ビットコイン - BTC

ビットコインの国別保有状況|各国政府・機関の保有量ランキング

ビットコインは、個人投資家やファンドだけでなく、各国政府や公的機関も保有する資産となりつつあります。2024年のビットコイン現物ETFの承認、そして2025年のトランプ政権による「戦略的ビットコイン備蓄」構想の発表を経て、国家によるビットコイン保有は、もはや一部の例外的な動きではなく、国際的な潮流として認識されるようになりました。

各国がビットコインを保有する経緯はさまざまです。犯罪捜査で押収されたビットコインをそのまま保有しているケース、法定通貨としてビットコインを採用したケース、外貨準備の多様化の一環として戦略的に購入したケースなど、その背景は国によって大きく異なります。

こうしたビットコインの国家保有の動きは、暗号資産市場の需給構造に直接的な影響を与える可能性があります。政府が保有するビットコインが市場に売却されれば売り圧力となり、逆に買い増しが行われれば買い圧力となります。また、「国家がビットコインを保有している」という事実自体が、ビットコインの正当性と信頼性を高める効果を持つとも指摘されています。

本記事では、2026年3月時点で把握できる各国政府・公的機関のビットコイン保有状況を整理し、その背景、市場への影響、そして今後の展望について解説していきます。

目次

  • 国家によるビットコイン保有の全体像
  • 米国のビットコイン保有と戦略的備蓄構想
  • エルサルバドルのビットコイン法定通貨採用とその後
  • 中国・ロシアなど主要国の保有状況
  • 欧州各国の保有状況と規制アプローチ
  • 企業・機関投資家の保有状況との比較
  • 国家保有が暗号資産市場に与える影響
  • 今後の展望と各国のビットコイン戦略
  • まとめ
  • よくある質問(FAQ)

  • 1. 国家によるビットコイン保有の全体像

    1-1. 世界の政府・公的機関のビットコイン保有量の推計

    2026年3月時点で、世界各国の政府や公的機関が保有しているとされるビットコインの総量は、複数のリサーチ会社の推計によると約50万〜60万BTC程度とされています。これはビットコインの総供給量(約1,970万BTC)の約2.5〜3.0%に相当し、決して無視できない規模です。

    主要な保有国を概観すると、以下のような順位になると推定されています(数値はおおよその推計であり、正確な保有量は公式に公開されていない場合が多い点にご留意ください)。

    • 米国: 約20万BTC以上(押収分を含む。戦略的備蓄の動向次第でさらに増加の可能性)
    • 中国: 約19万BTC(主に犯罪捜査での押収分。売却の有無は不透明)
    • 英国: 約6万BTC(押収分。一部は売却済みの可能性)
    • エルサルバドル: 約6,000BTC以上(法定通貨採用後の継続購入分)
    • ブータン: 約1万BTC以上(国営マイニング事業による保有)
    • ウクライナ: 約4万BTC(寄付として受領した分を含む。一部は売却済み)
    • ドイツ: 保有量は大幅に減少(2024年に大量売却を実施)

    これらの数値は、オンチェーンデータの分析やメディア報道、公式発表などを元にした推計値であり、実際の保有量とは異なる可能性があります。特に中国の保有状況については、情報の透明性が低く、推計の幅が大きいことに注意が必要です。

    1-2. 保有の経緯による分類

    各国政府のビットコイン保有は、その経緯によっていくつかのカテゴリーに分類できます。

    押収型: 犯罪捜査(マネーロンダリング、ダークウェブ取引、詐欺事件など)を通じてビットコインを押収し、そのまま保有しているケースです。米国、中国、英国、ドイツなどがこのカテゴリーに該当します。押収型の保有は、政府が積極的にビットコインを購入したわけではなく、法執行の結果として保有に至ったものです。

    戦略購入型: ビットコインを資産として評価し、戦略的に購入しているケースです。エルサルバドルは2021年のビットコイン法定通貨採用以降、定期的にビットコインを購入しており、このカテゴリーの代表例と言えます。米国のトランプ政権が提唱する「戦略的ビットコイン備蓄」構想も、実現すればこのカテゴリーに該当することになります。

    マイニング型: 国営のマイニング事業を通じてビットコインを取得しているケースです。ブータンは、水力発電の余剰電力を活用したビットコインマイニングを国営事業として行っていることが報告されており、注目を集めています。

