税金・確定申告

仮想通貨を家族に送ると贈与税はかかるか|年110万円の基礎控除と評価の考え方

※本記事は2026年8月時点の公開情報に基づく一般的な解説です。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

「子どもにビットコインを少し分けてあげたい」「夫婦間でウォレットからウォレットへ送っただけ」。仮想通貨(暗号資産)が身近になるにつれて、こうした個人間のやり取りも増えてきました。ここで気になるのが「仮想通貨 贈与税」の問題です。現金や不動産と同じように、仮想通貨もタダで渡せば贈与税の対象になり得ますし、家族間だから無条件で非課税、ということにもなりません。さらに仮想通貨ならではの論点として、「いくらの贈与として評価するのか」「受け取った側が後で売るときの取得価額はどうなるのか」「送った側にも税金がかかる場合があるのか」といった疑問が続きます。本記事では、国税庁のタックスアンサーと「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」で示されている取り扱いをベースに、仮想通貨の贈与にまつわる税金の考え方を整理します。

目次

仮想通貨を無償で渡すと贈与税の対象になり得る

まず大前提から確認します。贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です(国税庁タックスアンサーNo.4402「贈与税がかかる場合」)。相続税法では、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を贈与により取得した場合に贈与税の課税対象とすることとされており、仮想通貨(暗号資産)も「財産的価値」を持つ資産であることから、贈与により取得すれば贈与税の課税対象になるとされています。この点は、国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」の「4-1 暗号資産を相続や贈与により取得した場合」で明確に示されています。

ポイントは、課税されるのは「もらった側(受贈者)」だという点です。贈与税の申告と納税の義務を負うのは、原則として財産を受け取った人になります。「親が勝手に送ってきただけなのに」と思うかもしれませんが、贈与が成立していれば申告義務は受け取った側に生じます。逆に言えば、渡した側は贈与税の納税義務者ではありません(ただし後述のとおり、送った側には別の税金の論点があります)。

なお、贈与税の課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。本記事では、多くの方に関係する暦年課税を前提に解説します。相続時精算課税は親や祖父母からの贈与について選択できる別の制度で、適用要件や手続きがあるため、利用を検討する場合は税理士に相談するのが安心です。

贈与税の基礎控除110万円と税率のイメージ

暦年課税の贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与で受け取った財産の合計額から110万円を差し引き、残った金額に税率を掛けて贈与税を計算します(国税庁タックスアンサーNo.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」)。つまり、1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば、暦年課税では贈与税はかからず、贈与税の申告も原則不要です。

注意したいのは、この110万円が「もらった人ごと」の枠だという点です。たとえば父から80万円分、母から80万円分の仮想通貨を同じ年にもらった場合、受け取った側の合計は160万円となり、110万円を超えた50万円が課税対象になります。「1人あたり110万円ずつもらえる」わけではありません。また、仮想通貨だけでなく、現金や株式など他の贈与財産もすべて合算して判定します。

110万円を超えた部分に適用される税率は、贈与のパターンによって「特例税率」と「一般税率」に分かれます。特例税率は、父母や祖父母などの直系尊属から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子や孫への贈与に適用されるもので、一般税率より少し有利に設定されています。特例税率の速算表は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

たとえば、親から成人した子へ1年間に300万円分の仮想通貨を贈与した場合、300万円から基礎控除110万円を引いた190万円が課税価格となり、特例税率10%で贈与税は19万円という計算になります。一方、夫婦間や兄弟間、18歳未満の子への贈与には一般税率が適用され、区分や控除額が特例税率とは異なります。詳細は上記の国税庁ページで確認できます。

評価は「贈与時の価額」で考えるのが基本

仮想通貨の贈与で次に問題になるのが、「いくらの贈与として数えるのか」という評価の問題です。仮想通貨は価格変動が大きいため、いつの価格で評価するかによって110万円を超えるかどうかが変わってしまいます。

この点について国税庁のFAQ(4-2「相続や贈与により取得した暗号資産の評価方法」)では、ビットコインのように活発な市場が存在する暗号資産については、納税義務者(受け取った側)が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する「課税時期における取引価格」によって評価するという考え方が示されています。贈与であれば、贈与があった時点の取引価格が基準になるということです。実務上は、交換業者が発行する残高証明書に記載された取引価格を使うことや、複数の交換業者を利用している場合に自分が選択した業者の公表価格で評価することも差し支えないとされています。

逆に、取引がほとんどない草コインのように活発な市場が存在しない暗号資産は、一律の相場がないため、その暗号資産の内容や性質、取引実態などを踏まえて個別に評価することとされています。マイナーな銘柄を贈与するケースでは評価自体が難しくなるため、この段階から税理士に相談する価値があります。

いずれにしても、「いつ・どの銘柄を・何枚・そのときのレートはいくらだったか」を記録しておくことが評価の出発点になります。送金した日時とトランザクションID、その時点の取引所レートのスクリーンショットなどを残しておくと、後から評価額を説明しやすくなります。

