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2025年3月、アメリカ政府は捜査で押収したビットコインを売却せずに保有し続ける方針を打ち出し、「戦略的ビットコイン準備金」という言葉が一般ニュースの語彙になりました。それ以前から、エルサルバドルは政府予算でビットコインを買い増し、ブータンは国営事業として水力発電を使ったマイニングで保有量を積み上げてきたと報じられています。国家がビットコインを持つという光景は、すでに例外ではなくなりました。
とはいえ「国が買い集めるから価格が上がる」という単純な話でもありません。この記事では、国家保有には性質のまったく違う三つの経路があること、どの国がどの経路で持っているとされるか、そして国家採用が価格に効く仕組みと、それを押しとどめている現実的なハードルまでを順に整理します。読み終えるころには、次に同じ種類のニュースが流れてきたとき、それが本当に相場に効く話なのか、見出しだけの話なのかを自分で切り分けられるようになるはずです。
整理にあたっては、各国の中央銀行が公表している外貨準備の構成方針、米国で提出された関連法案の立て付け、公開ブロックチェーン上で追跡されている政府関連アドレスの集計を突き合わせています。数量や進捗は状況によって変わりますので、判断の前には必ず一次情報をご確認ください。それでは順に見ていきましょう。
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「ある国が保有している」と報じられるとき、その中身はまったく別の三つに分かれます。ここを混同すると、ニュースの意味を読み違えてしまいます。
押収による保有
犯罪捜査で差し押さえた分を、そのまま保管しているケースです。米国、中国、英国などがこの経路で大きな残高を持つとされています。政府から見れば取得コストがほぼゼロで、買う意思があって持っているわけではない点が特徴です。ドイツが2024年に押収分をまとめて市場で売却したように、方針がひとつ変われば供給側に回ります。
財政資金による購入
国家が意思を持って買う経路です。エルサルバドルが定期的な買い増しを公表してきたことが知られていますが、規模そのものは市場全体から見れば小さく、意味があるのは金額よりも「国家予算で買ってよい資産だと位置づけた」という前例のほうです。
国営マイニングによる採掘
ブータンが水力発電の余剰電力をマイニングに充て、電力を輸出する代わりにビットコインとして蓄えてきたと報じられています。市場で買わずに残高が増えるため、価格に直接の買い圧力を生まないのが特徴です。
米国の構想は「売らない」まで進み、「買う」はまだ法案の段階
2025年3月の大統領令により、連邦政府が保有する押収ビットコインは一元的に管理され、原則として売却しない方針が示されました。あわせて、納税者の負担を増やさない方法での追加取得を検討するよう指示が出されたと報じられています。一方で、年間20万BTCを5年かけて計100万BTC取得するという構想を含む法案は提出された段階にとどまり、成立には至っていません。
「保有分を売らない」と「新たに買う」は、市場へのインパクトがまったく違います。前者はもともと市場に出ていなかった分がそのまま出てこないだけで、新しい需要は生まれません。後者ははっきりとした新規の買いです。見出しではどちらも同じ「準備金」と書かれますが、この二つは必ず分けて読む必要があります。
州レベルでは、独自の準備金制度を法制化した州がある一方、多くの州で否決や継続審議になったと伝えられています。全体としては方向性が進んでいるものの、実際の買い付けまで到達した例は限られる、というのが2026年時点での落ち着いた見方でしょう。
主な国・地域の保有状況を整理する
| 国・地域 | 主な保有経路 | 特徴 |
|---|---|---|
| 米国 | 押収 | 公開データの集計では十数万BTC規模とされる。売却しない方針を明示 |
| 中国 | 押収 | 大型事件に由来する残高が追跡されているが、公式な保有表明はない |
| 英国 | 押収 | 司法手続きが進行中で、処分の方法そのものが議論の対象 |
| ブータン | 国営マイニング | 水力発電の余剰を活用。国の規模に対して保有比率が大きいとされる |
| エルサルバドル | 購入 | 国家予算による継続的な買い増しを公表。数千BTC規模 |
| その他 | 寄付・押収 | 有事の寄付受け入れなど、資産運用が目的ではない保有も存在する |
これらの数量は、公開されたブロックチェーン上の追跡データや報道の集計であって、各国政府が逐一公表しているものではありません。移管や売却で動きますので、あくまで規模感の目安として見てください。
