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DePIN(分散型物理インフラ)とは?Helium・Hivemapper等の最前線

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「インフラをみんなで作る」——と聞くと、どこか理想論のように聞こえるかもしれません。しかし、DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Networks:分散型物理インフラネットワーク)は、まさにその理想を現実にしようとしている技術カテゴリです。

DePINとは、通信ネットワーク、地図データ、エネルギーグリッド、ストレージなど、これまで大企業が独占的に構築・運営してきた物理インフラを、ブロックチェーンとトークンインセンティブを活用して分散的に構築・維持する仕組みのことです。たとえば、個人がWi-Fiホットスポットを設置してネットワークカバレッジに貢献したり、ドライブレコーダーで道路の映像を記録して地図データベースの構築に参加したりすることで、トークン報酬を受け取ることができます。

2024年以降、DePINは暗号資産市場で急速に注目度を高めており、関連プロジェクトの時価総額は2026年時点で数百億ドル規模に成長しているとされています。この記事では、DePINの基本概念から主要プロジェクトの詳細、そしてこの分野が直面する課題と将来展望まで、幅広く解説していきます。


目次

  • DePINの基本概念——なぜインフラを分散化するのか
  • DePINの2つのカテゴリ——PRN(物理リソース)とDRN(デジタルリソース)
  • Helium——分散型ワイヤレスネットワークの先駆者
  • Hivemapper——ドラレコで作る分散型地図
  • その他の注目DePINプロジェクト
  • DePINのトークンエコノミクス——フライホイール効果
  • DePINが直面する課題とリスク
  • DePINの未来——インフラ構築の民主化は実現するか


  • 1. DePINの基本概念——なぜインフラを分散化するのか

    1-1. 従来のインフラ構築モデルの課題

    私たちが日常的に利用している通信ネットワーク、クラウドストレージ、地図サービスなどの物理的・デジタルなインフラは、その大部分が少数の大企業によって構築・運営されています。AT&T、Verizon、Amazon Web Services、Googleマップ——こうした企業が数十億ドル、数百億ドルの設備投資を行い、世界規模のインフラを独占的に提供しているのが現状です。

    この中央集権的なモデルにはいくつかの課題があります。まず、インフラ構築に莫大な初期投資が必要なため、新規参入のハードルが極めて高いという問題があります。次に、インフラ提供者が少数に限られるため、価格競争が起きにくく、利用者にとって不利な料金設定になりやすいという点です。さらに、カバレッジの偏り(都市部は充実しているが、地方や途上国は手薄になりがち)も深刻な課題です。

    DePINは、このような既存モデルの課題に対する一つの解決策として提案されています。

    1-2. DePINのフライホイール——トークンインセンティブが駆動する成長

    DePINの核心にあるのが「フライホイールモデル」と呼ばれる成長メカニズムです。これは以下のような好循環を指しています。

    プロジェクトがトークンを発行し、インフラ提供者(ノードオペレーターやデバイス設置者)にインセンティブとして配布します。インセンティブに惹かれた参加者がインフラ機器を設置・運用することで、ネットワークのカバレッジや品質が向上します。ネットワークが充実すると需要側(サービス利用者)が増え、利用料収入が発生します。その収入がトークンの需要を高め、トークン価格が上昇し、さらに多くのインフラ提供者を引き付ける——というサイクルです。

    従来のインフラ構築では「まず巨額の設備投資→その後収益化」という順序でしたが、DePINではトークンインセンティブにより「設備投資の分散化→早期のネットワーク構築→需要の獲得」という流れが可能になると考えられています。

    1-3. DePINが注目される市場背景

    DePINが暗号資産市場で急速に注目を集めている背景には、いくつかの要因があります。

    第一に、DeFiやNFTに続く次の大きなナラティブ(物語)としてDePINが位置づけられている点です。DeFiが「金融」をトークン化し、NFTが「デジタルコンテンツ」をトークン化したのに対し、DePINは「物理的なインフラ」をトークン化するという新しいユースケースを提示しています。

    第二に、DePINプロジェクトは「実世界での利用価値」を持つという点です。投機的なトークンプロジェクトとは異なり、DePINは通信、地図、ストレージといった実際の需要を満たすサービスを提供しています。このことがプロジェクトの持続可能性を高めると期待されています。