    寄付・支援型: 紛争や危機的状況において、国際的な支援としてビットコインの寄付を受けたケースです。ウクライナは2022年のロシア侵攻以降、暗号資産による寄付を積極的に受け入れ、軍事物資の購入などに充当しています。

    1-3. ビットコイン保有データの信頼性と限界

    国家のビットコイン保有量を正確に把握することは、実は非常に困難です。

    まず、多くの国はビットコインの保有量を公式に開示していません。米国のようにある程度の情報が公開されている国もありますが、中国やロシアのように保有状況がほぼ不透明な国も多くあります。

    オンチェーン分析企業(Chainalysis、Arkham Intelligence、Glassnodeなど)は、ブロックチェーン上のアドレスを政府関連のウォレットとして特定し、その残高を追跡することで保有量を推計しています。しかし、政府が複数のウォレットに分散して保有している場合や、カストディサービス(保管代行業者)を利用している場合には、完全な追跡が難しくなります。

    また、押収したビットコインの法的処理が完了するまでの間、そのビットコインが「政府の保有」と見なせるかどうかという法的な問題もあります。裁判手続き中のビットコインは、最終的に原所有者に返還される可能性もあるため、確定的な「保有量」として扱うことには慎重さが求められます。


    2. 米国のビットコイン保有と戦略的備蓄構想

    2-1. 押収ビットコインの保有状況

    米国政府は、世界最大規模のビットコイン保有国のひとつとされています。その保有の大部分は、法執行機関による犯罪捜査を通じた押収によるものです。

    主要な押収事例としては、以下のようなケースが挙げられます。

    シルクロード事件: 2013年にFBIがダークウェブマーケットプレイス「シルクロード」を閉鎖した際に押収したビットコインが、米国政府の保有の出発点となりました。この事件では約14万4,000BTCが押収され、その後複数回にわたってオークションで売却されています。

    Bitfinexハッキング事件: 2016年のBitfinex取引所のハッキングで盗まれた約12万BTCの一部が、2022年にDOJ(米国司法省)によって回収されました。この回収は暗号資産史上最大規模の押収として話題となりました。

    その他にも、マネーロンダリングや詐欺事件に関連した押収が複数件あり、これらを合計すると米国政府の保有量は20万BTC以上に達すると推定されています。

    押収されたビットコインの処理は、通常、US Marshals Service(連邦保安官局)が担当し、オークションを通じて売却されてきました。しかし、2025年のトランプ政権の方針変更により、押収ビットコインの売却が一時停止され、「戦略的備蓄」としての活用が検討されるようになりました。

    2-2. トランプ政権の「戦略的ビットコイン備蓄」構想

    2025年、トランプ大統領は暗号資産に対して積極的な姿勢を示し、「戦略的ビットコイン備蓄(Strategic Bitcoin Reserve)」の創設を提唱しました。この構想は、暗号資産市場のみならず、国際金融の世界でも大きな注目を集めています。

    この構想の要点は以下の通りです。

    • 米国政府が保有する押収ビットコインを売却せず、戦略的備蓄として長期保有する
    • 追加のビットコイン購入についても検討する
    • ビットコインを金(ゴールド)と同様の戦略的資産として位置づける

    この構想が完全に実現すれば、米国政府は世界最大のビットコイン保有者のひとつとなり、ビットコインの「デジタルゴールド」としての地位が一段と強化されることが期待されています。

    一方で、この構想に対する批判的な見方も存在します。ビットコインのような価格変動の大きい資産を国の備蓄とすることの適切性、税金を使ったビットコインの購入に対する政治的な反対、そして政府の大量保有がビットコインの分散性という理念に反するのではないかという哲学的な議論もあります。

    2026年3月時点では、戦略的ビットコイン備蓄の具体的な運用方法や追加購入の計画について、まだ明確な公式発表は限られており、今後の政策動向が注目されています。

    2-3. 州レベルでのビットコイン関連政策

    米国では、連邦政府レベルだけでなく、州レベルでもビットコインに関する政策的な動きが活発化しています。

    いくつかの州では、州の年金基金や予算の一部をビットコインに配分することを検討する法案が提出されています。テキサス州、フロリダ州、ワイオミング州などは暗号資産に対して比較的友好的な規制環境を整備しており、ビットコインマイニングの誘致にも積極的です。

