税金・確定申告

仮想通貨の相続税はどうなる?評価方法・申告手続き・注意点を徹底解説

仮想通貨(暗号資産)の普及に伴い、故人が保有していたビットコインやアルトコインを相続するケースが増えています。しかし、仮想通貨の相続は現金や不動産とは異なる特有の問題があり、多くの相続人が戸惑いを感じているのが現状です。

ウォレットの秘密鍵を誰も知らない、取引所のアカウント情報が分からない、評価額の算定方法が不明といった問題が続出しています。また、相続税の評価方法も通常の財産とは異なるため、正しい知識を持って対応することが重要です。

本記事では、仮想通貨を相続した場合の税務処理、評価額の算定方法、申告手続きの流れ、そしてよくあるトラブルとその対策について詳しく解説します。

1. 仮想通貨は相続財産に含まれるか

1-1. 相続財産としての仮想通貨の位置づけ

2017年の資金決済法改正により、仮想通貨(暗号資産)は「財産的価値を有する電子的な記録」として法的に定義されました。これに伴い、相続法上も仮想通貨は相続財産に含まれることが明確化されています。

国税庁も2019年以降の通達で、仮想通貨を相続税の課税対象財産として位置づけています。被相続人(亡くなった方)が保有していたビットコインやイーサリアムなど、あらゆる仮想通貨が相続財産の対象となります。

仮想通貨の保管場所としては、国内取引所(コインチェック、GMOコイン、ビットフライヤー等)のアカウント、ハードウェアウォレット(Ledger、TREZORなど)、ソフトウェアウォレット、ペーパーウォレットなどがあります。どのような形態で保管されていても、相続財産に含まれることに変わりはありません。

1-2. 相続人が直面する実務上の問題

仮想通貨の相続において最初に直面する問題は「故人がどのような仮想通貨をどのくらい保有していたか」を把握することです。現金や預金であれば銀行に照会できますが、仮想通貨はウォレットアドレスや秘密鍵が分からなければアクセスできません。

取引所に預けている仮想通貨については、死亡診断書や相続関係書類を提出することで相続手続きを進められます。しかし、プライベートウォレット(非カストディアル型)に保管されている仮想通貨は、秘密鍵やシードフレーズがなければ誰もアクセスできず、事実上消失してしまう可能性があります。

このような問題を防ぐために、仮想通貨を保有している方は、ウォレット情報や取引所のアカウント情報を信頼できる方法で記録・保管しておくことが非常に重要です。エンディングノートや遺言書に仮想通貨の保有状況を記載しておくことをお勧めします。

2. 仮想通貨の相続税評価方法

2-1. 国税庁の評価基準

仮想通貨の相続税評価額は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)における時価で算定します。国税庁の財産評価基本通達によれば、仮想通貨の評価は「活発な市場が存在する場合」と「存在しない場合」で方法が異なります。

ビットコインやイーサリアムのように活発な市場が存在する仮想通貨については、相続開始日の取引所における最終価格(終値)を評価額とすることが原則です。具体的には、国内の主要取引所(コインチェック、GMOコイン、ビットフライヤーなど)が公表している価格を参照します。

一方、流動性が低く市場価格が形成されていないマイナーなアルトコインについては、評価方法が明確に定められていないケースがあります。このような場合には、専門家(税理士・公認会計士)に相談して適切な評価方法を選択することが重要です。

2-2. 複数取引所の価格が異なる場合の対応

ビットコインなどは複数の取引所で取引されており、取引所によって価格が若干異なる場合があります。このような場合、相続財産を保管していた取引所の価格を優先的に使用することが実務上の慣例となっています。

また、相続開始日が取引所の休業日や価格が形成されていない日と重なることも考えられます。その場合は、直前または直後の取引日の価格を参照するといった対応が必要になります。評価額の根拠となる資料は、税務調査に備えてスクリーンショットや公式の価格データとして保管しておきましょう。

DeFi(分散型金融)に預けているトークン、ステーキング報酬として受け取った仮想通貨、エアドロップで取得した仮想通貨なども相続財産に含まれる可能性があります。これらの評価方法については、現時点では統一的な基準が確立されていないため、個別に専門家への相談が必要です。

