仮想通貨の贈与・相続税:家族への引き継ぎ方と節税対策【2026年版】

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キーワード: 確定申告・税金・仮想通貨

仮想通貨の資産価値が増大するにつれ、家族への引き継ぎ方が重要な課題となっています。ビットコインや他の暗号資産を贈与・相続する場合、通常の金融資産と同様に贈与税・相続税の対象となります。しかし、仮想通貨特有の評価方法やウォレット管理の問題など、従来の資産にはない複雑さがあります。

仮想通貨の贈与・相続税:家族への引き継ぎ方と節税対策【2026年版】

本記事では、仮想通貨の贈与税・相続税の基本から、節税対策、ウォレットのシードフレーズ引き継ぎ問題、遺言書への記載方法まで、2026年版として詳しく解説します。

1. 仮想通貨と贈与税の基本

1-1. 仮想通貨の贈与は課税対象

仮想通貨を無償で他者に渡す「贈与」は、受贈者(もらった側)に贈与税が課税されます。仮想通貨は税法上「財産」として扱われるため、現金・不動産・有価証券などと同様に贈与税の計算に含まれます。

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。仮想通貨の贈与額は、贈与を行った日の取引所の公示価格で評価します。

1-2. 贈与者側にも課税リスクがある

見落とされがちですが、仮想通貨を贈与した側(贈与者)にも課税リスクがあります。仮想通貨を贈与する行為は、税務上「低廉譲渡」に準じて扱われることがあり、贈与した時点での評価額と取得価額の差額が所得(雑所得)として課税されるという見解があります。

国税庁はこの点について明確なガイドラインを出していませんが、保守的に考えれば贈与者側も所得計算を行っておくことが望ましいです。税理士に相談することをおすすめします。

1-3. 贈与税の税率と計算方法

贈与税の税率は「一般税率」と「特例税率(直系尊属からの贈与)」の2種類があります。2026年時点の税率は以下の通りです。

一般税率(兄弟・他人間など)

  • 200万円以下:10%
  • 300万円以下:15%(控除額10万円)
  • 400万円以下:20%(控除額25万円)
  • 600万円以下:30%(控除額65万円)
  • 1,000万円以下:40%(控除額125万円)
  • 1,500万円以下:45%(控除額175万円)
  • 3,000万円以下:50%(控除額250万円)
  • 3,000万円超:55%(控除額400万円)

特例税率(父母・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与)は、一般税率より低い税率が適用されます。

2. 暦年課税 vs 相続時精算課税

2-1. 暦年課税とは

暦年課税は、毎年1月1日〜12月31日の1年間(暦年)に受けた贈与の合計額から110万円の基礎控除を差し引いた金額に課税される方式です。毎年コツコツと非課税枠を活用することで、長期的に資産を移転できます。

ただし、2023年の税制改正により、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるよう変更されました(従来は3年以内)。この改正は2024年1月1日以降の贈与から適用されるため、贈与計画を早めに立てることが重要です。

2-2. 相続時精算課税とは

相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できる制度です。贈与時には累積2,500万円まで非課税(特別控除)となり、それを超えた分に一律20%の贈与税が課税されます。そして贈与者が亡くなった時点で、過去に贈与した財産を相続財産に加算して相続税を計算します。

2024年の税制改正から、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が追加されました。この基礎控除分は相続財産への加算の対象外となるため、使い勝手が改善されています。

2-3. どちらを選ぶべきか

選択のポイントは「相続財産の総額」と「今後の価格動向」です。仮想通貨のように将来的に価格上昇が期待される資産は、現在の低い評価額で早期に贈与してしまう方が有利な場合があります。一方、相続財産の総額が基礎控除内(3,000万円+600万円×法定相続人数)に収まる見込みなら、複雑な精算課税を選ぶ必要はないかもしれません。

3. 仮想通貨の贈与評価額の計算

3-1. 評価時点と評価方法

仮想通貨を贈与する際の評価額は、原則として贈与を行った日の取引所公表価格(終値)を用います。主な評価基準は以下の通りです。

  • 国内の主要取引所(コインチェック・bitFlyerなど)の終値を参照
  • 複数の取引所で価格が異なる場合は、取引量が最大の取引所の価格を採用するのが一般的
  • ビットコイン以外のアルトコインも同様の方法で評価

