税金・確定申告

暗号資産を寄付・贈与したときの税務|受け取る側と渡す側の扱い

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暗号資産を無償で渡したときの税務は、渡す側と受け取る側で見る税目が分かれます。受け取る側は贈与税、渡す側は所得税という二本立てで、さらに渡す相手が個人か法人かによって結論が変わります。この構造を先に押さえておくと、個別の疑問がどこに位置する話なのかを見失わずに済みます。

論点は大きく三つです。第一に、受け取る側にかかる贈与税を、いつの時点のいくらで評価するのか。第二に、渡す側に所得税の課税が生じる場合があるのはどんなときか。第三に、寄付として渡した場合に寄付金控除とどう関係するのか。この記事はこの順で進めます。

なお2026年8月時点で、個人の暗号資産取引による所得は原則として雑所得に区分され、総合課税の対象とされています。申告分離課税には移行しておらず、損益通算や繰越控除も認められていません。無償で渡す場面でも、この前提は変わりません。制度は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁の公表情報で確認してください。

全体の構造を先に押さえる

無償で財産が移動したとき、税は基本的に受け取った側にかかります。ただし、渡した側にも課税が生じる場面があり、それが暗号資産の贈与を分かりにくくしています。相手の属性ごとに、両方の側で何が起きるのかを並べたのが次の表です。

渡す相手・形態 受け取る側 渡す側
個人から個人への贈与 贈与税の対象。年間110万円の基礎控除を超えた部分に課税 原則として課税は生じないとされています
個人から法人への贈与 法人側の受贈益として法人税の計算に入る 時価で譲渡があったものとみなされる場合があるとされています
公益法人等への寄付 団体側の取扱いは団体の区分による 寄付金控除の対象となる一方、含み益の扱いが論点になります
相続・遺贈による取得 相続税の対象。財産として評価される 被相続人の側で新たな所得課税は生じないのが原則

表のとおり、個人どうしのやりとりであれば渡す側に課税は生じないのが原則です。一方、相手が法人になると渡す側にも所得税の論点が現れます。この違いを知らずに法人へ移転すると、想定していなかった課税が後から出てくる場合があります。

受け取る側:贈与税の基礎控除と評価

暦年課税と110万円の基礎控除

個人から財産を無償で受け取った場合、原則として贈与税の対象になります。暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までに受け取った財産の合計から基礎控除110万円を差し引き、残額に税率を適用する仕組みです。この110万円は受け取る側の1年あたりの枠であり、贈与者ごとの枠ではありません。複数の相手から受け取っていれば合算して判定します。

暗号資産だけを受け取った場合でも、現金や不動産を同じ年に受け取っていれば、それらとまとめて計算します。暗号資産は財産としての性質が見えにくいため、家族間のやりとりで意識されないまま基礎控除を超えている場合があります。

いつの価格で評価するか

贈与税の計算では、財産を課税時期の価額で評価します。暗号資産のように活発な市場があるものについては、課税時期における取引価格によって評価するという考え方が示されています。課税時期とは、贈与によって財産を取得した時点です。

実務で問題になるのは、その時点をいつと見るかと、どの取引所の価格を採るかです。移転の指示を出した日、取引が承認された日、相手の口座に反映された日はそれぞれずれ得ます。価格の変動が大きい局面では、日をひとつずらすだけで評価額が変わります。どの時点のどの価格を採用したのかを、当時の画面や記録とあわせて残しておくことが説明の前提になります。

受け取った暗号資産を売ったときの取得価額

贈与で受け取った暗号資産をその後に売却すると、今度は所得税の話になります。ここで必要になるのが取得価額で、贈与された財産の取得価額をどう引き継ぐかは資産の種類によって考え方が異なります。暗号資産についての取扱いは国税庁が公表している質疑応答の中で整理されているため、売却の前に最新版で確認しておく必要があります。贈与税と所得税で見る金額の意味が違う点は、混同しやすいところです。売却時の計算の流れは仮想通貨の税金ガイドにまとめています。

渡す側:原則は課税なし、ただし例外がある

個人から個人へ渡す場合

個人が個人に無償で暗号資産を渡した場合、渡した側に売却代金は入りません。したがって所得は生じず、渡す側に所得税の課税は原則として生じないと整理されています。課税されるのは受け取った側の贈与税です。

ただし、無償ではなく著しく低い価額で譲り渡した場合は別です。時価との差額が実質的な贈与とみなされ、受け取る側で贈与税の対象となる部分が生じる場合があります。親族間で名目上の代金を付けて移転するケースは、この論点に触れやすい形です。

法人が相手になる場合

相手が法人になると構造が変わります。個人が法人に対して資産を無償または著しく低い価額で移転した場合、時価で譲渡があったものとみなして所得を計算するという規定が所得税にあります。実際にはお金を受け取っていないのに、含み益に対して課税される可能性があるという意味です。

この規定が暗号資産にどこまで及ぶかは、資産の区分と所得区分の関係が絡む論点です。暗号資産の譲渡による所得は原則として雑所得に区分される一方、みなし譲渡の規定は資産の種類ごとに適用範囲が定められています。自分で設立した法人へ移す、事業用として法人名義に移す、といった場面では、移す前にこの点を確認しておく必要があります。