3. 相続税の計算方法

3-1. 相続税の基礎控除と課税対象

相続税には「基礎控除」が設けられており、遺産総額がこの基礎控除額以下であれば相続税は課税されません。基礎控除額の計算式は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円となります。

仮想通貨を含む相続財産の合計額がこの基礎控除額を超えた場合に、相続税の申告・納付義務が生じます。仮想通貨の評価額が高額になっている場合、相続財産全体が基礎控除を超えるケースが増えているため、注意が必要です。

相続税の税率は課税される金額(課税遺産総額)に応じて10%から55%の累進課税となっています。1,000万円以下は10%、5,000万円以下は20%(控除額200万円)、1億円以下は30%(控除額700万円)、2億円以下は40%(控除額1,700万円)、3億円以下は45%(控除額2,700万円)、6億円以下は50%(控除額4,200万円)、6億円超は55%(控除額7,200万円)が適用されます。

3-2. 相続税の申告期限と納付方法

相続税の申告期限は、相続開始を知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内です。例えば、2026年1月15日に被相続人が亡くなった場合、申告期限は2026年11月15日となります。

相続税は原則として現金一括納付が基本ですが、延納(分割払い)や物納(財産での納付)も認められています。仮想通貨を物納することは現状では認められていませんが、仮想通貨を売却して現金化し、その現金で相続税を納付することは可能です。

相続税の申告書は非常に複雑なため、専門知識のない方が一人で作成するのは困難です。相続税を専門とする税理士への依頼を強くお勧めします。税理士費用は相続財産の0.5〜1%程度が相場ですが、適切な節税対策を受けることで費用以上の節税効果が期待できる場合もあります。

4. 仮想通貨相続の実務手続き

4-1. 取引所での相続手続き

国内取引所(コインチェック、GMOコイン、ビットフライヤーなど)に預けている仮想通貨の相続手続きは、各取引所の定める方法に従って行います。一般的な手続きとしては、被相続人の死亡を証明する書類(死亡診断書・除籍謄本など)と相続関係を証明する書類(戸籍謄本・遺産分割協議書など)を提出します。

取引所によっては、相続専用の申請書類が用意されている場合もあります。手続きが完了すると、相続人の口座に仮想通貨が移管されるか、売却して現金で払い出されます。取引所によって対応が異なるため、事前に各取引所の相続手続きページを確認することをお勧めします。

海外取引所(Binance、Coinbase、Krakenなど)に保管されている仮想通貨の相続手続きは、各取引所のサポートに英語で問い合わせる必要があるなど、国内取引所より手続きが複雑になる場合があります。英語対応が難しい場合は、専門業者への依頼も検討してください。

4-2. ハードウェアウォレットの相続

Ledger、TREZORなどのハードウェアウォレットに保管されている仮想通貨の相続は、秘密鍵またはシードフレーズ(リカバリーフレーズ)が分かれば、相続人がウォレットにアクセスしてコインを取り出すことができます。

しかし、これらの情報が残されていない場合、仮想通貨には永久にアクセスできなくなります。この問題を「デジタル資産の喪失リスク」と呼びます。被相続人がウォレット情報を遺言書やエンディングノートに記載しておくこと、または信頼できる第三者に情報を託すことが重要です。

ただし、秘密鍵やシードフレーズは仮想通貨を完全にコントロールできる最も重要な情報です。これが漏洩すると資産を盗まれるリスクがあるため、保管方法には細心の注意が必要です。公証人役場に封印して預ける方法や、専門のデジタル資産保管サービスを利用する方法なども検討してください。

5. 相続した仮想通貨を売却した場合の課税

5-1. 取得価額の引き継ぎと譲渡所得

相続によって仮想通貨を取得した場合、その後に売却すると譲渡益(売却益)に対して所得税が課税されます。重要なのは「取得価額」の計算方法です。相続で取得した場合の取得価額は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)の時価となります。

例えば、被相続人がビットコインを50万円で購入し、相続開始日の時価が300万円だった場合、相続人の取得価額は300万円となります。相続人がその後400万円で売却した場合、課税対象となる譲渡益は400万円 − 300万円 = 100万円です。被相続人の購入価格50万円は引き継がれません。