    第三に、AIの急速な普及がDePINの需要を押し上げている面があります。AIモデルの学習と推論には膨大な計算リソースとデータが必要であり、分散型GPUネットワーク(Render Network、Akashなど)やデータ収集ネットワーク(Hivemapper、DIMOなど)の重要性が増しています。


    2. DePINの2つのカテゴリ——PRN(物理リソース)とDRN(デジタルリソース)

    2-1. PRN(Physical Resource Networks)——位置依存型のインフラ

    DePINプロジェクトは大きく2つのカテゴリに分類されます。1つ目がPRN(Physical Resource Networks:物理リソースネットワーク)です。PRNは、提供されるリソースが特定の物理的な場所に依存するネットワークを指します。

    PRNの代表例としては、ワイヤレスネットワーク(Helium)、モビリティ・地図データ(Hivemapper、DIMO)、エネルギーグリッド(React Protocol)などがあります。これらのプロジェクトに共通するのは、インフラ機器が特定の場所に設置される必要があり、ネットワークの価値がカバレッジの広さ(地理的な網羅性)に大きく依存するという点です。

    PRNの構築には「コールドスタート問題」が伴います。ネットワークのカバレッジが十分でないうちは利用者が集まらず、利用者が集まらないとインフラ提供者へのインセンティブが不足するという鶏と卵の問題です。これを解決するためにトークンインセンティブが重要な役割を果たしています。

    2-2. DRN(Digital Resource Networks)——位置非依存型のインフラ

    2つ目のカテゴリがDRN(Digital Resource Networks:デジタルリソースネットワーク)です。DRNは、提供されるリソースが特定の場所に依存しないネットワークを指します。

    DRNの代表例としては、分散型ストレージ(Filecoin、Arweave)、分散型コンピューティング/GPU(Render Network、Akash Network)、分散型CDN(Livepeer)、VPN(Orchid)などがあります。これらのプロジェクトでは、リソース提供者がどこにいるかよりも、提供されるリソースの量と質が重要です。

    DRNはPRNと比較して参入障壁が低い傾向があります。既存のハードウェア(余っているGPU、使われていないストレージ容量など)をネットワークに接続するだけで参加できるケースが多く、専用機器の購入が不要な場合もあるからです。

    2-3. 両カテゴリの融合——ハイブリッド型DePIN

    近年では、PRNとDRNの境界が曖昧になりつつあるハイブリッド型のプロジェクトも登場しています。

    たとえば、DIMOは自動車に設置されたデバイスからデータを収集するプロジェクトですが、車両が移動するため純粋な位置依存型とは言い切れません。また、peaqのようなプラットフォームは、DePINプロジェクトの開発基盤を提供しており、PRN・DRNの両方をサポートしています。

    このカテゴリの融合は、DePINエコシステムの成熟を示すものと言えるかもしれません。単一の機能に特化するのではなく、複数のリソースタイプを組み合わせた複合的なインフラネットワークが今後増えていく可能性があります。


    3. Helium——分散型ワイヤレスネットワークの先駆者

    3-1. Heliumの誕生と基本コンセプト

    Helium(ヘリウム)は2019年にメインネットをローンチした、DePINの先駆的なプロジェクトです。当初はIoT(モノのインターネット)デバイス向けのLoRaWAN(Low Power Wide Area Network)を分散型で構築することを目的としていました。

    Heliumの基本的な仕組みはシンプルです。個人がHelium対応のホットスポット(基地局)を自宅や店舗に設置すると、周辺のIoTデバイスにワイヤレス接続を提供できます。その対価として、ホットスポット運営者はHNT(Helium Network Token)を報酬として受け取ります。

    ローンチからわずか数年で、Heliumは世界100か国以上に約100万台以上のホットスポットを展開し、従来の通信事業者が数十年かけても実現できなかったような広範なIoTネットワークを構築しました。この成功は、トークンインセンティブによるインフラ構築の可能性を世界に示した画期的な事例と言えます。

    3-2. Helium MobileとSolanaへの移行

    2022年以降、Heliumは大きな戦略転換を行いました。IoT向けのLoRaWANに加えて、5Gセルラーネットワークの構築にも乗り出したのです。「Helium Mobile」として、T-Mobileとの提携により月額20ドルの格安モバイルプランを提供する事業を開始しました。

    また、2023年4月にはHeliumネットワークの基盤をイーサリアムからSolanaに移行しています。Solanaの高いスループットと低い手数料が、Heliumの大量のマイクロトランザクション処理に適していると判断されたためです。