寄付として渡す場合

暗号資産を団体に寄付する場合、寄付金控除の対象になるかどうかは、相手が国や地方公共団体、特定公益増進法人、認定を受けた特定非営利活動法人といった区分に当たるかによります。控除の対象となる寄付であれば、支出した金額から一定額を差し引いた部分が所得控除の対象となり、団体によっては税額控除を選択できる場合もあります。

ここで整理が必要なのは二点です。ひとつは、寄付した金額をいくらと見るのか。現物で寄付した場合、寄付時点の時価をもって寄付額とするのが一般的な考え方ですが、その時価をどう決めるかは評価の問題として残ります。もうひとつは、含み益の扱いです。相手が法人であることから、上で述べたみなし譲渡の論点が同時に立ち上がる場合があり、控除が受けられる一方で課税も生じるという構造になり得ます。

公益を目的とする事業への現物寄付については、一定の要件のもとで課税を留保する承認の仕組みも設けられています。ただし要件と手続きが定められており、寄付をした後から遡って整えられるものではありません。金額が大きい場合ほど、渡す前に確認しておく必要があります。

渡す前に踏む手順

贈与も寄付も、移転してしまうと後戻りができません。次の順で確認しておくと、想定外の課税を減らせます。

  1. 渡す相手が個人か法人かを確定し、上の表のどの行に当たるかを特定する
  2. 受け取る側がその年に受け取る他の財産を洗い出し、基礎控除110万円との関係を先に確認する
  3. 渡す予定の暗号資産の取得時期と取得価額を調べ、含み益がどの程度あるかを把握する
  4. 移転する日を決め、その日の時価をどの取引所の価格で拾うかを事前に決めておく
  5. 移転の記録を、日時、数量、送付先、当時の価格がわかる形で保存する
  6. 寄付の場合は、受領証や団体の区分がわかる資料をあわせて保管する

取得価額の把握には、取引所の記録をさかのぼる作業が必要です。コインチェックをはじめ多くの取引所が過去の取引記録を提供しており、複数の取引所にまたがる場合はクリプタクトのような集計サービスで通算する方法もあります。

よくある質問(FAQ)

家族に少額ずつ渡していれば贈与税はかかりませんか

年間の合計が基礎控除110万円以下であれば、暦年課税では贈与税がかからない計算になります。ただし判定するのは受け取る側の年間合計であり、他の贈与者から受け取った分も合算します。また、あらかじめまとまった金額を渡すことを決めたうえで分割しているとみられる場合、全体を一つの贈与として扱われる可能性が指摘されています。渡し方の形式より、当事者の合意の内容が問われます。

自分の別の口座に移すのも贈与になりますか

同一人物が自分の管理する口座間で移動させた場合、財産の帰属が変わっていないため贈与には当たらないのが原則です。ただし、名義が他人になっている口座へ移した場合は、実質的な帰属が誰にあるかという判断が入ります。名義と実態が食い違う状態は、贈与税だけでなく相続の場面でも論点になります。

贈与で受け取った暗号資産に損失が出たら他の所得と相殺できますか

受け取った暗号資産を売却して損失が出た場合でも、雑所得に区分されるかぎり給与所得などとの損益通算はできず、損失を翌年へ繰り越すこともできません。同じ年の他の雑所得と内部で相殺できる範囲にとどまります。この扱いは2026年8月時点で変わっていません。

寄付すれば含み益への課税を避けられますか

避けられるとはかぎりません。寄付先が法人である場合、寄付金控除の対象になる一方で、時価による譲渡があったものとみなす規定の適用が論点になり得ます。控除額と課税額のどちらが大きいかは、含み益の大きさとその年の所得によって変わります。金額が大きい寄付ほど、実行前に両面を確認する必要があります。

相談する前に整理しておきたい論点

この分野で判断が分かれるのは、次の三点に集約されます。第一に、贈与の成立時点をいつと見て、どの価格で評価するか。第二に、相手が法人である場合にみなし譲渡の規定がどこまで及ぶか。第三に、贈与で取得した暗号資産の取得価額をその後の売却でどう扱うか。いずれも、渡す相手と資産の状況によって結論が動きます。

専門家に相談する際は、渡す相手の属性、移転の予定日、対象銘柄の取得時期と取得価額、受け取る側のその年の他の受贈財産、この四つを手元にそろえておくと話が早く進みます。制度の位置づけを確認したい場合は金融庁の暗号資産関係ページを、税務の取扱いは国税庁の公表情報を一次資料として確認してください。関連する記事は税金・確定申告カテゴリに、口座の開設から取引までの流れは仮想通貨の始め方ガイドにまとめています。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。

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この記事について

執筆・編集:Bitcoin Analyze 編集部

金融庁・国税庁および各事業者の公式資料にあたり、基準日と定義を固定したうえで記事を作成しています。価格予測や利益保証は扱いません。事業者の条件は変更されるため、最終的な判断は公式情報をご確認ください。

主な参照先

Bitcoin Analyze 編集部

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