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Across Protocolとは:高速・低コストなオプティミスティックブリッジの仕組みと使い方

クロスチェーンブリッジは数多く存在しますが、「高速・低コスト・高セキュリティ」を同時に実現することは簡単ではありません。特にOptimistic Rollupのような楽観主義的な仕組みを活用したブリッジは、理論的にはセキュリティを高めつつ速度を上げる可能性を持っていますが、実装の難しさから普及が遅れていました。

Across Protocolはこの課題に正面から取り組み、リレイヤーネットワークとオプティミスティック検証を組み合わせた独自のアーキテクチャで注目を集めているクロスチェーンブリッジです。2021年末にリリースされて以来、EthereumのL2エコシステムを中心に利用者を増やしています。

本記事では、Across Protocolの技術的な仕組み、他のブリッジとの違い、実際の使い方、そしてリスクについて詳しく解説します。

1. Across Protocolの概要と特徴

1-1. 開発経緯とUMA Protocolとの関係

Across ProtocolはUMA Protocol(Universal Market Access)チームによって開発されました。UMA ProtocolはEthereumの分散型オラクルおよびデリバティブプラットフォームとして知られており、そのオプティミスティックオラクル技術をブリッジのセキュリティ検証に応用したのがAcrossです。

UMAのオプティミスティックオラクルは、「チャレンジ期間中に誰も異議を唱えなければ、提出された情報は正しいとみなす」という原理で動作します。Acrossはこの仕組みをブリッジの検証に組み込むことで、複雑な軽量クライアントを実装することなく、比較的高いセキュリティを実現しています。

1-2. 主要な特徴:速度・コスト・セキュリティ

Across Protocolの最大の特徴は、ユーザーが体感する速度が非常に速い点です。一般的なOptimistic Rollupブリッジの場合、正式な引き出しには7日間の待機期間が必要ですが、Acrossではリレイヤーが先行して資金を立て替えるため、ユーザーは数分以内に受信先チェーンでトークンを受け取れます。

手数料面でも競争力があり、他の主要ブリッジと比較して低い水準に抑えられています。またセキュリティ設計においても、オプティミスティックオラクルによる検証が不正を抑止する仕組みが組み込まれています。

2. Across Protocolの技術的な仕組み

2-1. リレイヤーネットワークの役割

Across Protocolの速度の秘密はリレイヤーネットワークにあります。ユーザーが送信元チェーンでデポジットを行うと、ネットワークに参加しているリレイヤーと呼ばれる事業者が受信先チェーンで先行して資金を提供します。

リレイヤーはUMAのオプティミスティックオラクルによって検証された後、バンドルと呼ばれる単位でまとめられてL1(Ethereum)上の流動性プールに払い戻しを受けます。この仕組みにより、ユーザーは7日間待たずに素早く資金を受け取れ、リレイヤーは手数料収入を得られるという均衡が生まれます。

2-2. Hub-and-Spoke(ハブアンドスポーク)モデル

Acrossはハブアンドスポークモデルを採用しています。中心となるのはEthereumメインネット上のHubPoolで、各チェーン上にはSpokePoolが配置されています。ユーザーのデポジットはSpokePoolに入り、リレイヤーへの払い戻しはHubPoolから行われます。

このモデルにより、流動性がHubPool(Ethereum)に集中して管理され、各チェーンで個別に流動性を用意する必要がありません。資本効率の観点からも優れたアーキテクチャであり、流動性の分散による非効率を最小化できます。

3. ACXトークンとガバナンス

3-1. ACXトークンの概要

Across ProtocolのネイティブトークンはACXです。ACXはガバナンス(プロトコルの意思決定への参加権)と、流動性提供者やリレイヤーへのインセンティブとして機能します。プロトコルのパラメータ変更や新機能の追加などはACXホルダーによる投票で決定される仕組みです。

ACXは2022年11月にエアドロップで配布されました。エアドロップは早期のブリッジ利用者やUMAプロトコル参加者を対象としており、コミュニティへの広い分配を意図したものでした。流動性提供に対してACXが報酬として支払われる期間もあり、流動性の確保に貢献しました。

