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レンディングの利息には、少し落ち着かない逆説があります。金額が小さいほど、申告の手間はむしろ大きくなるということです。年に一度まとまった額を受け取るなら記録は1行で済みますが、毎月数百円が別々の銘柄で入ってくると、記録すべき行数は増え、しかも1行あたりの金額は小さいまま残ります。手間と金額が釣り合わない領域が生まれるわけです。
もうひとつの逆説は名前そのものにあります。「利息」と呼ばれてはいますが、税法上の利子所得として扱われるわけではないとされています。銀行預金の利息であれば源泉徴収で完結する場面が多いのに対し、暗号資産のレンディングで受け取る対価は雑所得に区分されると考えられ、自分で金額を計算して申告する必要が出てきます。名前が実務を誤解させる典型例といえます。
この記事では、受け取るたびにいくらの所得が生じているのかを確定させるための、受取時レートの調べ方と記帳の形を示します。特別なソフトを前提にせず、表計算ソフトの1シートで運用できる粒度に絞ってまとめます。
「利息」という名前でも利子所得ではないとされています
暗号資産を事業者に貸し出して対価を受け取るサービスは、貸暗号資産、レンディングなどと呼ばれています。受け取る対価は日本円ではなく暗号資産であることが多く、預金の利子とは性質が異なるため、原則として雑所得(総合課税)に区分されるとされています。事業として行っている場合を除き、給与所得などと合算したうえで税率が決まる形になります。
この区分の違いは、実務上ふたつの意味を持ちます。ひとつは、源泉徴収で完結しないため自分で計算して申告する必要があるということ。もうひとつは、受け取った暗号資産をあとで売却したときに、もう一段階の損益計算が生じるということです。受取時に所得として計上した金額が、その暗号資産の取得価額になると考えられるためで、この点を落とすと同じ金額を二回計上してしまう場合があります。所得区分の全体像は仮想通貨の税金ガイドで整理しています。
受取のたびに時価で記録する必要がある
レンディングの対価は、受け取った時点でその時の時価をもって収入金額に計上するとされています。年末にまとめて評価するのではなく、受取のつど円換算する点が重要です。価格が動く資産である以上、同じ0.001BTCでも4月に受け取った分と11月に受け取った分では円換算額が変わります。
数量だけの記録では足りない理由
事業者の明細には、受取数量だけが表示され、円換算額が載っていないことがあります。数量だけを保存していると、年末に集計しようとした段階で、各受取日の価格を後から調べ直す作業が発生します。過去の価格は取得できる場合が多いものの、どの取引所のどの時点の価格を使ったのかが曖昧になりやすく、根拠を説明しづらくなります。受け取ったその月のうちに円換算まで済ませておくほうが、結果的に作業量は減ります。
貸出中の資産そのものには課税されない
貸し出している元本部分については、所有権の扱いはサービスによって異なるものの、一般には貸出しただけで損益が確定するわけではないと考えられています。課税の対象になるのは、あくまで新たに受け取った対価の部分です。ただし、貸出先が返還不能となった場合の扱いは別の論点になるため、事業者の規約と、実際に返還を受けられたかどうかを確認しておく必要があります。
受取時レートの調べ方
実務でつまずきやすいのが、どの価格を使うかという点です。厳密に秒単位まで合わせる必要はないと考えられますが、基準を決めて一年を通して同じ方法で適用することが求められます。
まず事業者の明細を確認する
利用している事業者が円建ての評価額を明細に表示している場合は、それをそのまま使うのがもっとも説明しやすい方法です。コインチェックやbitFlyerのような国内事業者では、取引履歴や年間取引報告書の形で確認できる情報が用意されている場合があります。表示があるならそれ以外の価格を探す必要はありません。
円建て表示がない場合の決め方
明細に数量しかない場合は、自分で基準を決めます。実務でよく使われるのは、受取日における主要な国内取引所の終値、または受取時刻に近い時点の価格です。海外の事業者を使っていて対価が米ドル建てステーブルコインで支払われる場合は、その日の円相場を経由して換算する形になります。いずれの場合も、どの取引所のどの値を使ったのかを記帳の1列として残しておくことが重要です。
基準は年の途中で変えない
終値で計算していた月と、受取時刻の価格で計算していた月が混在すると、集計の正しさを説明できなくなります。有利不利で使い分けているとみられる余地も残ります。年初に決めた基準を通す、というだけで説明の負担は大きく下がります。
記帳フォーマットと年間集計の手順
記録する列は6つで足ります。次のような形で、受取のたびに1行ずつ追加していきます。