    特にテキサス州は、豊富なエネルギー資源と比較的安価な電力を背景に、ビットコインマイニングのハブとしての地位を確立しつつあります。テキサス州のマイニング産業は、余剰電力の活用や電力グリッドの安定化に貢献するという観点から、州政府から支持を得ています。

    ワイオミング州は、暗号資産に関する先進的な法制度を整備し、SPDI(特別目的預金機関)の設立を認めるなど、暗号資産ビジネスの誘致に注力しています。


    3. エルサルバドルのビットコイン法定通貨採用とその後

    3-1. 法定通貨採用の経緯と目的

    2021年9月、エルサルバドルは世界で初めてビットコインを法定通貨として採用しました。ナイブ・ブケレ大統領が主導したこの決定は、暗号資産の歴史における重要な転換点として記録されています。

    ビットコインの法定通貨採用の背景には、いくつかの要因がありました。

    送金コストの削減: エルサルバドルのGDPの約20%以上は海外からの送金(レミッタンス)で構成されています。従来の送金サービスでは手数料が送金額の10%以上に達することもあり、ビットコインを使うことでこの手数料を大幅に削減できるという期待がありました。

    金融包摂: 国民の約70%が銀行口座を持っていないとされるエルサルバドルにおいて、スマートフォンとビットコインウォレットを通じた金融サービスへのアクセスを拡大するという目標が掲げられました。

    国際的な注目の獲得: 小国であるエルサルバドルが暗号資産の分野で先進的な取り組みを行うことで、国際的な注目と投資を呼び込む狙いもあったとされています。

    政府は「Chivo」という公式ウォレットアプリを開発し、国民に30ドル相当のビットコインを無料配布するなど、普及促進策を実施しました。

    3-2. 法定通貨採用後のビットコイン保有推移

    エルサルバドル政府は、法定通貨採用以降、ビットコインの定期的な購入を続けてきました。

    ブケレ大統領はSNS上で「1日1BTC」の購入を発表するなど、ビットコインの積み増しを積極的にアピールしてきました。2026年3月時点で、エルサルバドル政府の保有量は約6,000BTC以上と推定されています。

    保有ビットコインの評価額は、ビットコインの価格変動に大きく左右されます。2022年のベアマーケットでは保有ビットコインの評価損が拡大し、IMF(国際通貨基金)や信用格付け機関から懸念が示されました。しかし、2023年後半以降のビットコイン価格の回復により、評価損は解消され、2024〜2025年の価格上昇局面では含み益が拡大したとされています。

    3-3. IMFとの関係と政策修正

    エルサルバドルのビットコイン政策は、IMFとの関係にも影響を与えてきました。

    IMFは、ビットコインの法定通貨採用に対して一貫して懸念を表明しており、「金融安定性に対するリスク」「消費者保護の問題」「財政リスク」などを理由に、政策の修正を求めてきました。2023〜2024年にかけて、エルサルバドルはIMFとの融資交渉の一環として、ビットコイン関連政策の一部を修正しています。

    具体的には、ビットコインでの納税を任意とする、公的機関のビットコイン関連活動を縮小するなどの措置が報告されています。ただし、ブケレ大統領はビットコインの購入を完全に停止したわけではなく、政策の「微調整」と位置づけているようです。


    4. 中国・ロシアなど主要国の保有状況

    4-1. 中国の押収ビットコインと暗号資産政策

    中国は、暗号資産に対して最も厳しい規制を課している主要国のひとつですが、同時に世界有数のビットコイン保有国でもあるという矛盾した状況にあります。

    中国政府の保有ビットコインは、主にPlusTokenポンジスキーム事件(2019年)をはじめとする大規模な詐欺事件の摘発で押収されたものです。PlusToken事件だけで約19万BTCが押収されたとされており、これは単一の事件で押収された金額としては当時最大規模でした。

    中国は2021年に暗号資産の取引とマイニングを全面的に禁止しており、政府が押収ビットコインをどのように処理しているかについては、情報がほとんど公開されていません。一部の報道では、地方政府レベルで押収された暗号資産が民間業者を通じてOTC(店頭取引)で売却されているケースがあるとされていますが、公式には確認されていません。

