イーサリアム - ETH

Layer2とERC-4337スマートウォレットの相乗効果:Arbitrum・Base・zkSyncの最前線

Layer2スケーリングソリューションとスマートウォレット(ERC-4337)は、互いの長所を引き出し合う相性の良い技術です。イーサリアムのLayer2チェーンではガス代が数百分の一以下になるため、スマートウォレットのオーバーヘッドが実質的に問題とならず、一般ユーザー向けの本格的な普及が可能になります。

Arbitrum、Optimism、Base、zkSync、Polygonといった主要Layer2では、ERC-4337のインフラ(バンドラー、ペイマスター、スマートウォレット)の整備が急速に進んでいます。特にCoinbase Walletが採用したBase上のスマートウォレットや、zkSync Eraのネイティブアカウント抽象化は、この分野の発展を牽引しています。

本記事では、Layer2チェーンとERC-4337スマートウォレットの組み合わせがもたらす相乗効果を解説し、各チェーンの特徴的な取り組みを比較します。Web3の次世代ユーザー体験がどこで最も先進的に実現されているか、一緒に見ていきましょう。

Layer2とERC-4337の相乗効果:なぜ組み合わせが強力なのか

ガス代コストとスマートウォレットのオーバーヘッド

ERC-4337のスマートウォレットは、通常のEOAトランザクションと比較してガスを多く消費します。バンドラーの処理、EntryPointのロジック実行、ウォレットコントラクトの検証など、追加のオーバーヘッドが発生します。

イーサリアムメインネットでは、このオーバーヘッドが数ドル〜十数ドル規模になり、小額取引では経済的に成立しません。しかしLayer2では、同じオーバーヘッドが0.001ドル以下になるケースがあります。

具体的に比較すると、以下のようになります。

  • Ethereum Mainnet:シンプルな送金で5〜20ドル、スマートウォレット経由では15〜50ドル
  • Arbitrum One:シンプルな送金で0.05〜0.5ドル、スマートウォレット経由でも0.1〜1ドル程度
  • Base:シンプルな送金で0.01〜0.1ドル、スマートウォレット経由で0.02〜0.2ドル程度
  • zkSync Era:ネイティブAA採用により、一般的なトランザクションで0.01ドル以下

この差により、Layer2ではペイマスターによるスポンサリングも経済的に持続可能となります。

ユーザー体験の実質的な改善

Layer2上のスマートウォレット+ペイマスターの組み合わせにより、以下のような体験が実現します。

  • 初心者ユーザーが取引所からL2に資金をブリッジせずに、dAppのオンボーディングフロー内で完結する資金調達
  • ゲームやSNS型dAppで、従来のモバイルアプリと変わらないUX
  • ERC-20トークンのみ保有するユーザーがETHなしでDeFiを利用できる体験

ArbitrumとOptimismにおけるERC-4337の実装状況

Arbitrum OneとNitroアーキテクチャ

Arbitrumはイーサリアムのフルノードクライアントを改変した「Nitro」アーキテクチャにより、EVM完全互換性を維持しながら高いスループットを実現します。ERC-4337はイーサリアムプロトコルの変更なしに動作するため、Arbitrum上でもそのままデプロイ・動作します。

ArbitrumではEntryPoint v0.6とv0.7の両方がデプロイされており、主要なバンドラー(Biconomy、StackUp、Pimlico)もArbitrum Oneに対応しています。

Arbitrum上でのスマートウォレット採用事例として、GMX(DeFiデリバティブ)、Camelot(DEX)などのdAppがガスレス体験の導入を検討または実装しています。Arbitrum Stylusの登場により、WASM(WebAssembly)での高効率なウォレットロジック実装も可能になりました。

Optimism SuperchainとERC-4337の統合

OptimismのOP Stackは、複数のチェーン(Base、Zora、Mode、Fraxtalなど)が共通のアーキテクチャを共有する「Superchain」構想の基盤です。ERC-4337インフラがOP Stack準拠チェーン全体で共通化される可能性があり、バンドラーやペイマスターのマルチチェーン展開が容易になります。

Optimism上では、Velodrome(DEX)、Synthetix(デリバティブ)、Kwenta(取引プラットフォーム)などのDeFiプロトコルが主要なエコシステムを形成しており、これらへのスマートウォレット対応が進んでいます。

BaseチェーンとCoinbase Walletのスマートウォレット革命

Coinbase Smart Walletの特徴

BaseはCoinbase社が開発したOP StackベースのLayer2チェーンです。Coinbase Walletのスマートウォレット機能(Coinbase Smart Wallet)は、ERC-4337を基盤とした次世代ウォレット体験を提供しています。

Coinbase Smart Walletの主な特徴は以下の通りです。

  • パスキー対応:秘密鍵の代わりに生体認証(Face ID、指紋)でアカウントを管理
  • クロスデバイス同期:iCloudやGoogle Driveを通じた鍵の安全な同期
  • ガスレス体験:Coinbase社のペイマスターによる初回トランザクション無料
  • Passkey Recovery:デバイスが変わっても生体認証で復元可能