3-2. 課税価格の計算例

例えば、ビットコイン0.5BTCを贈与する場合を考えてみましょう。

  • 贈与日のBTC価格:1,000万円/BTC
  • 贈与額:0.5BTC × 1,000万円 = 500万円
  • 基礎控除:110万円
  • 課税価格:500万円 − 110万円 = 390万円
  • 贈与税(一般税率):390万円 × 20% − 25万円 = 53万円

3-3. 複数年に分けた贈与の効果

毎年110万円以内の贈与を繰り返すことで、無税で資産を移転できます。例えば、ビットコインを少量ずつ毎年贈与する方法が考えられます。ただし、最初から分割贈与の計画があったと判断されると「定期贈与」とみなされ、合計額に対して一括で贈与税が課税されるリスクがあります。毎年、個別の贈与契約書を作成することをおすすめします。

4. 相続税の計算方法

4-1. 相続税の基礎控除

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人数」の基礎控除があります。相続財産の合計額がこの基礎控除以下であれば、相続税はかかりません。

例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。

4-2. 仮想通貨の相続税評価

相続税における仮想通貨の評価額は、被相続人(亡くなった方)の死亡日時点の取引所公表価格によります。国税庁の財産評価基本通達では、暗号資産は「活発な市場が存在する暗号資産」として、課税時期(相続開始日)における取引所の公表価格で評価することとされています。

具体的には、相続開始日の最終価格(またはその日の公表価格)を参照します。取引所が複数ある場合は、合理的と判断される取引所の価格を採用します。

4-3. 相続税の申告期限

相続税の申告期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月以内です。仮想通貨の場合、価格変動が激しいため、この10か月間で大きく価格が動く可能性もあります。申告期限を過ぎると延滞税が加算されるため、早めに税理士に相談することが重要です。

5. 相続時の名義変更手続き

5-1. 取引所の名義変更(相続手続き)

国内の主要取引所(コインチェック・bitFlyer・GMOコインなど)では、口座名義人が死亡した場合の相続手続きが設けられています。一般的な手順は以下の通りです。

  • 取引所のサポートに「相続に伴う名義変更」を申請
  • 必要書類(死亡診断書・戸籍謄本・遺産分割協議書・相続人の本人確認書類など)を提出
  • 審査完了後、相続人の口座に仮想通貨を移転または換金

手続きには数週間〜数か月かかる場合があります。また、取引所によって手続きの方法が異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

5-2. ハードウォレット・セルフカストディの相続問題

Ledger NanoやTrezorなどのハードウォレットや、ソフトウェアウォレットで自己管理している仮想通貨は、取引所経由の相続手続きが存在しません。ウォレットのシードフレーズ(リカバリーフレーズ)がわからなければ、資産にアクセスすることが完全に不可能です。

6. ウォレットのシードフレーズ引き継ぎ問題

6-1. シードフレーズとは何か

シードフレーズ(リカバリーフレーズ)とは、仮想通貨ウォレットを復元するために必要な12〜24語の英単語の並びです。このフレーズさえあれば、どのデバイスからでもウォレットを復元してすべての資産にアクセスできます。逆に、このフレーズを失うと資産は永久に取り出せなくなります。

6-2. シードフレーズの安全な引き継ぎ方法

シードフレーズを家族に引き継ぐ際は、セキュリティと利便性のバランスを取ることが重要です。主な方法は以下の通りです。

  • 紙への書き記し:防水・耐火の金庫に保管。遺言書と一緒に管理する方法が一般的
  • 金属プレートへの刻印:Cryptosteel・Billodrillなどの製品。火災・水害に強い
  • 分割保管(シャミアの秘密分散):フレーズを複数に分割し、異なる場所に保管。1つが漏れても全体は復元できない
  • 信頼できる専門家への預託:公証人・弁護士など。秘密証書遺言として公証役場に預ける方法も

