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秘密鍵の流出は、残高がゼロになって初めて気づくもの。そう思われがちですが、実際はむしろ逆です。資産が根こそぎ動く前に、観察できる予兆が出ているケースのほうが多いとされています。全額が一瞬で消えるより先に、身に覚えのない承認の履歴や、数百円分の小さなテスト送金といった異変が現れるのです。
この記事は、その予兆の見分け方と、疑わしいと思った瞬間から実行できる退避手順を最短でお伝えするものです。「しばらく様子を見ましょう」とは言いません。秘密鍵が漏れた疑いがある時点で、そのウォレットはもう自分だけのものではないという前提で動くのが正解だからです。
手順は、主要なウォレットの公式セキュリティガイドと、広く共有されている被害の型を突き合わせ、なぜその順番なのかがはっきりするように並べ直しています。まず判断材料、次に退避、最後に原因の切り分けと再発防止まで、一気に見ていきましょう。
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攻撃者の側から見ると、鍵を手に入れた直後に全額を動かすのが常に得とは限りません。目立たない資産や、後から入金される可能性のある口座を泳がせておくほうが取り分が増えることがあるためです。実際、少額を試しに送って着金と手数料の条件を確かめる動きや、価値のあるトークンだけを先に抜く動きが報告されています。
つまり「まだ大部分が残っている」ことは無事の証拠になりません。残っているうちに動けるかどうかが、被害額を決めます。
流出を疑うべきサイン
身に覚えのない承認が残っている
ブロックチェーンの取引履歴に、自分が押した記憶のない承認(トークンの引き出し許可)が並んでいないかを確認します。承認は、対象のトークンを第三者が動かせる権利を与える操作です。残高がまだ減っていなくても、引き出しの許可だけ先に取られている状態はあり得ます。
少額のテスト送金が出ている
数十円から数百円相当の送金が、自分の操作と無関係に出ていないかを見ます。手数料の確認を目的とした試し打ちであることがあり、これが出ている場合は本番の送金が近いと考えて動くべきです。
見覚えのないトークンやNFTが届いている
届くこと自体は誰にでも起こり得るもので、それだけでは流出の証拠になりません。ただし、送られてきたトークンには交換しようとすると危険な承認を求める仕掛けが仕込まれていることがあります。触らずに放置するのが基本です。
端末やアカウント側の異変
ウォレットの拡張機能が勝手に更新されている、覚えのない拡張機能が増えている、メールに身に覚えのないログイン通知が届く、クリップボードにコピーしたアドレスが別のものに変わる、といった症状も警戒対象です。鍵の流出は、ブロックチェーン上より先に端末側に痕跡が出ることがあります。
今すぐやる退避手順(順番に意味があります)
疑いを持った時点で、以下の順に進めてください。順番を入れ替えると、せっかく作った退避先まで危険にさらすことになります。
- 汚染された端末で新しいウォレットを作らない。まず別の端末(可能ならスマートフォンではなく普段使っていない方の機器)を用意します。同じ端末に情報を抜く仕掛けが残っていれば、新しい鍵も同時に漏れます
- 新しい端末で新規ウォレットを作成し、シードフレーズを紙に記録する。この時点でスクリーンショットやクラウド保存は行わない
- 新しいアドレスを、少額を送って正しく着金するか確認する
- 価値の高い資産から順に、新しいアドレスへ送る。ステーキングやロック中の資産があれば、解除に時間がかかるため先に解除操作を始めておく
- 元のウォレットに残っている承認を取り消す。ただし取り消しにも手数料と時間がかかるため、資産の退避を終えてからで構いません
- 旧ウォレットは使用をやめる。同じシードフレーズから別のアドレスを作っても、元が漏れていれば意味がありません
- 端末側の掃除を行う。不審な拡張機能を削除し、ウイルス対策の検査をかけ、取引所などのパスワードと二段階認証を設定し直す
ガス代(送金手数料)が足りないとき
