税金・確定申告

国税庁の暗号資産計算書(Excel)の使い方|総平均法用・移動平均法用の違いと限界

※本記事にはアフィリエイト広告(A8.net)を含みます。記載の内容は2026年8月時点の公開情報に基づく一般的な解説です。最新の条件は公式サイト・国税庁でご確認ください。

暗号資産(仮想通貨)の確定申告で避けて通れないのが、年間の損益計算です。「専用ツールを契約する前に、まずは無料でできる方法を知りたい」という方に向けて、国税庁が公式に配布している「暗号資産の計算書」(Excelファイル)の使い方を解説します。総平均法用・移動平均法用という2種類の違い、基本的な入力手順、そして実際に使ってみると見えてくる限界と、ツールとの使い分けの目安まで、順を追って説明していきます。

国税庁が配布する「暗号資産の計算書」とは

国税庁は、暗号資産取引による所得(原則として雑所得)を計算するための様式として、「暗号資産の計算書」というExcelファイルを無償で公開しています。配布されているのは次の2種類です。

  • 暗号資産の計算書(総平均法用)
  • 暗号資産の計算書(移動平均法用)

いずれも国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(国税庁)」のページからダウンロードできます。同じページには、暗号資産の税務上の取扱いをまとめたFAQ(PDF)も掲載されているので、あわせて目を通しておくと理解が深まります。

2種類ある理由は、暗号資産の譲渡原価(売った分の取得価額)の計算方法に「総平均法」と「移動平均法」の2つが認められているためです。ごく簡単に言うと、総平均法は「1年分の購入金額の合計÷購入数量の合計」で年間の平均単価を出す方法、移動平均法は「購入のたびに平均単価を計算し直す」方法です。個人の場合、税務署に評価方法の届出を提出していなければ総平均法で計算することになっているため、多くの方が使うのは総平均法用の計算書です。2つの方法の違いや届出については、総平均法と移動平均法の違いの解説記事で詳しく整理しています。

国税庁の配布ページでも、取引所が交付する「年間取引報告書」を利用して計算する場合には総平均法用を使うよう案内されています。年間取引報告書とは、国内の暗号資産交換業者が年明けに交付する、1年間の購入・売却の合計数量や合計金額をまとめた書類のことです。総平均法用の計算書は、この報告書の数値をそのまま転記できるように設計されています。

計算書(Excel)の基本的な使い方

ここからは、実際の入力の流れを見ていきます。先に全体像をつかんでいただくために、2種類の計算書の特徴を表で比較します。

項目 総平均法用 移動平均法用
入力する単位 年間の合計値(取引所ごと) 取引のつど(1件ずつ)
主な転記元 年間取引報告書 取引履歴(約定ごとの記録)
入力の手間 少ない 取引件数に比例して増える
単価の計算 年間で1つの平均単価 購入のたびに再計算
向いている人 届出をしていない個人(原則) 移動平均法を届け出ている人

総平均法用の入力手順

総平均法用の計算書は、おおまかに次の流れで入力します。シートは通貨(銘柄)ごとに作成するのが基本です。

  1. 暗号資産の名称を記入する:ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)など、計算対象の通貨名を入力します。
  2. 年間取引報告書の数値を転記する:国内取引所から交付された年間取引報告書を見ながら、取引所ごとに「購入数量・購入金額」「売却数量・売却金額」の年間合計を記入します。複数の取引所を使っている場合は、それぞれの報告書の数値を行を分けて入力します。
  3. 報告書に載らない取引を記入する:海外取引所での売買、個人間の売買、暗号資産での商品購入、ハードフォークで取得した通貨など、年間取引報告書の対象外となる取引は、別の欄に自分で集計した数値を記入します。
  4. 前年から繰り越した数量・取得価額を記入する:前年末に保有していた数量と、その取得価額(前年の計算書の繰越額)を入力します。
  5. 自動計算の結果を確認する:ここまで入力すると、年間の平均単価、売却原価、所得金額、翌年への繰越額がシート内で自動計算されます。

