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リキッドステーキングプロトコルを選ぶ際、手数料と報酬率(APY)は最も気になるポイントの一つです。「同じETHをステーキングするのに、どちらのプロトコルの方が多くの報酬が得られるのか」という疑問は非常に自然なものです。
ただし、単純にAPYの数字だけを比較しても、実際の手取り報酬は異なる場合があります。手数料の計算方法、報酬分配の仕組み、さらにはDeFiとの組み合わせによる追加収益の可能性など、様々な要素を考慮する必要があります。
本記事では、LidoとRocket Poolの手数料構造と報酬率を詳細に比較し、実際のコストと利回りの関係を明らかにします。また、ノードオペレーターとして参加する場合の収益性についても解説します。
1. イーサリアムのステーキング報酬の基本
1-1. ステーキング報酬の構成要素
イーサリアムのステーキング報酬は、大きく3つの要素で構成されています。まず「コンセンサス層の報酬」で、これはビーコンチェーンでのブロック提案や証明への参加報酬です。次に「実行層の報酬」で、これはブロック提案時に得られるプライオリティフィー(優先手数料)です。そして「MEV(Maximal Extractable Value)」と呼ばれる、ブロック内のトランザクション順序最適化から得られる追加収益です。
このうちMEVは変動が大きく、NFTの大型発売やDeFiの大規模なアービトラージが発生した際などに大幅に増加します。MEVの取り込み方はプロトコルによって異なり、最終的なAPYに影響を与えます。
1-2. イーサリアム全体のステーキングAPYの推移
イーサリアムのステーキングAPYは、ステーキングに参加しているETHの総量と反比例します。参加者が増えると一人あたりの報酬が薄まる仕組みです。2024年時点では、ネットワーク全体のステーキングAPYはおおよそ3〜5%前後で推移しています。
The Mergeから2年以上が経過し、ステーキング参加者数が増えるにつれてベースのAPYは低下傾向にあります。ただし、ネットワークの利用が活発になり取引手数料が増加すると、実行層の報酬が増えてAPYが上昇することもあります。
2. Lidoの手数料構造
2-1. 手数料率と分配先
LidoはステーキングReward(報酬)に対して10%の手数料を徴収します。ただし、この10%は全てLido DAOの収益になるわけではありません。10%のうち、半分の5%がノードオペレーターに、残りの5%がLido DAOの財務省(Treasury)に分配されます。
例えば、イーサリアムのステーキングAPYが4%だとすると、ユーザーが実際に受け取るAPYは「4% × (1 – 10%) = 3.6%」となります。残りの0.4%が手数料として分配される計算です。
なお、手数料は預け入れ時や引き出し時にかかるものではなく、発生した報酬に対してのみかかります。元本に対してではないため、期間が短くなるほど手数料の絶対額も小さくなります。
2-2. stETHのDeFi活用による追加収益
Lidoの大きな強みの一つは、stETHがDeFiエコシステムで広く受け入れられていることです。stETHを単純保有するだけでステーキング報酬(約3〜5%)を得られますが、さらにstETHをDeFiプロトコルに預けることで追加の収益を得ることが可能です。
例えば、CurveのstETH/ETHプールに流動性を供給することでLP報酬が得られます。また、AaveやMorphoでstETHを担保として借り入れを行い、その資金を再投資することで収益を積み上げる戦略も一般的です。ただし、DeFiを利用する場合にはスマートコントラクトリスクや清算リスクなど追加のリスクが生じることに注意が必要です。
3. Rocket Poolの手数料構造
3-1. コミッション率とその決まり方
Rocket Poolの手数料構造はLidoより複雑です。Rocket Poolでは、ノードオペレーターに支払われるコミッションと、プロトコルが取る手数料が分離されています。
ノードオペレーターが設定するコミッション率は平均14〜15%程度(需給によって変動)で、これは「ソロステーカーに比べてノードオペレーターが得る報酬のうち、rETH保有者向けのETHから差し引く割合」です。プロトコル自体が取る手数料は別途設定されており、全体的な構造が複雑なため、実効的なAPYの計算には注意が必要です。
ただし、Rocket Poolのコミッション率はプロトコル需要に応じて動的に変動するメカニズムが採用されており、市場原理によって適正な水準に調整される仕組みになっています。
3-2. RPL担保報酬の存在
Rocket Poolのノードオペレーターはステーキング報酬に加え、RPLトークンの担保報酬も受け取ります。具体的には、担保として預け入れたRPLの量に応じたRPL報酬が毎期支払われます。
このRPL報酬は年率換算で10〜20%程度になることもあり、ノードオペレーター全体のトータル報酬を押し上げる効果があります。ただし、RPL価格が大きく変動するリスクもあるため、RPL自体の価格リスクを考慮したうえで判断する必要があります。
4. 実質APYの比較シミュレーション
4-1. 同条件でのAPY比較
