本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含む場合があります。
日本暗号資産取引業協会は、認定資金決済事業者協会として、会員である暗号資産交換業者から集めた数字を月次で公表しています。公表されている項目には、現物取引の売買代金、証拠金取引の取引金額や未決済の残高、口座数、預託されている金銭や暗号資産の状況などが含まれます。
この統計は、国内市場の規模を継続して追える数少ない公表データです。ただし、集計の定義を確認しないまま前年同月と比べると、実態とは違う結論を出してしまいます。売買代金は売りと買いの両方を含むこと、証拠金取引の金額は現物と単純に足せないこと、口座数は利用者数と一致しないことなどが典型です。
本記事では、どの数字が何を意味するのか、比較の際にどこで誤りやすいのかを整理し、決まっていること、議論されていること、決まっていないことも分けて示します。集計の様式は見直されることがあるため、最新の内容は日本暗号資産取引業協会の公表情報で確認してください。
何が公表されているのか
現物取引に関する数字
現物取引については、対象期間中の売買代金と、月末時点で預託されている暗号資産の数量などが示されます。売買代金は市場の活発さを表す指標として使われますが、後述するとおり資金の流入額とは意味が異なります。数量は価格の影響を受けないため、価格変動と取引動向を切り分けたいときに有用です。
証拠金取引に関する数字
証拠金取引については、期間中の取引金額や、期末時点の未決済残高などが示されます。証拠金取引は預けた証拠金より大きい金額の取引を行う仕組みであるため、取引金額は現物の売買代金と性質が違います。両者を足して市場規模とするのは、意味の異なる数字の合算になります。
口座と預託資産に関する数字
口座数については、現物と証拠金で区分され、開設済みの口座数と実際に利用されている口座数が分けて示されることがあります。預託資産については、金銭と暗号資産が分けて示されます。暗号資産は数量と円換算の両方で示されることがあり、円換算の値は価格変動の影響を強く受けます。
数字の意味を取り違えやすい三点
売買代金は売りと買いの両方を足している
売買代金は、同じ約定について売り側と買い側の双方を集計する形が一般的です。したがって、この数字が2倍になったからといって、市場に入った資金が2倍になったという意味にはなりません。資金の流入を見たい場合は、預託されている金銭の残高や暗号資産の数量の推移を併せて見る必要があります。
証拠金取引の金額は現物と足せない
証拠金取引の取引金額は建玉の金額を基準としており、実際に動いた資金の額とは異なります。倍率が高いほど、少ない証拠金で大きな取引金額が計上されます。現物と証拠金を合算した数字は、性質の違うものを足した結果になるため、市場規模の説明には向きません。二つは常に分けて記録してください。
口座数は利用者数ではない
口座数は事業者ごとの開設件数の合計であり、同じ人が複数の事業者に口座を持っていれば重複して数えられます。名寄せは行われていないため、口座数をそのまま日本の利用者人口として扱うことはできません。開設済みの口座と、実際に取引や入出金がある口座を分けて示している場合は、その区分の定義も確認してください。
前年比較の落とし穴と、実際に読む手順
前年同月比を出すときに最も多い誤りは、集計の前提が同じだと思い込むことです。報告対象となる会員が増減すれば、合計値は市場の変化がなくても動きます。新たに登録を受けた事業者が加われば増加し、事業を終了した事業者が抜ければ減少します。会員数や報告対象の記載が資料にあるかを先に確認してください。
もう一つは、円換算の数字を実勢の変化と読んでしまうことです。預託されている暗号資産の円換算額は、数量が変わらなくても価格の変動だけで大きく動きます。数量ベースの値が併記されている場合は、両方を並べて見ることで、価格要因と数量要因を切り分けられます。
さらに、集計様式や項目の定義が改定されることがあります。過去の資料と最新の資料で項目名が同じでも、範囲が同一とは限りません。長期の時系列を作る場合は、改定の有無を注記で確認したうえで、断絶がある期間を明示しておくと誤読を防げます。
- 日本暗号資産取引業協会のサイトで、統計情報の公表ページを開く
- 対象月、公表日、報告対象となった会員の範囲を最初に確認する
- 本文の数字より先に、注記と定義の記載を読む
- 現物と証拠金を別々の欄に書き写し、合算しないルールを決めておく
