本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含む場合があります。
遺品を整理していると、見慣れない小さな機器が引き出しから出てきたり、取引所からの通知メールが受信箱に残っていたりすることがあります。通帳や証券会社の取引報告書と違って紙の資料が残らないことが多く、家族が存在に気づかないまま時間が過ぎるケースもあります。
一方で、相続の手続きには期限があります。相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内とされており、暗号資産の残高を確定させる作業もその期間内に収める必要があります。取引所ごとに必要書類が異なるため、着手が遅れると期限が近づいてから慌てることになります。
この記事では、相続財産としての位置づけ、評価の時点と方法、取引所への照会の進め方、そして秘密鍵が分からない場合に何が論点になるのかを分けて整理します。制度や金額の基準は改正されることがあるため、実際の判断にあたっては国税庁の公表情報で最新の内容を確認してください。
暗号資産は売却・交換・決済のたびに損益が発生します。取引履歴を取り込めば、総平均法・移動平均法での年間損益を自動で算出できます。年間50件までは無料で結果を確認できます。
無料登録して年間損益を確認する →PR・クリプタクト(株式会社pafin)。料金や対応範囲は変更されることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。暗号資産は相続財産に含まれる
相続税の対象になるのは、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産です。暗号資産も、その時点で換金や交換ができる価値を持つ以上、相続財産に含まれるものとして取り扱われています。預金や不動産と同じく、遺産分割の対象にも相続税の課税価格の計算にも入ります。
相続税には基礎控除があり、3000万円に法定相続人1人あたり600万円を加えた金額までは課税されません。相続人が3人であれば4800万円です。暗号資産だけで判断するのではなく、預貯金や不動産を含めた財産全体の合計と比較して申告の要否を判定します。
注意しておきたいのは、預金のような一括の名義変更手続きが存在しない点です。国内の取引所に預けている分は取引所ごとの相続手続きが必要で、自分で秘密鍵を管理していた分は取引所が関与しないため、相続人が鍵の情報にたどり着けるかどうかが手続きの前提になります。
評価の時点と方法
評価は相続開始の日の価格が基準
相続財産の評価は、原則として課税時期、つまり被相続人が亡くなった日を基準に行います。上場株式には、相続開始の月とその前2か月の月平均額のうち最も低い価額を選べる取り扱いがありますが、暗号資産に同じ特例は設けられていないとされています。値動きが大きい資産でありながら、評価は原則として一時点の価格で決まるという点は押さえておく必要があります。
活発な市場があるかどうかで分かれる
評価方法は、活発な市場が存在する暗号資産かどうかで整理されています。市場が存在するものは取引所が公表する課税時期の取引価格によることとされ、そうでないものは、客観的な交換価値を示す方法によって個別に評価することになります。次の表に、区分ごとの考え方と実務で使う資料をまとめました。
| 区分 | 評価の考え方 | 実務で使う資料 |
|---|---|---|
| 活発な市場が存在する暗号資産 | 相続人が取引を行っている取引所が公表する課税時期の取引価格による | 取引所が発行する残高証明書や課税時期の価格資料 |
| 活発な市場が存在しない暗号資産 | 売買実例価額など客観的な交換価値を示す方法で個別に評価する | 取引実績の記録や取得時の資料 |
| 自己管理ウォレットにある分 | 銘柄と数量を特定したうえで上の区分に従って評価する | ブロックチェーン上の残高記録とアドレスの一覧 |
| 貸付や預入の途中にある分 | 返還を受ける権利として、内容に応じて評価の要否と方法を検討する | サービスの利用規約と残高画面の記録 |
どの取引所の価格を使うかを決めておく
暗号資産は取引所ごとに価格が異なり、しかも24時間取引が続きます。そのため、どの取引所の、どの時点の価格を採用したのかを記録に残し、複数の銘柄がある場合も同じ基準で通すことが重要です。基準を途中で変えると、後から説明できない評価額になってしまいます。価格の根拠は、画面の保存ではなく、取引所が発行する書面や履歴データの形で残しておくと確実です。
取引所への照会と残高の確定
国内の取引所は、名義人が亡くなったことを伝えると口座を凍結し、相続手続きの案内を出す運用が一般的です。必要書類は取引所によって異なりますが、戸籍関係の書類、相続人の本人確認書類、遺産分割協議書や遺言書といった構成は共通しています。コインチェックをはじめ、国内の主要な取引所は相続手続きの窓口と必要書類の案内を用意しているため、まず各社の案内を確認するのが早道です。
精算の方法も取引所によって分かれます。保有していた暗号資産をそのまま相続人の口座へ移す取り扱いと、日本円に換金したうえで振り込む取り扱いがあります。後者の場合、換金の時点と相続開始日の価格が違えば、相続税の評価額と実際に受け取る金額はずれます。どちらの方法になるかは早い段階で確認しておくと、納税資金の見通しが立てやすくなります。
手続き全体は、次の順で進めると滞りにくくなります。
- 被相続人の受信メール、スマートフォンのアプリ、書面、過去の確定申告書の控えから、利用していた取引所とサービスを洗い出す
- 各取引所に連絡して口座の有無を確認し、相続手続きの必要書類の案内を受け取る
- 戸籍関係書類や本人確認書類をそろえ、相続開始日時点の残高証明書を請求する
- 自己管理ウォレットの有無を確認し、ある場合は銘柄と数量を特定する
- 相続開始日の価格を採用基準を決めたうえで取得し、評価額を確定する
- 他の財産と合算して遺産分割協議を行い、相続税の申告と納付、必要に応じて準確定申告を期限内に済ませる
二つの申告と期限
準確定申告は4か月以内