手数料用の通貨がないと資産を動かせません。そこで手数料を送り込む必要がありますが、攻撃者が自動化した仕組みを仕掛けている場合、送った手数料がそのまま抜かれることがあります。この状況では、必要額を一度にまとめて送り、着金後すぐに退避を実行するほうが成功しやすいとされています。慌てて何度も少額を送ると、そのたびに抜かれて手詰まりになります。
一時的な避難先として取引所を使う場合
新しい自己管理ウォレットの用意が間に合わないときは、自分名義の取引所口座へいったん送るのも現実的な選択です。コインチェックやbitbankのように国内で口座を持っているサービスがあれば、送金先アドレスを取り違えないよう対応銘柄とネットワークを確認したうえで送ります。ただしこれはあくまで避難であり、落ち着いたら自己管理に戻すか、保管方針そのものを決め直してください。
やってはいけない対応
- 検索結果や交流サイトで見つけた「復旧業者」に連絡する。前払いを求めたうえで何もしない例や、復旧作業と称してシードフレーズを聞き出す例が報告されています
- 助けを申し出てきた相手に、シードフレーズや秘密鍵を伝える。正規のサポートがこれらを尋ねることはありません
- 同じシードフレーズのまま、別のウォレットアプリに乗り換える。アプリを替えても鍵は同じです
- 送られてきた不審なトークンを売却・交換しようとする。仕掛けを起動させる操作になり得ます
混乱している最中は、親切そうな連絡ほど疑う必要があります。典型的な手口の型は暗号資産の詐欺の見分け方にまとめています。
退避が終わったら、入り口を特定する
原因が分からないまま新しいウォレットを使い始めると、同じ経路でまた抜かれます。心当たりを次の観点で振り返ってください。
| 疑わしい経路 | 確認すること | 次の一手 |
|---|---|---|
| シードフレーズの入力 | 接続や認証の名目で12/24単語を入力した場面がなかったか | 該当した時点で鍵は漏れている前提。旧ウォレットは完全に放棄する |
| 端末の保存データ | 写真、メモアプリ、クラウド、メールに単語や鍵を残していないか | 該当箇所を削除し、そこに保存していた鍵はすべて使用停止にする |
| 接続したサイト | 直前に接続した交換サイトや配布企画の正当性、アドレスの綴り | 承認を取り消し、同種のサイトへの接続を控える |
| 拡張機能・アプリ | 公式以外の配布元から入れたもの、更新後に挙動が変わったもの | 削除し、公式の配布元から入れ直す |
再発を防ぐ「置き場所を分ける」考え方
今回の件を踏まえて見直したいのは、ひとつのウォレットにすべてを入れていた構造そのものです。日常的にサイトへ接続して使うウォレットと、長期保有の資産を置くウォレットを分けておけば、接続用が汚染されても被害はそこで止まります。長期保有分をハードウェアウォレットに移す判断も有効で、選び方はハードウェアウォレットの選び方と使い方で整理しています。分散型金融のサービスを日常的に使う人ほど、この分離の効果は大きくなります。
よくある質問(FAQ)
シードフレーズを入力した覚えがないのに流出することはありますか
あります。撮影した写真がクラウドに同期していた、メモアプリに保存していた、端末が不正なプログラムに感染していた、といった経路が知られています。入力の記憶がないからといって安全とは言い切れません。
承認の取り消しだけで安全になりますか
なりません。承認の取り消しが有効なのは、鍵そのものは無事で、特定のサイトに与えた許可だけが問題という場合です。秘密鍵やシードフレーズが漏れている場合、攻撃者はいつでも新しい操作を行えるため、資産の退避が先になります。
盗まれた資産は取り戻せますか
一般に、いったん送金された資産の回収は極めて困難とされています。ブロックチェーンの取引は取り消せないためです。ただし被害の記録を残す意味はあるので、取引の識別子や日時を保存し、状況に応じて警察や消費生活相談の窓口に相談してください。
盗難にあった分の税金はどう扱えばよいですか
取り扱いは状況によって判断が分かれるため、取引履歴と被害の記録を残したうえで、税務署や税理士に確認するのが確実です。損益計算の基本的な考え方は暗号資産の税金ガイドで整理していますので、あわせて確認してください。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。