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2022年6月に成立した改正資金決済法が2023年6月1日に施行され、日本の法令に「電子決済手段」という区分が新しく設けられました。この区分に当たるものは、資金決済法上の暗号資産の定義から除かれています。日本の制度では、いわゆるステーブルコインのうち一定の条件を満たすものは、暗号資産とは別の箱に入っている、という状態です。
この区分では、発行できる主体が限定されています。具体的には銀行、資金移動業者、信託会社などで、誰でも発行できる仕組みにはなっていません。また、発行された電子決済手段の売買や管理を業として行う事業者には、暗号資産交換業とは別に電子決済手段等取引業の登録が求められます。
一方で、まだ固まっていない部分も残っています。本記事では、2026年8月時点で決まっていること、議論されている段階のこと、決まっていないことを分けて整理します。制度は改正されるため、実際に取引や手続きを検討する際は、金融庁の暗号資産関係ページをはじめとする各機関の公表情報で最新の内容を確認してください。
電子決済手段という区分が新設された経緯
2017年の法改正で暗号資産交換業の登録制が始まった後、法定通貨の価値に連動する形で発行されるコインが世界的に広がりました。価格変動を前提とする暗号資産と、額面での償還を前提とする決済手段を同じ枠で扱うことには無理があり、決済手段としての性格に着目した区分が設けられた、というのが大きな流れです。
4つの類型が定められている
資金決済法は電子決済手段を大きく4つの類型で定めています。第1号は、法定通貨建てで、不特定の者に対する代価の弁済に使用でき、不特定の者との間で購入と売却ができるもの。第2号は、不特定の者との間で第1号と相互に交換できるもの。第3号は特定信託受益権、いわゆる信託型です。第4号は内閣府令で定めるものとされています。実務で話題になりやすいのは、銀行や資金移動業者が発行する類型と、信託会社が発行する信託型です。
暗号資産の定義からは除かれている
この区分に当たるものは資金決済法上の暗号資産から除外されるため、暗号資産交換業の登録だけでは扱えません。名称にコインという語が付いていても、法令上どちらの箱に入るかは、償還の約束があるか、裏付資産が何か、発行者がどの登録を受けているかという点で決まります。名称や宣伝文句では判別できない、というのが実務上の要点です。
発行できる主体は限定されている
発行主体は大きく銀行型、資金移動業者型、信託型に分かれます。それぞれ利用者資金の保全の仕組みが異なり、銀行型は預金として、資金移動業者型は供託や保証、信託による履行保証によって、信託型は信託財産として分別管理される形が基本です。
この「保全の仕組みが業態ごとに違う」という点は、利用者にとって重要です。同じように円建てで額面が示されていても、発行者が破綻した場合にどの制度で守られるかは同一ではありません。発行者の公表資料で、どの登録に基づき、どの方法で裏付資産を管理しているかを確認する必要があります。
送金額の上限などの制約は発行主体の業態に従う
資金移動業には第一種、第二種、第三種の区分があり、1回あたりの送金額の上限などの制約は区分ごとに異なります。ステーブルコインだから一律にこうなる、という決まりがあるわけではなく、発行者が受けている登録の種類に従います。国内では円建てで発行する事業者も現れていますが、扱える金額や機能は発行者ごとに違うため、各社の公表情報を個別に見る必要があります。
取り扱う事業者には別の登録が必要
電子決済手段の売買、他の電子決済手段との交換、これらの媒介、利用者のための管理を業として行うには、電子決済手段等取引業の登録が必要です。暗号資産交換業の登録を受けている事業者であっても、電子決済手段を扱うには別途この登録が求められます。登録を受けた事業者の一覧は金融庁が公表しています。
海外で発行された米ドル建ての電子決済手段についても、国内で一般の利用者に提供するには、この枠組みに沿った取扱いが前提になります。国内の登録事業者が取扱いを公表した例はありますが、どの銘柄を扱うかは事業者ごとに異なり、すべての海外発行コインが国内で扱えるようになったわけではありません。
- 金融庁の暗号資産関係ページを開き、免許や登録を受けた事業者の一覧を探す
- 電子決済手段等取引業者の一覧に、その事業者名と登録番号があるかを確認する
- 暗号資産交換業者の一覧と混同していないか、業種の表記を見比べる
- 発行者の公表資料で、裏付資産の内容、償還の条件、保全方法を確認する
- 無登録での勧誘が疑われる場合は、金融庁が公表する無登録業者に関する注意喚起を確認する
決まっていること、議論されていること、決まっていないこと
| 項目 | 2026年8月時点の状態 | 補足 |
|---|---|---|
| 電子決済手段という法的区分の新設 | 決まっている | 2023年6月1日施行の改正資金決済法による |
