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仮想通貨の取引所に口座を開設すると、「販売所」と「取引所」という2つの売買画面が用意されていることがあります。販売所の画面は提示された価格をタップするだけで売買が完結しますが、取引所の画面を開くと、数字が細かく並んだ見慣れない一覧が表示されます。これが「板」(オーダーブック)と呼ばれる、売り注文と買い注文を価格ごとに並べた一覧です。
この記事では、板がどのような構造になっていて、成行注文・指値注文を出したときに約定価格がどのように決まるのかを、仮の数値を使った例で順番に整理します。あわせて、約定した価格がそのまま損益計算の基礎になる点にも触れます。
- 販売所から取引所(板)に切り替えたときに見る画面
- 板の構造:売り板・買い板・スプレッド
- 成行注文が板を食べる仕組み(仮の例で計算)
- 指値注文は板に並んで待つ注文
- makerとtakerで手数料が変わることがある
- 板が薄いときに注意したいこと
- 約定価格がそのまま取得価額になる
- よくある質問
- まとめ
販売所から取引所(板)に切り替えたときに見る画面
販売所は、取引所の運営会社が提示する1つの価格に対して「買う」「売る」を選ぶだけの、シンプルな画面です。これに対して取引所の画面は、板と呼ばれる一覧を介して売買が成立する形式になっています。板は、売り注文と買い注文を価格ごとに並べた一覧で、取引所形式の画面で表示されます。
多くの取引所画面では、売り注文が価格の安い順に並ぶ「売り板」が上側に、買い注文が価格の高い順に並ぶ「買い板」が下側に表示され、その境目あたりに直近の約定価格が表示される構成が一般的です。販売所と取引所(板)は仕組みも見た目も異なるため、両者の違いを先に整理しておくと以降の内容が理解しやすくなります。違いの詳細は販売所と取引所の違いをまとめた記事で解説しています。
板の構造:売り板・買い板・スプレッド
板は、大きく分けて「売り板」と「買い板」の2つで構成されています。売り板には「この価格以上なら売ってもよい」という売り注文が価格の安い順に並び、買い板には「この価格以下なら買ってもよい」という買い注文が価格の高い順に並びます。それぞれの価格に、その価格で出されている注文の数量が対応しています。
以下は、理解のための仮の板の例です(実在の銘柄・価格ではありません)。
| 価格帯(円) | 売り数量 | 買い数量 |
|---|---|---|
| 100,150 | 1.0 | – |
| 100,100 | 0.8 | – |
| 100,050 | 0.5 | – |
| 100,010 | 0.3 | – |
| 100,000 | – | 0.4 |
| 99,980 | – | 0.6 |
| 99,950 | – | 0.9 |
| 99,900 | – | 1.2 |
この仮の例では、売り板の中でいちばん安い注文が100,010円、買い板の中でいちばん高い注文が100,000円です。この「最も安い売り注文」と「最も高い買い注文」の差が、スプレッドにあたります。上の例では100,010円と100,000円の差である10円がスプレッドということになります。スプレッドが小さいほど、売り手と買い手の希望価格が近い状態と読み取れます。
成行注文が板を食べる仕組み(仮の例で計算)
成行注文は、価格を指定せず「今すぐ約定させる」ことを優先する注文方法です。成行注文は板にある反対注文と、価格が近い順に約定していきます。買いの成行注文であれば売り板の安い注文から順に、売りの成行注文であれば買い板の高い注文から順に、数量を消化しながら約定していく仕組みです。
ここで注意したいのが、注文数量が大きい場合です。1つの価格の注文だけで数量をまかないきれないと、次に安い(高い)価格の注文まで連続して約定していくため、平均の約定価格が板の最良気配から離れていくことがあります。これがスリッページと呼ばれる現象です。
先ほどの仮の板を使って、買いの成行注文で数量1.0を発注した場合の仮の計算例を見てみます。
| 段階 | 約定価格(円) | 約定数量 | 小計(円) |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 100,010 | 0.3 | 30,003 |
| 2回目 | 100,050 | 0.5 | 50,025 |
| 3回目 | 100,100 | 0.2 | 20,020 |
| 合計 | – | 1.0 | 100,048 |
この仮の例では、100,010円の売り注文0.3を約定させたあと、0.5をさらに100,050円で、残りの0.2を100,100円で約定させることになり、合計100,048円を1.0で割った100,048円が平均約定価格になります。板のいちばん安い売り気配は100,010円でしたので、実際に約定した平均価格はそれより38円ほど高くなっています。これが、成行注文で数量が大きいときに平均約定価格が想定より不利になることがある、という仕組みです。板に並ぶ数量が注文数量に対して十分に厚ければ、この差は小さくなります。
指値注文は板に並んで待つ注文
指値注文は、成行注文とは逆に、自分で価格を指定して発注する方法です。指定した価格に届く反対注文が来るまでは約定せず、板の中に自分の注文として並び続けます。つまり指値注文は、板に並んで自分の希望価格に相手が来るのを待つ注文ということになります。
成行注文と指値注文には、それぞれ次のような違いがあります。
- 成行注文:価格を指定しない代わりに、その時点の板の状況に応じてすぐに約定する。約定価格は発注前には確定していない
- 指値注文:価格を指定する代わりに、その価格に届く反対注文が現れるまで約定しない。約定するタイミングは発注前には確定していない
