本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含む場合があります。
年の瀬に取引所の損益画面を開いて、前半に確定した利益と、後半に沈んだままの含み損を並べて眺めている。「この損は、確定した利益と相殺できるのか」。そう思って検索すると、まず出てくるのが「仮想通貨は損益通算できない」という一文です。
この一文だけを見ると、損失は一切救われないように読めます。実際にできないのは、給与所得や事業所得など他の区分の所得との相殺と、赤字の翌年への繰越の2つです。同じ年の雑所得どうしであれば相殺できます。この境界を取り違えたまま12月31日を越えると、本来打てたはずの手だけを逃すことになります。
この記事では、「できない」の正確な範囲、なぜそうなるのかという制度上の理由、そして年内に間に合う適法な対策を順に整理します。読み終えるころには、自分の場合に何を年内に済ませ、何を来年の申告時期まで待ってよいかを判断できるはずです。国税庁が公開している暗号資産の税務上の取扱いに関する資料と、主要な国内取引所が配布している年間取引報告書の様式を突き合わせて構成しました。順に見ていきましょう。
「損益通算できない」が指している範囲
損益通算とは、税法上の一定の所得区分どうしで黒字と赤字を相殺する手続きのことです。所得税では、この相殺が認められている所得は不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つに限られているとされています。
個人が売買した暗号資産の利益は、原則として雑所得に区分されます。雑所得はこの4つに含まれていません。暗号資産で出した損失を給与や副業の利益にぶつけて全体の税額を下げる、という使い方が制度上できない。これが「損益通算できない」の中身です。
同じ雑所得どうしなら相殺できる
一方で、雑所得の内部での相殺、いわゆる内部通算はできます。ビットコインの売却で50万円の利益が出て、別の銘柄の売却で30万円の損失が出たのなら、その年の暗号資産に関する所得は差引20万円として計算します。他の雑所得の黒字とも、申告分離課税となるものを除けば相殺できるとされています。
逆に、内部で相殺しきれず年間の合計が赤字になった場合、その赤字はゼロとして扱われ、それ以上の効果はありません。ここが次の論点につながります。
| やりたいこと | 可否 | 補足 |
|---|---|---|
| 暗号資産の損失を給与所得と相殺する | できない | 雑所得は損益通算の対象外 |
| 暗号資産の損失を事業所得と相殺する | できない | 事業として認められる例外的な場合を除く |
| 暗号資産どうしの利益と損失を相殺する | できる | 同じ年に実現した損益に限る |
| 他の雑所得の黒字と相殺する | 原則できる | 申告分離課税のものは別枠 |
| 年間の赤字を翌年に繰り越す | できない | 繰越控除にあたる規定がない |
翌年に持ち越せないという壁
上場株式等の譲渡損失には、確定申告を続けることで最長3年間繰り越し、翌年以降の利益と相殺できる仕組みがあります。暗号資産の雑所得には、この繰越控除にあたる規定が用意されていません。
この差は、年をまたいで相場が動いたときに効いてきます。今年300万円の利益を確定し、翌年に同じだけの損失を出した場合、2年を通算すれば差し引きゼロでも、今年分の税金は今年の利益に対して課され、翌年の損失で取り戻すことはできません。暗号資産の損益は1月1日から12月31日で完全に区切られる、と覚えてください。
なお暗号資産の課税方式については、申告分離課税への見直しを求める要望が業界団体などから継続して出されており、制度の議論は続いています。将来こうなるはずだという前提で今年の判断をするのは避け、実際の適用は必ず最新の公式情報を確認してください。
年内にしかできない対策
含み損を実現して同じ年の利益にぶつける
いわゆる損出しです。含み損は、売却する、他の暗号資産に交換する、決済に使うといった行為で実現しない限り、税務上の損失として認識されません。持っているだけでは、どれだけ下がっていても計算に入らないということです。
実行するなら12月31日までに約定させる必要があります。年末年始は取引所のメンテナンスや送金の混雑が重なりやすいため、31日ぎりぎりを狙わず、余裕をもって処理してください。
