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会議で「うちもブロックチェーンで何かできないか調べておいて」と任され、検索してみたものの、「パブリックチェーン」「プライベートチェーン」という分類の時点でつまずく——企業のシステム担当者や新規事業担当者が最初にぶつかる壁は、たいていここです。解説記事ごとに言っていることが微妙に違い、どちらを選ぶべきかの判断基準まで書かれたものは意外と見つかりません。
本記事では、両者の違いを「誰が参加できるか」「誰が承認するか」という本質から整理したうえで、国内企業の導入事例を見ながら、自社のケースでどちらを検討すべきかを判断できる状態を目指します。読み終えるころには、社内向けの説明資料に落とし込める程度の解像度で違いを語れるようになるはずです。
主要なブロックチェーン基盤の公式ドキュメントと、国内で公表されている企業導入事例を突き合わせて整理しました。順に見ていきましょう。
パブリックチェーンとは:誰でも参加できる公開ネットワーク
パブリックチェーンは、誰でも自由に参加できるブロックチェーンです。ビットコインやイーサリアムが代表例で、世界中の不特定多数のコンピュータ(ノード)が取引の検証と記録を分担します。特定の管理者は存在せず、取引履歴は原則として誰でも閲覧できます。
合意形成(コンセンサス)には、ビットコインのProof of Work(計算競争による承認)や、イーサリアムのProof of Stake(保有量に応じた承認)といった仕組みが使われます。不特定多数が参加する前提で不正を防ぐ設計のため、特定の企業や国家が単独で記録を書き換えることが極めて困難という強みがあります。一方で、処理速度や手数料が需要に左右されやすいという性質もあります。基礎から学びたい方はブロックチェーン技術カテゴリもご覧ください。
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プライベートチェーンとは:管理者が参加者を選ぶ非公開ネットワーク
プライベートチェーンは、単一の組織(または限られた組織群)が管理者となり、許可した参加者だけがノードを運用できるブロックチェーンです。「許可型(パーミッションド)チェーン」とも呼ばれます。代表的な基盤にはHyperledger Fabric(Linux Foundation傘下のプロジェクト)やCorda(R3社が開発)があり、企業システムでの利用を前提に設計されているとされています。
参加者が身元の分かる組織に限られるため、パブリックチェーンのような大がかりな合意形成は不要で、処理速度を高めやすく、取引内容を外部に公開しない設計も可能です。反面、管理者への信頼が前提になるため、「特定の管理者に依存しない」というブロックチェーン本来の特長は薄まります。この点は導入判断で必ず論点になります。
両者の違いを一覧で整理
| 比較軸 | パブリックチェーン | プライベートチェーン |
|---|---|---|
| 参加者 | 不特定多数(誰でも可) | 許可された組織のみ |
| 管理者 | 存在しない | 存在する |
| 取引の透明性 | 原則全公開 | 参加者内に限定可能 |
| 処理速度 | 相対的に低速・変動あり | 高速にしやすい |
| 改ざん耐性の根拠 | 分散した多数のノード | 参加組織間の相互監視 |
| 主な用途 | 暗号資産・NFT・DeFi | 業務システム・企業間取引 |
なお、複数企業が共同で管理する形態は「コンソーシアムチェーン」と呼ばれ、プライベートチェーンの発展形として企業間取引で使われています。
企業導入事例に見る使い分け
金融:デジタル証券は許可型チェーンが中心
国内の金融分野では、不動産や社債をデジタル証券(セキュリティトークン)として発行する取り組みが進んでおり、三菱UFJ信託銀行が主導する基盤「Progmat」などが知られています。金融商品は規制上、参加者の本人確認や取引管理が必須であるため、許可型チェーンが選ばれる傾向にあるとされています。
貿易・サプライチェーン:企業間の情報連携
貿易実務では、NTTデータなど複数企業が出資する「TradeWaltz」のように、貿易書類の電子化・共有をブロックチェーンで行うプラットフォームが稼働しているとされています。多数の企業が同じ書類を扱う業務では、「特定の一社のデータベースに全員が依存したくない」という力学が働くため、共同管理型のチェーンと相性がよいと考えられます。
NFT・コンテンツ:あえてパブリックチェーンを選ぶ例
一方、NFTを使ったコンテンツビジネスやファンマーケティングでは、大企業でもイーサリアムなどのパブリックチェーンを選ぶ例が目立ちます。理由は明快で、外部のマーケットプレイスやウォレットとつながる「開かれた経済圏」自体が価値だからです。自社に閉じたチェーンでNFTを発行しても、外部との相互運用性が失われてしまいます。この領域の動向はDeFi・Web3カテゴリで継続的に扱っています。
どちらを選ぶべきか:3つの判断基準
事例を踏まえると、判断基準は次の3つの問いに集約できます。
- 不特定多数に開かれている必要があるか——外部ユーザーや他社サービスとの接続が価値の源泉ならパブリック。参加者が特定の企業群に限られるなら許可型
- 管理主体を置けるか・置きたいか——規制対応や個人情報の扱いで管理責任者が必要な業務は許可型が現実的
- 「ブロックチェーンである必要」が本当にあるか——単一組織内で完結するデータ管理なら、通常のデータベースの方が安く速いケースが多いとされています
特に3つ目は重要です。導入事例の裏には「検証の結果、通常のシステムで十分と判断した」案件も多数あると言われます。技術選定の前に、複数組織間の信頼問題が存在するかを確認することをおすすめします。ブロックチェーンの基礎から確認したい方は始め方ガイドも参考になります。
よくある質問(FAQ)
プライベートチェーンは改ざんできてしまうのでは?
管理者が単独の場合、理論上は管理者による書き換えの余地が残ります。そのため実務では複数組織で相互監視するコンソーシアム型にする、外部のパブリックチェーンに記録の要約を書き込むなどの補強策が使われることがあります。
パブリックチェーンを企業が使うのはコンプライアンス上問題ありませんか?
用途によります。NFT発行などでは広く実例がありますが、個人情報をチェーン上に直接書き込むことは避けるのが原則とされています。個人情報は外部に保管し、チェーンには参照情報のみ記録する設計が一般的です。
ハイブリッド型のような中間的な構成はありますか?
あります。業務データは許可型チェーンで処理し、その存在証明だけをパブリックチェーンに記録する構成などが知られています。両者の長所を組み合わせる設計は実務で広く検討されています。
導入コストはどちらが高いですか?
一概には言えません。パブリックチェーンは自前のインフラ構築が不要な一方で手数料が変動します。プライベートチェーンはインフラと運用体制の構築・維持にコストがかかるとされています。参加組織数と取引量を前提に試算することをおすすめします。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。