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家庭用のパソコンや小型マイナーでのソロマイニングは、「どうせ当たらないから無駄」と一言で切り捨てられがちです。ですが、これは正確ではありません。当たる確率はゼロではなく、電卓で求められる小さな数字として、はっきり計算できます。無駄かどうかは、その数字を出してから判断すべきものです。
この記事では、ネットワーク全体のハッシュレートと手元の機器の能力から当選確率を機器クラス別に計算し、宝くじの当せん確率と並べて比較します。あわせて、期待値で見たときに電気代と釣り合うのか、実際にブロックを掘り当てた小規模マイナーは存在するのか、当たった場合に何が起きるのかまで整理します。読み終えるころには、「夢がある」「無駄だ」という感情論ではなく、自分の電力単価と機材で数字として判断できるようになります。
計算にはビットコインの公開仕様(平均10分に1ブロック、2016ブロックごとの難易度調整)と、一般に公開されているネットワークハッシュレートの水準を使いました。前提となる数値はすべて本文中で明示しますので、ご自身の条件に置き換えて再計算できます。順に見ていきましょう。
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マイニングとは、ブロックの中身にランダムな値を足しながらハッシュ計算を繰り返し、決められた基準値(ターゲット)より小さい結果が出るまで試行を続ける作業です。ハッシュ関数の出力は事前に予測できないため、1回の試行は完全に独立しています。何億回外しても、次の1回が当たりに近づくことは一切ありません。積み上がるのは電気代だけです。
この性質のおかげで、確率の計算はとても単純になります。自分のハッシュレートがネットワーク全体に占める割合が、そのままブロックを掘り当てる確率になるからです。全体の1万分の1の計算能力を持っていれば、あるブロックを自分が掘る確率は1万分の1です。手数料を抜く胴元がいない代わりに、外れたときの慰めも一切ない仕組みだと考えてください。仕組みそのものをもう少し詳しく知りたい方は、技術解説のカテゴリもあわせてご覧ください。
プールマイニングとの決定的な違い
プールマイニングでは、参加者が出した「惜しい計算結果(シェア)」を集計し、貢献度に応じて報酬を細かく分け合います。毎日わずかずつでも入金があるのはこのためです。対してソロマイニングは、掘り当てれば報酬全額、掘り当てなければ永久にゼロという二択になります。期待値そのものはどちらもほぼ同じで、違うのは結果のばらつき方だけです。ソロ用のプールを使う場合も、自分のブロックが通ったときだけ受け取る方式なので、宝くじとしての性質は変わりません。
実際に確率を計算してみる
ここでは前提を、ネットワーク全体のハッシュレートを800EH/s(エクサハッシュ毎秒、1EH/sは1秒間に100京回の計算)、1日あたりのブロック数を144として計算します。2026年時点の全体ハッシュレートは数百EH/sの水準で推移しており、日々変動しますので、実数は観測サイトなどでご確認ください。ブロック報酬は2024年の半減期以降3.125BTCで、次の半減期は2028年ごろの見込みです。
| 機器のクラス | ハッシュレートの目安 | 1日で当てる確率 | 1年で1回以上当てる確率 | 平均待ち時間 |
|---|---|---|---|---|
| 小型のロトマイナー | 約1TH/s | 約556万分の1 | 約0.0066% | 約15,000年 |
| 旧世代ASIC1台 | 約50TH/s | 約11万分の1 | 約0.33% | 約300年 |
| 最新世代ASIC1台 | 約200TH/s | 約2.8万分の1 | 約1.3% | 約76年 |
| 最新世代ASIC10台 | 約2PH/s | 約2,800分の1 | 約12% | 約7.6年 |
ASICとはマイニング専用に設計された計算チップのことで、汎用のパソコンとは処理効率が桁違いです。表を見ると、机の上に置ける小型機では平均待ち時間が1万年を超える一方、最新機を10台並べれば1年に12%という、宝くじよりはるかに現実的な水準まで上がることが分かります。ただし平均待ち時間はあくまで期待値であり、確率分布上は最初の1日で当たる可能性も、100年外し続ける可能性も同時に存在します。
宝くじと並べるとどう見えるか
ジャンボ宝くじの1等が当たる確率は、1枚あたり2,000万分の1とされています。先ほどの表の小型ロトマイナーは、1日回して約556万分の1でした。単純に確率だけを比べれば、1日の稼働は宝くじ約3.6枚分に相当する計算になります。消費電力15Wの機器を24時間動かした場合の電気代は、1kWhあたり31円として1日約11円ですから、確率だけを見れば宝くじよりはるかに安上がりに見えます。