国家採用が価格に効くとしたら、どの経路か
供給が動かなくなる
発行上限2,100万BTCのうち、国家が長期保有として抱え込む分は、事実上流通から外れます。売買される量が減れば、同じだけの需要でも価格は動きやすくなります。ただし押収分の「売らない」という宣言は、この効果を新しく生み出すものではない点に注意してください。
正当性が付与される
年金基金や事業会社が資産に組み入れるとき、最大の障害は価格変動そのものよりも「関係者に説明できるかどうか」です。国家が準備資産として扱う前例は、この説明の負担を下げる方向に働くと一般に考えられています。
追随が連鎖する可能性
他国が保有を始めた場合、後から買うほど高い価格を払うことになります。「先に持っておかないと不利になる」という構図が意識され始めると、動きは連鎖しやすくなります。もっともこれは可能性の話であり、そうなると決まっているわけではありません。
現実味を削ぐ四つのハードル
- 準備資産としての要件:中央銀行が準備資産に求めるのは、価格の安定性と、危機のときに大量に売っても値崩れしない流動性です。ビットコインは後者こそ改善してきたものの、前者の条件を満たしにくいという評価が一般的です。
- 国際機関との関係:融資条件の交渉において、価格変動の大きい資産の保有が財政上のリスクとして論点になった例が報じられています。支援を受ける立場の国ほど、自由には動けません。
- 政治サイクル:大統領令や条例は、次の政権や議会で覆すことができます。法律として固定されない限り、方針は数年単位で揺れ得ます。
- 保管と会計:数万BTC規模の秘密鍵を、誰がどのように分散して管理し、誰が監査するのか。技術というより行政手続きの設計問題であり、ここが整わなければ規模は増やせません。
個人投資家はこのテーマとどう付き合うべきか
まず、この分野は見出しと実態のずれが大きいと心得ておくことです。「政府が保有」は買い付けを意味しないことが多く、「政府のウォレットが動いた」も売却とは限りません。取引所への入金と、管理体制の変更にともなう内部移管は、外から見分けるのが難しいのです。数時間で結論を出さず、資金の行き先が確認できるまで待つだけで、多くの空振りを避けられます。
そのうえで、この流れを長期の追い風と見るなら、時間を分散して少しずつ積み上げるのが現実的です。国内で現物を買うなら、コインチェックのように口座開設から購入までの導線が分かりやすい取引所や、板取引の手数料体系を重視するならビットバンクのような選択肢があります。手順そのものは仮想通貨の始め方ガイドにまとめていますので、初めての方はそちらから読んでみてください。
まとまった額を長期で持つなら、保管もあなた自身の問題になります。国家が保管体制の設計に苦労しているのと同じ課題が、規模を小さくして個人にも降りてくるわけです。取引所に預けたままにせず、ハードウェアウォレットによる自己保管を検討する価値はあります。機種を選ぶ前に、どのような製品が流通しているかを眺めておくと、解説記事の内容も頭に入りやすくなります。売却益が出たときの扱いは仮想通貨の税金ガイドをご確認ください。
よくある質問(FAQ)
米国が本当に100万BTCを買うことはあるのですか
2026年時点では、その構想を含む法案は提出されたものの成立しておらず、実行された事実はありません。財源として金の評価替えや関税収入などが議論されてきましたが、いずれも公表資料の上では検討段階です。
可能性を否定はできませんが、「検討している」と「決まった」の間には大きな距離があります。報道に触れたときは、根拠となっている文書が大統領令なのか、法案なのか、担当者の発言なのかを確かめる習慣をつけてください。
政府の保有分が売却されると暴落しますか
ドイツが2024年に押収分を売却した際は相場に重しとなったと受け止められましたが、下落がその一因だけで説明できるわけではありません。売却の方法にもよります。市場で一気に売るのか、機関投資家に相対で渡すのかで、価格への影響はまったく変わります。
日本政府が準備金として保有する可能性はありますか
現時点でそうした方針は示されていません。日本の外貨準備は、円の安定に必要な流動性を重視した構成になっており、価格変動の大きい資産を組み入れるには法制度と会計の両面で整理が必要です。まずは資産としての位置づけを定める制度改正が先に来ると考えられます。
国家が保有を進めると、個人の保有は制限されますか
国家が保有することと、個人の保有を制限することは別の政策で、前者が後者を導くという関係にはありません。ただし各国で本人確認や税務上の報告に関する規制は強まる傾向にあります。取引記録は早い段階から残しておくほうが安全です。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。