買い戻すなら評価方法を先に確認する
損出しの直後に同じ銘柄を買い戻す人は多いのですが、暗号資産は株式と事情が異なります。個人の取得価額の計算方法には総平均法と移動平均法があり、届出をしていない場合は総平均法が法定の評価方法とされています。
総平均法は、その年に取得した分をまとめて平均します。損出しの後に年内で買い戻すと、その買い戻し分も平均に取り込まれて単価が変わり、狙った損失額が目減りすることがあります。移動平均法を届け出ている場合は取得のつど計算するため、結果が変わります。自分がどちらで計算しているかを確かめてから動いてください。
利益の実現時期を年またぎで調整する
雑所得は総合課税で、所得が増えるほど税率が上がる累進構造です。1年に利益を集中させると高い税率帯に入りやすく、2年に分ければ各年の税率帯が下がる可能性があります。ただし、税額を下げるために相場の変動リスクを追加で引き受ける形になります。売買の判断そのものを税金だけで決めないでください。相場側の考え方は 投資戦略のカテゴリ にまとめています。
経費とふるさと納税
取引手数料、送金手数料、損益計算ツールの利用料など、取引に直接必要だと説明できる費用は差し引ける余地があります。明細や領収書を保存しておいてください。また、その年の所得が増えると、ふるさと納税で控除される上限額も上がります。上限は所得や家族構成で変わるため、12月末までにシミュレーションで確認するのが現実的です。
計算をやり切るための準備
年内の対策は「今年いくら利益が出ているか」が見えて初めて意味を持ちます。ところが、複数の取引所と複数のウォレットに散らばった履歴を12月から集め始めると、たいてい間に合いません。
国内取引所の多くは年間取引報告書や取引履歴のCSVを提供しており、GMOコインのような取引所では会員ページから取得できます。分散型取引所やDeFiの取引はウォレットのアドレス単位で履歴を集める必要があり、クリプタクトのような損益計算サービスに取り込ませる形が一般的です。取引所がサービスを終了すると履歴を取り出せなくなる例もあるため、四半期に一度はダウンロードして手元に残しておくと安全です。
税制の全体像は 仮想通貨の税金ガイド、申告手続きそのものは 税金・確定申告のカテゴリ で扱っています。
やってはいけない「対策」
- 含み損をそのまま損失として申告する。実現していない損失は計算に入りません
- 利益が少額だからと記録を残さない。後から履歴をそろえるほうが手間になります
- 20万円以下だから何もしなくてよいと考える。所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要とされています
- 実体のない名義の分散や、価格を操作した見せかけの取引。適法な調整とはまったく別のものです
暗号資産の取引情報は、税務当局が取引所を通じて把握できる仕組みが整えられてきたとされています。申告しないという選択は、そもそも選択肢に入れないでください。
よくある質問(FAQ)
含み損があるだけで税金は安くなりますか
なりません。売却や交換などで損失を実現して初めて、その年の利益と相殺されます。年末時点でどれだけ含み損を抱えていても、実現していなければ計算に入りません。
年間20万円以下なら申告しなくてよいのですか
給与を1か所から受けている会社員で、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要とされる取扱いがあります。ただし住民税は別で、申告が必要です。医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下でも暗号資産の所得を含めて申告します。
仮想通貨どうしの交換でも課税されますか
一般に、暗号資産を別の暗号資産に交換した時点で、いったん売却したものとして損益を計算するとされています。日本円に戻していなくても課税対象になり得るという点が、最も見落とされやすいところです。
海外取引所やDeFiの損益も同じ扱いですか
日本の居住者であれば、取引した場所が国内か海外かにかかわらず日本の税制に従って申告するのが原則です。海外取引所やDeFiは年間取引報告書が発行されないことが多いため、履歴の自己管理がより重要になります。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。