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国外財産調書は、その年の12月31日時点で保有する国外財産の合計額が5,000万円を超える居住者に提出を求める制度とされています。令和5年分以降、提出期限は確定申告期限とは切り離され、翌年の6月30日に変更されています。
この5,000万円という数字を見ると、海外取引所や自己管理ウォレットに暗号資産を置いている人ほど「自分にも提出義務があるのでは」と身構えることになります。相場が伸びた年には、保有残高がこの基準を軽く超えているケースも珍しくありません。
先に結論を示すと、暗号資産そのものは国外財産調書の記載対象にはならないと整理されているのが現在の一般的な取扱いです。ただし「対象外だから何もしなくてよい」とは限りません。財産債務調書という別の制度では記載対象になり得るためです。判定のルールと未提出時のペナルティまで順に見ていきます。
国外財産調書は「5,000万円超」で提出義務が生じる制度
国外財産調書の提出義務者は、非永住者以外の居住者で、その年の12月31日において価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する人とされています。所得の大きさは要件に入っていないため、給与収入だけの会社員であっても、国外財産が基準を超えれば対象になる場合があります。
判定に使う5,000万円は、あくまで国外財産だけを合計した額です。国内の預貯金や不動産は含めないため、国内資産がどれだけ大きくても、国外財産が5,000万円以下であれば提出義務は生じないとされています。
また、判定は12月31日という一時点で行います。年の途中で基準を大きく超えていても、年末時点で下回っていれば提出義務が生じない場合があり、逆に年末だけ評価額が跳ね上がった年は対象になることもあります。相場の変動が大きい資産を持つ人ほど、年末残高の記録を残しておく意味は大きいといえます。
仮想通貨が国外財産に当たるかは「所在地の判定」で決まる
判定の物差しは財産の種類ごとの所在地ルール
ある財産が国外財産に当たるかどうかは、財産の種類ごとに定められた所在地の判定ルールで決まります。このルールは相続税法の規定に準じて判定するとされており、預金であれば預入先の営業所の所在地、株式であれば発行法人の本店所在地というように、財産ごとに物差しが異なります。
ここで問題になるのが、どの分類にも明示されていない財産の扱いです。個別の定めがない財産は「その財産を有する者の住所地」で所在を判定するとされており、暗号資産はこの区分に入ると整理されています。
結果として、日本に住所がある人が保有する暗号資産は、預けている場所が海外の取引所であっても国内財産として扱われ、国外財産調書には記載しないという結論になります。取扱いは通達や税制改正で変わり得るため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。
海外取引所に置いた法定通貨は別扱いになる場合がある
見落としやすいのは、海外取引所の口座にあるものが暗号資産だけとは限らない点です。売却したあとにドル建てなどの法定通貨で置いたままにしている残高は、暗号資産ではなく預け金や預金として扱われる可能性があります。
預金として判定される場合、所在地は預入先の営業所になるため、同じ口座の中でも暗号資産の部分と法定通貨の部分で結論が分かれる場合があります。口座全体をひとまとめに「暗号資産だから対象外」と判断するのは危険です。
さらに、海外の証券口座にある外国株式や海外銀行の預金がある人は、それらを合計して5,000万円を超えるかどうかを見る必要があります。暗号資産だけを見て「自分は対象外」と決めてしまうと、他の国外財産の集計を落とすことになりかねません。
| 資産の種類 | 所在地の判定 | 国外財産調書 | 財産債務調書 |
|---|---|---|---|
| 暗号資産(国内外の取引所・自己管理ウォレット) | 保有者の住所地 | 対象外とされる | 対象になり得る |
| 海外取引所に置いた法定通貨の残高 | 預入先の営業所 | 対象になる場合がある | 対象になり得る |
| 海外銀行の預金 | 預入先の営業所 | 対象 | 対象 |
| 外国法人の株式(海外証券口座) | 発行法人の本店所在地 | 対象 | 対象 |
| 国内銀行の円預金 | 預入先の営業所 | 対象外 | 対象 |
混同しやすい財産債務調書との違い
暗号資産が実際に関係してくるのは、むしろ財産債務調書のほうです。こちらは提出義務の要件が異なり、その年分の各種所得金額の合計額(退職所得を除く)が2,000万円を超え、かつ12月31日時点で3億円以上の財産、または1億円以上の国外転出特例対象財産を有する場合に提出が必要とされています。
さらに令和5年分以降は、所得金額にかかわらず、12月31日時点で10億円以上の財産を有する居住者も対象に加えられています。提出期限は国外財産調書と同じく翌年6月30日です。
財産債務調書は国内外を問わず財産を記載する仕組みのため、暗号資産も「その他の財産」として記載対象になり得ます。国外財産調書には書かないが、財産債務調書には書く。この非対称が混乱の元になっています。
