DeFi(分散型金融)の世界は、純粋な暗号資産の貸し借りから始まりましたが、2024年〜2026年にかけてその範囲を大きく広げています。その最前線にあるのが「RWA×DeFi」、すなわち現実世界の資産をオンチェーンに持ち込み、DeFiの流動性プールと組み合わせる動きです。
特に注目されているのが「オンチェーンクレジット(プライベートクレジットのトークン化)」分野です。CentrifugeやMaple Finance、Goldfinchといったプロトコルは、中小企業融資・不動産開発融資・農業融資・貿易金融などの実需のある融資案件をブロックチェーン上に持ち込み、世界中のDeFi投資家が資金を提供できる仕組みを作り上げています。
本記事では、これらのオンチェーンクレジットプロトコルの仕組み・特徴・実績・リスクを詳しく解説します。DeFiとRWAの融合の最前線を理解することで、2026年以降の投資機会をより広く捉えることができるでしょう。
1. オンチェーンクレジット(プライベートクレジットのトークン化)とは
1-1. プライベートクレジットの基礎知識
プライベートクレジットとは、銀行融資や公開市場での債券発行ではなく、非公開の形で行われる企業・個人への融資を指します。機関投資家向けの投資手段として古くから存在しますが、高い参入障壁と非流動性が課題でした。
オンチェーンクレジットは、このプライベートクレジットをブロックチェーン上に乗せることで、世界中の投資家が参加できる開かれたマーケットとして再構築しようとするものです。貸し手(DeFi投資家)が流動性プールに資金を預け、借り手(審査を通過した企業・個人)がそこから借り入れる仕組みです。
1-2. 従来型DeFiレンディングとの違い
Aave・CompoundなどのDeFiレンディングは「過剰担保型」が基本です。1,000ドル分のETHを担保に入れても、借りられるのは600〜700ドル程度です。この仕組みはデフォルトリスクを低くできますが、資本効率が悪く、TradFi(伝統的金融)の融資ニーズには対応できません。
オンチェーンクレジットは「信用評価型」や「資産担保型」の融資を実現します。審査を通過した借り手は、暗号資産の過剰担保なしに融資を受けられます。これによって資本効率が飛躍的に向上し、TradFiの融資ニーズとDeFiの流動性が直接つながります。
2. Centrifuge(セントリフュージ)徹底解説
2-1. Centrifugeの仕組みと構造
CentrifugeはPolkadotベースのブロックチェーン「Centrifuge Chain」上で動作するオンチェーンクレジットプロトコルです。2021年にMakerDAOとの統合を皮切りに急成長し、プライベートクレジットのトークン化では最大手のプロジェクトに成長しています。
Centrifugeの特徴的な仕組みは「プール構造」です。各ファイナンサー(資産オリジネーター)が独自のプールを設定し、そこに投資家が資金を提供します。各プールには「シニア(上位優先)トランシェ」と「ジュニア(劣後)トランシェ」の2層構造があります。シニア投資家はより安全で低リターン、ジュニア投資家は高リスク・高リターンという役割分担です。
資産はNFTとしてオンチェーンに記録されます。たとえば、特定の融資案件がNFT(非代替性トークン)として表現され、それを担保にDAIやUSDCが引き出される構造です。
2-2. Centrifugeの主要ファイナンサーと実績
Centrifugeには多様な業種のファイナンサーが参加しています。
- New Silver:米国不動産開発融資(フィックス&フリップローン)
- Harbor Trade Credit:中小企業向け貿易金融・売掛金ファクタリング
- Fortunafi:米国国債・財務省ビル担保ファンド
- ConsolFreight:国際貨物運送の貿易金融
2025年末時点での累計融資実績は5億ドル超と言われており、デフォルト率は低水準を維持しています。ただし、一部ファイナンサーで返済遅延が発生した事例もあります。
3. Maple Finance(メープルファイナンス)徹底解説
3-1. Maple Financeの特徴と歴史
Maple Financeは機関投資家向けのオンチェーン信用融資プラットフォームです。2021年のローンチ以来、仮想通貨マーケットメーカー・取引所・マイナーなどに対して無担保または低担保で融資を行ってきました。
2022年のFTX崩壊・3AC(Three Arrows Capital)破綻の影響を受け、複数のデフォルトが発生し大きな打撃を受けました。しかし、2023〜2024年にかけて製品の再設計を行い、Cash Management製品(トークン化米国国債)の提供と、より厳格な審査プロセスの導入によって復活を遂げました。
3-2. Mapleの現在のラインナップ
2026年時点のMaple Financeの主な製品は以下の通りです。
- Maple Cash Management:トークン化米国国債を担保とした低リスク製品
- High Yield:機関投資家向け信用審査済み借り手への無担保融資プール(高リターン・高リスク)
- Blue Chip Lending:暗号資産を担保とする過剰担保型融資(Aaveに近いモデル)
