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辞令が出て、来月から三年間の海外赴任が決まった。引っ越しの手配と業務の引き継ぎを並行して進めているさなかに、ふと手が止まる方がいます。国内の取引所に預けたままのビットコイン、含み益を抱えたアルトコイン、赴任先でも続けるつもりのステーキング。これらの利益は、赴任した後どの国で課税されるのでしょうか。
会社が用意する税務サポートは、多くの場合で給与や住宅手当といった赴任に直接関係する所得を対象としています。個人が自分の判断で行っている暗号資産の取引まで面倒を見てくれるケースは多くありません。結果として、赴任者本人が「日本で申告するのか、赴任先で申告するのか、それとも両方なのか」を自分で整理しなければならない場面が生まれます。
この判断の出発点になるのが、所得税法上の居住者区分です。日本の課税がどこまで及ぶかは、その人が居住者なのか非居住者なのかによって大きく変わるとされています。ここでは赴任期間の一年基準による判定の考え方、区分ごとの課税範囲、そして赴任前後に確認しておきたい手続きの順序を順に整理します。
居住者か非居住者かは「一年」を軸に判定されます
所得税法では、国内に住所を有する個人、または現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人を「居住者」と定めています。そして居住者以外の個人が「非居住者」に区分されます。国籍ではなく、生活の本拠がどこにあるかという事実で判断される点が特徴とされています。
赴任期間が一年以上か一年未満かで推定が分かれます
所得税法施行令には、国外において継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有する人は、国外に住所を有するものと推定するという規定が置かれています。海外赴任の辞令で赴任期間が一年以上と定められている場合、出国した日の翌日から非居住者として扱われるのが一般的とされています。
逆に、赴任期間が当初から一年未満と決まっている場合は、出国後も日本の居住者のままと扱われる場合があります。期間が明示されていないときは、契約や辞令の内容、家族の帯同状況、国内の住居の状況などから総合的に判断されることになります。
家族や住居の状況も判断材料になります
単身赴任で家族が日本に残り、持ち家をそのまま維持し、赴任先の滞在が短期の往復にとどまるような場合、生活の本拠が日本にあると評価される可能性があります。一方、家族全員で移り住み、国内の住居を賃貸に出し、住民票の転出届も提出している場合は、非居住者としての事実関係が整いやすいとされています。書面上の手続きだけで決まるものではないという点は押さえておきたいところです。
居住者区分ごとに日本の課税が及ぶ範囲は変わります
区分が決まると、日本で申告すべき所得の範囲が定まります。三つの区分の違いを整理すると次のようになります。
| 区分 | 該当する人 | 日本で課税される所得の範囲 |
|---|---|---|
| 居住者(永住者) | 国内に住所があるか一年以上居所がある人のうち、非永住者に該当しない人 | 国内外で生じたすべての所得 |
| 非永住者 | 居住者のうち日本国籍がなく、過去十年以内に国内に住所または居所があった期間の合計が五年以下の人 | 国内源泉所得の全部と、国外源泉所得のうち国内で支払われたものまたは国内に送金されたもの |
| 非居住者 | 居住者に該当しない個人 | 国内源泉所得のみ |
注意したいのは、日本国籍を持つ赴任者には非永住者の区分が適用されないという点です。非永住者は日本国籍を有しないことが要件のひとつとされているため、日本人の赴任者は「非居住者」か「居住者(永住者)」のどちらかに振り分けられるのが通常です。中間の緩やかな取り扱いは想定されていない、と考えておくと判断を誤りにくくなります。
赴任中の暗号資産の利益はどこで課税されるのか
非居住者になった後に生じた利益
非居住者が日本で課税されるのは国内源泉所得に限られます。暗号資産の売却益や他の通貨への交換益は、所得税法が列挙する国内源泉所得のいずれにも当てはまらないと整理されることが多く、非居住者期間中に生じた利益は日本の課税対象にならない場合があるとされています。ただし、国内不動産の譲渡益や国内の事業に帰属する所得が混じっていれば、その部分の扱いは別に検討する必要があります。
一方で、その利益が赴任先の国のルールで課税される可能性は残ります。赴任先が全世界所得課税を採用している国であれば、日本の取引所で得た利益であっても現地で申告が必要になる場合があります。日本で課税されない代わりに現地で課税されるという構図になりやすい点は、赴任前に確認しておきたいところです。
出国前に確定させた利益
出国日までに売却や交換を済ませた分は、居住者期間の所得として日本の課税対象になります。年の途中で出国する場合は、その年の一月一日から出国日までの所得について、出国のときまでに準確定申告を行うか、納税管理人を定めて通常どおり翌年の申告期限までに申告するかを選ぶ形になります。納税管理人を届け出ておけば、赴任先から慌てて手続きをする必要は減るとされています。
給与以外の所得が二十万円以下の場合
給与を一か所から受けていて年末調整が済んでいる会社員は、給与以外の所得の合計が二十万円以下であれば、所得税の確定申告を省略できる場合があります。給与所得控除は最低五十五万円、基礎控除は四十八万円が基本とされていますが、これらの控除額は税制改正で見直される可能性があるため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。なお二十万円の基準は所得税の取り扱いであり、住民税には同じ基準がありません。二十万円以下でも住民税の申告が必要になる場合があります。