    中国のビットコイン保有の不透明性は、市場にとっても重要なリスク要因です。仮に中国政府が大量のビットコインを一度に市場で売却した場合、価格に大きな下落圧力がかかる可能性があります。

    4-2. ロシアのビットコイン関連動向

    ロシアは、暗号資産に対する政策が変遷を繰り返してきた国です。

    2022年のウクライナ侵攻と西側諸国による経済制裁を受け、ロシアは国際決済システム(SWIFT)からの排除や資産凍結などの制裁措置に直面しました。この状況下で、暗号資産を制裁回避の手段として活用しようとする動きが指摘されてきました。

    ロシア政府が公式にビットコインを「保有」しているかどうかについては、明確な情報は公開されていません。しかし、ロシアは世界有数のビットコインマイニング国であり、マイニング収益を通じた間接的なビットコインの蓄積が行われている可能性が指摘されています。

    2024〜2025年にかけて、ロシアは暗号資産マイニングの法制化を進め、マイニング事業者の登録制度を導入しています。また、国際貿易決済に暗号資産を活用する実験的な取り組みも報告されており、制裁環境下でのロシアの暗号資産戦略は引き続き注目されています。

    4-3. 中東諸国とアジア新興国の動向

    中東諸国やアジアの新興国でも、ビットコインに対する関心が高まっています。

    UAE(アラブ首長国連邦): ドバイを中心に暗号資産フレンドリーな規制環境を整備し、世界中の暗号資産企業を誘致しています。UAE政府自体がビットコインを直接保有しているという情報は確認されていませんが、政府系ファンドが暗号資産関連への投資を行っているとされています。

    ブータン: ヒマラヤの小国ブータンは、国営投資会社であるDruk Holdingを通じてビットコインのマイニング事業を展開していることが2023年に明らかになりました。水力発電の余剰電力を活用したマイニングは、環境負荷が低いとして注目を集めています。ブータンの保有量は約1万BTC以上と推計されており、国のGDPに対する比率では世界最大級です。

    シンガポール: シンガポールの政府系投資ファンドであるGIC(政府投資会社)やTemasekが、暗号資産関連企業への投資を行っていることが知られています。ただし、Temasekは2022年のFTX破綻で約2.75億ドルの損失を計上しており、直接的なビットコイン保有については慎重な姿勢を見せています。


    5. 欧州各国の保有状況と規制アプローチ

    5-1. ドイツの押収ビットコイン売却事例

    ドイツは、2024年に行った大規模なビットコインの売却で暗号資産コミュニティに大きな話題を提供しました。

    ドイツ連邦刑事局(BKA)は、映画海賊版サイトの運営者から押収した約5万BTCを、2024年6月〜7月にかけて市場で売却しました。この売却は、ビットコインの価格が約70,000ドル前後で推移していた時期に行われ、約30億ドル以上の売却額に達したとされています。

    この大量売却は、市場に一時的な売り圧力を与え、ビットコインの価格下落の一因となったとの指摘があります。ドイツ政府の売却に対して、暗号資産コミュニティからは「なぜ保有を続けなかったのか」「売却のタイミングと方法が市場に不必要な悪影響を与えた」といった批判が寄せられました。

    この事例は、政府による大量のビットコイン売却が市場に与える影響を如実に示したケースとして、後に各国の暗号資産処分方針に影響を与えたとされています。

    5-2. 英国の押収暗号資産の管理体制

    英国政府も、法執行を通じて相当量のビットコインを押収しています。

    英国の暗号資産押収・処分は、主にNCA(国家犯罪対策庁)が管轄しています。英国の押収暗号資産の保有量は、推定で約6万BTC程度とされていますが、公式な数字は十分に公開されていません。

    英国は2024年以降、押収暗号資産の処分方法についての法制度整備を進めています。「犯罪収益法(Proceeds of Crime Act)」の改正により、暗号資産の押収と処分に関する法的枠組みが強化されました。

    5-3. MiCA規制と欧州全体のアプローチ

    欧州連合(EU)は、2024年に暗号資産規制の包括的な枠組みであるMiCA(Markets in Crypto-Assets)規制を施行しました。MiCA規制は、暗号資産サービスプロバイダーの登録・ライセンス制度、ステーブルコインの発行規制、消費者保護措置などを包括的に定めたものです。