被相続人が亡くなった年に暗号資産の売却益などがあった場合、その年の所得については相続人が準確定申告を行います。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。相続税の10か月より先に来るため、亡くなった年の取引履歴は早い段階で確認しておく必要があります。
相続後に売却したときの所得
相続で取得した暗号資産を相続人が売却した場合、その利益は2026年8月時点で原則として雑所得に区分され、総合課税の対象とされています。申告分離課税には移行しておらず、他の所得との損益通算や損失の繰越控除も認められていません。このとき差し引く取得価額は、相続人が取得した時点の価格ではなく、被相続人が取得したときの価額を引き継ぐという整理が示されています。
ここで論点になるのが、相続税額の取得費加算の特例です。この特例は譲渡所得を対象とした制度であるため、雑所得として扱われる暗号資産の売却には適用されないと解されています。結果として、相続税を負担したうえで、被相続人の取得価額からの値上がり分に所得税と住民税がかかる形になります。金額が大きい場合は、売却の時期と納税資金の手当てを先に設計しておくほうが安全です。所得区分の基本的な考え方は仮想通貨の税金ガイドで整理しています。
秘密鍵が分からない場合の論点
自己管理のウォレットに残っていることは分かっているのに、秘密鍵や復元用の言葉が見つからない、という状況は現実に起こります。この場合、相続人が動かせないのだから相続財産ではないと考えたくなりますが、国会での答弁では、相続人が秘密鍵を把握していないことをもって相続税の課税対象にならないとは言えない旨の説明がなされており、当然に対象外になるとは整理されていません。
論点は三つに分けて考えると見通しがよくなります。第一に、その暗号資産が被相続人に帰属していたと言えるかという事実の把握。第二に、帰属が認められる場合に、いくらと評価するのかという評価の問題。第三に、現実に換価できない財産にかかる税をどう納めるのかという納税資金の問題です。この三つは別の話であり、まとめて論じると議論が進みません。
実務では、まず調査可能な範囲を尽くすことになります。被相続人の端末に残るアプリ、紙に書き残されたメモ、金庫や貸金庫の中身、取引所からの出金履歴が示す送金先などを確認し、どこまで分かってどこから分からないのかを記録に残します。そのうえで、判断が分かれる部分については税理士に相談する形が現実的です。
生前にできる備えは単純です。どの取引所とどのウォレットを使っているかの一覧を作り、保管場所を家族が知っている状態にしておくこと。この一覧があるかどうかで、相続人の負担は大きく変わります。これから保有を始める方は、口座を開くのと同じタイミングで一覧を作っておくとよく、始め方の手順は仮想通貨の始め方ガイドにまとめています。
よくある質問(FAQ)
海外の取引所にある暗号資産も相続税の対象になりますか
被相続人と相続人の住所や国籍の状況によって課税される財産の範囲は変わりますが、被相続人が日本に住所を有していた一般的なケースでは、国外にある財産も含めて課税対象とされます。海外の取引所は日本語での相続手続きに対応していないことがあり、残高の確認と証明書の取得に時間がかかります。所在が分かっている場合は、早い段階で問い合わせを始めてください。
相続税を納めるために売却したら、さらに所得税がかかりますか
売却によって利益が生じれば、その利益は原則として雑所得として所得税と住民税の対象になります。取得価額は被相続人のものを引き継ぐため、被相続人が長く保有していた場合ほど利益が大きく計算される傾向があります。相続税の課税とは別の税目であり、取得費加算の特例も適用されないと解されているため、売却する数量と時期は納税額を試算してから決めるのが安全です。
相続開始後に価格が大きく下がった場合、評価額を下げられますか
相続税の評価は課税時期の価格が基準とされているため、その後の値下がりを理由に評価額を引き下げる一般的な取り扱いは設けられていません。値動きの大きい資産では、評価額が実際に受け取れる金額を上回る事態が起こり得ます。納税資金の確保を含めて、遺産分割の内容を検討する段階で試算しておくことが実務的です。
税理士に相談する前に何を整理しておけばよいですか
利用していた取引所とサービスの一覧、相続開始日時点の銘柄と数量、被相続人の取得時期と取得価額が分かる資料、鍵が不明で動かせない分の内容、この四つを整理してください。そのうえで、市場が限られる銘柄の評価方法、貸付中の資産の扱い、鍵が不明な分の取り扱いという判断が分かれる論点を具体的に示すと、相談が短時間で進みます。
まとめ:先に洗い出し、基準を決めて記録する
暗号資産の相続でつまずくのは、税額の計算そのものよりも、どこに何があるのかを確定させる前段の作業です。取引所への照会には日数がかかり、期限は10か月で固定されています。まず一覧を作り、残高証明を集め、評価の基準を決めて記録に残すという順番を守れば、大半の作業は事務手続きに収まります。
判断が分かれるのは、市場が限られる銘柄の評価と、鍵が不明な資産の扱いです。この二つは事実関係によって結論が変わるため、資料をそろえたうえで専門家の判断を仰ぐ領域になります。関連する制度の解説は税金・確定申告カテゴリにまとめています。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。
判断に迷う部分は、税理士への相談も選択肢になります。スキルマーケット「ココナラ」で確定申告の相談相手を探す(PR)。最終的な申告内容の判断はご自身の責任となるため、所轄の税務署への確認と併せてご検討ください。
申告までの3工程PR
損益計算ツールが出せるのは所得金額までで、確定申告書そのものは作成できません。工程が分かれている点を先に押さえておくと、年明けに手が止まりにくくなります。
- 1取引履歴を集める各取引所から年間の履歴をダウンロードする
- 2年間の損益を計算する複数取引所の履歴をまとめて所得金額を出す
クリプタクト - 3確定申告書を作成して提出する出した金額を雑所得として申告書に入力する
マネーフォワード クラウド確定申告/やよいの青色申告 オンライン