| 発行主体が銀行、資金移動業者、信託会社などに限られること | 決まっている | 保全の方法は業態ごとに異なる |
| 取扱事業者に電子決済手段等取引業の登録が必要なこと | 決まっている | 暗号資産交換業の登録とは別枠 |
| 信託型の裏付資産の運用範囲の見直し | 法改正と細目の整備が進められている段階 | 施行時期や下位法令の内容は公表資料で確認する |
| 海外発行コインの国内での取扱い範囲 | 事業者ごとに判断されている段階 | 銘柄単位で扱えるかどうかが分かれる |
| 裏付資産を持たない仕組みで価格を維持する型の位置づけ | 明確に位置づけられていない | 電子決済手段に当たらない場合の扱いは個別判断 |
| 利用場面ごとの税務上の網羅的な整理 | 論点が残っている | 国税庁の公表資料で個別に確認する必要がある |
利用者から見て何が変わったのか
償還の約束があるかどうかが分かれ目
利用者側の視点で最も大きい変化は、額面での償還を前提とする商品と、価格変動を前提とする商品が、法令上はっきり分かれたことです。電子決済手段に該当するものは、発行者に対する償還請求の仕組みと保全の仕組みがセットで求められます。逆に言えば、この枠組みの外にあるコインは、名称が似ていても同じ保護を前提にできません。暗号資産そのものの基礎については、仮想通貨の始め方ガイドも参照してください。
税務上の扱いは自動的に同じにはならない
税務については、2026年8月時点で暗号資産の売却や交換によって生じた所得は、原則として雑所得に区分され、総合課税の対象です。申告分離課税には移行していません。電子決済手段は法定通貨建てであるため、円建てのものを額面どおりに受け払いする限りは差益が生じにくい一方、外貨建てのものでは為替による差損益をどう扱うかという論点が生じます。個別の取扱いは国税庁の公表資料で確認してください。
給与を1か所から受けている会社員で、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となる場合があります。ただしこれは所得税の話であり、住民税の申告は別に必要になることがあります。給与がない場合は、基礎控除48万円を基準に考えることになり、給与がある場合は給与所得控除の最低額55万円が関係します。計算の考え方は仮想通貨の税金ガイドで整理しています。
損益計算では、暗号資産と電子決済手段を混ぜずに集計しておくと後の確認が楽になります。クリプタクトのような計算ツールを使う場合も、どの区分として取り込まれているかを確認してください。取扱い商品や対応状況は事業者ごとに異なるため、コインチェックなど利用中の事業者の公表ページも併せて見ておくと確実です。
よくある質問(FAQ)
円建てのステーブルコインは日本で発行できるのですか
法令上の枠組みは整備されており、銀行、資金移動業者、信託会社などの限定された主体が発行できる状態です。誰でも発行できるわけではなく、発行者がどの登録を受けているかで扱える機能や金額の制約が変わります。実際に発行されている銘柄と条件は、発行者の公表資料で確認してください。
海外で発行されたステーブルコインを国内で買えますか
国内の登録事業者が取扱いを公表している銘柄については提供されていますが、すべての海外発行コインが扱えるようになったわけではありません。取扱いの可否は銘柄と事業者の組み合わせで決まります。一覧化された公的な銘柄リストがあるわけではないため、各事業者の公表情報を個別に確認する必要があります。
ステーブルコインの損益は暗号資産と同じ計算になりますか
同じとは限りません。法令上の区分が異なるため、取引の内容によって扱いが変わります。2026年8月時点で暗号資産の所得は原則として雑所得の総合課税ですが、電子決済手段については個別の取引形態ごとに整理が必要です。判断に迷う場合は、国税庁の公表資料を確認したうえで、税務署や税理士に相談してください。
規制が変わったかどうかは、どこを見れば分かりますか
金融庁の公表資料で、法律の成立日、公布日、施行日を分けて確認するのが基本です。報道では成立と施行が区別されないことがありますが、施行日が来ていない改正は、まだ効力を持っていません。業界側の実務ルールについては、日本暗号資産取引業協会の自主規制規則やお知らせも参考になります。
まとめ、制度は状態として捉える
日本のステーブルコイン規制は、電子決済手段という区分の新設、発行主体の限定、取扱事業者の登録制という三つの柱が既に決まっている一方で、裏付資産の運用範囲や個別の税務論点など、整備が続いている部分があります。今の状態を正しく把握するには、どこまでが施行済みで、どこからが議論の段階なのかを分けて読むことが有効です。
確認の起点は、金融庁の公表資料、国税庁の公表資料、業界団体の自主規制規則の三つです。制度は改正されるため、最新の情報は各機関の公表情報で確認してください。関連する税務の話題は税金・確定申告カテゴリにまとめています。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。