    MiCA規制は、各国政府のビットコイン保有を直接規制するものではありませんが、EU域内の暗号資産市場の透明性と安全性を高めることで、間接的に政府や公的機関の暗号資産への関与に影響を与える可能性があります。

    EU加盟国の中央銀行は、現時点ではビットコインの直接保有には消極的な姿勢を示しています。ECB(欧州中央銀行)は、ビットコインの価格変動性が中央銀行の準備資産としては不適切であるという立場を維持しており、デジタルユーロ(CBDC)の開発に注力しています。


    6. 企業・機関投資家の保有状況との比較

    6-1. マイクロストラテジーに代表される企業保有

    国家のビットコイン保有を理解するうえで、企業や機関投資家の保有状況と比較することは有意義です。

    マイクロストラテジー(現ストラテジー社)は、世界最大の企業ビットコイン保有者として知られています。2020年にマイケル・セイラーCEO(当時)の主導でビットコインの大量購入を開始して以来、継続的に買い増しを行い、2026年3月時点での保有量は約50万BTC近くに達しているとされています。

    この数字は、多くの国家の保有量を上回る規模であり、単一の企業がこれほどの量のビットコインを保有しているという事実は、暗号資産市場の集中リスクという観点からも注目されています。

    その他の主要な企業保有者としては、テスラ(約1万BTC)、ブロック(旧スクエア、約8,000BTC)、コインベース(自社保有分約1万BTC程度)などが挙げられます。

    6-2. ETFを通じた機関投資家の保有

    2024年1月のビットコイン現物ETF承認以降、ETFを通じたビットコインの保有は急速に拡大しています。

    2026年3月時点で、ビットコイン現物ETF全体の保有量は約120万BTC以上に達しているとの推計があります。これは、すべての国家の保有量を合計した数字をはるかに上回る規模です。

    主要なETFの保有量としては、以下のような数字が報告されています。

    • ブラックロック IBIT: 約55万BTC以上
    • フィデリティ FBTC: 約20万BTC以上
    • ARK Invest / 21Shares ARKB: 約5万BTC以上
    • グレースケール GBTC: 約20万BTC以上

    ETFの保有ビットコインは、実質的にはETFの投資家(個人投資家、機関投資家、年金基金など)が間接的に保有しているものです。ETFの保有量が国家の保有量を上回っているという事実は、ビットコインの所有構造において、民間セクター(ETFを通じた投資家)が政府セクターよりも大きな存在感を持っていることを示しています。

    6-3. 保有者の多様化とビットコインの分散度合い

    ビットコインの保有者構成は、年々多様化しています。

    初期のビットコインは、マイナーと初期採用者(アーリーアダプター)に集中していましたが、現在は個人投資家、企業、ファンド、ETF、国家など、多様な主体が保有する資産となっています。

    オンチェーンデータの分析によると、1,000BTC以上を保有するいわゆる「ホエール(大口保有者)」のウォレット数は、2020年以降やや減少傾向にある一方で、0.01〜1BTC程度を保有する小口ウォレットの数は着実に増加しています。これは、ビットコインの保有がより広範な層に分散していることを示唆しています。

    国家や大企業による大量保有は、ビットコインの分散性という理念に反するという批判がある一方で、多様な主体がビットコインを保有することで、単一の主体による市場操作のリスクが低減されるという見方もあります。


    7. 国家保有が暗号資産市場に与える影響

    7-1. 需給面への影響

    国家によるビットコイン保有は、暗号資産市場の需給バランスに直接的な影響を与えます。

    政府が保有するビットコインを売却する場合、それは市場にとって「売り圧力」となります。2024年のドイツ政府による約5万BTCの売却は、この影響を明確に示した事例でした。大量の売却が短期間に行われたため、市場価格に一時的な下押し圧力がかかりました。

    逆に、政府がビットコインの購入を行う、あるいは保有するビットコインを売却しないという方針を示す場合、それは市場からの供給減少を意味し、価格に対するプラスの影響が期待されます。米国の「戦略的備蓄」構想は、この観点から市場にポジティブなインパクトを与えているとされています。