夫婦間・親子間でも原則は課税対象

「家族間のお金のやり取りに税金なんてかからないのでは」と考える方は多いのですが、贈与税に「家族だから非課税」という一般的なルールはありません。夫婦間でも親子間でも、財産を無償で渡せば原則として贈与税の対象です。

ただし、重要な例外があります。夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者の間で、生活費や教育費に充てるために取得した財産のうち「通常必要と認められるもの」には贈与税がかからないとされています(国税庁タックスアンサーNo.4405「贈与税がかからない場合」)。毎月の生活費の仕送りや学費の負担が贈与税の対象にならないのは、この規定があるためです。

気をつけたいのは、この非課税は「生活費や教育費として必要な都度、直接これらに充てるためのもの」に限られるという点です。生活費という名目で受け取っても、それを預金したり、株式や不動産の購入資金に充てたりした場合には贈与税がかかることとされています。つまり、名目ではなく実際の使いみちで判断されるわけです。

この考え方を仮想通貨に当てはめると、ビットコインを送って受け取った側がそのまま保有し続けるような場合は、「必要な都度、生活費に直接充てた」とは説明しにくいと考えられます。値上がりを期待して保有する仮想通貨は、性質としては預金や株式に近いためです。「生活費として送ったつもり」でも、暗号資産のままウォレットに置かれていれば、生活費の非課税規定でカバーするのは難しい可能性が高い、という前提で考えておくのが安全です。

「送金しただけ」でも記録が重要な理由

仮想通貨の個人間送金がやっかいなのは、外から見ると「アドレスAからアドレスBにコインが動いた」という事実しか残らないことです。その送金が贈与なのか、貸したのか、一時的に預けただけなのかは、ブロックチェーン上の記録だけでは分かりません。そして、どれに当たるかによって税金の扱いは大きく変わります。

やり取りの実態 税務上の整理の例 残しておきたい記録
あげた・もらった(贈与) 受け取った側に贈与税(年110万円の基礎控除超の場合)。送った側にも所得税の論点あり(後述) 贈与契約書、送金日時・数量・当時のレート
貸した(金銭・コインの貸借) 贈与ではないが、契約書や返済実績がないと贈与と整理される可能性 借用書(返済期限・方法)、返済の履歴
預けた(名義だけ移し、実質は本人が管理) 実質的な所有者が変わらなければ贈与とならない整理もあり得るが、説明資料がないと判断が難しい 管理の実態が分かる記録、経緯のメモ
生活費・教育費への都度充当 通常必要と認められる範囲は非課税 使途が分かる記録(支払いの明細など)

贈与としてきちんと渡すつもりなら、簡単なものでよいので贈与契約書(いつ・誰から誰へ・どの銘柄を何枚・無償で渡す旨)を作り、双方が署名して保管しておくと、後から「これは贈与だった」と説明しやすくなります。逆に、貸したつもりのコインが契約書もなく返済実績もないままだと、税務上は贈与と整理されてしまうリスクがあります。

また、送金履歴やレートの記録は、贈与税だけでなく後々の所得税の計算にも効いてきます。取引履歴の管理方法については「ステーキング報酬の記録管理の解説記事」でも詳しく扱っていますが、個人間送金についても同じように、日時・数量・当時のレート・相手と目的をセットでメモしておく習慣をつけておくと安心です。

受け取った側が売却するときの取得価額

贈与でもらった仮想通貨を、受け取った側が後で日本円に売却したら、今度は所得税(雑所得)の話になります。このとき問題になるのが「取得価額をいくらとして損益計算するのか」です。

国税庁のFAQ(1-5「暗号資産の取得価額」)では、贈与により取得した暗号資産の取得価額は「贈与の時の価額(時価)」とする取り扱いが示されています(相続人に対する死因贈与など、相続に関連する一部のケースを除きます)。たとえば、贈与時に1BTC=1,000万円だったビットコインをもらい、後日1,200万円で売却した場合、売却額1,200万円から取得価額1,000万円を差し引いた200万円が所得計算のベースになる、というイメージです。贈与した親がもともといくらで買っていたかではなく、贈与時点の時価が基準になる点が特徴です。

一方、相続や、相続人に対する死因贈与(亡くなったことをきっかけに効力が生じる贈与)で取得した場合には、亡くなった方が選択していた評価方法による金額を引き継ぐという別の取り扱いになります。生前贈与か相続かで取得価額のルールが変わるため、家族の資産承継として仮想通貨を渡すことを考えている場合は、どちらの形を取るかも含めて税理士に相談することをおすすめします。

なお、すでに自分でも同じ銘柄を保有している人が贈与を受けた場合、売却時の損益計算は総平均法または移動平均法で行うことになり、贈与分の取得価額もその計算に組み込まれます。計算方法の違いは「総平均法と移動平均法の比較記事」で整理しています。手計算が不安な場合は、「損益計算ツールの選び方ガイド」で紹介しているようなツールに取引履歴を取り込んで管理する方法もあります。

見落としやすい論点:送った側の所得税

仮想通貨の贈与で意外と知られていないのが、「送った側」にも税金の論点があることです。国税庁のFAQ(2-10「暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い」)では、個人が暗号資産を贈与(相続人に対する死因贈与を除く)により他の個人や法人に移転させた場合、所得税の計算上、その贈与時における暗号資産の価額(時価)を総収入金額に算入する必要があるとされています。

