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ビットコインは、ブロックチェーン上に残高が記録されていても、署名できる秘密鍵がなければ誰も動かせません。この性質のせいで、初期に採掘・購入されたビットコインのうち相当量が、鍵の紛失や保有者の死亡によって長期間まったく動いていないと一般に指摘されています。技術的に堅牢であることと、家族に引き継げることは、まったく別の問題です。
とはいえ、生前にリカバリーフレーズ(ウォレットを復元するための単語列)をそのまま家族に渡してしまえば、今度は逆のリスクが生まれます。家族の端末が乗っ取られれば資産は消えますし、まだ元気なうちに誰かが動かせてしまう状態は、相続対策としてはやりすぎです。守りたいのは「生前は自分だけが動かせる。死後は家族が確実に取り出せる」という二つの条件を同時に満たす状態でしょう。
この記事では、2 of 3 のマルチシグ(3本の鍵のうち2本が揃って初めて送金できる仕組み)を使い、その二つの条件を両立させる構成の作り方を、鍵をどこに置くかというレベルまで具体的に整理します。読み終えるころには、自分の保有額と家族構成に合わせて「鍵を何本、誰の手元に置くか」を紙に書き出せるようになっているはずです。主要ウォレットの公式ドキュメントと相続実務の解説資料を突き合わせ、家庭で現実に運用できる範囲だけに絞りました。順に見ていきましょう。
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GMOコインの口座開設ページを見る →PR・GMOコイン(GMOコイン株式会社)。手数料や取扱銘柄は変更されることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、投資判断はご自身の責任でお願いします。なぜ相続対策にマルチシグが向くのか
通常のウォレットは鍵が1本です。1本しかないということは、隠せば家族が取り出せず、渡せば生前から他人が動かせるという二択になります。この二択そのものが、単一鍵の構造上の限界です。
マルチシグは、この二択を分解します。3本の鍵を作り、そのうち2本が揃わないと送金できない設定にしておけば、家族に渡すのは「1本だけ」で済みます。1本だけでは何もできませんから、渡した時点で資産が動く心配はありません。そして自分に何かあったときには、家族が持つ1本と、あらかじめ第三者に預けたもう1本を合わせて2本にすれば、残高を取り出せます。生前の安全と死後の回収可能性を、同じ仕組みの中で切り分けられるわけです。
基本形は「2 of 3」
相続を目的にするなら、まず 2 of 3 を出発点に考えてください。3 of 5 なども設定できますが、鍵が増えるほど家族が復元にたどり着ける確率は下がります。相続対策における失敗は、資産が盗まれることよりも、遺族が手順を理解できずに放置されることのほうが圧倒的に多いためです。
2 of 3 なら、次のような性質が得られます。
- 鍵を1本なくしても、残り2本で資産を回収できる(紛失耐性)
- 鍵を1本盗まれても、それだけでは1円も動かせない(盗難耐性)
- 家族に鍵を1本先渡ししても、生前は動かされない(生前の安全)
この三つが同時に成り立つ最小構成が 2 of 3 です。ハードウェアウォレット(秘密鍵を専用機器の中に閉じ込めて管理する装置)を複数台使う運用が一般的で、選び方の基礎はハードウェアウォレットの選び方にまとめています。機種を揃えるならハードウェアウォレットの一覧から、必ず正規販売元の出品かどうかを確認して購入してください。
鍵の配置を設計する
ここからが本題です。同じ 2 of 3 でも、鍵をどこに置くかで性格がまったく変わります。代表的な三つの型を挙げます。
案1:本人2本+家族1本
自分の手元に2本(自宅と貸金庫など離れた場所)、配偶者や子に1本を預ける構成です。生前は自分の2本で自由に送金できます。自分に何かあれば、家族は自分の手元にある残り1本のうちどちらかを見つけて組み合わせれば取り出せます。導入が最も簡単な一方、家族が自宅の鍵を見つけられなければ詰むため、保管場所の明示が生命線になります。
案2:本人1本+家族1本+第三者1本
3本目を、弁護士・司法書士など職務上の守秘義務を負う専門家に預ける構成です。家族は単独では動かせず、専門家も単独では動かせません。相続が発生したときだけ、家族と専門家が合意して2本を揃えます。権限が一箇所に集中しないため、保有額が大きい場合や、相続人が複数いて公平性を担保したい場合に向きます。専門家に暗号資産の取り扱い経験があるかどうかは、依頼前に必ず確認してください。
