ビットコイン - BTC

取引所がハッキングされたら資産は戻る?日本の補償制度と過去事例

本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含む場合があります。

取引所の口座画面に出ている残高は、記録の上ではあなたの資産です。ところが、その暗号資産をブロックチェーン上で動かすための秘密鍵、つまり送金する権限そのものを握っているのは取引所の側です。この「名義は利用者、鍵は事業者」という二重構造が、ハッキング被害が起きたときに何がどこまで戻るのかを、ほぼ決めてしまいます。

先に結論の骨格をお伝えします。日本には、銀行預金の預金保険制度にあたる公的な補償制度が暗号資産には存在しません。それでも国内の過去事例では、事業者が自己資金やグループ会社の支援によって利用者へ弁済したケースが複数あります。補償されるかどうかは制度が保証しているのではなく、分別管理という義務がどこまで守られていたかと、その事業者の体力に左右されるというのが実態です。

この記事では、資金決済法が暗号資産交換業者に課している義務の中身、国内で実際に起きた流出とその後の道筋、補償が届きにくい範囲、そして利用者側でできる備えまでを順に整理します。金融庁が公表している制度の枠組みと、各社が被害発生時に公式サイトで出した報告・弁済方針の開示を突き合わせて構成しました。読み終えるころには、預け先に何かあったとき自分の資産がどう扱われるかを、自分で見積もれるようになります。順に見ていきましょう。

国内で暗号資産を買うなら、まず口座が要ります

日本円の入出金に対応した国内の登録業者なら、送金や積立まで一つの口座で完結します。口座開設と維持の費用はかからず、取扱銘柄や手数料体系は公式サイトで確認できます。

GMOコインの口座開設ページを見る →PR・GMOコイン(GMOコイン株式会社)。手数料や取扱銘柄は変更されることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、投資判断はご自身の責任でお願いします。

まず構造を押さえる:預けた暗号資産は法律上どう扱われるのか

日本で暗号資産の売買サービスを提供するには、金融庁への暗号資産交換業者としての登録が必要です。登録業者には資金決済法にもとづくいくつかの義務が課されており、ハッキング時に効いてくるのは主にこの部分です。制度の要点を知らないまま「大手だから安心」と考えるのが、いちばん危うい状態だと言えます。

分別管理と優先弁済権

交換業者は、利用者から預かった金銭を自社の資産とは分けて信託し、暗号資産についても自社保有分と明確に区分して管理する義務を負っています。これが分別管理です。さらに法改正により、利用者が預けた暗号資産について、他の債権者よりも先に弁済を受けられる優先弁済権が利用者側に認められる形になりました。

この仕組みが意味するのは、事業者が破綻した場合でも、分別管理されていた利用者資産は事業者の一般的な負債の返済原資に紛れ込みにくくなっているということです。ただし優先されるのはあくまで「残っている資産」に対してであり、盗まれて消えた分をどこかが穴埋めしてくれる制度ではありません。ここを混同すると、補償への期待が実態からずれてしまいます。

コールドウォレットと履行保証暗号資産

もうひとつの柱が、預かった暗号資産の保管方法に関する規律です。利用者から預かった暗号資産は、原則としてインターネットから切り離したコールドウォレット、あるいはそれと同等の安全性を持つ方法で管理することが求められます。出金対応などのためにやむを得ずインターネットに接続したホットウォレットで持つ分については、同じ種類・同じ数量の暗号資産を事業者自身の資産として別に保有しておく義務があります。これが履行保証暗号資産と呼ばれるもので、流出時の弁済原資として位置づけられています。

つまり、制度が想定しているのは「ホットウォレットにある一定量が抜かれても、事業者の自己資産で同量を返せる状態を常に作っておく」という設計です。過去の大型流出が起きた時期は、この規律が現在ほど整っていませんでした。取引所選びの視点としては、取引所レビューで各社の管理体制の開示姿勢を比べておくと判断材料になります。

国内で実際に起きた流出と、その後にたどった道筋

ここからは、広く報道され各社も公式に説明してきた代表的な事例を、結末の型で整理します。金額はいずれも当時の評価額にもとづく概数であり、報道や開示によって幅があります。

時期 概要 その後の流れ
2014年 当時最大級だった取引所で大量のビットコインが失われ、経営が破綻 民事再生手続きへ移行し、返還までに極めて長い年月を要した
2018年 国内取引所のホットウォレットから数百億円規模のアルトコインが流出 事業者が日本円で全額を補償し、その後大手グループ傘下で事業を継続
2018年 別の国内取引所で数十億円規模の流出が発生 支援企業からの資金提供を受けて弁済し、事業は他社へ承継
2019年 国内取引所から数十億円規模が流出 一部が追跡・回収され、不足分は事業者が補填する形で決着
2024年 国内取引所で数百億円規模のビットコインが不正流出 グループの支援で顧客資産相当の調達方針が示され、のちに口座は他社へ移管

この並びから読み取れる傾向がふたつあります。ひとつは、背後に体力のあるグループ企業がいた事例では、利用者への弁済が比較的短期間で実行されていること。もうひとつは、支援先がなく破綻に至った事例では、法的手続きの中で年単位の時間がかかっているということです。制度が守ってくれたというより、資本の厚みが結果を分けてきたと表現するほうが実態に近いでしょう。