記載には年末時点の数量と価額の把握が前提になるため、年間の損益と年末残高を同じデータから出せる状態にしておくと作業が楽になります。損益計算サービスのクリプタクトのように残高レポートを出力できるツールを使うと、年末時点の数量と評価額をそろえやすくなります。暗号資産の所得計算そのものの流れは仮想通貨の税金ガイドで確認してください。
提出までの手順と準備するもの
提出義務がありそうだと判断した場合、作業は次の順番で進めると漏れが出にくくなります。確定申告とは別の書類であるため、申告書を提出したあとに残る作業として管理しておくと安全です。
- 12月31日時点の海外口座・海外ウォレットの残高をすべて洗い出し、資産の種類ごとに分類する
- 暗号資産、法定通貨の預け金、外国株式など、種類ごとに所在地の判定を当てはめて国外財産に当たるものを抽出する
- 外貨建ての残高を、その年の12月31日時点の対顧客直物電信買相場などで邦貨に換算する
- 合計額が5,000万円を超えるかどうかを判定し、超える場合は国外財産調書に種類・数量・価額・所在を記載する
- 翌年6月30日までに所轄税務署へ提出し、残高証明や取引履歴などの根拠資料を保存しておく
電子申告での提出にも対応しているとされています。様式や記載欄は改正で更新されることがあるため、作成前に最新の様式を確認しておくと差し戻しを避けられます。
未提出・虚偽記載は加算税の加重と刑事罰につながる
国外財産調書には、提出を促すための優遇と不利益が組み込まれています。期限内に提出し、その調書に記載された国外財産について後日申告漏れが判明した場合には、過少申告加算税または無申告加算税が5パーセント軽減されるとされています。
逆に、提出がない場合や、提出していても該当する財産の記載がない場合には、同じ加算税が5パーセント加重されます。さらに、税務調査で国外財産に関する書類の提示や提出を求められたのに応じないときは、加重の幅がより大きくなる措置も設けられています。
悪質な場合には刑事罰の対象にもなり、正当な理由なく期限内に提出しなかったときや、虚偽の記載をして提出したときには、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される場合があるとされています。罰則の内容や加算税の割合は改正で変わり得るため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。
よくある質問(FAQ)
海外取引所に預けている仮想通貨は本当に記載しなくてよいのですか
暗号資産は所在地の判定上、保有者の住所地にあるものとして扱われるため、日本の居住者が保有する分は国外財産に当たらないと整理されています。したがって預け先が海外取引所であっても、国外財産調書には記載しないという結論になる場合が一般的です。ただし同じ口座内の法定通貨残高は別に判定する必要があります。
国外財産調書を提出していれば確定申告は不要になりますか
別の制度なので、提出しても確定申告の義務がなくなることはありません。国外財産調書は年末時点の保有状況を報告する書類であり、売却益やステーキング報酬などの所得は、原則として雑所得として別途申告が必要とされています。所得の区分や計算方法は税金・確定申告カテゴリの記事も参考にしてください。
5,000万円は取得価額と時価のどちらで判定しますか
原則としてその年の12月31日時点の時価、または時価に準ずるものとして合理的に算定した見積価額で判定するとされています。外貨建ての財産は同日の為替相場で邦貨に換算します。取得したときの金額ではないため、値上がりした資産を持っている場合は、購入額の感覚のままだと判定を誤ることがあります。
期限までに提出し忘れた場合はどうすればよいですか
期限を過ぎても提出そのものは可能です。税務調査があったことにより更正または決定があることを予知して提出したものでない場合には、期限内に提出したものとみなす取扱いがあるとされています。気づいた時点で早めに提出するほど、加算税の加重を避けられる可能性が高くなります。
まとめ
国外財産調書は12月31日時点の国外財産が5,000万円を超える場合に、翌年6月30日までの提出を求める制度です。暗号資産は所在地の判定ルールにより国外財産に当たらないと整理されているため、原則として記載対象にはならないとされています。
一方で、海外取引所に置いた法定通貨は国外財産に当たる場合があり、財産債務調書のほうでは暗号資産も記載対象になり得ます。「暗号資産だから何も出さなくてよい」ではなく、資産の中身ごとに判定するという発想が必要です。
年末残高と年間損益を同じデータからいつでも出せる状態を作っておけば、どちらの調書が必要になっても対応できます。これから口座を整理する人は仮想通貨の始め方ガイドも合わせて確認してください。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。
判断に迷う論点は、先に確認したほうが早い
この記事で扱ったのは、公開されている情報から言える一般的な扱いです。実際の申告では、自分の取引履歴に当てはめたときに判断が要る場面が出てきます。区分の判定、過年度の修正、複数の論点が重なる場合などです。
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