かみ砕いて言うと、含み益のある仮想通貨を贈与すると、贈与した時点で時価で手放したものとして扱われ、含み益部分が贈与者の雑所得等として所得税の対象になり得る、ということです。たとえば取得価額100万円・贈与時の時価300万円のコインを子に贈与した場合、送った親の側で200万円の利益が実現した扱いになる可能性があります。「売っていないのに課税されるのか」と驚く方が多いポイントです。

さらに、無償ではなく格安で売った場合にも注意が要ります。時価の70%相当額未満の対価で譲渡した、いわゆる低額譲渡に当たる場合には、実質的に贈与したと認められる金額を総収入金額に加える取り扱いが示されています。家族だからと相場より大幅に安く売る形を取っても、課税を避けられるわけではないということです。

このように、1回の贈与で「送った側の所得税」と「受け取った側の贈与税」という2つの税金が別々に生じ得るのが、仮想通貨の贈与の難しいところです。金額が大きい贈与を考えている場合には、実行する前に税理士へ相談し、トータルの税負担を試算してもらうことを強くおすすめします。送った側に所得が生じた場合の申告要否は、会社員なら20万円ルールなども関係してきます。判定の考え方は「仮想通貨の20万円ルールの解説記事」を参考にしてください。

よくある質問

Q1. 夫婦の間で仮想通貨を渡しても、本当に贈与税の対象になりますか?

原則として対象になり得ます。夫婦間だから非課税という一般ルールはなく、年間110万円の基礎控除を超える贈与であれば、受け取った側に贈与税の申告義務が生じます。生活費として通常必要な範囲の受け渡しは非課税ですが、これは「必要な都度、生活費に直接充てるもの」に限られる取り扱いです。仮想通貨のまま保有し続ける場合はこの枠で説明するのが難しいと考えられるため、金額が大きいときは事前に税理士へ相談すると安心です。

Q2. 年間110万円以下の贈与なら、何もしなくてよいのでしょうか?

暦年課税では、1年間に受け取った贈与財産の合計が基礎控除110万円以下であれば贈与税はかからず、贈与税の申告も原則不要です。ただし、110万円の枠は「もらった側」の年間合計で判定するため、複数の人から受け取った場合や、現金など他の贈与と合わせて超える場合には課税対象になります。また、後から贈与の事実や評価額を説明できるように、送金日時・数量・当時のレートの記録は残しておくことをおすすめします。

Q3. 自分の取引所口座から自分のウォレットへの送金も贈与になりますか?

なりません。贈与は「他人に財産を無償で移すこと」なので、自分名義の口座・ウォレット間の資金移動は贈与に当たらず、贈与税の問題は生じません(売却ではないので所得税の課税タイミングでもありません)。ただし、家族名義のウォレットや口座に移した場合は、実態によって贈与と整理される可能性があります。名義と実質の管理者が異なるケースは判断が難しいため、記録を残したうえで税理士に確認するのが確実です。

Q4. 贈与税の申告が必要な場合、いつ・誰が手続きするのですか?

贈与税の申告は、財産を受け取った人が、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に行うのが原則です。仮想通貨の売却益などに関する所得税の確定申告(原則2月16日〜3月15日)とは別の申告である点に注意してください。受け取った仮想通貨を売却して利益が出た年は、所得税の確定申告も必要になる場合があります。初めての方は「初めての確定申告の流れを時系列で整理した記事」から準備を始めるとスムーズです。

まとめ:家族間でも「評価・記録・相談」の3点セット

最後に、本記事のポイントを整理します。

  • 仮想通貨も経済的価値のある財産であり、個人間で無償で渡せば贈与税の課税対象になり得ます(受け取った側に申告義務)
  • 暦年課税では年間110万円の基礎控除があり、超えた部分に贈与税がかかります。110万円は「もらった側」の年間合計で判定します
  • 評価は贈与時の価額が基本で、活発な市場がある銘柄は交換業者の公表する取引価格によるとされています
  • 夫婦間・親子間でも原則は課税対象です。生活費・教育費の非課税は「必要な都度、直接充てるもの」に限られます
  • 贈与か貸付か預けかで扱いが変わるため、契約書や送金記録を残しておくことが重要です
  • 受け取った側の取得価額は原則「贈与時の時価」とされ、送った側にも時価を総収入金額に算入する所得税の論点があります

仮想通貨の贈与は、「贈与税だけの話」と思って進めると、送った側の所得税という思わぬ論点に後から気づくケースがあります。少額のやり取りでも記録を残す習慣をつけ、まとまった金額を動かす前には税理士や所轄の税務署に確認する。この流れを守っておけば、家族への資産の受け渡しを落ち着いて進められるはずです。

※本記事は2026年8月時点の国税庁タックスアンサー(No.4402・No.4405・No.4408)および「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」等の公開情報に基づく一般的な解説であり、特定の取引に関する税務判断を示すものではありません。個別のケースについては、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

Bitcoin Analyze 編集部