2022年の教訓から、与信管理の強化と製品多様化が図られており、プラットフォームとしての信頼性が改善されています。
4. Goldfinch(ゴールドフィンチ)徹底解説
4-1. 新興国市場融資という独自路線
Goldfinchは、他のオンチェーンクレジットプロトコルとは一線を画す特徴があります。主に新興国市場(アフリカ・アジア・ラテンアメリカ)の金融機関・融資会社(FinTech)に対して融資を行うプロトコルです。
従来、先進国の投資家が新興国の融資市場に直接参加するには、多大なコストと規制上の障壁がありました。Goldfinchはこの障壁をブロックチェーンで解消し、「世界中の誰でも新興国融資に投資できる」仕組みを実現しようとしています。
4-2. Goldfinchのリスクと実績
Goldfinchの融資対象は、信用リスクの高い新興国市場であるため、デフォルトリスクは他のプロトコルよりも高い傾向があります。実際、2023年には一部の借り手のデフォルトが発生しています。
一方で、「社会的インパクト投資」としての側面もあり、金融インフラが整っていない地域の経済発展を支援するという価値観を持つ投資家から一定の支持を得ています。投資する際は、高いリターンの裏にある高いリスクを十分に認識することが必要です。
5. オンチェーンクレジットのリスク管理
5-1. デフォルトリスクの実態
オンチェーンクレジットの最大のリスクは「デフォルト(債務不履行)リスク」です。2022年の暗号資産市場の崩壊時には、複数のプロトコルで大規模なデフォルトが発生しました。
リスク軽減のために各プロトコルが実施している対策としては、与信審査の強化・コベナンツ(融資条件)の設定・オーバーコラタリゼーション(過剰担保)・法的執行力のある融資契約の締結などがあります。しかし、ブロックチェーン上でのスマートコントラクトと現実世界の法的契約の間には依然として「橋渡し」の問題が残っています。
5-2. 流動性リスクと引き出し制約
オンチェーンクレジットのプールは、多くの場合「ロックアップ期間」または「引き出し待機期間」が設定されています。融資中の案件がある場合、投資家がすぐに資金を引き出せないケースがあります。DeFiの「いつでも引き出せる」という一般的なイメージとは異なる点に注意が必要です。
6. 2026年以降の展望とDAOガバナンス
6-1. RWA×DeFiの進化方向
オンチェーンクレジット市場は、2026年以降さらなる成熟が期待されます。TradFiとの規制適合が進むことで、より大きな機関投資家の資金流入が見込まれます。また、AI与信審査・オンチェーン信用スコアリングの導入によって、デフォルト予測精度の向上も期待されています。
6-2. ガバナンストークンの役割
CentrifugeのCFG・MapleのMPL・GoldfinchのGFIなどのガバナンストークンは、プロトコルのパラメータ決定・新しいプール承認・リスクパラメータの設定などに利用されます。ガバナンスへの参加は投資家に一定の発言権を与えますが、トークン価格はプロトコルの利用量・収益性によって大きく変動するため、投機的な側面もあります。
まとめ
Centrifuge・Maple Finance・GoldfinchなどのオンチェーンクレジットプロトコルはRWA×DeFiの最前線に位置し、プライベートクレジット市場とDeFiの流動性を繋ぐ重要な役割を果たしています。2026年時点では累計融資規模が数十億ドルに達しており、実用段階のプロトコルとして機能しています。
一方で、デフォルトリスク・流動性リスク・規制リスクは現実的な問題として存在します。投資する際は各プロトコルの与信基準・過去のデフォルト実績・法的構造を十分に調査した上で、リスク許容度に合ったプールを選択することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. これらのプロトコルのガバナンストークン(CFG・MPL等)への投資はどうですか?
ガバナンストークンへの投資はプロトコルの成長と収益性に連動する可能性がありますが、同時に高い価格変動リスクを持ちます。プロトコルへの直接投資(流動性提供)とガバナンストークン保有は、別のリスク・リターン特性を持つ点を理解した上で判断することを推奨します。
Q2. KYC(本人確認)は必要ですか?
プロトコルによって異なります。Centrifugeはプール・投資家レベルに応じてKYCの要求度が変わります。Maple FinanceはKYC必須の製品が多く、個人投資家はアクセスできない製品もあります。各プロトコルの公式ドキュメントを確認してください。
Q3. DeFiレンディング(Aave等)と比べてどちらが良いですか?
DeFiレンディング(Aave等)は透明性・流動性・スマートコントラクトの成熟度が高く、いつでも引き出し可能です。オンチェーンクレジットはより高いリターンを期待できる代わりに、引き出し制約・デフォルトリスク・カウンターパーティリスクが加わります。どちらが優れているかは投資目的とリスク許容度によります。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。