    Helium Mobileの加入者数は2026年時点で着実に増加しているとされ、DePINプロジェクトが実際の消費者向けサービスとして成立し得ることを証明しつつあります。ただし、通信品質やカバレッジの面では従来の大手通信事業者と比較するとまだ発展途上にある部分もあるようです。

    3-3. Heliumから学べること——DePINの成功条件

    Heliumの歩みからは、DePINプロジェクトが成功するための条件がいくつか見えてきます。

    まず、明確な実需要の存在が重要です。HeliumはIoT通信、そしてモバイル通信という、市場規模が大きく実際の需要が確実に存在する分野をターゲットにしています。次に、参加障壁の低さです。ホットスポットの設置は技術的な専門知識がなくても可能で、電源とインターネット接続があれば誰でも始められます。

    一方で、Heliumは初期のマイニング報酬に過度に依存した時期があり、実需要と報酬のバランスが崩れるリスクも経験しました。DePINプロジェクトが持続可能であるためには、トークン報酬に依存するだけでなく、実際のサービス利用から収益を生み出す仕組みが不可欠であることを、Heliumの事例は示唆しています。


    4. Hivemapper——ドラレコで作る分散型地図

    4-1. Googleマップへの挑戦状

    Hivemapper(ハイブマッパー)は、分散型の地図データ構築プラットフォームです。参加者がHivemapper対応のダッシュカム(ドライブレコーダー)を車に取り付けて走行するだけで、道路の映像データが収集され、AIで処理されて地図情報に変換されます。その貢献に対してHONEYトークンが報酬として支払われる仕組みです。

    Googleマップは世界の道路の大部分をカバーしていますが、更新頻度には限界があります。特に新興国や地方部では、地図データが数年前の情報のままということも珍しくありません。Hivemapperは、世界中のドライバーが日常的に走行するだけで地図データが常に更新される仕組みにより、この課題に挑んでいます。

    2026年時点で、Hivemapperは世界の道路ネットワークの約30%以上をカバーしているとされ、収集されたデータはAPIを通じて企業やデベロッパーに提供されています。自動運転車の開発企業や物流会社など、鮮度の高い地図データを必要とする業界からの需要が見込まれています。

    4-2. 技術的な仕組み——AIとブロックチェーンの融合

    Hivemapperの技術スタックは、ハードウェア(ダッシュカム)、AI(コンピュータビジョン)、ブロックチェーン(Solana)の3層構造になっています。

    ダッシュカムが撮影した映像はAIモデルによって解析され、道路標識、車線の位置、建物、交通状況などの構造化データに変換されます。このプロセスにより、単なる映像の蓄積ではなく、機械可読な地図データベースが構築されるのです。

    データの品質管理には「Map Quality Score」という仕組みが使われており、同じ場所を複数のドライバーが撮影することで、データの正確性が相互検証されます。また、すでにカバレッジが十分な地域よりも、まだデータが不足している地域での貢献がより高く報酬評価される設計になっています。

    4-3. 地図データの価値——なぜ企業が欲しがるのか

    地図データは、一見地味に見えるかもしれませんが、自動運転、物流最適化、都市計画、保険査定など、多くの産業にとって極めて価値の高いデータです。

    世界の地理空間分析市場は2025年時点で約1,000億ドル規模と推定されており、年率10%以上で成長を続けているとされています。特に自動運転技術の進展に伴い、リアルタイムに近い鮮度の高い地図データへの需要は急速に高まっています。

    Hivemapperの強みは、従来のストリートビューカー方式(Googleが専用車両を走らせてデータを収集する方式)と比較して、圧倒的に低コストでデータを収集・更新できる点です。ただし、データの品質と一貫性の面ではまだ改善の余地があるとも指摘されています。


    5. その他の注目DePINプロジェクト

    5-1. Filecoin / Arweave——分散型ストレージ

    分散型ストレージはDePINの中でも最も成熟した分野の一つです。Filecoin(ファイルコイン)は、未使用のハードディスク容量をネットワークに提供するストレージプロバイダーにFILトークンを報酬として支払う仕組みを構築しています。2026年時点でネットワーク全体のストレージ容量は数エクサバイトに達しているとされています。

    Arweave(アーウィーブ)はFilecoinとは異なるアプローチを取り、「永久保存」を特徴としています。一度料金を支払えば、データが半永久的に保存されるという仕組みで、NFTのメタデータやDAOの意思決定記録など、永続性が求められるデータの保存に利用されています。

