税金・確定申告

海外取引所の取引履歴が取得できない・消えた時の損益計算のやり方と対処法

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国内の暗号資産交換業者では、1年分の取引をまとめた年間取引報告書が交付される運用が一般的です。一方、海外取引所には日本の制度に沿った書類を交付する義務がなく、取引履歴のダウンロード可能な期間も直近3か月から1年程度に制限されている例が少なくありません。数年前の取引を今から取り出そうとして、画面上に何も出てこないという事態はごく普通に起こります。

さらに海外取引所は、日本居住者向けサービスの停止、アカウントの凍結、事業そのものの撤退といった事情で、ある日を境に履歴へアクセスできなくなることがあります。ログインできていた口座が翌月には開けないという状況は、暗号資産の世界では珍しくありません。

ただし、履歴が取り出せないことと損益計算ができないことは同じではありません。取引の痕跡は取引所の管理画面以外にも複数の場所に残っています。この記事では、復元手段を確度の高い順に整理し、それでも埋まらない部分をどう扱うか、そして同じことを繰り返さないための保存ルールまで解説します。

海外取引所の履歴が失われる典型的なパターン

もっとも多いのが、ダウンロード期間の制限です。取引所の管理画面から出力できる履歴が直近の一定期間に限られており、それ以前の取引は画面上に表示されないというケースです。取引所によっては申請すれば全期間分を出力できることもありますが、期間を分割して何度も出力する必要がある場合もあります。

次に多いのが、アカウントへアクセスできなくなるパターンです。本人確認の再提出を求められて対応できなかった、二段階認証の端末を紛失した、居住国の制限で口座が凍結された、といった事情でログイン自体が不能になります。

最後が、取引所の撤退やサービス終了です。この場合はサイトそのものが閉じてしまい、事後的な問い合わせも困難になります。いずれのケースでも共通しているのは、失われるのは取引所の管理画面であって、取引そのものの痕跡ではないという点です。

復元手段は確度の高い順に試す

復元手段はいくつもありますが、得られる情報の精度と手間は大きく異なります。上から順に試し、埋まらなかった部分を次の手段で補うという進め方が効率的です。

手段 得られる情報 確度 限界
取引所のAPIで取得 約定日時、数量、価格、手数料 高い ログインとキー発行が必要。取得期間に上限がある場合が多い
管理画面からのCSV出力 約定日時、数量、価格、手数料 高い 出力可能な期間が制限されている
サポートへの開示依頼 全期間の取引記録 高い 回答までに時間がかかる。撤退済みだと不能
取引通知メールの検索 約定や出金の日時と金額 中程度 通知設定を切っていた期間は残らない
ブロックチェーン上の記録 入出庫の日時、数量、アドレス 中程度 取引所内部の売買は記録されない
銀行やカードの明細 法定通貨の入出金額と日付 中程度 銘柄と数量まではわからない

重要なのは、ブロックチェーン上の記録は取引所への入出庫しか映さないという点です。取引所の内部で行った売買や交換はチェーン上に現れないため、チェーンの記録だけで損益計算を完結させることはできません。

実際の復元手順

手を動かす順序は次のとおりです。途中で完全に埋まった時点で打ち切って構いません。

  1. まだログインできる海外取引所については、期間を区切ってすべての履歴をCSVで出力し、ローカルに保存します。
  2. 管理画面で出力期間が足りない場合は、読み取り専用のAPIキーを発行し、対応している損益計算ツールで全期間の同期を試みます。
  3. それでも欠ける期間があれば、サポート窓口へ全期間の取引記録の開示を依頼します。依頼時は口座番号や登録メールアドレスを添えます。
  4. ログインできない取引所については、当時のメールアドレスの受信箱とアーカイブを、取引所名や約定を意味する語で検索します。
  5. 自分のウォレットアドレスをブロックチェーンエクスプローラーで確認し、取引所への送付日時と数量、取引所からの受領日時と数量を書き出します。
  6. 集めた記録を1つの表にまとめ、日時順に並べ、銘柄ごとに数量の増減がつながるかを検算します。つながらない箇所が復元できていない取引です。
  7. 残った欠落について、日時が特定できるものは当時の市場価格から金額を見積もり、根拠を記録に残します。

APIとCSVを使うときのポイント

APIキーを発行する際は、必ず読み取り専用の権限に限定し、出金権限は付与しないでください。IPアドレス制限が設定できる取引所であれば、あわせて設定しておくと安全です。クリプタクトのような損益計算ツールは主要な海外取引所のCSV形式に対応していることが多く、形式が合わない場合でもカスタムファイルとして日時、銘柄、数量、価格を指定して取り込める仕組みが用意されている場合があります。

メールとチェーン上の記録から埋める

取引通知メールは、約定価格までは書かれていなくても、日時と数量が残っていれば当時の価格から金額を推定する手がかりになります。出金完了メールにはトランザクションIDが記載されていることがあり、そこからチェーン上の記録へたどれる場合もあります。チェーン上の記録は改ざんされないという性質があるため、日時と数量の根拠としては強い部類に入ります。