「価格を確定させたいか」「約定のタイミングを優先したいか」によって、どちらの注文方法が向いているかが変わってきます。板の状況(売り板・買い板にどのくらいの数量が並んでいるか)を見ながら、自分がどちらを優先したいかで使い分けることになります。
makerとtakerで手数料が変わることがある
板を使った取引では、注文の出し方によって「maker」と「taker」という2つの立場に分かれます。板に新しく注文を並べる側がmaker、板にすでに並んでいる注文を取る側がtakerです。指値注文を出してそのまま板に並んだ場合はmaker、成行注文のようにその場で板の注文を消化した場合はtakerに該当します。
取引所によっては、このmakerとtakerとで手数料率が異なる設定になっている場合があります。手数料が発生するかどうか、どちらが有利な料率になっているかは業者ごとに異なるため、実際に利用する取引所の手数料ページで確認しておく必要があります。取引にかかる手数料の種類全体については、仮想通貨の手数料の全種類をまとめた記事で整理しています。
板が薄いときに注意したいこと
板に並んでいる注文の数量が少ない状態は、「板が薄い」と表現されます。板が薄い銘柄や時間帯は、価格が動きやすいという特徴があります。先ほどの成行注文の例で見たとおり、同じ数量の成行注文を出しても、板に並ぶ数量が少なければ少ないほど、より遠い価格まで注文を消化することになり、平均約定価格が最良気配から離れやすくなります。
暗号資産はもともと価格変動が大きい資産です。板が薄い場面ではその値動きがふだんより大きく出やすいため、成行注文をまとまった数量で出すときは、板の厚み(それぞれの価格にどのくらいの数量が並んでいるか)を確認してから発注する、数量を分けて発注する、といった対応を検討する余地があります。板の厚みは銘柄や取引所、時間帯によって変わるため、一律に「この時間帯は薄い」と決めつけず、実際に自分が使う板を見て判断することになります。
約定価格がそのまま取得価額になる
板で売買が成立すると、その約定価格がそのまま取得価額として記録の基礎になります。これは国税庁が示す所得税の考え方(国税庁タックスアンサーNo.1524)とも整合する整理です。暗号資産の取得価額をもとに、その後の売却時の損益が計算されることになるため、約定価格の記録は損益計算の出発点になります。
ここで先ほどの成行注文の例を思い出してみます。1回の成行注文が3つの価格(100,010円・100,050円・100,100円)に分かれて約定した場合、それぞれの約定が個別の取得記録として残ることになります。日常的に売買を繰り返していると、こうした部分約定が積み重なり、手作業での記録・集計は煩雑になりやすい部分です。どのタイミングの取引が課税の対象になるかという全体像は、課税タイミングを一覧にした記事で整理しています。
取引履歴を自分で集計する代わりに、取引所からダウンロードした履歴を取り込んで損益を自動計算するツールを使う方法もあります。クリプタクト(Cryptact)は取引履歴の取り込みに対応したサービスで、無料プランでも年間の取引が50件までであれば結果を表示でき、それを超える場合は有料プラン(Basicは年額6,600円〜)が用意されています。クリプタクトの公式サイトで対応状況を見てみると、自分の取引頻度に無料プランで足りるかどうかを確認できます。損益計算の自動化全体については、損益計算を自動化する方法の記事にまとめています。
よくある質問
販売所だけを使っていれば、板の知識は不要ですか?
販売所は提示された価格をそのまま受け入れる形式のため、板を意識せずに売買が完結します。ただし取引所(板)は、販売所とは価格の決まり方も画面の構成も異なる仕組みです。両方を使う可能性があるなら、板の基本的な構造を知っておくと画面を見たときに迷いにくくなります。
成行注文と指値注文は、どちらを使えばよいですか?
どちらが向いているかは、何を優先したいかによって変わります。価格が想定より多少ずれてもよいのですぐに約定させたい場合は成行注文、約定のタイミングが多少遅れてもよいので価格を確定させたい場合は指値注文、という整理になります。板に並んでいる数量(板の厚み)も判断材料の一つです。
板が薄い時間帯はいつ頃ですか?
銘柄や取引所によって異なるため、一概にはいえません。板の厚みは常に変動するものなので、発注する前に実際の板を確認し、自分が出そうとしている数量に対して十分な注文が並んでいるかどうかを見ておくと、想定外の約定価格になりにくくなります。
1回の成行注文が複数の価格に分かれて約定した場合、取得価額はどう扱われますか?
約定した価格がそのまま取得価額になるという考え方に基づくと、価格ごとの部分約定はそれぞれが個別の取得記録として扱われることになります。手作業での管理が煩雑に感じる場合は、クリプタクトで取引履歴を取り込んでみると、部分約定を含めた取引履歴をまとめて計算に反映できます。
まとめ
- 板は、売り注文と買い注文を価格ごとに並べた一覧。最も安い売り注文と最も高い買い注文の差がスプレッド
- 成行注文は板の反対注文を順に消化するため、数量が大きいと平均約定価格が最良気配から離れる(スリッページ)ことがある
- 指値注文は価格を指定して板に並び、反対注文が来るまで約定を待つ
- maker(板に並べる側)とtaker(板から取る側)で手数料率が異なる業者があるため、利用する取引所で確認が必要
- 板が薄い銘柄・時間帯は価格が動きやすい。暗号資産はもともと価格変動が大きい資産である点もあわせて意識しておきたい
- 約定価格がそのまま取得価額になるため、部分約定を含めた記録が損益計算の基礎になる
部分約定を含めた取引履歴の管理に手間を感じる場合は、クリプタクト公式サイトを見てみると、無料プランの範囲で自分の取引履歴を試しに取り込めます。
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本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、投資判断はご自身の責任でお願いします。