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「暗号資産の税金はもうすぐ一律20%になる」と聞いて、利益確定を先延ばしにしている人がいます。ですが、この理解には二つの誤りが混じっています。ひとつは、申告分離課税への移行がまだ決定事項ではないこと。もうひとつは、仮に実現したとしても、暗号資産にまつわるすべての所得が自動的に20%になるとは限らないことです。
この記事では、現行の課税ルールがどうなっているのか、なぜ申告分離課税への移行が議論されているのか、そして実現した場合に投資家の行動がどう変わるのかを順番に整理します。読み終えるころには、改正のニュース見出しに一喜一憂せず、「今の自分は何を基準に売買と申告を判断すればよいか」を自分で決められる状態になっているはずです。
整理にあたっては、国税庁が公開している暗号資産に関するFAQとタックスアンサー、金融庁の制度整備に関する公表資料、業界団体が毎年公表している税制改正要望書を突き合わせ、すでに確定している事項と検討段階の事項を分けています。順に見ていきましょう。
出発点は「雑所得・総合課税」という現行ルール
まず土台の確認です。日本の居住者である個人が暗号資産を売却したり、ほかの暗号資産と交換したり、商品の決済に使ったりして得た利益は、原則として雑所得に区分され、給与などほかの所得と合算して課税される総合課税の対象とされています。税率は所得が増えるほど上がる累進構造で、住民税を含めた負担は最大で合計55%程度に達し得ます。
雑所得であることの影響は、税率だけにとどまりません。株式投資と比べたときに効いてくるのは、次の三点です。
- 上場株式や投資信託の譲渡損益と損益通算ができない
- その年に生じた損失を翌年以降に繰り越せない(繰越控除の適用がない)
- 源泉徴収だけで完結する仕組みがなく、原則として自分で確定申告する必要がある
年をまたいで含み益と含み損が大きく振れる資産でありながら、損失を将来の利益にぶつけられない。ここが「暗号資産は税制面で不利だ」と言われるいちばんの理由です。計算方法や必要書類から確認したい方は、暗号資産の税金ガイドもあわせてご覧ください。
なぜ「申告分離課税20%」が議論されてきたのか
上場株式などの譲渡益には申告分離課税が適用され、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた税率は20%台前半とされています。損失を一定年数繰り越すことも認められています。暗号資産にも同等の扱いを、というのが分離課税論の出発点です。
背景には制度面の動きがあります。暗号資産を資金決済に関する法律上の位置づけから、金融商品取引法の枠組みへ移す方向で制度整備の検討が進められてきました。税制は、その資産が法律上どう位置づけられているかに強く引きずられます。投資性のある金融商品としての整理が進めば、課税方式もそれに合わせて見直す議論が出てくる、という関係です。
実際、業界団体からは20%の申告分離課税と損失の繰越控除をセットで求める要望が継続的に提出されてきました。ただし、要望が出ていることと、法律として決まったことはまったくの別物です。改正の内容と施行時期は、最終的に税制改正大綱と国会での成立を経て確定します。現時点の投資判断は、あくまで現行ルールを前提に組み立てるのが安全です。
実現した場合、何がどう変わるのか
現行の扱いと、分離課税が導入される場合に論点となる項目を並べると、次のように整理できます。右側の列は議論されている方向であり、確定した制度ではない点にご注意ください。
| 項目 | 現行の扱い | 分離課税が実現した場合の論点 |
|---|---|---|
| 課税方式 | 雑所得・総合課税 | 申告分離課税への移行 |
| 税率 | 累進(住民税込みで最大55%程度) | 株式並みの20%台が要望されている |
| 損失の繰越 | できない | 繰越を認めるか、何年分かが論点 |
| ほかの所得との通算 | 雑所得の内側でのみ相殺 | 通算できる相手の範囲が論点 |
| 申告の手間 | 自分で損益を計算して申告 | 報告書の様式整備や源泉徴収の有無が論点 |
投資家の行動という視点で見ると、影響が大きいのは税率よりも繰越控除のほうかもしれません。損失を翌年以降に持ち越せるようになれば、下落局面で損失を確定させておく判断に意味が生まれ、年末に無理な調整をする動機は薄れます。税率の低下だけでなく、こうした一年単位の資金計画の立て方が変わる点が本質です。長期の組み立て方は投資戦略の記事でも扱っています。