    Amazon S3やGoogle Cloud Storageと比較すると、分散型ストレージはまだコストパフォーマンスや利便性の面で劣る部分がありますが、検閲耐性やデータの永続性という独自の価値提案を持っています。

    5-2. Render Network / Akash——分散型コンピューティング

    Render Network(レンダーネットワーク)は、3DレンダリングやAIモデルの学習に必要なGPU計算リソースを分散的に提供するプラットフォームです。個人や企業が保有する遊休GPUをネットワークに接続し、計算タスクを処理することでRNDRトークンを獲得できます。

    Akash Network(アカッシュネットワーク)は「分散型クラウド」を標榜し、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)の代替となることを目指しています。コンテナベースのデプロイメントに対応しており、従来のクラウドサービスと比較して大幅に低コストでの運用が可能とされています。

    AI/機械学習の急速な普及により、GPU計算リソースの需要は爆発的に増加しています。NVIDIA製GPUの供給不足が続くなか、分散型GPU市場は供給側と需要側の両方から成長圧力がかかっている状態です。

    5-3. DIMO——車両データの分散型マーケットプレイス

    DIMO(ディモ)は、自動車のテレマティクスデータ(走行距離、速度、燃費、メンテナンス状態など)を収集・活用するためのプラットフォームです。車載デバイスやスマートフォンアプリを通じて車両データを提供するドライバーに対して、DIMOトークンが報酬として支払われます。

    収集されたデータは、匿名化された上で保険会社(正確な運転パターンに基づいたリスク評価)、自動車メーカー(品質管理と製品改善)、リース会社(車両の状態評価)などに販売されます。

    DIMOのユニークな点は、従来は自動車メーカーや保険会社が独占的に収集・活用していたデータを、データの生成者であるドライバー自身がコントロールし、収益化できる仕組みを提供していることです。これは「データ主権」という概念をインフラレベルで実装した事例と言えるでしょう。


    6. DePINのトークンエコノミクス——フライホイール効果

    6-1. BME(Burn-and-Mint Equilibrium)モデル

    多くのDePINプロジェクトが採用しているトークンエコノミクスのモデルがBME(Burn-and-Mint Equilibrium:バーンアンドミント均衡)です。

    BMEモデルでは、サービス利用者がサービスを利用する際にトークンが「バーン(焼却)」され、インフラ提供者にはプロトコルから新たに「ミント(発行)」されたトークンが報酬として支払われます。つまり、サービスの需要が増えるほどトークンのバーン量が増え、供給量が減少する圧力がかかります。

    Heliumは当初このモデルの変形を採用しており、ネットワーク利用料(Data Credits)の支払いにはHNTのバーンが必要でした。需要が増えれば増えるほどHNTの流通量が減少し、トークンの希少性が高まる設計になっています。

    6-2. サプライサイドとデマンドサイドのバランス

    DePINのトークンエコノミクスで最も重要かつ困難な課題が、サプライサイド(インフラ提供者)とデマンドサイド(サービス利用者)のバランスです。

    プロジェクトの初期段階では、ネットワークのカバレッジや品質が不十分なため実需要が少なく、インフラ提供者の報酬はトークンのインフレーション(新規発行)に依存せざるを得ません。しかし、実需要からの収益がトークン発行量を上回らないと、長期的にはトークン価格に下落圧力がかかります。

    このバランスを保つために、多くのDePINプロジェクトはトークン発行量を段階的に減少させるハービングスケジュールを導入しています。ビットコインの半減期と同様の考え方で、時間の経過とともにトークン報酬が減少し、代わりに実需要からの収益が報酬の主軸になることを期待しています。

    6-3. 投機とユーティリティの境界線

    DePINトークンに投資を検討する際に注意すべき点は、トークン価格が実需要ではなく投機的な期待で形成されている場合があることです。

    健全なDePINプロジェクトを評価するためには、トークン価格だけでなく、ネットワークの実際の利用状況(アクティブノード数、データ転送量、サービス利用者数、実際の収益など)を確認することが重要です。これらの指標は多くの場合、プロジェクトのダッシュボードやブロックチェーンエクスプローラーで公開されています。

    「トークン価格が上がっている=プロジェクトが成功している」とは限りません。実需要に基づいた成長かどうかを見極めることが、DePIN投資において特に重要になってきます。