この点は、株式や不動産の相続(被相続人の取得価額を引き継ぐ)とは異なるため注意が必要です。仮想通貨の相続においては、相続税に加えて将来の売却時の所得税も視野に入れた資産管理が求められます。

5-2. 相続税額の取得費加算特例

相続により財産を取得した場合、相続税を支払った相続人が一定期間内にその財産を売却すると、「取得費加算の特例」が利用できます。この特例により、支払った相続税額の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税の負担を軽減できます。

適用要件は「相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に売却することです。相続した仮想通貨を早期に売却する予定がある場合は、この特例の活用を検討することをお勧めします。

ただし、この特例は相続税を実際に支払った場合にのみ適用されます。相続財産の総額が基礎控除以下で相続税がゼロだった場合には適用されません。

6. 相続税対策としての仮想通貨活用

6-1. 生前贈与との組み合わせ戦略

相続税の負担を軽減するための代表的な対策として、生前贈与の活用があります。毎年110万円の暦年贈与非課税枠を使い、仮想通貨を少しずつ子や孫に移転していくことで、相続発生時の課税対象となる遺産を減らすことができます。

仮想通貨は価格変動があるため、価格が低い時期に贈与することで同じ数量でも評価額を抑えられます。長期的な視点でポートフォリオを管理しながら、計画的な生前贈与を実施することが有効な相続税対策となり得ます。

ただし、生前贈与には「相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される」というルールがあります(2024年改正後は最大7年)。この期間内に行った贈与は相続税の課税対象となるため、早期から計画的に取り組むことが重要です。

6-2. 遺言書・エンディングノートへの仮想通貨情報の記載

仮想通貨の相続を円滑に進めるためには、被相続人の生前から情報を整理しておくことが不可欠です。遺言書または信頼できる場所に保管したエンディングノートに、保有している仮想通貨の銘柄・数量、保管場所(取引所名・ウォレットの種類)、アクセス方法(ただし秘密鍵そのものの記載は別途安全な方法で管理)を記録しておきましょう。

公正証書遺言を活用すれば、遺言書の存在と内容を法的に確実に残せます。仮想通貨の取得方法、保管場所、相続人への分配方法を明確に記載しておくことで、相続人の負担を大きく軽減できます。

最近では、デジタル資産の相続に特化したサービスや、秘密鍵を安全に相続人に引き継ぐための専門業者も登場しています。仮想通貨の保有額が大きい場合は、これらのサービスの活用も検討してください。

まとめ

仮想通貨は相続財産に含まれ、相続開始日の時価で評価されます。相続税の基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数)を超える場合には申告・納付が必要です。

実務上は、ウォレットのアクセス情報の管理、取引所での相続手続き、評価額の適切な算定など、通常の財産相続にはない問題が生じやすいため、早めの準備が重要です。

相続した仮想通貨を売却する場合の譲渡所得税、生前贈与との組み合わせ戦略、取得費加算の特例なども踏まえ、総合的な視点で資産承継計画を立てることをお勧めします。税理士などの専門家に相談しながら、適切な対策を講じていきましょう。

よくある質問

Q1. 取引所のパスワードが分からない場合、相続できますか?

国内の主要取引所では、パスワードが分からなくても所定の相続手続き書類(死亡診断書・戸籍謄本・遺産分割協議書など)を提出することで相続手続きを進められます。取引所のサポートに問い合わせてください。ただし、プライベートウォレットの秘密鍵が分からない場合は、現状では資産にアクセスする手段がない点に注意が必要です。

Q2. 相続した仮想通貨の評価額が申告後に大きく下落した場合は?

相続税の評価額は相続開始日の時価で確定するため、申告後の価格下落を理由に評価額を変更することはできません。相続税は確定した評価額に基づいて納付する義務があります。価格変動リスクを踏まえ、相続税の支払いのための現金を確保しておくことが重要です。

Q3. DeFiのスマートコントラクトに預けている仮想通貨も相続財産ですか?

DeFiプロトコルに預けているトークン(流動性プール、ステーキングなど)も財産的価値があれば相続財産に含まれます。ただし、評価方法や換金手続きが複雑なケースが多いため、DeFi資産の相続に精通した専門家への相談が必要です。

※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Bitcoin Analyze 編集部

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