ポイントは、手順2までであれば「年間取引報告書を1枚ずつ書き写すだけ」で済むという点です。国内取引所だけで、現物の売買しかしていない方であれば、この計算書だけで所得計算が完結するケースも十分にあります。算出された所得金額は、確定申告書の雑所得欄に記載します。申告書の作成・提出の流れはe-Taxでの暗号資産の確定申告手順の記事で解説しています。

移動平均法用の入力手順

移動平均法用の計算書は、構造が大きく異なります。年間の合計値ではなく、購入・売却といった取引を1件ずつ日付順に入力していく形式です。1行入力するごとに保有数量と平均単価が更新され、売却行では、その時点の平均単価に基づいた売却原価と損益が計算されます。

入力する情報は「取引年月日」「購入数量・購入金額」「売却数量・売却金額」などで、転記元は取引所からダウンロードした取引履歴になります。取引のつど単価を追いかける方式のため、入力順を間違えると以降の単価がすべてずれてしまう点、そして取引件数が多いと入力量が膨大になる点には注意が要ります。シートの構造上、想定されている取引規模もそれほど大きくないため、頻繁に売買する方が移動平均法用の計算書だけで乗り切るのは現実的ではありません。

計算書Excelの3つの限界

国税庁の計算書は無料で使える公式様式として貴重な存在ですが、「計算書に入力する数値を用意するまでの作業」は利用者に委ねられています。実際に使ってみるとつまずきやすいポイントを3つに整理します。

限界1:通貨ごと・取引所ごとの集計は自分で行う

計算書は通貨ごとに1シートを作る前提です。ビットコイン、イーサリアム、リップルと3種類を保有していれば3シート分の入力が要りますし、取引所を3社使っていれば、それぞれの数値を通貨別に拾い出す作業が発生します。国内取引所の年間取引報告書は通貨ごとの合計が載っているのでまだ楽ですが、年間取引報告書を交付しない海外取引所の分は、取引履歴CSVから自分で通貨別・年間合計を集計しなければなりません。CSVの入手方法は取引所ごとに癖があるため、取引所別のCSVダウンロード手順まとめを参考にしてください。

限界2:DeFi・ステーキング報酬などの時価記録は別途必要

計算書はあくまで「購入と売却」を中心とした様式です。ステーキング報酬やレンディング利息、エアドロップのように取得時点の時価で所得計上する取引、DeFiでのスワップや流動性提供のように取引所の報告書に一切載らない取引は、取得日時・数量・その時点の時価を自分で記録・集計したうえで、計算書の該当欄に反映させる必要があります。時価の記録が漏れていると後から遡って調べるのは大変で、ブロックチェーン上の履歴と価格データを突き合わせる作業は手作業ではかなりの負担になります。

限界3:取引件数が多いと転記自体が破綻する

総平均法用であっても、報告書対象外の取引が数百件あれば、その集計はExcelでの手作業になります。移動平均法用に至っては1件ずつの入力ですから、年間数百〜数千件の取引がある方には現実的ではありません。入力ミスが1つあるだけで単価計算が狂い、どこで間違えたのかを探す時間のほうが長くなる、というのが典型的な破綻パターンです。取引件数が多い方は、取引履歴を取り込んで自動計算してくれる損益計算ツールを検討する段階と言えます。

▶ 取引履歴を取り込むだけで損益を自動計算できるツールを見てみる

Excelで足りるか、ツールが要るかの判断基準

では、どこまでが国税庁の計算書(Excel)で対応でき、どこからが専用ツールの領域なのでしょうか。判断の目安を表にまとめました。ご自身の取引状況と照らし合わせてみてください。

判断軸 計算書(Excel)で足りる目安 ツールを検討したい目安
年間取引件数 数十件程度まで 100件を超えるあたりから
利用取引所の数 国内1〜2社 3社以上、または海外取引所を利用
取引の種類 現物の売買のみ ステーキング・レンディング・DeFi・NFTを含む
年間取引報告書 全取引が報告書でカバーされる 報告書に載らない取引がある
過去年分の計算 繰越額がわかっている 過去分から計算をやり直したい

左の列にすべて当てはまる方、つまり「国内取引所で現物を年に数十回売買しただけ」という方であれば、年間取引報告書と計算書の組み合わせで十分に対応できます。費用もかからず、国税庁の公式様式なので安心感もあります。