まだ決まっていない四つのこと
報道や解説で省かれがちなのが、「どこまでが対象か」という論点です。少なくとも次の四点は、制度設計しだいで結論が変わり得ます。
- 適用開始時期。改正所得税法は2026年3月に成立していますが、適用は金融商品取引法の改正が施行された翌年の1月1日以降とされており、その施行日がまだ確定していません(2028年1月が有力視されています)
- 対象となる資産の範囲。すべての銘柄が一律に扱われるとは限りません
- 所得の種類。売却益以外の、ステーキング報酬やレンディングの利息、エアドロップ、マイニングによる取得などが同じ枠に入るかは別問題です
- 損失の繰越年数と、通算できる所得の範囲
とくに三つ目は見落とされやすい点です。売買益だけが分離課税になり、報酬として受け取ったトークンは従来どおり総合課税、という整理もあり得ます。自分の利益がどの種類なのかを把握しておくことが、改正後も効いてきます。
いま投資家ができる三つの準備
取引履歴を先に確保しておく
制度がどう変わっても、履歴がなければ正しい計算はできません。取引所の管理画面からダウンロードできる履歴は、保存期間が限られていたり、サービス終了とともに取得できなくなったりします。年に一度、すべての口座の履歴を手元に保存する習慣をつけておくと、あとから何年分も遡る事態を避けられます。
損益計算の方法を決めて固定する
取得価額の計算方法には総平均法と移動平均法があり、選択には所定の届出が必要とされています。届出をしない場合の扱いを含め、詳細は国税庁の公式情報をご確認ください。取引件数が多い方は、クリプタクトのような損益計算ツールで自動集計しておくと、改正後に計算方式が変わっても土台の履歴を流用できます。
年内の売買判断は現行ルールで組み立てる
将来の減税を当て込んで含み益を長く寝かせる判断は、価格変動のリスクを税制の不確実性と二重に抱えることになります。年間取引報告書が交付される国内の取引所、たとえばコインチェックのような業者を軸に据えておくと、申告時の資料集めが軽くなります。これから口座を用意する方は暗号資産の始め方ガイドを参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
税制改正はいつ決まるのですか
税制改正は、毎年末にまとまる税制改正大綱に方向性が示され、翌年の通常国会で関連法案が審議・成立し、その後に施行される流れが一般的です。要望が大綱に盛り込まれるかどうかが最初の関門になります。最新の状況は財務省や金融庁の公表資料でご確認ください。
改正されたら過去の取引もさかのぼって20%になりますか
税制の改正は、施行日以後の取引や、指定された年分から適用されるのが通常の考え方です。過去に申告済みの年分が自動的に計算し直される扱いは一般的ではありません。過去分は当時のルールで申告する、と考えておくのが安全です。
損失が出た年は、いま何もできないのですか
現行制度では暗号資産の損失を翌年に繰り越せませんが、同じ年の中であれば、ほかの暗号資産取引の利益と相殺することはできるとされています。年内に含み損を確定させるかどうかは、この一年単位の枠内で判断することになります。
会社員でも確定申告は必要ですか
給与を一か所から受けている方で、給与以外の所得が一定額以下であれば所得税の確定申告が不要となる取扱いがありますが、その場合でも住民税の申告は別途必要とされています。金額の基準や例外は個別事情で変わるため、税金・確定申告の記事と国税庁の公式情報を確認し、判断に迷う場合は税理士にご相談ください。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。
判断に迷う論点は、先に確認したほうが早い
この記事で扱ったのは、公開されている情報から言える一般的な扱いです。実際の申告では、自分の取引履歴に当てはめたときに判断が要る場面が出てきます。区分の判定、過年度の修正、複数の論点が重なる場合などです。
クリプト税理士は暗号資産の確定申告を専門に扱うサービスで、LINEから相談を始められます。対応範囲や費用は変わることがあるため、依頼前に公式ページで確認してください。
自分のケースに当てはめたときに、判断がつかない論点がある場合だけ:
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