パスキー(WebAuthn)を使用することで、ユーザーはシードフレーズを記録・管理する必要がなくなります。スマートフォンの生体認証でWeb3の操作ができる体験は、Web2アプリに慣れたユーザーに非常に親しみやすいものです。

Baseエコシステムでのスマートウォレット活用

Base上のdAppでは、OnchainKit(Coinbase提供のReactコンポーネント集)を使用することで、Coinbase Smart Walletとの統合が非常に簡単になっています。

FarcasterクライアントのWarpcastは、Base上でtippingやNFTミントなどの機能をスマートウォレット経由で提供しており、分散型ソーシャルメディアとスマートウォレットの融合事例として注目されています。

zkSync Eraのネイティブアカウント抽象化

ERC-4337との違い:ネイティブAAの設計思想

zkSync EraはERC-4337とは異なるアプローチで、プロトコルレベルでAccount Abstractionを実装しています。zkSync Eraでは、すべてのアカウントがスマートコントラクトアカウントとして扱われ、EOAはデフォルトのスマートコントラクト実装を持つアカウントとして機能します。

ネイティブAAの特徴として以下が挙げられます。

  • すべてのアカウントがIAccountインターフェースを実装するスマートコントラクト
  • ユーザーが独自のトランザクション検証ロジックをプロトコルレベルで定義可能
  • ペイマスターがERC-4337と同様に利用可能だが、よりシンプルな実装
  • 署名の検証がZK証明と統合されており、将来的なプライバシー強化に有利

zkSync Eraの実績と将来展望

zkSync Eraはすでに数百万件のスマートウォレットトランザクションを処理した実績があります。Argent(スマートウォレット)はzkSync Eraへの移行を積極的に進めており、ソーシャルリカバリーとガスレス体験を組み合わせた先進的なUXを提供しています。

将来的には、zkSync Eraの後継として開発中のZKsync(Elastic Chain)が、複数のZKチェーンをまたいだ統一的なアカウント管理を実現する可能性があります。

Layer2横断のスマートウォレット体験:マルチチェーンの課題と解決策

チェーン間でのアカウント統一の課題

スマートウォレットの普及に際して、複数のLayer2チェーンにまたがってアカウントを統一的に管理する課題があります。

現状では、Arbitrum、Base、Optimism、zkSyncでそれぞれ別のウォレットアドレスを使用するのが一般的ですが、これはユーザーにとって管理の煩雑さをもたらします。

解決策として注目されているのが、counterfactualデプロイという概念です。多くのスマートウォレットは、同じデプロイパラメーターを使用することで、複数のチェーンで同一のアドレスにデプロイできます。ユーザーは複数チェーンで同じアドレスを使用でき、統一的な体験が実現します。

クロスチェーンオペレーションの最新動向

EIP-7579(スマートアカウントのモジュール標準)やERC-6900などの新しい標準が策定され、複数のスマートウォレット実装間での相互運用性が向上しています。

LayerZero、Axelar、Wormholeなどのクロスチェーンプロトコルと組み合わせることで、一つのUserOperationで複数チェーンにまたがる操作を実行する「マルチチェーントランザクション」の実現も視野に入ってきています。

まとめ

Layer2チェーンとERC-4337スマートウォレットの組み合わせは、Web3の大衆化に向けた最も現実的なパスです。Arbitrum、Optimism、Base、zkSyncはそれぞれ独自の強みを持ちながら、スマートウォレットエコシステムの発展を推進しています。

特にBaseのCoinbase Smart Walletによるパスキー対応や、zkSync EraのネイティブAAは、Web2ユーザーが違和感なく移行できる体験を提供しています。今後、Layer2上でのスマートウォレット採用はさらに加速し、主流のdAppでは標準的なウォレット形態となる可能性が高いと考えられます。

よくある質問

メインネットのETHをLayer2のスマートウォレットに移すにはどうすればよいですか?

Layer2ブリッジ(Arbitrum Bridge、Optimism Bridge、Base Bridgeなど)を使用してETHを移送できます。ただし、ブリッジ操作にはメインネットのガス代が発生します。Coinbase取引所からBase直接出金など、一部プロバイダーはL2への直接出金に対応しており、ブリッジコストを回避できます。

Arbitrum、Base、zkSyncのどれを使うべきですか?

利用目的によって選択が変わります。DeFiや既存のdApp利用にはArbitrumが成熟しており適しています。モバイル向けアプリやCoinbaseとの統合にはBaseが優れています。最低コストの追求やZK技術に関心があればzkSync Eraが選択肢となります。

スマートウォレットはLayer2間で同じアドレスを使えますか?

多くのスマートウォレット(Safe、ZeroDev、Biconomy)はcounterfactualデプロイにより、同一の設定パラメーターを使うことで複数チェーンに同じアドレスでデプロイできます。ただし、デプロイ前のアドレスへの送金は、対象チェーンでウォレットをデプロイしない限り資金が失われるリスクがあります。

※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Bitcoin Analyze 編集部

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