補償される範囲と、補償が届きにくい範囲

ここが最も誤解されやすい部分です。過去の弁済はいずれも「取引所側のシステムから資産が抜かれた」ケースでした。原因が利用者側にある場合、同じ扱いにはなりません。一般に、次のような線引きになると考えておくのが安全です。

  • 取引所の管理下から不正に流出した分は、分別管理・履行保証の枠組みと事業者の判断によって弁済されることがある
  • 利用者が自分でフィッシングに引っかかり、パスワードや二段階認証の情報を渡してしまった結果の不正出金は、原則として利用者の責任とされやすい
  • 秘密鍵を自分で管理する自己保管ウォレットからの流出は、取引所の補償対象外
  • 取引所を装った偽サイトへ自分で送金してしまった分は、そもそも取引所のシステム外の出来事にあたる
  • 価格変動による損失は、当然ながら補償の対象ではない

とくに三番目と四番目は件数が多く、被害後に取り返す手立てがほとんどありません。手口の見分け方は暗号資産詐欺の見分け方にまとめてあるので、口座を開いた直後にひととおり目を通しておくことをおすすめします。

補償が実行されるまでに、実際には何が起きるか

弁済の方針が発表されても、すぐに以前と同じ状態に戻るわけではありません。過去の事例で共通して起きたのは、次のような経過です。

  1. 被害の判明と同時に、入出金や取引の全部または一部が停止される
  2. 被害額と対象者の確定に数日から数週間かかり、その間は資産を動かせない
  3. 弁済の形態が示される。現物での返還か、一定時点のレートで換算した日本円での支払いかで、受け取る側の実質的な価値は変わる
  4. 再開後も一部機能が制限された状態が続き、通常運用に戻るまで数か月を要することがある

見落とされがちなのが税務の扱いです。日本円で補償金を受け取った過去のケースでは、その金額と当初の取得価額との差が所得として整理され得る、との考え方が示されたとされています。現物返還か円建て補償かによって結論が変わり得るため、実際の申告では公式情報の確認が欠かせません。基本的な考え方は暗号資産の税金ガイドで整理しています。

利用者側でできる、現実的な備え

制度に完全に依存できない以上、備えは自分の運用側で作るしかありません。難しいことをする必要はなく、次の四つで大半のリスクは薄まります。

  • 取引所を一社に集中させない。売買の主戦場と、長期保有分の置き場を分けるだけでも、全額が同時に凍結される事態は避けられます
  • 長期保有分は取引所に置きっぱなしにせず、自己保管へ移す。金額が大きいほどハードウェアウォレットの導入が合理的です
  • 二段階認証は、電話番号を乗っ取られると突破され得る方式より、認証アプリや物理キーを優先する
  • 登録業者かどうかを必ず確認する。国内であればコインチェックビットフライヤーのように、登録番号と管理体制を公式サイトで明示している事業者を選ぶのが基本です

口座を開くところから順番に固めたい方は、暗号資産の始め方ガイドを先に読んでおくと、この記事の内容がそのまま設定作業につながります。

よくある質問(FAQ)

銀行の預金保険のような制度は暗号資産にもありますか

ありません。預金保険制度は預金等を対象とした仕組みで、暗号資産はその対象外です。代わりに機能しているのが、資金決済法にもとづく分別管理・優先弁済権・履行保証暗号資産といった枠組みで、これは「事業者が破綻しても利用者資産が混ざらないようにする」ための設計です。盗難分を公的機関が肩代わりする制度ではない、と理解しておいてください。

海外の取引所に預けている分はどうなりますか

日本の資金決済法が想定しているのは国内の登録業者です。海外事業者は所在国の規制に従うことになり、分別管理の水準も破綻時の手続きも国によって大きく異なります。日本の利用者が権利を主張しようとしても、言語と法域の壁で現実的な回収が難しくなる場面があります。国内で扱いのある銘柄で足りるのであれば、預け先は国内の登録業者に寄せておくほうが安全です。

自分の不注意で不正出金された場合も補償されますか

原則として難しいと考えてください。過去に弁済が行われたのは、取引所の管理領域から資産が流出したケースです。パスワードや認証コードを自分で入力してしまった、偽アプリに秘密鍵を入れてしまったといった経路では、取引所側に責任を求める根拠が乏しくなります。ただし不正アクセスの態様によって判断が変わることもあるため、被害に気づいた時点ですぐ取引所へ連絡し、警察にも相談してください。

取引所が停止したとき、資産を動かす手段は残りますか

取引所に預けている状態では、入出金が止まればこちらから動かす手段はありません。だからこそ、長期保有分をあらかじめ自己保管に移しておく意味があります。秘密鍵を自分で持っていれば、どの事業者が止まっても送金自体は可能です。その代わり鍵の紛失は誰も救済できないので、復元用の情報の保管方法まで含めて設計してから移してください。

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。

この記事について

執筆・編集:Bitcoin Analyze 編集部

金融庁・国税庁および各事業者の公式資料にあたり、基準日と定義を固定したうえで記事を作成しています。価格予測や利益保証は扱いません。事業者の条件は変更されるため、最終的な判断は公式情報をご確認ください。

主な参照先

Bitcoin Analyze 編集部

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください