税金・確定申告

仮想通貨の相続と税金の基本|評価方法とパスワード問題を整理

※本記事は2026年8月時点の公開情報に基づく一般的な解説です。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)を保有する人が増えるにつれて、「仮想通貨の相続」は誰にとっても他人事ではないテーマになりつつあります。ところが、仮想通貨は銀行預金や不動産と違って目に見えず、通帳や権利証のような分かりやすい手がかりも残りにくい財産です。そのため、「そもそも相続税はかかるのか」「いくらとして評価されるのか」「パスワードが分からず取り出せない場合はどうなるのか」といった疑問が次々に出てきます。本記事では、仮想通貨の相続と税金の基本を、国税庁の公表資料に沿って整理しました。保有している方が生前にやっておきたい準備と、相続する側が知っておきたい売却時の注意点まで、この記事1本で全体像がつかめる構成になっています。

目次

仮想通貨は相続財産に含まれる(相続税の課税対象)

最初に押さえておきたいのは、仮想通貨(暗号資産)は相続税の課税対象になるという点です。相続税は、亡くなった方(被相続人)から相続や遺贈によって取得した、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産にかかります(国税庁タックスアンサーNo.4105「相続税がかかる財産」)。仮想通貨は取引所で日本円に換金できる経済的価値のある財産ですから、現金や株式と同じように相続財産に含まれます。

国税庁が公表しているFAQ「暗号資産に関する税務上の取扱いについて」でも、被相続人から暗号資産を相続もしくは遺贈または贈与により取得した場合には、相続税または贈与税が課税されることが明記されています。「デジタルデータだから課税されないのでは」という期待は通用しない、と考えておくのが安全です。

なお、相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える正味の遺産額に対して課税されます(国税庁タックスアンサーNo.4102「相続税がかかる場合」)。仮想通貨単体で判断するのではなく、預金や不動産なども含めた遺産全体で基礎控除を超えるかどうかがポイントになります。仮想通貨の含み益が大きく膨らんでいるケースでは、本人が思っている以上に遺産総額を押し上げていることがあるため、保有額の現状把握が相続対策の第一歩です。

仮想通貨の相続税評価|「相続開始時の取引価格」が基本

次に、相続した仮想通貨を「いくらの財産」として評価するのかを見ていきます。土地や上場株式と違い、仮想通貨には財産評価基本通達上の個別の定めがありません。そこで国税庁のFAQでは、評価通達5(評価方法の定めのない財産の評価)の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価するという考え方が示されています。

活発な市場が存在する仮想通貨の評価

ビットコインやイーサリアムのように、取引所・販売所で十分な数量と頻度の取引が行われ、継続的に価格情報が提供されている「活発な市場が存在する」暗号資産については、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期(相続の場合は原則として相続開始日=被相続人が亡くなった日)における取引価格によって評価します。

実務上のポイントもFAQの注記に示されています。主なものは次のとおりです。

  • 取引価格には、暗号資産交換業者が納税義務者の求めに応じて発行する残高証明書に記載された取引価格を含みます。相続手続きでは、取引所に相続開始日時点の残高証明書を請求するのが実務の基本です
  • 購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている販売所形式の場合、売却価格で評価して差し支えないとされています
  • 複数の交換業者で取引している場合は、納税義務者が選択した交換業者の公表する取引価格で評価して差し支えないとされています

活発な市場が存在しない仮想通貨の評価

一方、取引量の少ないマイナーな銘柄など、活発な市場が存在しない暗号資産は、客観的な交換価値を示す相場が成立していないため、その暗号資産の内容や性質、取引実態などを勘案して個別に評価します。FAQでは、売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して評価する方法などが例示されていますが、判断が難しい領域のため、該当しそうな銘柄を相続した場合は税理士への相談を検討してください。

区分 評価の考え方 実務上の対応
活発な市場が存在する暗号資産(ビットコインなど) 納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する、課税時期(相続開始日)における取引価格で評価 取引所に相続開始日時点の残高証明書を請求する
活発な市場が存在しない暗号資産(取引量の少ない銘柄など) 内容・性質・取引実態などを勘案して個別に評価(売買実例価額・精通者意見価格等を参酌する方法など) 評価方法の判断が難しいため税理士に相談する

この評価の枠組みは、国税庁のFAQ「暗号資産に関する税務上の取扱いについて」(平成30年公表・以後改訂が続いています)に示されているものです。最新の資料は国税庁の暗号資産関連の情報ページから確認できます。

パスワード・秘密鍵が分からない場合も課税対象になり得る

仮想通貨の相続で特有の問題となるのが、「相続人がパスワードや秘密鍵を知らず、資産を取り出せない」ケースです。国内取引所に口座がある場合は、相続人が取引所に連絡すれば所定の相続手続きで資産を承継できるのが一般的ですが、本人しか管理していなかったウォレット(自己管理型ウォレット)では、秘密鍵やシードフレーズが分からないと事実上アクセスできなくなります。