一方で、右の列に1つでも当てはまる項目がある方は、手作業の集計にかかる時間と入力ミスのリスクを考えると、損益計算ツールの利用を検討する価値があります。多くのツールは取引所のAPI連携やCSV取り込みに対応しており、通貨ごと・取引所ごとの集計、ステーキング報酬の時価取得といった、まさに計算書の「限界」に挙げた作業を自動化してくれます。主要ツールの機能や料金の比較は暗号資産の損益計算ツール選びのガイド記事にまとめています。

▶ 複数取引所・DeFi対応の損益計算ツールの詳細はこちら

ツールで集計して計算書に転記する「併用」という考え方

「Excelかツールか」の二者択一で考える方が多いのですが、実際には両者の併用も有力な選択肢です。具体的には、次のような流れになります。

  1. 損益計算ツールに各取引所の取引履歴を取り込み、通貨ごとの年間の購入・売却の合計や損益を集計する
  2. ツールが出力した年間の集計値を、国税庁の計算書の該当欄に転記する(またはツールの計算結果をそのまま申告額の根拠資料として保管する)
  3. 計算書で算出された所得金額を確定申告書に記載する

ツール側の計算結果をそのまま使う場合でも、国税庁様式の計算書に落とし込んでおくと、計算過程が公式のフォーマットで整理されるため、後から見返すときや税務署から問い合わせを受けたときに説明しやすくなります。計算書は申告書への添付が義務付けられている書類ではありませんが、計算根拠の資料として手元に保管しておくことが推奨されています。

また、多くのツールには無料プランが用意されており、年間の取引件数が一定数以下であれば費用をかけずに集計だけツールに任せる、という使い方もできます。「集計はツール、最終的な様式は国税庁の計算書」という役割分担は、コストを抑えつつ精度を確保したい方にとって現実的な落としどころと言えるでしょう。

▶ 無料プランから使える損益計算ツールを確認する

よくある質問(FAQ)

Q1. 総平均法用と移動平均法用、どちらをダウンロードすればよいですか?

税務署に評価方法の届出を提出していない個人の方は、原則どおり総平均法で計算することになるため、総平均法用を使います。移動平均法用を使うのは、評価方法の届出書で移動平均法を選択している方です。一度選んだ評価方法は原則3年間継続する必要があるため、切り替えを検討している方は総平均法と移動平均法の比較記事で違いを確認したうえで判断してください。

Q2. 計算書は確定申告書と一緒に提出する必要がありますか?

いいえ、計算書自体の提出は求められていません。計算書はあくまで所得金額を計算するための補助資料で、申告書に記載するのは計算結果の所得金額です。ただし、計算根拠を示す資料として、取引履歴や年間取引報告書とあわせて手元に保管しておきましょう。申告内容について税務署から確認があった場合に、計算過程を説明する資料になります。

Q3. 海外取引所やDeFiの取引しかない場合でも計算書は使えますか?

使えますが、手間は大きくなります。年間取引報告書が交付されないため、転記元となる「通貨ごとの年間購入・売却の合計」をすべて自分で集計する必要があるからです。取引履歴のエクスポートと時価の記録を自力で行える件数であればExcelで完結できますが、件数が多い場合やDeFiの取引形態が複雑な場合は、対応ツールで集計してから計算書に反映する併用方式が現実的です。

Q4. 昨年の計算書がなく、前年からの繰越額がわかりません。どうすればよいですか?

保有中の通貨がある場合、その取得価額(繰越額)がわからないと今年の計算ができないため、過去の取引履歴を遡って取得価額を計算し直すことになります。取引所の取引履歴は過去分もダウンロードできることが多いので、まず履歴を確保してください。複数年分の再計算は手作業では負担が大きく、過去年分の一括計算に対応した損益計算ツールを使うほうが確実です。なお、申告内容の誤りに気づいた場合の対応や期限後申告については、税理士または所轄の税務署に相談することをおすすめします。

※本記事は情報提供を目的としており、投資や税務の判断を推奨するものではありません。個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

Bitcoin Analyze 編集部