| 受取日 | 銘柄 | 数量 | 参照レート | 円換算額 | レートの出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年4月1日 | BTC | 0.00021 | 15,800,000円 | 3,318円 | 利用事業者の当日終値 |
| 2026年5月1日 | ETH | 0.0035 | 480,000円 | 1,680円 | 利用事業者の当日終値 |
| 2026年6月1日 | ステーブルコイン | 12.5 | 152円 | 1,900円 | 当日の対円レート |
年末になったら、この表をもとに次の順序で集計します。
- 円換算額の列を合計し、その年のレンディングによる収入金額を確定させます。
- 銘柄ごとに受取数量を合計し、同じ銘柄の保有分に数量として加算します。
- 同時に、円換算額を同じ銘柄の取得価額に加算します。ここが後の売却時に効いてきます。
- その年に売却や交換を行った分について、売却価額から取得価額を差し引いて損益を計算します。
- レンディングの収入金額と売買損益を合算し、必要経費を差し引いて雑所得の金額を求めます。
- 金額が確定したら、記帳シートと明細の控えを同じ場所に保管します。
行数が数百件規模になる場合は、手作業での突合が難しくなります。クリプタクトのような損益計算ツールに明細を読み込ませ、受取と売買を同じ台帳で処理する方法をとると、取得価額の加算漏れを防ぎやすくなります。
20万円基準の判定と、超えたときの実務
給与を1か所から受けている会社員であれば、給与以外の所得の合計が20万円以下のときは所得税の確定申告を要しないとされる取扱いがあります。ここでの20万円は、レンディングの受取額だけではなく、他の副収入や暗号資産の売買損益も含めた合計で判定される点に注意が必要です。また、所得税の申告が不要な場合でも、住民税については別に申告が必要とされる場合があります。
扶養に入っている場合は基準が異なります。基礎控除48万円があるため、給与がなくレンディングの所得だけであれば48万円を超えると所得税が生じる可能性があります。給与がある場合は給与所得控除55万円が別に働きますが、レンディングの所得はこの控除の対象にはなりません。19歳以上23歳未満の親族については特定扶養控除63万円(住民税では45万円)が設けられており、扶養する側の税額にも影響します。これらの金額は改正で変わることがあるため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。実際の申告手続きの流れは税金・確定申告カテゴリの記事もあわせて参照すると把握しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
毎月の受取が数百円でも記録は必要ですか
申告が不要となる場合であっても、記録そのものは残しておくほうが安全とされています。受取時の円換算額はその暗号資産の取得価額になると考えられ、将来売却したときの計算に必要になるためです。記録がないと取得価額を示せず、売却代金の全額が所得として計算されてしまう場合があります。
受取時のレートは終値と時刻ごとの価格のどちらがよいですか
どちらでなければならないと決まっているわけではないとされていますが、年間を通じて同じ基準を使うことが求められます。実務では、明細に円換算額があればそれを使い、なければ当日終値で統一する方法が扱いやすい傾向にあります。
海外の事業者から受け取った場合も申告の対象ですか
日本の居住者は、原則として国内外を問わず生じた所得が申告の対象になるとされています。海外の事業者では年間取引報告書が交付されないことが多いため、明細の保存と円換算を自分で行う必要性が高くなります。
貸し出した元本が返ってこなくなった場合はどうなりますか
返還されない状態が続いているだけの段階では、損失として計上するのは難しいとされています。手続きの中で回収できない金額が確定した時点をとらえて処理を検討することになると考えられます。金額が大きい場合は、自己判断で年をまたがせず、事実関係を示したうえで税理士や税務署に相談するほうが無難です。
まとめ
レンディングの利息は、名前から受ける印象と異なり、自分で計算して申告する必要がある所得とされています。やることは複雑ではなく、受取のたびに6列を1行埋めるだけです。難しくしているのは金額の小ささではなく、後回しにすることで生じる価格の調べ直しの手間のほうです。受け取った月のうちに円換算まで終える運用にしておけば、年末の作業は合計を出すだけで済みます。これから口座やサービスを選ぶ段階であれば仮想通貨の始め方ガイドも参考になります。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。
判断に迷う論点は、先に確認したほうが早い
この記事で扱ったのは、公開されている情報から言える一般的な扱いです。実際の申告では、自分の取引履歴に当てはめたときに判断が要る場面が出てきます。区分の判定、過年度の修正、複数の論点が重なる場合などです。
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