しかし、賞金額を掛け合わせると景色が変わります。ここで仮に1BTCを1,000万円として計算すると、ブロック報酬3.125BTCは約3,100万円です。1日の期待収入は3,100万円を556万で割った約5.6円にとどまり、電気代11円のおよそ半分にしかなりません。期待値で見れば、家庭でのソロマイニングは投じた電気代を回収できない構造です。これは最新のASIC1台でも同じで、1日約2,600円の電気代に対して期待収入は1,000円台にとどまります。大規模事業者は1kWhあたり数円台の電力を長期契約で確保しているとされ、そもそも前提となる単価が違うのです。なお実際にはブロック手数料も加算されますが、時期による変動が大きく、結論を覆すほどの規模にはなりにくい水準です。
それでも当てた人は実在する
ここまで読むと絶望的に見えますが、ソロ向けプールでは、数十TH/s規模の小さなマイナーがブロックを掘り当てた事例が過去に複数報告されています。確率が数万分の1でも、世界中で無数の小型機が毎日回っていれば、どこかで誰かが当たること自体は珍しくありません。当たった本人にとっては1万分の1の幸運でも、全体で見れば起こるべくして起こる出来事です。
ここで注意したいのは、報じられるのは当たった人だけだという点です。同じ機材で何年も外し続けている大多数は記事になりません。事例の存在を「自分にも起こりそうだ」という感覚に読み替えてしまうのが、この分野で最も起きやすい誤読です。なお、当たったと称して出資を募る話や、「必ず掘れる」とうたうクラウドマイニングの勧誘は別問題として警戒が必要です。判断材料は詐欺の見分け方の記事にまとめています。
掘り当てた後に起きること
運よくブロックを掘り当てた場合、報酬は「コインベース出力」という特別な形で記録され、その後100ブロック(およそ16時間)が経過するまで送金できません。これは連鎖の巻き戻しに備えた仕様で、慌てて操作しても動かせないため、落ち着いて待つ必要があります。受け取ったBTCの保管先も事前に決めておきたいところで、まとまった額を長期保有するなら、取引所の口座ではなくオフラインで鍵を保管する機器の利用が一般に推奨されます。選び方はハードウェアウォレットのガイドで解説していますし、製品の実勢はAmazonの検索結果でも確認できます。
税務の扱いも忘れがちな論点です。日本では、マイニングで取得した暗号資産は取得した時点の時価で所得として認識し、事業性の有無に応じて事業所得または雑所得として扱うのが一般的とされています。3,000万円規模の報酬であれば影響は小さくありませんので、税金ガイドを確認したうえで、実際の申告は税理士や国税庁の最新情報にあたってください。
期待値を優先するならどうするか
ソロマイニングの魅力は、当たったときの一撃と、自分でネットワークの検証に参加しているという実感にあります。学習目的や趣味として、月数百円の電気代で回すのであれば、それ自体を否定する理由はありません。分散したマイナーが増えること自体はネットワークにとって望ましい面もあります。
一方で、資産を増やすことが目的なら、同じ金額を淡々と現物の購入に回すほうが素直です。国内ではコインチェックやbitbankのような取引所で少額からの積立が可能で、機器の騒音や発熱、故障のリスクを負う必要もありません。口座開設から購入までの流れは始め方ガイドにまとめています。宝くじとして楽しむのか、資産形成として積み上げるのか、目的を分けて考えるのが結局いちばん安全です。
よくある質問(FAQ)
家庭のパソコンやゲーミングGPUでビットコインは掘れますか
技術的には可能ですが、実質的な意味はありません。高性能なGPUでも毎秒数億回程度の計算にとどまり、専用ASICの数百TH/sとは百万倍単位の差があります。先ほどの表の最下段に到達するどころか、平均待ち時間は数百万年規模になります。電気代のほうが確実に上回るとお考えください。
ソロとプール、どちらを選ぶべきですか
期待値はほぼ同じで、違うのは結果のばらつきです。安定した少額の入金を望むならプール、当たらない前提で一撃を狙う遊びとして割り切るならソロが向きます。プールを選ぶ場合は、報酬方式や手数料率が事業者ごとに異なるため、公式の説明を必ず確認してください。
難易度が下がれば当たりやすくなりますか
その通りで、難易度が下がると同じ機材でも確率は上がります。難易度は2016ブロックごと、およそ2週間おきに調整され、BTC価格の下落などでマイナーが撤退すれば一時的に低下します。ただし長期では上昇傾向が続いており、家庭用機材にとって有利になる展開は期待しにくいのが実情です。
ソロマイニングを始めるのに何が必要ですか
自分でブロックを組み立てる本来のソロマイニングでは、Bitcoin Coreなどのフルノードを常時稼働させ、そこにマイナーを接続します。手軽に試すなら、ソロ専用のプールに小型機を向けるだけでも同じ確率で参加できます。いずれの場合も、発熱と騒音、そして電力契約のアンペア容量を先に確認しておくと安全です。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。