「取り出せないのだから相続税もかからないのでは」と考えたくなるところですが、この点については注意が必要です。2018年(平成30年)3月の参議院財政金融委員会で、パスワードが分からない仮想通貨にも相続税がかかるのかという質問に対し、国税庁の担当者から、相続人がパスワードを知らない場合であっても被相続人が保有していた仮想通貨は相続人が承継することになるため、相続税の課税対象となるという趣旨の答弁が行われたことが知られています。相続人がパスワードを本当に知らないのかどうかを、課税庁の側で客観的に確認することが難しいという事情も、理由の一つとして挙げられています。

ただし、この答弁が個別のケースの課税関係をすべて確定させるわけではありません。実際にアクセスできない財産をどう扱うかは、事実関係によって判断が分かれ得る領域であり、取り扱いに注意が必要な論点です。自己管理型ウォレットの資産が取り出せない状況に直面した場合は、自己判断で「申告しなくてよい」と結論づけず、仮想通貨に詳しい税理士や所轄の税務署に早めに相談することをおすすめします。

保有者が生前にやっておきたい4つの準備

ここまで見てきたように、仮想通貨の相続では「財産の存在に気づけない」「気づいても取り出せない」という2つの壁が立ちはだかります。裏を返せば、保有者が生前に情報を残しておくだけで、家族の負担は大きく減らせます。具体的には次の4つを整えておきましょう。

準備すること 具体的な内容 注意点
1. 取引所口座の一覧を作る 利用中の取引所名・登録メールアドレス・おおよその保有銘柄をリスト化する ログインパスワードまで書き残す必要はありません。口座の存在が分かれば相続手続きは進められます
2. ウォレットの所在を明らかにする ハードウェアウォレットの保管場所、利用しているウォレットアプリの種類を記録する シードフレーズ(復元フレーズ)そのものは同じ場所に書かず、保管場所だけを伝える形にします
3. シードフレーズ・秘密鍵の保管方法を決める 紙に書いて自宅の金庫や貸金庫など安全な場所に保管し、家族には「どこにあるか」だけを伝える エンディングノートに直接書き込むと、盗難・のぞき見のリスクがあります。「情報の存在」と「中身」を分けて残すのが原則です
4. エンディングノート・遺言書で伝える 仮想通貨を保有している事実と、上記リストの保管場所をエンディングノートや遺言書に記載する 遺言書で承継先を指定しておくと、遺産分割の話し合いがスムーズになります

ポイントは、「家族が財産の存在に気づける状態」と「秘密鍵の安全性」を両立させることです。セキュリティを重視するあまり誰にも何も伝えないと、相続の場面で資産が永久に取り出せなくなりかねません。逆に、シードフレーズを平文でノートに書き残すのは生前の盗難リスクを高めます。「存在と所在は伝える、中身は安全な場所に分けて保管する」という整理を意識してください。

また、取引履歴を定期的にダウンロードして残しておくことも、後述する取得価額の把握に役立ちます。各取引所での履歴の取得手順は「取引所別CSVダウンロードガイド」にまとめていますので、年に1回の棚卸しとあわせて実行しておくと、残された家族が損益計算で困りません。

なお、相続を待たずに生前贈与で仮想通貨を移す選択肢もありますが、贈与には贈与税の論点が別途あります。この点は贈与税の記事でも整理予定ですので、本記事では「生前贈与という選択肢もある」という指摘にとどめます。

相続した仮想通貨を売却するときは「取得価額の引き継ぎ」に注意

相続税を納めて終わり、ではないのが仮想通貨の相続の難しいところです。相続した仮想通貨を後日売却すると、今度は所得税の問題が出てきます。個人が仮想通貨を売却して得た利益は原則として雑所得に区分され、確定申告の対象になり得ます。

ここで重要なのが取得価額の考え方です。国税庁のFAQ(1-4 暗号資産の取得価額)では、相続人に対する死因贈与、相続、包括遺贈または相続人に対する特定遺贈により取得した暗号資産の取得価額は、被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法(総平均法または移動平均法)により評価した金額とされています。かみ砕いて言えば、相続開始時の時価ではなく、被相続人が持っていた取得価額に相当する金額を引き継ぐイメージです。

たとえば、被相続人が100万円で取得したビットコインが、相続開始時に1,000万円に値上がりしていたとします。相続税の評価は1,000万円ベースで行われますが、相続人がその後1,000万円で売却した場合の所得計算では、取得価額はおおむね被相続人から引き継いだ100万円ベースとなり、差額が雑所得として課税対象になり得ます。含み益の大きい仮想通貨では、相続税と売却時の所得税の双方の負担が生じ得る点が論点として知られています。売却のタイミングや金額は、この二重の負担を踏まえて検討するのが賢明です。