    7. DePINが直面する課題とリスク

    7-1. 規制リスク——通信・エネルギー分野の法規制

    DePINが既存のインフラ産業に参入する際、避けて通れないのが規制の問題です。特に通信分野とエネルギー分野は、各国で厳格な規制が敷かれています。

    通信分野では、無線周波数の使用には政府の許可(周波数ライセンス)が必要な場合が多く、Helium MobileのようなサービスがどこまでCBRS(Citizens Broadband Radio Service)などの共有スペクトルで事業展開できるかは、規制環境に大きく左右されます。

    日本においては、電気通信事業法やIoT向けの規制との整合性が課題になる可能性があります。分散型ネットワークの運営者が「電気通信事業者」に該当するかどうかの判断は、今後の規制動向を注視する必要があるでしょう。

    7-2. ハードウェアリスク——初期投資と陳腐化

    DePINプロジェクトの多くは、参加者に専用ハードウェアの購入を求めます。Heliumのホットスポットは約500〜1,000ドル、Hivemapperのダッシュカムは約500ドル程度の初期投資が必要です。

    この初期投資には、ハードウェアの陳腐化リスクやプロジェクト自体の失敗リスクが伴います。トークン価格が下落した場合、ハードウェアへの投資を回収できない可能性もあります。また、プロジェクトがアップデートによって新しいハードウェア仕様を要求した場合、既存のハードウェアが使用できなくなるリスクもゼロではありません。

    さらに、海外プロジェクトのハードウェアを購入する場合、配送の遅延、カスタマーサポートの言語障壁、保証の不確実性なども考慮に入れる必要があります。

    7-3. トークンエコノミクスの持続可能性

    DePINプロジェクトにとって最も根本的なリスクは、トークンエコノミクスの持続可能性です。多くのプロジェクトは初期段階でインフラ提供者に高い報酬を提供して参加者を集めていますが、この報酬水準を長期的に維持できるかどうかは不確実です。

    実需要がトークン発行量に追いつかない場合、トークン価格は下落圧力にさらされ、インフラ提供者の離脱→ネットワーク品質の低下→需要のさらなる減少という「デス・スパイラル」に陥るリスクがあります。

    また、複数のDePINプロジェクトが同じ分野(たとえば分散型ストレージや分散型GPU)で競合している場合、限られた需要を奪い合う構図になり、すべてのプロジェクトが持続可能な収益を確保できるとは限りません。


    8. DePINの未来——インフラ構築の民主化は実現するか

    8-1. AIとDePINの共生——データ・計算リソースの需要爆発

    DePINの将来展望を語るうえで最も重要な要素の一つが、AI(人工知能)との共生関係です。AIモデルの開発と運用には、大量の学習データ、膨大なGPU計算リソース、そしてリアルタイムデータへのアクセスが不可欠です。DePINはこれらすべてを分散的に供給できるポテンシャルを持っています。

    Hivemapperが収集する道路データは自動運転AIの学習データとして、DIMOが収集する車両データは交通予測AIのインプットとして、Render Networkの分散型GPUはAIモデルの学習基盤として、それぞれ価値を発揮する可能性があります。

    AI産業の急速な成長がDePINの需要側を押し上げ、DePINが提供するデータとリソースがAIの性能向上を支える——この共生関係が本格化すれば、DePIN市場は現在の規模から数倍、数十倍に拡大する可能性があるとする予測もあります。

    8-2. 新興国でのユースケース——インフラの「リープフロッグ」

    DePINが最も大きなインパクトを発揮する可能性がある場所は、先進国よりもむしろ新興国かもしれません。

    新興国では、固定電話網を経ずに直接モバイル通信が普及した「リープフロッグ(飛び越え型発展)」が過去に起きています。同様に、中央集権的な大規模インフラ投資を経ずに、DePINを活用して通信網、エネルギーグリッド、地図データベースを「ボトムアップ」で構築できる可能性があります。

    たとえば、送電網が十分に整備されていない地域で、太陽光パネルとバッテリーを組み合わせた分散型エネルギーグリッドをDePINの仕組みで構築することが考えられています。インフラ投資の大きな障壁を、トークンインセンティブで乗り越えられる可能性があるのです。