    市場参加者にとって重要なのは、政府の保有ビットコインの動向を追跡することです。Arkham Intelligenceなどのオンチェーン分析プラットフォームは、政府関連と推定されるウォレットの動きをリアルタイムで追跡し、アラートを提供しています。政府ウォレットからの大量のビットコイン移動は、市場にとって重要なシグナルとなり得ます。

    7-2. ビットコインの正当性と信頼性への影響

    国家がビットコインを保有するということは、ビットコインの「正当な資産」としての地位を強化する効果があります。

    長年にわたり、ビットコインに対しては「投機的なバブル」「犯罪に使われる通貨」「いつか価値がゼロになるもの」といった否定的な見方が根強くありました。しかし、世界の主要国政府がビットコインを保有し、さらには戦略的備蓄として活用しようとしているという事実は、こうした否定的な見方に対する強力な反論材料となっています。

    特に、米国のような世界最大の経済大国がビットコインを「デジタルゴールド」として位置づけ、戦略的備蓄に組み入れようとしている動きは、他国の政策立案者や機関投資家に対して「ビットコインは真剣に検討すべき資産である」というメッセージを発信しています。

    7-3. 地政学的競争とビットコイン

    ビットコインの国家保有は、新たな地政学的競争の側面を持ちつつあります。

    米国がビットコインの戦略的備蓄を推進する場合、他国がその動きに追随する「ビットコイン軍拡競争」のような展開が起こる可能性があります。国家が外貨準備の一部をビットコインに配分する動きが広がれば、ビットコインの需要は構造的に増加し、価格の長期的な上昇圧力となる可能性があります。

    一方で、BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなど)は、米ドル依存からの脱却を目指す動きを強めており、ビットコインがこの文脈で果たす役割についても議論が行われています。ただし、BRICS諸国の多くは独自のCBDC開発に注力しており、ビットコインの国家的な採用に対しては慎重な姿勢を示しています。


    8. 今後の展望と各国のビットコイン戦略

    8-1. 戦略的備蓄の拡大可能性

    2026年以降、ビットコインの戦略的備蓄を検討する国が増加する可能性があります。

    米国の動きをきっかけに、他の主要国や新興国がビットコインの公的保有を検討するようになれば、「ゲーム理論」的な展開が起こり得ます。つまり、ある国がビットコインを保有し始めると、他の国も「乗り遅れたくない」という動機でビットコインの保有を検討するようになるという展開です。

    ただし、現実にはIMFや各国中央銀行からの反対意見、ボラティリティへの懸念、規制上の課題など、多くのハードルが存在します。戦略的備蓄の拡大は段階的に進む可能性が高く、まずは押収ビットコインの保有継続という形での「受動的な備蓄」から始まり、その後に積極的な購入へと移行するという流れが考えられます。

    8-2. CBDCとビットコインの関係

    各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発動向も、ビットコインの国家保有に影響を与える要因です。

    中国のデジタル人民元(e-CNY)、欧州のデジタルユーロ、日本のデジタル円など、主要国のCBDC開発は着実に進んでいます。CBDCは政府が発行・管理するデジタル通貨であり、ビットコインの分散型・非中央集権的な性質とは対照的です。

    CBDCとビットコインは競合関係にあるという見方がある一方で、共存が可能であるという見方もあります。CBDCは日常の決済や送金に使用され、ビットコインは価値の保存手段やインフレヘッジとして使用されるという役割分担が想定されています。

    8-3. 規制環境の変化と国家保有への影響

    暗号資産に対する規制環境は急速に変化しており、この変化が国家のビットコイン保有方針にも影響を与えています。

    G7やG20レベルでの暗号資産規制の国際的な調和が進みつつあり、FATF(金融活動作業部会)のガイドラインに基づいたAML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)規制の強化が各国で実施されています。

    規制の明確化は、国家によるビットコイン保有の障壁を下げる効果があると考えられます。法的な枠組みが整備されることで、政府や公的機関がビットコインを保有・管理するための制度的な基盤が整うためです。

    一方で、規制の強化が暗号資産の利用を制限する方向に作用する可能性もあり、規制環境の動向は引き続き注視が必要です。


    まとめ

    本記事では、各国政府・公的機関のビットコイン保有状況について包括的に解説しました。

    世界の政府・公的機関によるビットコイン保有量は合計で約50万〜60万BTCと推定されており、その経緯は押収型、戦略購入型、マイニング型、寄付型など多様です。米国は世界最大規模の保有国であり、トランプ政権の「戦略的ビットコイン備蓄」構想が実現すれば、国家保有の在り方が大きく変わる可能性があります。