どうしても埋まらない部分の扱い

すべてを復元できないケースは現実に存在します。その場合でも、無理にゼロで埋める必要はありません。日時と数量が特定できていれば、その時点の市場価格を用いて取得価額を合理的に見積もる方法が考えられます。参照した価格の出所と日時をあわせて記録しておけば、算定の根拠として説明できます。

日時すら特定できず、取得価額がまったくわからない銘柄については、売却価額の5%相当額を取得価額とみなす取扱いが使える場合があるとされています。ただしこの方法では売却価額の95%が所得として計上されるため、税負担は大きく増えます。あくまで最後の手段と位置づけ、その前に復元を尽くすことが実質的な節税につながります。

なお、暗号資産の所得は原則として雑所得に区分され、総合課税の累進税率が適用されます。復元できたかどうかで所得金額が大きく変わり、適用される税率区分まで動く場合があります。判断に迷う部分がある場合は、税理士や所轄の税務署に相談してください。取扱いは改正で変わる可能性があるため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。制度の全体像は仮想通貨の税金ガイドでも整理しています。

同じことを繰り返さないための保存ルール

復元作業を一度経験すれば、予防のほうが圧倒的に楽だと実感するはずです。最低限やっておきたいのは3つです。

1つ目は、四半期ごとに全取引所の履歴をCSVで出力し、日付を付けたフォルダに保存することです。取引所側の保存期間に依存しない自分の控えを持っておけば、撤退や凍結に巻き込まれても計算は続けられます。2つ目は、損益計算ツールと連携させ、常に最新の履歴が同期されている状態にしておくことです。3つ目は、取引所の通知メールを有効にし、専用のフォルダへ自動で振り分ける設定にしておくことです。

あわせて、取引所の使い分けも見直す価値があります。国内の交換業者は年間取引報告書が交付される運用が一般的で、履歴管理の負担が軽くなります。コインチェックbitFlyerのような国内口座を主軸に置き、海外取引所は用途を限定して使うという構成にすれば、年に一度の集計は大きく楽になります。口座開設の考え方は仮想通貨の始め方ガイドも参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

取引所が閉鎖してしまった場合、履歴はもう取れませんか

管理画面からの取得は困難になりますが、事業を承継した会社や運営元の法人が記録を保有している場合があります。公式に案内されている連絡先が残っていれば、開示を依頼してみる価値はあります。並行して、メールの受信箱とブロックチェーン上の入出庫記録から復元を進めるのが現実的な対応です。

ブロックチェーンの記録だけで損益計算はできますか

取引所への送付と受領の日時や数量は確認できますが、取引所の内部で行った売買や交換はチェーン上に記録されません。したがってチェーンの記録だけでは、いつ何をいくらで買ったのかまでは特定できないことが多いです。あくまで他の手段を補うための材料として位置づけるのが適切です。

履歴が不完全なまま申告して問題ありませんか

履歴が完全でないこと自体より、どのような根拠でその金額を算定したのかを説明できるかどうかが重要とされています。調査した範囲、参照した価格の出所、見積もりの計算過程を書面で残しておいてください。あとから正確な履歴が判明した場合は、修正申告や更正の請求で訂正できる場合があります。

会社員です。海外取引所の利益が20万円以下なら申告は不要ですか

給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる方は、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要とされる場合があります。ただしこれは国内外を合わせた金額で判定するもので、海外取引所の分だけを切り出して考えるものではありません。また住民税については20万円以下でも申告が必要とされています。基礎控除48万円や給与所得控除55万円といった金額は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。

まとめ

海外取引所の履歴が取れないという状況は、ダウンロード期間の制限、アカウントの凍結、取引所の撤退という3つの原因に整理できます。いずれの場合も、失われるのは管理画面であって取引の痕跡そのものではありません。API、CSV、サポートへの開示依頼、通知メール、ブロックチェーン上の記録という順に当たっていけば、多くの部分は復元できる可能性があります。

それでも埋まらない部分は、日時が特定できれば当時の価格から合理的に見積もり、根拠を記録に残しておくことが基本です。そして何より、四半期ごとの履歴保存という習慣が来年の自分を助けます。関連する手続きや制度の解説は税金・確定申告カテゴリもあわせて確認してください。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。

判断に迷う論点は、先に確認したほうが早い

この記事で扱ったのは、公開されている情報から言える一般的な扱いです。実際の申告では、自分の取引履歴に当てはめたときに判断が要る場面が出てきます。区分の判定、過年度の修正、複数の論点が重なる場合などです。

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この記事について

執筆・編集:Bitcoin Analyze 編集部

金融庁・国税庁および各事業者の公式資料にあたり、基準日と定義を固定したうえで記事を作成しています。価格予測や利益保証は扱いません。事業者の条件は変更されるため、最終的な判断は公式情報をご確認ください。

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Bitcoin Analyze 編集部

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