イーサリアムのネットワーク全体のステーキングAPYが4%と仮定した場合の比較を見てみましょう。
- ダイレクトステーキング(ソロ):4.0%(手数料なし)
- Lido(stETH保有):約3.6%(10%手数料後)
- Rocket Pool(rETH保有):約3.2〜3.5%(コミッション率に依存)
純粋な数字だけで比較するとLidoの方がわずかに高い傾向がありますが、差は僅かです。また、Rocket PoolはMEVの取り込み方や、スムーズなrETH供給量による変動もあるため、時期によってはRocket PoolのrETHのAPYがLidoのstETHを上回ることもあります。
4-2. MEVボーストとその影響
MEV(Maximal Extractable Value)は、ステーキング報酬に大きな影響を与える変動要素です。どちらのプロトコルもMEV-Boostを活用しており、ブロックビルダーからの追加収益をバリデーターが受け取れる仕組みを採用しています。
LidoのノードオペレーターもRocket Poolのノードオペレーターも、MEV-Boostを通じてMEV報酬を獲得します。ただし、どのリレーを使用するか、どのブロックビルダーと連携するかによって、実際に獲得できるMEV量は異なります。Lidoの場合、オペレーター間でのMEV報酬の扱いを標準化するための議論が進められています。
5. ノードオペレーターとしての収益比較
5-1. Rocket Poolノードオペレーターの収益計算
Rocket Poolのノードオペレーターとして8ETHを預けてミニプールを運営する場合の収益を試算してみましょう。1つのバリデーター(32ETH)のうち、自己資金が8ETH(25%)、プールからの資金が24ETH(75%)と仮定します。
ステーキング報酬全体の分配は、コミッション分をノードオペレーターが追加で受け取るため、自己資金比率(25%)以上の報酬を得ることができます。コミッション率14%とすると、ノードオペレーターは実質的に30%前後の報酬配分を受けることが可能です。さらにRPL担保報酬が加算されるため、高い収益性が期待できます。
5-2. Lidoノードオペレーターとの比較
Lidoのノードオペレーターは報酬の5%(全報酬の半分)を受け取ります。ただし、Lidoのノードオペレーターは自己資金を預け入れる必要がないため(Lidoが32ETHを手配)、運用するETH量に対してはほぼノーリスクで報酬が得られる構造です。
一方でLidoのノードオペレーターになるには前述の通り許可が必要であり、一般個人が参加できないという制約があります。個人がノードオペレーターとして参加して収益を得たい場合は、Rocket Poolが唯一の現実的な選択肢となります。
6. 手数料・報酬率の将来予測
6-1. EIP-1559とステーキング報酬の関係
2021年8月に導入されたEIP-1559では、ベースフィーがバーン(焼却)される仕組みが導入されました。これにより、ガス代の多くはバリデーターではなく「焼却」されるため、ステーキング報酬として直接得られるわけではありません。しかし、ETHの供給量減少によるETH価格上昇という間接的なメリットも考慮する必要があります。
6-2. ステーキング参加率の上昇と報酬低下
イーサリアムのステーキング参加率が上昇するにつれ、一般的にはベースのAPYが低下します。このため、将来的にはリキッドステーキングプロトコルの差別化がより重要になると考えられます。MEVの最大化、DeFiエコシステムとの連携、追加収益機会の提供などが、プロトコル間の競争の焦点となるでしょう。
まとめ
手数料・APYの比較をまとめると、純粋な報酬率の数字ではLidoがわずかに有利な場合が多いですが、差は僅少です。Rocket PoolはrETHのDeFi活用が限定的な分、ノードオペレーターとしての収益機会が大きいという特徴があります。
単純にstETH・rETHを保有する場合は、どちらのプロトコルも大きな差はないと言えます。重要なのは、分散化への貢献という観点や、DeFiでの活用戦略、リスク許容度に合わせたプロトコル選択です。次回はリスク管理と分散化への取り組みを比較します。
よくある質問(FAQ)
Q1. stETHとrETH、どちらをDeFiで活用しやすいですか?
stETHの方が対応しているDeFiプロトコルが多く、流動性も高いため活用しやすい傾向があります。Curve、Aave、Compound、Morphoなど主要なDeFiプロトコルのほとんどがstETHに対応しています。rETHも対応プロトコルは増えていますが、stETHと比べると選択肢が限られます。
Q2. 手数料は自動的に差し引かれますか?
はい、両プロトコルとも手数料はユーザーが意識することなく自動的に差し引かれます。ユーザーには手数料後のAPYがそのまま適用されるため、手動で計算したり支払ったりする必要はありません。
Q3. ステーキングを途中でやめた場合、報酬は受け取れますか?
はい、stETH・rETHとも保有中は常に報酬が積み立てられており、トークンを売却・償還した時点の累積報酬が反映されています。中途解約のペナルティはなく、いつでも市場で売却することが可能です。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。