実務面では、次の3点を押さえておきましょう。

  • 被相続人の取引履歴(年間取引報告書・取引CSV)を確保し、取得価額の計算根拠を残すこと。取得価額が分からないと、売却価額の5%を取得価額とみなす保守的な取り扱いになり、税負担が大きく増える可能性があります
  • 総平均法・移動平均法という評価方法の違いを理解しておくこと。2つの方法の仕組みと選び方は「総平均法と移動平均法の比較記事」で詳しく解説しています
  • 取引件数が多い場合は損益計算ツールの利用を検討すること。被相続人の履歴と自分の取引をまとめて整理するなら「損益計算ツールの選び方ガイド」が参考になります

相続後に初めて確定申告をすることになった方は、1月から3月までの段取りを時系列で整理した「仮想通貨の確定申告が初めての人向けの記事」もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q1. 海外取引所や自己管理型ウォレットの仮想通貨も相続税の対象になりますか?

対象になり得ます。相続税は財産の保管場所ではなく、金銭に見積もることができる経済的価値があるかどうかで判断されるため、海外取引所の口座残高や自己管理型ウォレット内の仮想通貨も相続財産に含まれます。海外取引所は日本語の相続手続き窓口がない場合も多く、承継の実務は国内取引所より難航しがちです。保有者は生前のうちに口座の存在と手続き方法を書き残しておくと、家族の負担を減らせます。

Q2. 相続税の申告期限はいつまでですか?

相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内が期限とされています。仮想通貨の相続では、取引所への残高証明書の請求、銘柄ごとの評価、ウォレットの調査などに時間がかかりやすいため、早めに着手することが大切です。遺産全体が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば申告が不要となる場合もありますが、判定には仮想通貨を含めた全財産の把握が前提になります。

Q3. 家族が仮想通貨を持っていたかどうか分かりません。どう調べればよいですか?

まず、スマートフォンやパソコンに取引所アプリ・ウォレットアプリが入っていないか、メールボックスに取引所からのお知らせ(取引報告・年間取引報告書・ログイン通知など)が届いていないかを確認します。郵送物や確定申告書の控え、銀行口座の入出金履歴に取引所への振込記録がないかも手がかりになります。口座がありそうな取引所が特定できたら、相続人であることを示す書類を添えて取引所に照会し、残高証明書の発行を依頼します。

Q4. パスワードが分からず取り出せない仮想通貨は、申告しなくてもよいですか?

自己判断で申告から外すのは避けてください。本文で紹介したとおり、国会ではパスワードが分からない場合でも相続税の課税対象となるという趣旨の答弁が行われており、「取り出せないから課税されない」と単純には言えないのが現状です。一方で、個別の事情がどう評価されるかはケースバイケースの面があり、取り扱いに注意が必要な論点です。該当する場合は、仮想通貨の相続に詳しい税理士または所轄の税務署に相談したうえで対応を決めましょう。

Q5. 相続した仮想通貨を売却したら、確定申告は必要ですか?

売却益が出た場合、原則として雑所得として確定申告の対象になり得ます。取得価額は相続開始時の時価ではなく、被相続人から引き継いだ金額がベースになる点に注意してください。なお、給与を1か所から受けている会社員で、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下の場合には所得税の確定申告が不要とされるケースもあります。この判定条件は「仮想通貨の20万円ルールの解説記事」で詳しく整理しています。所得税の申告が不要でも住民税の申告は別途残る点にもご注意ください。

まとめ:仮想通貨の相続対策は「情報を残すこと」から

最後に、本記事のポイントを整理します。

  • 仮想通貨(暗号資産)は相続税の課税対象です。遺産全体が基礎控除を超えるかどうかで申告の要否を判断します
  • 活発な市場が存在する仮想通貨は、取引を行っている暗号資産交換業者が公表する相続開始日の取引価格で評価するのが基本で、残高証明書がその裏付けになります
  • パスワードや秘密鍵が分からない場合でも課税対象になり得るという国会答弁が知られており、取り扱いに注意が必要な論点です。該当したら専門家に相談しましょう
  • 保有者が生前にできる最大の対策は、取引所口座の一覧・ウォレットの所在・シードフレーズの保管場所を、安全性に配慮した形で家族に残しておくことです
  • 相続した仮想通貨を売却するときは、被相続人の取得価額を引き継ぐため、相続税とは別に所得税の負担が生じ得ます。取引履歴の確保と損益計算の準備を早めに進めましょう

仮想通貨の相続は、税金のルールそのものよりも「情報が残っていないこと」が最大のリスクになりがちな分野です。保有している方は元気なうちに情報の整理を、相続する立場になった方は残高証明書の取得と専門家への相談を、それぞれ早めに始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の税務処理や投資行動を推奨するものではありません。記載内容は2026年8月時点の公開情報(国税庁タックスアンサー・国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」等)に基づいています。個別の相続税・所得税の判断は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

Bitcoin Analyze 編集部