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コンビニのレジでスマートフォンを取り出し、保有しているビットコインで数百円の支払いを済ませる。手続きは数秒で終わり、電子マネーで払うのとほとんど変わりません。
ところが日本の税制では、この数秒のあいだに「利益の確定」が起きています。日本円に換金していなくても、ビットコインを支払いに使った時点で、それまでの値上がり分は所得として集計の対象になります。少額だからと気に留めずに一年間使い続け、確定申告の時期になって初めて金額の大きさに気づく、という順番になりやすいところです。
この記事では、なぜ決済が課税のきっかけになるのかという仕組みから始めて、実際にいくらの所得が生まれるのかを計算例で確かめ、あとから困らない記録の残し方までを一本の流れで整理します。読み終えるころには、ビットコインを「使ってよい場面」と「記録が必要な場面」の線引きを自分で引けるようになるはずです。国税庁が公開している暗号資産の取り扱いに関する資料と、主要な取引所が発行する年間取引報告書の様式を突き合わせ、実務でつまずきやすい点を中心にまとめました。順に見ていきましょう。
支払った瞬間に「売った」ことになる
暗号資産で商品やサービスの代金を支払うと、税務上は保有していたビットコインを時価で手放し、その代金で商品を買ったという二段階の取引として扱われるのが一般的な考え方とされています。つまり決済は、「使う」行為であると同時に「手放す」行為でもあるわけです。
日本円に換えていないのに課税される理由
課税されるのは、保有しているあいだの値上がり(含み益)そのものではありません。手放したことで利益が実現したと見なされる点がポイントです。取引所で売って日本円を受け取った場合も、レジでビットコインを渡して商品を受け取った場合も、手元のビットコインが減って別の経済的価値が入ってくるという構造は変わりません。だから同じ扱いになります。
この考え方が理解できると、後で触れる「暗号資産同士の交換」や「NFTの購入」も自然につながります。基礎から確認したい方は仮想通貨の税金ガイドもあわせてご覧ください。
いくらの所得になるのか、計算例で確認する
言葉だけでは実感がわかないので、数字を置いてみます。1BTCが400万円のときに購入し、1BTCが800万円になった時点で、8万円の家電をビットコインで支払ったケースです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得時のレート | 1BTCあたり400万円 |
| 決済時のレート | 1BTCあたり800万円 |
| 商品の価格 | 80,000円 |
| 支払った数量 | 0.01BTC |
| その数量の取得原価 | 40,000円 |
| この決済で生じた所得 | 40,000円 |
8万円の買い物で、4万円の所得が生まれました。式にすると「支払いに充てた商品価格 - 手放した数量の取得原価」です。暗号資産の利益は原則として雑所得に区分され、給与などほかの所得と合算して総合課税で計算されるとされています。適用される税率は所得の合計額によって変わり、所得税は累進で数パーセントから40パーセント台、これに住民税と復興特別所得税が加わるのが一般的な整理です。税率や計算方法は改正されることがあるため、申告前に必ず公式情報をご確認ください。
一回は小さくても、年間では積み上がる
1回あたりの所得が数百円でも、週に数回の決済を一年続ければ回数は簡単に100を超えます。しかも上の例のように、購入時からの値上がり幅が大きいほど、支払額に占める所得の割合は高くなります。決済のたびに損益が発生する、という感覚を先に持っておくと安全です。
課税のきっかけは決済だけではない
暗号資産同士の交換
ビットコインをイーサリアムなど別の通貨に交換した場合も、ビットコインを手放していますから、その時点で損益が計算されます。日本円を一度も介していないため、見落とされやすい代表例です。
NFTの購入やネットワーク手数料
NFTやオンラインサービスの支払いに暗号資産を充てた場合も考え方は同じです。ブロックチェーンの利用料として支払うネットワーク手数料(ガス代)についても、暗号資産を手放している以上は扱いの整理が必要になります。分散型のサービスを使う機会が多い方はDeFi・Web3の解説記事もあわせて確認し、取引の種類ごとに記録の粒度を決めておくと安心です。
「年間20万円まで申告不要」の落とし穴
給与を1か所から受けている会社員で、給与以外の所得の合計が年間20万円以下であれば所得税の確定申告を省略できる、という取り扱いが広く知られています。ただしここには注意点が3つあります。
- 判定に使うのは売買の利益だけでなく、決済や交換で生じた所得も合算した金額である
- これは所得税の話であり、住民税については別途申告が必要になるのが一般的とされている
- 医療費控除やふるさと納税などの理由で確定申告をする場合は、20万円以下でも暗号資産の所得を申告書に含める必要がある
つまり「20万円以下だから何もしなくてよい」とは限りません。少額でも年間の金額は把握しておく、と考えておくのが実務的です。申告手続きの全体像は税金・確定申告のカテゴリにまとめています。
決済を使うなら、記録はこう残す
最低限そろえたい4項目
- 決済した日時(できれば分単位まで)
- 支払った数量
- その時点の日本円換算レート
- 支払先と用途(経費性を判断する材料になる)
レートは決済時点のものを、取引所が公表する価格など合理的な基準で継続して使うのが基本です。年の途中で基準を変えないことが大切です。
取引所の履歴と計算ツールを組み合わせる
取引所での売買履歴は、年間取引報告書やCSVの形で取得できます。たとえばコインチェックのような国内取引所では、年間の取引をまとめた資料が用意されています。一方、店舗やオンラインでの決済は取引所の外で起きることが多いため、決済アプリ側の明細を別途保存しておく必要があります。件数が増えてきたら、クリプタクトのような損益計算ツールに履歴を取り込み、取得原価の計算をまとめて処理する方法が現実的です。
取得原価の計算方法は先に決めておく
同じ通貨を複数回に分けて買っている場合、手放した分の取得原価は総平均法または移動平均法で計算するのが一般的とされています。どちらを使うかは所定の届出で選択し、原則として継続して適用します。方法が変われば同じ取引でも所得金額が変わるため、最初に決めて記録の形式もそろえておくと、翌年以降の作業がぐっと楽になります。これから口座を用意する方は仮想通貨の始め方ガイドの手順に沿って、履歴を取り出しやすい環境を先に整えておきましょう。
よくある質問(FAQ)
数百円の買い物でも申告が必要ですか
1件ごとの金額ではなく、1年間の所得の合計で判断します。少額の決済でも所得は発生しているため、その積み上げが申告の要否を左右します。金額の大小にかかわらず、記録は残しておくのが安全です。
値下がりしている状態で決済した場合はどうなりますか
取得原価を下回る価格で手放したことになり、その分は損失として扱われます。同じ年の暗号資産の利益とは相殺できますが、給与所得などほかの区分の所得と相殺することはできないとされています。
使うレートは取引所によって違いますが、どれを使えばよいですか
自分が主に使っている取引所や決済サービスが提示する価格など、合理的に説明できる基準を選び、継続して適用するのが原則です。年ごとに都合のよい基準へ乗り換えるのは避けてください。
過去の決済の記録が残っていません
まずは取引所の履歴、決済アプリの利用明細、ウォレットの送金履歴を、可能な範囲でさかのぼって復元します。それでも埋まらない場合や金額が大きい場合は、税理士など専門家に相談し、合理的な方法で計算する方針を決めるのが現実的です。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。
判断に迷う論点は、先に確認したほうが早い
この記事で扱ったのは、公開されている情報から言える一般的な扱いです。実際の申告では、自分の取引履歴に当てはめたときに判断が要る場面が出てきます。区分の判定、過年度の修正、複数の論点が重なる場合などです。
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