案3:タイムロックを併用する
一定時点まで特定の鍵では使えないようにする時限設定を組み合わせる方法もあります。普段は自分の鍵で動かし、一定期間まったく動きがなければ家族の鍵単独でも動かせるようになる、という設計です。理屈としては相続に最も素直ですが、設定を維持するには定期的な操作が必要で、扱いを誤ると自分の資産を自分で凍結してしまいます。技術的な検証を自分でできる人向けの選択肢と考えてください。
| 構成 | 向いている人 | 主な弱点 |
|---|---|---|
| 案1 本人2本+家族1本 | 保有額が中規模まで、相続人が1人 | 手元の鍵を家族が発見できないと回収不能 |
| 案2 本人1本+家族1本+専門家1本 | 保有額が大きい、相続人が複数 | 専門家への依頼費用と、対応可能な人材の少なさ |
| 案3 タイムロック併用 | 技術的な検証を自力でできる人 | 定期操作を怠ると資産が動かせなくなる |
設計より大事なのは「手順書」
マルチシグを組んだ人が見落としがちなのが、遺族はビットコインの操作方法を知らないという前提です。鍵が2本揃っていても、どのソフトで、どの設定ファイルを読み込んで復元するのかが分からなければ、残高は動きません。マルチシグの復元には、鍵そのものに加えてウォレットの構成情報(どの鍵の組み合わせで何本必要か、という設計図にあたるデータ)が必要になる点も、単一鍵のウォレットと大きく違うところです。
紙で残す手順書には、最低限これだけを書いてください。
- 使用しているウォレットソフトの正式名称と、公式サイトから入手する旨
- 2 of 3 構成であること、鍵が3本あり2本で復元できること
- 3本それぞれの保管場所と、誰に連絡すれば受け取れるか
- ウォレットの構成情報を保存したファイルの場所(複数箇所に控える)
- 復元後、まず少額を送金して動作を確かめること
手順書に秘密鍵そのものを書いてはいけません。書くのは「どこに何があるか」だけです。あわせて、遺族が慌てて検索した先で偽サポートに接触してしまう事故も起きています。詐欺の見分け方を手順書に同封しておくと、遺族の判断材料になります。
よくある設計ミス
- 3本の鍵を同じ家の同じ引き出しに入れる(火災や盗難で一度に失う)
- 構成情報のバックアップを1箇所にしか置かない(鍵が揃っても復元できない)
- 組んだきり一度も復元テストをしない(本番で初めて不備に気づく)
- 家族に「何かあったら金庫を見て」とだけ伝え、中身の意味を説明していない
特に最後の一つが致命的です。年に一度でよいので、少額の資産で実際に復元操作をしてみてください。手順書どおりに家族が動けるかを確かめる作業まで含めて、相続設計です。基礎から確認したい場合は仮想通貨の始め方ガイドやビットコインの解説記事もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
マルチシグにすると相続税の扱いは変わりますか
保管方法によって課税関係が変わるわけではないとされています。相続財産としての評価は、あくまで被相続人が保有していた暗号資産に対して行われます。マルチシグは「取り出せるようにするための技術的な手段」であり、税務上の扱いを軽くする仕組みではありません。
評価や申告の実務は個別事情で判断が分かれるため、税理士や仮想通貨の税金ガイドで確認したうえで、必要に応じて専門家に相談してください。
取引所に預けたままでは駄目なのでしょうか
駄目ではありません。国内取引所の口座であれば、遺族が所定の書類を提出することで相続手続きを進められる制度が用意されているのが一般的です。むしろ手続きの分かりやすさという点では、取引所のほうが遺族の負担は小さくなります。
マルチシグが向くのは、長期保有で自己保管を選んでいる場合や、取引所に預けたままにすることの信用リスクを避けたい場合です。両方に分散させるのも現実的な選択です。
鍵を預ける第三者が先に亡くなったらどうなりますか
2 of 3 であれば、残りの2本で回収できるため即座に問題にはなりません。ただし予備の余裕が失われた状態なので、気づいた時点で新しい構成のウォレットを作り、資産を移し替えるのが安全です。
スマートフォンのアプリだけで組めますか
マルチシグに対応したウォレットアプリも存在しますが、相続を前提とするなら鍵の1本以上は端末から独立した形で保管することをおすすめします。機種変更や端末の故障で構成が崩れると、遺族が復元にたどり着くのは一気に難しくなります。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。