基礎知識

リカバリーフレーズの保管方法|「なくす」と「盗まれる」の両方から守る考え方

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※本記事は2026年8月時点で各サービスの公開情報を確認した一般的な解説です。仕様や手順は変更されることがあるため、最新の内容は各サービスの公式案内をご確認ください。

暗号資産のウォレットを作ると、多くの場合「リカバリーフレーズ」や「シードフレーズ」と呼ばれる単語の並びが表示されます。12個や24個の単語をただ書き写すだけの作業に見えるため、後回しにしたり、スクリーンショットで済ませてしまったりする人も少なくありません。

ですが、このリカバリーフレーズは、パスワードのような「鍵のひとつ」ではありません。このフレーズを知っている人は、誰でもそのウォレットの資産を動かせます。つまり、リカバリーフレーズを保管するということは、資産そのものを保管することとほぼ同じ意味を持ちます。この記事では、「なくさないこと」と「盗まれないこと」という、方向の異なる2つの脅威を軸に、保管方法の考え方を整理します。

リカバリーフレーズは、暗号資産そのものと考える

リカバリーフレーズ(シードフレーズ、ニーモニックフレーズとも呼ばれます)は、ウォレットを復元するための単語の並びです。多くのウォレットは、BIP39という規格に基づいて、12語または24語の英単語でこのフレーズを構成しています(一般的な仕組みとして)。

重要なのは、このフレーズを知っている人は、そのウォレットに入っている資産を自由に動かせるという点です。取引所の口座であればパスワードを忘れても本人確認によって再発行できる場合がありますが、リカバリーフレーズにはそうした「再発行」の仕組みがありません。フレーズそのものが鍵であり、鍵を失えば資産に二度とアクセスできなくなり、鍵を他人に渡せばその人が資産を動かせるようになります。

この性質から、リカバリーフレーズの保管を考えるということは、現金や貴金属をどう保管するかを考えることに近いといえます。デジタルデータの感覚で扱うと、コピーのしやすさや便利さを優先してしまい、結果的にリスクを広げることになりかねません。ハードウェアウォレットを使っている場合も、端末そのものよりリカバリーフレーズの管理が最終的な要になります。仕組みの全体像はハードウェアウォレットの基本でも整理していますので、あわせて確認してみてください。

守るべき脅威は「なくす」と「盗まれる」の2つ

リカバリーフレーズを守るというとき、意識しておきたい脅威は大きく2種類あります。ひとつは、自分自身がフレーズの控えを失ってしまう「なくす」リスク。もうひとつは、第三者にフレーズを知られてしまう「盗まれる」リスクです。

この2つは、対策の方向がほぼ逆になります。「なくす」リスクに備えるなら、控えを複数箇所に残す、耐久性の高い媒体を使う、家族など信頼できる相手にも保管場所を伝えておく、といった「アクセスできる経路を増やす」方向の工夫が有効です。一方、「盗まれる」リスクに備えるなら、フレーズを見たり触れたりできる人や経路をできるだけ絞り込むという「アクセスできる経路を減らす」方向の工夫が必要になります。

つまり、なくさないようにと控えを増やしすぎると盗まれる可能性が上がり、盗まれないようにと厳重にしまい込みすぎると今度は自分が取り出せなくなる可能性が上がります。保管方法を決めるときは、この2つの脅威のどちらか一方だけを見て「安全」と判断しないことが大切です。次の章では、代表的な保管方法をこの2つの軸で比較します。

保管方法を比較する

代表的な保管方法を、紛失への強さと盗難への強さという2つの軸で整理すると、次のようになります。

保管方法 紛失への強さ 盗難への強さ 注意点
紙に書いて保管 △(火災・水濡れ・経年劣化に弱い) ○(保管場所を絞れば経路は少ない) 複製や目視がしやすい分、置き場所と閲覧できる人を限定する必要がある
金属プレートに刻印 ○(火災・水濡れに強く経年劣化しにくい) ○(保管場所を絞れば経路は少ない) 紙に比べて準備の手間がかかる。刻印後も保管場所の管理は必要
分散保管(複数箇所に分けて保管) △〜○(一部を失っても他が残る設計にできる) △〜○(一箇所が漏れても全体は揃わない設計にできる) 分割・保管の方法が複雑になるほど、自分自身が復元手順を忘れるリスクが上がる
暗号化ファイル(オフライン端末) △(端末の故障・紛失で読み出せなくなる場合がある) △(暗号化の強度とパスワードの管理に依存する) ネットワークに繋がない端末での運用が前提。パスワードを忘れると復元できない
クラウドストレージ・メール(非推奨) ○(サービス側にデータが残りやすい) ×(アカウントの乗っ取りや設定ミスで第三者に見られる経路が生まれる) 手軽さと引き換えに盗難への強さが大きく下がるため、避けたい方法とされる