    エルサルバドルの法定通貨採用は、ビットコインの国家的な活用の先駆的事例として重要ですが、IMFとの関係やマクロ経済的なリスクも指摘されています。中国やロシアなどの主要国の保有状況は不透明な部分が多く、市場のリスク要因のひとつとなっています。

    ETFを通じた機関投資家の保有が国家の保有量を大幅に上回っている現状は、ビットコインの所有構造が民間セクター主導であることを示しています。しかし、国家保有の動きが今後拡大すれば、ビットコインの正当性の強化と需給構造の変化を通じて、市場に大きな影響を与える可能性があるでしょう。

    ビットコインの国家保有は、暗号資産市場と国際金融の交差点に位置するテーマであり、今後も注目すべき動きが続くと考えられます。


    よくある質問(FAQ)

    Q1. なぜ各国政府はビットコインを保有しているのですか?

    各国政府がビットコインを保有する理由は多様です。多くのケースは犯罪捜査での押収が経緯であり、政府が積極的にビットコインを購入したわけではありません。ただし、エルサルバドルのように法定通貨として採用したり、米国のように戦略的備蓄として位置づけようとしたりする動きも見られます。外貨準備の分散化やインフレヘッジとしての価値を見出す国が今後増える可能性もあるでしょう。

    Q2. 政府がビットコインを大量に売却すると、価格にどのような影響がありますか?

    政府による大量売却は、市場に売り圧力を与え、価格の下落要因となり得ます。2024年のドイツ政府による約5万BTCの売却時には、ビットコイン価格に一時的な下押し圧力が観察されました。ただし、売却の規模やタイミング、市場全体の状況によって影響の程度は異なります。オンチェーン分析ツールを使って政府関連ウォレットの動きを追跡することで、大規模な売却の兆候を事前に把握できる場合もあります。

    Q3. 日本政府はビットコインを保有していますか?

    日本政府が戦略的にビットコインを保有しているという公式な発表はありません。日本では暗号資産は「金融資産」として規制されており、金融庁が暗号資産交換業者の登録制度を運用しています。日本銀行はデジタル円(CBDC)の研究を進めていますが、ビットコインの保有については検討が行われていないとされています。ただし、犯罪捜査で押収された暗号資産の処理については、一部のケースが報じられています。

    Q4. ビットコインの戦略的備蓄と金(ゴールド)の備蓄は同じようなものですか?

    類似点と相違点があります。類似点としては、どちらも有限な供給量を持ち、インフレヘッジの機能が期待されている点です。相違点としては、金は数千年の歴史を持ち価格のボラティリティが比較的低い一方、ビットコインは歴史が約17年と浅くボラティリティが高いという点があります。また、金は物理的な資産であり保管コストがかかりますが、ビットコインはデジタル資産であり保管の性質が異なります。ビットコインを「デジタルゴールド」と呼ぶ人もいますが、両者の特性は完全には一致しないことを理解しておく必要があるでしょう。

    Q5. 今後、ビットコインを法定通貨として採用する国は増えますか?

    現時点でビットコインを法定通貨として採用しているのはエルサルバドルと中央アフリカ共和国のみです。中央アフリカ共和国は2023年にビットコインの法定通貨の地位を撤回しており、エルサルバドルも政策の一部を修正しています。新たに法定通貨として採用する国が短期間に大幅に増加する可能性は高くないと考えられますが、法定通貨としての採用ではなく「準備資産としての保有」という形であれば、検討する国が増える可能性はあるでしょう。


    免責事項

    本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産の売買や投資行動を推奨するものではありません。記事中の各国のビットコイン保有量は推計値であり、実際の保有量とは異なる可能性があります。暗号資産の取引にはリスクが伴い、元本を失う可能性があります。各国の暗号資産規制は変更される可能性があるため、最新の情報を確認してください。投資判断はご自身の責任において行ってください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損失についても、筆者および当サイトは一切の責任を負いかねます。

    Bitcoin Analyze 編集部

    コメントを残す

    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください