DeFiの世界では、単一のブロックチェーン上での取引に限らず、複数のチェーンをまたいだ資産の移動やスワップへのニーズが急速に高まっています。しかし、最適なブリッジやDEXを自分で探し出すのは煩雑で時間がかかります。そこで登場したのがLiFi(Li.Finance)です。LiFiはあらゆるチェーン・あらゆるトークン間のスワップと転送を一括で最適化するプロトコルであり、DeFiユーザーと開発者の双方から高い注目を集めています。本記事ではLiFiの仕組み・特徴・使い方・セキュリティ・リスクについて詳細に解説します。
LiFiプロトコルとは何か
DEXアグリゲーターとブリッジアグリゲーターの融合
LiFiは一言で言えば「DEXアグリゲーター+クロスチェーンブリッジアグリゲーター」です。DEXアグリゲーターとして、UniswapやSushiSwap・PancakeSwapなど多数のDEXの流動性を比較し最安値ルートを提供します。さらにブリッジアグリゲーターとして、Stargate・Across・Hop・Celer・Connext・deBridgeなど多数のブリッジを統合し、チェーン間転送においても最適なルートを自動選択します。この2つの機能を組み合わせることで、複雑なクロスチェーンスワップを単一のUIとAPIで完結させることができます。
LiFiの歴史と開発チーム
LiFiは2021年に設立されたドイツのブロックチェーン企業Li.Finance GmbHによって開発されました。創業者はPhilipp Zentner(CEO)ら欧州のWeb3コミュニティ出身者です。2022年にはシリーズA資金調達で1,750万ドルを調達し、開発・エコシステム拡大を加速させました。2023年以降はAPIとSDKの提供を強化し、多数のdAppやウォレットへの統合が進んでいます。MetaMaskやRainbowウォレットなどでもLiFiの技術が活用されています。
LiFiの技術的仕組み
ルーティングエンジンの動作原理
LiFiのコアはルーティングエンジンです。ユーザーが「ArbitrumのETHをPolygonのMATICにスワップしたい」とリクエストすると、エンジンは内部で複数のルート候補を算出します。例えば「Arbitrum→ETH→Across bridge→Ethereum→Uniswap→USDC→Polygon bridge→MATIC」というルートや、「Arbitrum→SushiSwap→USDC→Stargate→Polygon→USDC→Quickswap→MATIC」というルートを比較し、手数料・速度・スリッページを総合評価して最適解を提示します。ユーザーは複数のルート候補から選択することもできます。
スマートコントラクトのアーキテクチャ
LiFiのスマートコントラクトはダイヤモンドパターン(EIP-2535)を採用しており、モジュール型の拡張性が高い設計になっています。各ブリッジやDEXは「ファセット」と呼ばれるモジュールとして追加・更新でき、コアコントラクトを変更せずに新しいプロトコルを統合できます。Certik・OpenZeppelin・Peckshieldなど複数の監査機関によるセキュリティ審査を受けています。
対応チェーンと統合プロトコル一覧
主要対応チェーン
LiFiは執筆時点で25以上のEVM互換チェーンに対応しています。主な対応チェーンにはEthereum・Arbitrum・Optimism・Base・Polygon・BNB Chain・Avalanche・Fantom・Gnosis・zkSync Era・Scroll・Mantleなどが含まれます。また、非EVMチェーンとしてSolanaへの対応も順次拡大が進んでいます。対応チェーンは公式ドキュメントで常に最新情報を確認することを推奨します。
統合ブリッジ・DEX一覧
ブリッジ側ではStargate・Across・Hop Protocol・Celer cBridge・Connext・Symbiosis・Squid(Axelar)・deBridge・Orbiterなどが統合されています。DEX側ではUniswap V2/V3・SushiSwap・PancakeSwap・Curve・1inch・Paraswap・TraderJoe・Velodrome・Aerodrome・Odos・KyberSwapなどが利用可能です。これだけ多くのプロトコルをカバーしているため、ロングテールトークンの転送でも高い確率で最適ルートが見つかります。
LiFi APIとSDKの活用方法
開発者向けAPIの概要