表からも分かるとおり、紛失への強さと盗難への強さは、両方が同時に高いとは限りません。クラウドストレージやメールへの保存は紛失には強い一方、盗難への強さが大きく下がるため避けたい方法です。次の章で、この「やってはいけないこと」について具体的に整理します。

やってはいけないこと

リカバリーフレーズの取り扱いにおいて、避けたい行為はある程度共通しています。次のような行為は、資産の喪失につながり得ます。

  • リカバリーフレーズを他人に伝える(家族以外はもちろん、サポートを名乗る相手であっても)
  • リカバリーフレーズをスマートフォンやパソコンでスクリーンショットに撮る
  • オンラインストレージやメールにリカバリーフレーズを保存する
  • ウォレットの復旧や本人確認を装って、リカバリーフレーズの入力を求めるサイトに入力する

これらに共通しているのは、フレーズがインターネットに接続された環境や、第三者が見られる場所に一度でも触れてしまうという点です。正規のサポートがリカバリーフレーズを尋ねることはないとされています(一般論)。「復旧のために入力してください」「本人確認のため教えてください」といった案内があった場合は、それ自体が詐欺を疑うべきサインです。こうした手口は、2段階認証のコードを狙うフィッシング詐欺の考え方とも共通する部分が多く、フィッシング対策2段階認証の記事もあわせて確認しておくと、手口への理解が深まります。

耐久性を高める工夫

紙に書いて保管する方法は、手軽に始められる一方で、耐久性の面では弱点があります。紙は火災や水濡れに弱く、長期間保管していると経年劣化でインクが薄れたり、紙自体が劣化したりすることもあります。

こうした弱点を補う方法として、金属プレートなど耐久性の高い媒体にリカバリーフレーズを記録する方法があります。金属プレートは火災や水濡れに強く、経年劣化もしにくいとされています。紙に比べて準備の手間はかかりますが、長期間にわたって保管することを考えると、耐久性を優先する価値はあります。

どの媒体を使う場合でも、保管場所を1箇所に集中させると、その場所が被災した際にすべてを失うリスクが残ります。次の章で扱う「複数箇所への分散」も、耐久性を補う工夫のひとつとして検討の余地があります。

分散保管のトレードオフ

リカバリーフレーズを複数箇所に分けて保管する「分散保管」は、1箇所を失っても他が残るという意味で、紛失・盗難のどちらに対してもリスクを下げる工夫として検討されることがあります。フレーズ全体を複製して複数箇所に置く方法もあれば、フレーズを分割して、すべてが揃わないと復元できないようにする方法もあります。

ただし、分散保管には見落とされがちなトレードオフがあります。分割・保管の方法が複雑になるほど、いざ復元が必要になったときに、自分自身がどこに何を保管したか、どういう手順で組み合わせれば復元できるかを忘れてしまうリスクが上がるという点です。守るための工夫が、結果的に自分の首を絞めることにもなりかねません。

複数のウォレットを使っている場合は、なおさら管理が複雑になります。どのフレーズがどのウォレットに対応するのかという記録の残し方については、ウォレットと記録の記事でも整理していますので、分散保管を検討する際の参考にしてみてください。分散させる箇所を増やすほど「守れる強さ」は上がっても「自分が扱える複雑さ」も比例して上がる、という感覚を持っておくとよいでしょう。

相続や万一のときに家族が辿れるか

リカバリーフレーズの保管を考えるとき、自分がアクセスできることだけでなく、自分に万一のことがあったときに家族が資産に辿り着けるかどうかも、検討事項として挙げられます。