    8-3. DePIN投資を検討する際のチェックポイント

    DePIN関連のトークンやプロジェクトへの投資を検討する際には、以下のような点を確認することをおすすめします。

    実需要の存在と規模は十分か(ターゲット市場の規模、既存プレイヤーとの比較)。ネットワークの成長指標(アクティブノード数、データ転送量、サービス利用者数)は健全に推移しているか。トークンエコノミクスは持続可能な設計になっているか(インフレ率、バーンメカニズム、実収益とのバランス)。チームの実績と技術力は信頼に足るか。規制リスクは許容範囲内か。

    DePINはまだ発展途上の分野であり、高いリターンの可能性がある一方で相応のリスクも伴います。投資判断にあたっては、過度な期待を持つことなく、冷静にプロジェクトのファンダメンタルズを評価することが重要ではないでしょうか。


    まとめ

    DePIN(分散型物理インフラネットワーク)は、通信・地図・ストレージ・コンピューティングなどの物理的・デジタルなインフラを、ブロックチェーンとトークンインセンティブを活用して分散的に構築する仕組みです。

    Heliumはワイヤレスネットワーク、Hivemapperは地図データ、Render NetworkはGPU計算リソースという、それぞれ異なるインフラ分野でDePINモデルの有効性を実証しつつあります。AIの急速な普及がデータと計算リソースへの需要を押し上げており、DePIN市場は今後さらに拡大する可能性があると考えられています。

    一方で、規制リスク、ハードウェアの初期投資リスク、トークンエコノミクスの持続可能性など、DePINにはまだ多くの課題が残されています。DePINプロジェクトを評価する際には、トークン価格だけでなく、実需要の存在、ネットワークの成長指標、トークンエコノミクスの設計を総合的に確認することが大切です。

    DePINがインフラ構築の「民主化」を本当に実現できるかどうかは、今後数年の需要獲得と技術の成熟にかかっていると言えるでしょう。


    よくある質問(FAQ)

    Q1. DePINとは何の略ですか?

    DePINは「Decentralized Physical Infrastructure Networks(分散型物理インフラネットワーク)」の略です。ただし名称の「Physical」にもかかわらず、実際にはデジタルリソース(ストレージ、GPU計算など)を含む広い概念として使われています。Messariが2022年末にこの用語を提唱し、業界に広く普及しました。

    Q2. DePINに参加するにはどうすればよいですか?

    プロジェクトによって異なりますが、一般的にはプロジェクトが指定するハードウェア(ホットスポット、ダッシュカムなど)を購入・設置するか、既存のハードウェア(GPU、ストレージなど)をネットワークに接続することで参加できます。参加に際しては、初期投資コスト、期待されるリターン、リスクを十分に検討することをおすすめします。

    Q3. DePINのトークンは投資対象として有望ですか?

    DePINは成長が期待される分野ですが、プロジェクトごとにリスクとポテンシャルは大きく異なります。実需要の有無、ネットワークの成長指標、トークンエコノミクスの持続可能性などを個別に評価する必要があります。暗号資産全般に言えることですが、価格変動リスクは高いため、余裕資金の範囲内での投資が望ましいでしょう。

    Q4. DePINは日本でも利用できますか?

    一部のDePINプロジェクトは日本でも利用可能です。たとえば、Hivemapperのダッシュカムは日本でも使用でき、走行データの収集に参加できます。ただし、Helium Mobileのような通信サービスは米国を中心に展開しており、日本での利用にはまだ対応していないケースが多いです。各プロジェクトの対応地域をご確認ください。

    Q5. DePINとDeFiの違いは何ですか?

    DeFi(分散型金融)が金融サービス(貸借、取引、保険など)をブロックチェーン上で分散的に提供するのに対し、DePINは物理的・デジタルなインフラ(通信、地図、ストレージなど)をブロックチェーンとトークンインセンティブで分散的に構築・運営するものです。DeFiが「お金」のレイヤーであるのに対し、DePINは「現実世界のインフラ」レイヤーと言うことができるかもしれません。

    Q6. DePINの最大のリスクは何ですか?

    DePINの最大のリスクは、トークンインセンティブによるネットワーク構築が実需要の獲得につながらない場合のデス・スパイラルです。報酬が減少→インフラ提供者が離脱→ネットワーク品質が低下→需要がさらに減少→という負の循環に陥ると、プロジェクトの存続が危うくなります。また、規制リスクやハードウェアの陳腐化リスクも無視できません。


    ※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

    Bitcoin Analyze 編集部

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