 6,750,000円 → 7,500,000円(都度更新)
譲渡原価の合計 5,075,000円 4,950,000円 125,000円
その年の所得金額 2,425,000円 2,550,000円 125,000円
年末保有分の評価額(翌年へ繰越) 3,625,000円 3,750,000円 125,000円

まったく同じ取引をしたのに、この例では移動平均法のほうが所得金額が125,000円大きくなりました。差が生まれた理由は単価の計算タイミングにあります。この例では、11月25日の売却よりあとには購入がありませんが、総平均法は「年間全体」で平均するため、期末に近い高値圏の購入(9月5日の1BTC当たり8,250,000円)が、それより前の6月15日の売却分の原価計算にも混ざります。一方、移動平均法では6月15日の売却原価は「その時点までの購入」だけで決まるため、時期ごとの単価差がそのまま損益の配分に表れます。

ここで大切なのは、この結果だけを見て「移動平均法は損」と考えるのは早い、という点です。表の最下行にあるとおり、所得が大きかった移動平均法は、翌年に繰り越す取得価額(年末保有分の評価額)も125,000円大きくなっています。つまり翌年以降にこの0.5 BTCを売却すれば、そのぶん翌年の譲渡原価が大きく計算されます。保有分を将来すべて売却し終えた時点での通算の損益は、どちらの方法でも一致し、変わるのは「どの年にいくらの所得が計上されるか」という配分です。

そして、どちらの配分になるかは相場の動きと売買のタイミング次第で入れ替わります。この例とは逆に、移動平均法のほうがその年の所得が小さく計算されるパターンも普通に起こります。さらに前述のとおり、評価方法は一度選ぶと継続適用が原則で、変更には承認申請と相当期間(特別の理由がなければ3年)の経過が求められるため、「その年だけどちらが得か」という視点で選ぶ性質のものではない、というのが制度上の事実です。

実務からみた2つの方法の特徴

観点 総平均法 移動平均法
単価が確定する時期 年間の取引終了後(12月31日を過ぎてから) 取得の都度
年の途中での損益把握 概算になりやすい(単価が未確定のため) 売却の都度計算できる
計算の手数 少ない(年1回の平均計算) 多い(購入のたびに再計算)
取引所の年間取引報告書との相性 国税庁の計算書(総平均法用)が報告書ベースの計算に対応 取引ごとの明細データが要る
届出 不要(届出がない場合の評価方法) 「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要

国税庁は確定申告向けに「暗号資産の計算書」のExcel様式を総平均法用・移動平均法用の両方で公開しており、暗号資産交換業者から送られる年間取引報告書を使って計算する場合は総平均法用を使うよう案内しています。様式は前述の国税庁の掲載ページからダウンロードできます。

手計算がつらくなったら|両方式対応の自動計算ツール

今回の例は年5回の取引なので手計算できましたが、実際には取引回数が数百回に及んだり、複数の取引所やDEXをまたいだり、前年からの繰越があったりと、計算量はすぐに膨らみます。特に移動平均法は購入のたびに単価を更新するため、Excelでの自力管理はミスの温床になりがちです。

こうした場合の選択肢になるのが損益計算ツールです。たとえばクリプタクトは、総平均法・移動平均法の両方の計算に対応しており、取引所の取引履歴をアップロードすると年間の損益を自動計算できます。対応取引所・コインの範囲が広く、DeFi取引にも対応しているため、取引パターンが複雑な方ほど手計算との差を感じやすいツールです。

また、届出をして移動平均法を選んでいる方にとっては、年の途中でリアルタイムに損益を把握できるという移動平均法の持ち味を、クリプタクトの自動計算で実際に活かせる形になります。損益計算ツールの選び方や使い方の全体像は、損益計算を自動化する方法の解説記事で詳しくまとめています。

よくある質問

Q1. 届出を出した記憶がないのですが、私はどちらの方法になっていますか?

「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出していない場合、所得税では総平均法で評価することとされています。これまで移動平均法的な計算で申告してきたなど個別の事情がある場合の取り扱いは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

Q2. ビットコインとイーサリアムで別々の方法を使えますか?

評価方法は暗号資産の種類(名称)ごとに選定する制度なので、銘柄ごとに異なる方法を選定すること自体は制度上可能です。ただし、新しい種類の暗号資産を取得するたびに、その年分の確定申告期限までに届出が要る点(届出がなければその銘柄は総平均法)は変わりません。

Q3. 今年は総平均法で申告しました。来年から移動平均法に変えられますか?

変更しようとする年の3月15日までに「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を提出し、承認を受ける流れになります。ただし現在の方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときは却下される場合があるとされています。年ごとに行き来できる仕組みではない点に注意が必要です。

まとめ

  • 暗号資産の譲渡原価の計算方法には総平均法と移動平均法があり、同じ取引でもその年の所得金額は変わり得る(今回の例では125,000円の差)
  • 個人は届出がなければ総平均法。移動平均法を選ぶには「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を、取得した年分の確定申告期限(原則翌年3月15日)までに所轄税務署長へ提出する
  • 一度選んだ方法は継続適用が原則。変更には変更承認申請書の提出と承認が要り、相当期間(特別の理由がなければ3年)経過前は却下されることがある
  • どちらの方法でも、保有分をすべて売却し終えたときの通算損益は一致する。変わるのは年ごとの配分であり、どちらが有利かは取引パターンによって変わるため一概には言えない
  • 取引回数が多い場合は、クリプタクトのような両方式対応の自動計算ツールや国税庁の計算書様式の利用が現実的

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制度の一次情報は、国税庁の評価方法の届出手続の案内ページおよび「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」で確認できます。ご自身の申告にあたっては、最新の公表情報とあわせて、税理士または所轄の税務署への確認をおすすめします。

Bitcoin Analyze 編集部