リカバリーフレーズを誰にも伝えず、保管場所も自分しか知らない状態にしておくと、盗難への強さは高まりますが、その代わりに、自分に何かあった場合に資産の存在自体が誰にも気づかれず、事実上失われてしまう可能性があります。相続の観点からは、家族に伝える方法や、一定の条件のもとで家族が保管場所に辿り着けるようにしておく方法も検討事項のひとつです。

どこまで家族に伝えるかは、家族構成や資産額、家族のリテラシーなどによっても変わってくる判断です。フレーズそのものを共有するのではなく、「どこに、どのような形で保管してあるか」という情報だけを伝えておく、という考え方もあります。盗難への強さと、万一のときに辿り着けるかどうかは、ここでもトレードオフの関係にあることを踏まえて、自分の状況に合わせて検討してみてください。

定期的に「復元できるか」を確認する

リカバリーフレーズを保管したら、それで作業が終わるわけではありません。保管した内容が、実際に復元に使える状態を保っているかどうかを、定期的に確認しておくことが望ましいといえます。

紙に書いた文字が薄れていないか、金属プレートに刻印した文字が読み取れる状態を保っているか、分散保管している場合はすべての保管場所を今も把握できているか、といった点を、時間をおいて見直す機会を作っておくとよいでしょう。パスフレーズ(いわゆる25語目)を追加できるウォレットを使っている場合は、パスフレーズ自体を忘れてしまうと、リカバリーフレーズが手元にあっても復元できなくなる点にも注意が必要です。

確認の際は、実際に別の端末やソフトウェアで復元操作を試すかどうかも含めて、慎重に判断してください。復元の確認作業自体が、フレーズを扱う場面を新たに作ることにもなるため、確認の頻度や方法は、保管方法とあわせて検討する必要があります。

よくある質問

リカバリーフレーズとシードフレーズは違うものですか

同じものを指す呼び方の違いです。ウォレットやサービスによって「リカバリーフレーズ」「シードフレーズ」「ニーモニックフレーズ」など呼び方が異なりますが、いずれもウォレットを復元するための単語の並びを指しています。

リカバリーフレーズを紛失した場合、サポートに問い合わせれば復元できますか

リカバリーフレーズは、サービス側が管理しているものではなく、利用者自身が保管する前提の仕組みです。そのため、紛失した場合にサポートへの問い合わせによって復元できるとは限りません。取引所の口座とは異なる性質のものであることを踏まえて、保管の段階で備えておくことが重要です。

パスフレーズ(25語目)は設定したほうがよいですか

パスフレーズは、リカバリーフレーズに加えてさらに1つの要素を追加できる機能で、対応しているウォレットもあります。盗難への強さを高める効果が期待できる一方、パスフレーズ自体を忘れてしまうと、リカバリーフレーズが手元にあっても復元できなくなります。設定する場合は、リカバリーフレーズとは別の方法で、パスフレーズ自体の控えも管理しておく必要があります。

家族にリカバリーフレーズを伝えておくべきですか

一概にはいえず、家族構成や資産額、伝える相手のリテラシーによって判断が分かれます。フレーズそのものを伝えるのではなく、保管場所や辿り着くための情報だけを伝えておく、という方法も検討事項のひとつです。相続の観点も含めて、自分の状況に合わせて検討してみてください。

まとめ

  • リカバリーフレーズは資産そのものであり、知っている人が資産を動かせる。紛失への強さと盗難への強さは別の軸で考える
  • 「なくす」対策はアクセス経路を増やす方向、「盗まれる」対策はアクセス経路を減らす方向で、対策の向きが逆になる
  • 他人に伝える・スクリーンショット・オンライン保存・入力要求への応答は避けたい行為
  • 紙は火災や水濡れに弱く、金属プレートなど耐久性の高い媒体も選択肢になる
  • 分散保管は強さを高める一方、復元の複雑さが増すというトレードオフがある
  • 相続や万一のときに家族が辿れるかどうかも、保管方法を考える上での検討事項
  • 保管して終わりにせず、定期的に「復元できる状態か」を確認する

本記事は一般的な情報提供です。設定手順や仕様は各サービスの公式案内をご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、投資判断はご自身の責任でお願いします。

Bitcoin Analyze 編集部