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stETH(ステークドイーサ)は、Lido(リド)というリキッドステーキングサービスが発行するトークンで、理論上は1 stETH=1 ETHに近い価値を持つよう設計されています。しかし実際の市場では、stETHがETHより数パーセント安く取引される「価格乖離(デペッグ)」が過去に何度か発生しました。結論からいえば、乖離の主因はstETHを即時にETHへ償還できない状況下で、売り圧力が二次市場の流動性を上回ることにあります。
本記事では、stETHの仕組みと価格乖離が起きるメカニズム、2022年に実際に観測されたデペッグ事例、そして2023年のShapella(シャペラ)アップグレード以降に何が変わったのかを整理します。あわせて、乖離が発生した際に保有者が確認すべきポイントも解説します。
なお、イーサリアム自体の仕組みやステーキングの基礎から知りたい方は、イーサリアム関連記事の一覧もあわせてご覧ください。
stETHとは?仕組みをおさらい
イーサリアムのステーキングには本来32ETHが必要ですが、Lidoのようなリキッドステーキングを使うと、少額のETHを預けてステーキングに参加し、その預かり証として同量相当のstETHを受け取れます。stETHはステーキング報酬を反映して残高や価値が増えていく設計で、保有したままDeFi(分散型金融)で担保に使ったり、売買したりできる点が特徴とされています。
ここで重要なのは、stETHは「ETNやステーブルコインのように固定レートで償還が保証されたもの」ではなく、あくまでステーキング中のETHに対する請求権を表すトークンだという点です。市場での価格は需給で決まるため、ETHと完全に同じ価格で取引される保証はありません。リキッドステーキングを含むDeFi全般の仕組みはDeFi・Web3カテゴリで詳しく扱っています。
価格乖離(デペッグ)が起きるメカニズム
stETHとETHの価格が乖離する背景には、主に次の要因が挙げられます。
- 償還の制約:かつては、ステーキングしたETHを引き出す機能自体が未実装で、stETHをETHに戻す公式ルートが存在しませんでした。現在は引き出しが可能ですが、出金には待ち時間(キュー)が生じることがあります。
- 二次市場の流動性の偏り:stETHの売買は主にCurveなどの分散型取引所の流動性プールで行われます。売りが集中してプール内のstETH比率が高まると、交換レートがETHに対して不利な方向へ傾きます。
- レバレッジ解消の連鎖:stETHを担保にETHを借り、それを再度ステーキングする「レバレッジ運用」が積み上がっていると、価格下落時に清算・解消の売りが連鎖しやすくなります。
- 市場心理:大口保有者の売却観測や破綻懸念などのニュースが出ると、実需以上に売りが先行することがあります。
つまりデペッグは「stETHの裏付けが失われた」ことを必ずしも意味せず、多くの場合は流動性と需給の一時的な不均衡によって生じるものと理解されています。
過去のデペッグ事例
2022年5月:Terra(LUNA)ショック時の乖離
2022年5月、ステーブルコインUSTとLUNAの崩壊をきっかけに暗号資産市場全体が急落した際、リスク回避の売りがstETHにも波及し、stETHはETHに対して数パーセント割安な水準で取引される場面がありました。当時はまだステーキングETHの引き出しができなかったため、「すぐにETHに戻せない資産」であるstETHから資金を引き上げる動きが強まったとされています。
2022年6月:Celsius・Three Arrows Capital問題
続く2022年6月には、大手レンディング企業Celsiusの出金停止や、ヘッジファンドThree Arrows Capital(3AC)の経営危機が表面化しました。両者は大量のstETHを保有していたと報じられ、売却懸念からstETHの乖離はさらに拡大し、一時は1 stETHが0.93〜0.95 ETH前後の水準まで下落したと伝えられています。この局面では、レバレッジをかけていた保有者の清算リスクも意識され、乖離が乖離を呼ぶ展開となりました。
ただし、その後ステーキングの仕組み自体に問題がなかったことが確認されるにつれ、乖離は時間をかけて縮小していきました。
Shapellaアップグレードで何が変わったか
2023年4月に実施されたイーサリアムのShapellaアップグレードにより、ステーキングしたETHと報酬の引き出しが可能になりました。これによりstETHにも「最終的にETHへ償還できる」という裏付けルートが確立し、乖離が拡大すれば償還を利用した裁定取引(アービトラージ)が働きやすくなりました。
実際、アップグレード以降のstETHはETHとの乖離が以前より小さい水準で推移しやすくなったとされています。もっとも、出金キューの混雑時や市場急変時には一時的な乖離が再び生じる可能性は残るため、「乖離が構造的に起きなくなった」と考えるのは早計です。
乖離が起きたときの対処と注意点
保有中にデペッグが発生した場合、慌てて売る前に次の点を確認するとよいでしょう。
- 乖離の原因が「流動性の一時的な偏り」なのか「プロトコル自体の不具合・ハッキング」なのかを公式発表で確認する
- 公式の償還(出金)ルートが機能しているか、待ち時間がどの程度かを確認する
- stETHを担保にした借入がある場合は、清算ラインまでの余裕を確認する
また、市場が混乱している局面では「救済」「補償」をうたう偽サイトやフィッシングが増える傾向があります。誘導されたサイトでウォレットを接続する前に、詐欺の見分け方ガイドで典型的な手口を確認しておくことをおすすめします。長期保有分については、秘密鍵をハードウェアウォレットで管理するなど、平時からの防御も有効です。
よくある質問(FAQ)
stETHの価格乖離は、そのまま損失になりますか?
乖離した価格で売却すれば、その差分は実現損として確定します。一方、保有を続けて償還ルートを利用できる場合や、乖離が解消した後に売却する場合には、乖離そのものが直接の損失になるとは限りません。ご自身の資金計画と、乖離の原因の性質を踏まえて判断することが大切です。
デペッグは今後も起こり得ますか?
引き出し機能の実装により構造的な乖離要因は小さくなったとされていますが、市場急変時や出金キューの混雑時には一時的な乖離が起こり得ます。ゼロにはならないリスクとして認識しておくのが現実的です。
stETHをETHに戻すにはどうすればよいですか?
主な方法は、Lidoの公式出金機能を通じて償還する方法と、分散型取引所などの二次市場で交換する方法の2つです。前者は待ち時間がかかる場合があり、後者は市場レート(乖離があればその分不利なレート)での交換になります。手数料や所要時間は変動するため、実行前に公式情報を確認してください。
乖離しているときに買うのは有利ですか?
乖離時の購入は「割安に見える」一方で、乖離がさらに拡大するリスクや、原因がプロトコルの重大な問題である可能性も否定できません。一般に、裁定的な取引には相応の知識とリスク許容度が必要とされます。本記事は特定の売買を推奨するものではありません。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。