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ビットコインETFの信託報酬は、請求書として届くわけではありません。ファンドが保有する資産の中から日割りで少しずつ差し引かれ、その分だけ基準価額が押し下げられる仕組みです。引かれる瞬間が見えないため、年0.2%の商品と年1.5%の商品を並べても、買った日には違いを体感できません。
先に結論をお伝えすると、差がはっきり出るのは保有期間が長いときで、100万円を10年持ち続けた場合、経費率0.20%と1.50%ではおよそ12万円のコスト差になります(価格が横ばいだった場合の試算)。値上がりすればコストの絶対額も膨らむため、差はさらに広がります。各運用会社が公表している経費率の水準と、コストが複利で効く計算式を突き合わせて試算しました。
どこで差がつくのか、そして経費率以外に何を見るべきか、順に比較しながら解説します。
信託報酬(経費率)は、どこから引かれているのか
経費率とは、ファンドの運営にかかる費用を資産に対する年率で表したものです。運用会社の報酬、現物を預けるカストディアン(保管を専門に行う業者)への保管料、監査や事務にかかる費用などがここに含まれます。
徴収の方法が、株式の売買手数料とは根本的に違います。売買手数料は取引のたびに一度だけ引かれますが、経費率は持っている間ずっと、毎日少しずつ資産から差し引かれ続けます。しかも差し引かれた分は再投資されないため、翌年以降の複利の土台が毎年わずかに削られていきます。
この「土台が削れる」性質があるため、保有期間が延びるほど差は直線的ではなく、じわじわと開いていきます。
現物ビットコインETFの経費率はどのくらいの水準か
個別の商品名と数字は変更されることがあるため、ここでは水準帯として整理します。一般に、後発の現物ビットコインETFは低コスト帯に集中しており、先行して設定されていた信託型の商品には年1%台半ばという高めの水準も残っているとされています。
| 水準帯 | 経費率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 低コスト帯 | 年0.2%前後 | 後発商品に多い。上場直後は一定期間・一定残高まで免除する例もある |
| 中位帯 | 年0.3〜0.5%程度 | 運用方針や規模によって差が出る |
| 高コスト帯 | 年1%台半ば | 先行して設定された商品に見られる水準 |
| 実質ゼロ | 期間・残高が限定 | 免除期間の終了後は通常の経費率に戻る |
経費率は運用会社の判断で引き下げられることも、免除期間が終わって実質的に上がることもあります。実際に発注する前に、その商品の目論見書やファクトシートで最新の数字を確認してください。
10年保有したときのコスト差を試算する
前提を揃えて計算します。元本は100万円、追加投資なし、経費率は毎年一定で日割り控除され、売買手数料と税金は考慮しません。
価格が横ばいだった場合
| 経費率 | 10年後に残る割合 | 差し引かれた累計コスト |
|---|---|---|
| 年0.20% | 約98.0% | 約1万9,800円 |
| 年0.25% | 約97.5% | 約2万4,700円 |
| 年0.50% | 約95.1% | 約4万8,900円 |
| 年1.50% | 約86.0% | 約14万300円 |
0.20%と1.50%の差は、100万円あたり約12万円です。投資額に比例しますので、1,000万円なら約120万円の差になります。逆に0.20%と0.25%の差は10年で約5,000円ですから、この程度の差にこだわって流動性の低い商品を選ぶのは本末転倒です。
価格が年率10%で伸びた場合
経費率はその時点の資産額に対してかかります。値上がりするほど、引かれる金額そのものも大きくなります。
| 経費率 | 10年後の評価額 | 経費率ゼロとの差 |
|---|---|---|
| 年0%(比較用) | 約259.4万円 | ― |
| 年0.20% | 約254.2万円 | 約5.2万円 |
| 年1.50% | 約222.9万円 | 約36.5万円 |
同じ値動きでも、経費率0.20%と1.50%では10年後の評価額に約31万円の開きが出ます。なお年率10%はあくまで計算のための仮定であり、将来のリターンを示すものではありません。ビットコインの値動きは上下どちらにも大きく振れます。
経費率だけを見て選ぶと、かえって損をします
実際に負担するコストは経費率だけでは決まりません。特に日本から買う場合、次の4つが効いてきます。
- 売買スプレッド:出来高が細い商品は買値と売値の差が広がります。短期の売買では経費率よりこちらの影響が大きくなります
- 為替コスト:米ドル建ての商品なら、円からドルへ両替する際に手数料がかかります。往復で発生する点も見落とされがちです
- 売買委託手数料と口座管理料:証券会社側の費用です。投資金額が小さいほど、比率としては重くなります
- 基準価額と現物価格の乖離:指数への追随がどれだけ正確かは商品ごとに差があり、経費率の差を上回ることもあります
目安として、保有が1〜2年以内なら売買まわりのコストを、5年以上なら経費率を重く見るという優先順位で考えると判断しやすくなります。長期の資産配分の組み方は投資戦略のカテゴリ記事もあわせて参考にしてください。
国内から見た現実的な選択肢
日本の証券会社で現物ビットコインETFを買えるかどうかは、商品・時期・口座区分によって異なります。安い商品を見つけてから取扱いがないと分かる、という順番になりがちですので、比較を始める前に、利用している証券会社の公式情報で取扱いの有無を確認しておくと無駄がありません。
現物を直接持つ選択肢も、コスト比較の対象になります。国内の取引所で買った現物には保有コストが発生しない代わりに、購入時のスプレッドが効きます。一般に、販売所形式は手軽ですがスプレッドが広めで、取引所(板)形式は手数料が低いという構造です。コインチェックやGMOコインの公式手数料ページでは販売所と取引所それぞれの条件が公開されていますので、両方の形式を見比べてください。口座開設から購入までの流れは仮想通貨の始め方ガイドにまとめています。
ただし、現物には保管という別の負担がかかります。長期で持つほど自分で鍵を管理する必要が出てきますので、ハードウェアウォレットの選び方もセットで検討してください。税金の扱いもETFと現物では区分が異なりますから、仮想通貨の税金ガイドで違いを確認しておくと、手取りベースでの比較ができます。
よくある質問(FAQ)
経費率がいちばん低い商品を選べば有利ですか?
保有期間が長ければ有利に働きますが、それだけでは決まりません。出来高が少なく売買スプレッドが広い商品では、年0.05%の経費率差を一度の売買で失うこともあります。保有予定期間と売買回数をあわせて考えてください。
手数料免除キャンペーン中の商品は、そのまま買っていいですか?
免除には期間や残高の上限が設定されているのが一般的です。終了後に適用される通常の経費率で判断し、免除はおまけ程度に見ておくと、あとで想定が崩れません。
ETFと国内取引所の現物では、どちらのコストが安くなりますか?
保有期間で逆転します。短期なら購入時のスプレッドが小さいほうが有利で、10年単位の長期であれば、保有コストが発生しない現物が有利になりやすい構造です。
ただし現物には保管の責任と税区分の違いがついてきますので、コストだけで決められる比較ではありません。
経費率は途中で変わることがありますか?
あります。競争によって引き下げられることも、免除期間の終了で実質的に上がることもあります。年に一度は保有している商品の最新の目論見書を確認する習慣をつけておくと安心です。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。