- 暗号資産の預託は、数量と円換算を並べて記録する
- 前年同月と比べる前に、両月の集計対象と様式が同じかを確認する
- 過去分が訂正されていないか、更新履歴の記載を確認する
決まっていること、議論されていること、決まっていないこと
| 項目 | 2026年8月時点の状態 | 補足 |
|---|---|---|
| 月次での統計公表 | 継続して行われている | 会員から集計した数値が公表されている |
| 集計対象が会員である交換業者の取引であること | 決まっている | 国外の事業者や分散型の取引は含まれない |
| 現物と証拠金が区分して示されること | 決まっている | 性質が異なるため合算しない前提 |
| 統計の様式や項目 | 見直されることがある | 過去分と定義が一致するとは限らない |
| 個社別の内訳 | 公表されていない | 合計値としての公表が基本 |
| 統計から個人の損益を導くこと | できない | 申告には自分の取引履歴を用いる |
| 暗号資産の課税方式の見直し | 議論の段階 | 原則として雑所得の総合課税のままである |
統計と自分の損益計算は別物
市場統計は全体の傾向を見るための数字であり、確定申告に使う数字ではありません。申告で必要になるのは、自分が実際に行った取引の履歴と、事業者が交付する年間の取引報告書です。取扱い事業者ごとに書式や記載項目が異なるため、コインチェックなど利用中の事業者の説明ページで、どの資料が交付されるかを確認してください。
複数の事業者を使っている場合は、履歴を合算して計算する必要があります。クリプタクトのような計算ツールを使う場合も、取り込まれた取引の件数と期間が実際の履歴と一致しているかを確認してから集計してください。取込漏れは、集計後の数字を見ただけでは気づきにくい種類の誤りです。
税務の取扱いについては、2026年8月時点で暗号資産の売却や交換により生じた所得は、原則として雑所得に区分され、総合課税の対象です。申告分離課税には移行していません。給与を1か所から受けている会社員で、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となる場合がありますが、住民税の申告は別に必要になることがあります。給与がない場合は基礎控除48万円、給与がある場合は給与所得控除の最低額55万円が計算の前提に関わります。詳細は国税庁の公表資料と、仮想通貨の税金ガイドを確認してください。
よくある質問(FAQ)
統計の売買代金が増えたら、資金が入ってきたということですか
必ずしもそうとは言えません。売買代金は売りと買いの双方を含む形で集計されるのが一般的で、同じ資金が短期間に何度も回転しても増えます。資金の出入りを見たい場合は、預託されている金銭の残高や、暗号資産の数量の推移を併せて確認するほうが実態に近づきます。
この統計に海外取引所での取引は含まれますか
含まれません。集計の対象は会員である国内の暗号資産交換業者の取引です。したがって、日本の居住者が国外の事業者や分散型の仕組みで行った取引は反映されません。日本市場の規模として引用する際は、この範囲の限定を明示しておく必要があります。
口座数を人口で割れば普及率が出せますか
適切ではありません。口座は事業者ごとに数えられ、同じ人が複数の事業者に開設していれば重複します。名寄せは行われていないため、普及率の分子として使うと過大になります。開設済み口座と利用がある口座を分けている資料であれば、後者のほうが実態に近い指標になります。
統計の数字は後から修正されることがありますか
修正や様式の改定が行われることがあります。長期の時系列を扱う場合は、資料の更新履歴や注記を確認し、修正があった期間を記録しておくと安全です。判断の根拠として使う場合は、参照した資料の公表日を残しておくと、後から検証できます。
まとめ、定義を確認してから比べる
この統計は、国内市場を継続して追える貴重な公表データですが、数字の意味を確認せずに前年と比べると誤った結論につながります。売買代金の両側計上、証拠金取引と現物の性質の違い、口座数と利用者数の違い、円換算に含まれる価格要因の四点を押さえておくと、多くの誤読は避けられます。
制度や集計の様式は変わるため、最新の情報は日本暗号資産取引業協会や金融庁の暗号資産関係ページなど各機関の公表情報で確認してください。税務に関する記事は税金・確定申告カテゴリにまとめています。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。