LiFiは開発者向けに充実したREST APIを提供しています。主要エンドポイントには、ルート取得(GET /routes)・トランザクション取得(GET /quote)・トランザクションステータス確認(GET /status)などがあります。APIキー不要で利用開始でき、高トラフィック向けには有料プランも提供されています。レスポンスはJSON形式で、フロントエンドのSwap UIに直接統合しやすい構造になっています。
TypeScript/JavaScript SDKの使い方
LiFiは公式TypeScript/JavaScript SDKを提供しており、npm経由でインストールできます(npm install @lifi/sdk)。SDKを使用すると、ルート取得からウォレット署名・実行・ステータス監視までを少ないコードで実装できます。Reactフックも提供されており、Next.jsやViteベースのdApp開発に容易に組み込めます。また、WalletConnect・RainbowKit・wagmiとの統合サンプルも公開されています。
LiFiウィジェットの埋め込み
ウィジェットのカスタマイズ性
LiFiが提供する「LiFi Widget」は、数行のコードで自分のdAppにクロスチェーンスワップUIを埋め込めるコンポーネントです。テーマカラー・フォント・対応チェーン・表示通貨などを設定ファイルで細かくカスタマイズでき、ブランドイメージに合わせたデザインにできます。ウォレット接続UIの統合もサポートされており、既存のウォレット接続フローを維持したまま導入できます。
パートナーフィー(手数料シェア)の仕組み
LiFiウィジェットを組み込んだパートナーは、ウィジェット経由で発生したスワップ手数料の一部をシェアとして受け取ることができます。これにより、dApp運営者はプロダクトに付加価値を加えながら収益を得られます。手数料率はLiFiチームとの契約によって決まり、最大0.3%程度が設定可能とされています。
LiFiを使う際のセキュリティと注意点
フィッシングサイトへの注意
LiFiの公式URLはli.fi(および jumper.exchange)です。類似ドメインを使ったフィッシングサイトが報告されているため、必ずブックマークから公式URLにアクセスするか、URLを注意深く確認してください。また、MetaMaskなどのウォレット拡張機能が表示するトランザクション内容も必ず確認し、意図しないコントラクトへの承認(Approval)が含まれていないか確認することが重要です。
2023・2024年ハッキング事例から学ぶ教訓
2023年にLiFiスマートコントラクトの脆弱性を突いた攻撃が発生し約600万ドルの被害、2024年にも再び攻撃が発生し約1,000万ドルの被害が出ました。LiFiチームは迅速に脆弱性を修正し、被害を受けたユーザーへの補償を実施しました。大きな資金を動かす際は小口分割転送を心がけ、不必要なトークン無制限Approvalを設定しないよう注意してください。Revoke.cashで定期的にApprovalを確認・取り消す習慣をつけましょう。
まとめ
LiFiは複数チェーンにまたがる複雑なDeFi操作を大幅に簡素化するプロトコルです。DEXアグリゲーターとブリッジアグリゲーターを融合させたアーキテクチャにより、ユーザーと開発者の双方にとって大きな価値を提供しています。一方でハッキングリスクは常に存在するため、セキュリティ情報を継続的にチェックしながら活用することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. LiFiは無料で使えますか?
A1. LiFi自体は無料で利用でき、APIも基本的に無償で提供されています。ただし、スワップ実行時にはブリッジ手数料・DEX手数料・ガス代が発生します。高トラフィックでの商用利用には有料プランが必要です。
Q2. LiFiでサポートされていないトークンはどう扱われますか?
A2. 直接サポートされていないトークンでも、中間トークン(ETH・USDC等)を経由するルートが自動的に構築されるため、多くのケースで転送可能です。ただし一部の超マイナートークンは対応外の場合があります。
Q3. LiFiとJumper Exchangeの違いは何ですか?
A3. LiFiはプロトコル・API・SDKを指す技術名称で、Jumper ExchangeはLiFiプロトコルを使ったコンシューマー向けUIです。エンドユーザーはJumper Exchangeを、開発者はLiFi APIを使うと覚えておくとわかりやすいです。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。仮想通貨への投資はリスクを伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。