出国税と住民税で見落としやすい論点
国外転出時課税の対象資産
一億円以上の対象資産を持つ人が国外に転出する際、含み益に課税される国外転出時課税という制度があります。対象資産は有価証券、匿名組合契約の出資持分、未決済信用取引、未決済デリバティブ取引とされており、暗号資産は現時点で対象資産に含まれていないと説明されています。ただし制度は改正の可能性があるため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。
住民税は一月一日時点の住所で決まります
住民税は、その年の一月一日時点で国内に住所がある人に課税されるのが原則です。年内に出国して翌年の一月一日に国内に住所がなければ、翌年度の住民税は課税されない扱いになります。逆に、十二月末に予定していた出国が年明けにずれ込むと、一年分の住民税の負担が変わる場合があります。出国日が年末年始にかかる場合は、日付そのものが金額に影響する点に注意が必要です。
赴任前後に確認しておきたい手順
判断の材料をそろえる順番を決めておくと、出国直前の混乱を避けやすくなります。
- 辞令や赴任契約書で赴任期間を確認し、一年以上か一年未満かを把握する
- 出国日までの取引履歴を各取引所からダウンロードし、損益を暫定計算する
- 出国までに準確定申告を行うか、納税管理人を届け出るかを決める
- 国内取引所の口座について、非居住者になった場合の取り扱いを各社に確認する
- 赴任先の国の暗号資産課税ルールと申告時期を、現地の専門家に確認する
- 帰国予定時期を踏まえ、売却のタイミングをあらかじめ検討しておく
国内の取引所は、利用者が非居住者になった場合の口座の扱いを各社の規約で定めています。コインチェックやbitFlyerのように国内で開設した口座は、住所変更や本人確認情報の更新が必要になる場合があるため、出国前に問い合わせておくと手戻りが減ります。
取引履歴の集計は、赴任先に移ってからだと資料の取り寄せに時間がかかりがちです。クリプタクトのような損益計算ツールに出国前の履歴を取り込んでおくと、後から遡って再構築する手間を避けやすくなります。計算の基本的な考え方は仮想通貨の税金ガイドで整理しているほか、関連する論点は税金・確定申告カテゴリにまとめています。
よくある質問(FAQ)
赴任期間が二年の予定でしたが一年未満で帰国した場合はどうなりますか
当初の予定で一年以上とされていた場合は、出国時点では非居住者として扱われるのが一般的とされています。予定が変わって早期に帰国したときは、帰国以降について居住者として全世界の所得が課税対象になります。過去の期間の取り扱いは事実関係によって判断が分かれる場合があるため、税務署や税理士に確認したうえで申告するのが安全です。
海外の取引所で得た利益も日本で申告が必要ですか
居住者であれば、取引所が国内か海外かにかかわらず全世界の所得が課税対象になるとされています。非居住者であれば、国内源泉所得に該当しない限り日本での課税対象にならない場合があります。取引所の所在地ではなく、本人の居住者区分が判断の軸になる点を押さえておくと整理しやすくなります。
単身赴任で家族が日本に残っている場合でも非居住者になれますか
家族の帯同の有無だけで決まるわけではありませんが、生活の本拠がどちらにあるかを判断する材料のひとつになります。赴任期間が一年以上と定められ、職業上の必要から現地に居住しているのであれば非居住者と扱われる余地はあるものの、国内の住居や資産の状況と合わせて総合的に判断されることになります。
赴任中に日本の家族へ送金した場合、課税の範囲は変わりますか
非居住者であれば、送金の有無で日本の課税範囲が変わることは基本的にありません。国内への送金が課税範囲に影響するのは、日本国籍を持たない非永住者に該当する場合の取り扱いです。ただし一定額を超える海外送金は金融機関から国外送金等調書が提出される対象になる場合があるため、資金の出所を説明できる資料は残しておくと安心です。
まとめ
海外赴任中の暗号資産の課税は、赴任期間が一年以上かどうかによる居住者判定を起点に、区分ごとの課税範囲へと落とし込む形で整理できます。非居住者期間中の売却益は日本で課税されない場合がある一方、赴任先で課税される可能性が残るため、両国の扱いを並べて確認することが欠かせません。
また、出国日を境に申告方法が変わること、住民税は一月一日時点の住所で決まることなど、日付そのものが結果を左右する論点も複数あります。取引履歴の保存と納税管理人の届出という二点を出国前に済ませておくだけでも、赴任後の負担は大きく変わります。個別の判断に迷う場合は、赴任先の制度に詳しい税理士へ早めに相談することをおすすめします。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。
判断に迷う論点は、先に確認したほうが早い
この記事で扱ったのは、公開されている情報から言える一般的な扱いです。実際の申告では、自分の取引履歴に当てはめたときに判断が要る場面が出てきます。区分の判定、過年度の修正、複数の論点が重なる場合などです。
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自分のケースに当てはめたときに、判断がつかない論点がある場合だけ:
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