最も避けるべきことは、デジタルデータ(クラウド・メール)としてシードフレーズを保存することです。ハッキングや情報漏洩のリスクがあります。

6-3. デジタル遺品への対応

仮想通貨はデジタル遺品(デジタル資産)の代表例です。家族が相続人として適切にアクセスできるよう、以下の情報を整理して安全な場所に保管しておくことをおすすめします。

  • 利用している取引所・ウォレットの一覧
  • 各取引所のログイン情報(メールアドレスなど)
  • ハードウォレットの保管場所
  • シードフレーズの保管場所(シードフレーズそのものは別管理)
  • 二段階認証の復元コード

7. 遺言書への仮想通貨の記載方法

7-1. 自筆証書遺言 vs 公正証書遺言

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は自分で書けますが、法的要件(全文自筆・日付・押印)を満たさないと無効になるリスクがあります。公正証書遺言は公証人が作成を補助するため、法的効力が確実です。費用はかかりますが、デジタル資産のような複雑な財産を含む場合は公正証書遺言が推奨されます。

7-2. 仮想通貨の記載例

遺言書への記載は、財産を特定できる形で書く必要があります。記載例は以下の通りです。

  • 「コインチェック株式会社に預けている仮想通貨一切を、長男○○に相続させる」
  • 「Ledger Nano(○○の金庫に保管)に保有するビットコイン一切を、長女○○に相続させる。リカバリーフレーズは別紙に記載する(封印して保管)」

取引所名・ウォレット種別を明記し、相続人が迷わず手続きできるよう具体的に記載することが重要です。

7-3. 法務局での遺言書保管制度の活用

2020年7月から「自筆証書遺言書保管制度」が施行されました。法務局に自筆証書遺言を預けることで、遺言書の紛失・改ざんリスクを防ぐことができます。手数料は3,900円と低廉です。デジタル資産を含む遺言書の保管先として活用を検討してみましょう。

まとめ

仮想通貨の贈与・相続は、通常の金融資産と基本的なルールは同じですが、評価方法やウォレット管理など特有の課題があります。暦年贈与を活用した長期的な資産移転計画や、ウォレットのシードフレーズを安全に引き継ぐ準備を早めに進めることが重要です。

税額の計算や節税対策については、仮想通貨に詳しい税理士への相談をおすすめします。また、遺言書の作成にあたっては公正証書遺言を検討し、デジタル遺品への対応を家族と事前に話し合っておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 仮想通貨を親から受け取った場合、いくらまで非課税ですか?

A. 年間110万円以下であれば贈与税はかかりません(暦年課税の基礎控除)。また、20歳以上の方が直系尊属(父母・祖父母)から贈与を受ける場合は特例税率が適用され、一般税率より税率が低くなります。

Q2. ビットコインの相続税評価額はいつの価格を使いますか?

A. 被相続人が亡くなった日(相続開始日)の取引所公表価格を使用します。価格変動が大きい場合は、申告日までの価格動向にかかわらず、相続開始日の価格が基準となります。

Q3. 海外取引所に預けている仮想通貨も相続税の対象ですか?

A. はい、対象です。日本の相続税は、被相続人が日本の居住者であれば、国内外の全財産が対象となります。海外取引所の口座も相続財産に含まれます。

Q4. シードフレーズを誰にも伝えずに亡くなると、資産はどうなりますか?

A. 誰もアクセスできなくなり、資産は永久に失われます。ブロックチェーン上に資産が残ったまま誰も動かせない状態となります。このリスクを防ぐために、生前にシードフレーズの引き継ぎ方法を準備しておくことが非常に重要です。

Q5. 仮想通貨を子どもへ名義変更(贈与)した場合、子どもがその後売却したら税金はかかりますか?

A. はい、かかります。子どもが売却した際の取得価額は、贈与を受けた日の評価額ではなく、元の所有者(贈与者)の取得価額を引き継ぐことになります(取得費の引継ぎ)。この点は税理士に確認されることをおすすめします。

※本記事は情報提供を目的としており、投資・税務を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。税務上の判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。