3-2. 流動性提供(LP)のインセンティブ構造

AcrossのHubPoolに流動性を提供することで、ブリッジ手数料の一部を受け取ることができます。提供できるトークンはETH、WETH、USDC、USDT、DAI、WBTCなど主要なものが対象です。APRはブリッジの利用状況や流動性の量によって変動し、利用が多いほど手数料収入が増える仕組みです。

リレイヤーとして参加する場合は、技術的な知識と一定の資本が必要ですが、手数料収入の機会を得られます。リレイヤーは受信先チェーンに資金を先行提供するため、複数チェーンに流動性を分散させて待機させる必要があります。

4. Acrossを使ったクロスチェーン移動の実践

4-1. across.toフロントエンドの使い方

Acrossの公式フロントエンドはacross.toでアクセスできます。トップページにシンプルなブリッジUIが表示され、送信元チェーン・送信元トークン・受信先チェーンを選択し、送金額を入力するだけで手数料と受取予定額が表示されます。

ウォレットを接続後、Approveトランザクションに署名し、続けてブリッジトランザクションに署名することで操作が完了します。受信先チェーンでの着金は通常数分以内に行われますが、ネットワークの混雑状況やリレイヤーの可用性によって変動する可能性があります。

4-2. 対応チェーンとトークンの確認方法

Acrossが対応するチェーンはEthereum、Arbitrum、Optimism、Base、Polygon、zkSync Era、Linea、Mode Networkなど主要なEVMチェーンです。対応トークンはチェーンによって異なるため、利用前にacross.toのUIまたは公式ドキュメントで確認することを推奨します。

特に、移動したいトークンが受信先チェーンでサポートされているか確認することが重要です。サポート外のトークンは移動できないか、別のトークンに変換されて着金する場合があります。UIに表示される見積もりをよく確認した上で操作しましょう。

5. AcrossのセキュリティとリスクUMAオラクルの役割

5-1. オプティミスティックオラクルによる不正防止

Acrossのセキュリティの中核はUMAのオプティミスティックオラクルです。リレイヤーが払い戻しを請求する際、UMAのオラクルがその正当性をチャレンジ期間中に検証します。もし不正な払い戻し請求が行われた場合、ウォッチャーと呼ばれる参加者が異議申し立てを行い、不正を働いたリレイヤーの保証金(ボンド)が没収される仕組みです。

この設計は、不正行為のコストを非常に高くすることで、リレイヤーが正直に行動するインセンティブを与えています。軽量クライアントに比べて実装が簡単でありながら、十分な不正抑止力を持つとされています。

5-2. スマートコントラクトリスクと実績

AcrossのスマートコントラクトはOpenZeppelinやChainsecurityなどの監査会社による審査を受けています。リリース以来、主要なセキュリティインシデントは報告されておらず、他の大手ブリッジと比較して安定した実績を持っています。ただし、スマートコントラクトのリスクは常に存在することを念頭に置く必要があります。

バグバウンティプログラムもImmuneFiを通じて運営されており、脆弱性を発見した研究者への報奨金が用意されています。コミュニティによるセキュリティ監視にも積極的に投資しているプロジェクトです。

6. AcrossとStargate・Hop Protocolとの比較

6-1. Stargate Financeとの違い

StargateはLayerZeroを基盤としたオムニチェーン流動性プロトコルで、各チェーンに分散した流動性プールを持ちます。AcrossのHub-and-Spokeモデルと異なり、StargateはチェーンごとにLPプールを持ち、デルタアルゴリズムで流動性バランスを管理します。Stargateは対応チェーンが広く、Acrossと比べてより多くのL1/L2に対応しています。

6-2. Hop Protocolとの比較

Hop ProtocolはOptimistic RollupのL2間移動に特化したブリッジで、中間トークン(hToken)を使った独自の仕組みを持ちます。AcrossとHopはともにOptimism・Arbitrum間の移動に強みがありますが、Acrossの方がリレイヤーモデルによる速度面で優位とされています。また、Acrossはよりシンプルなアーキテクチャを持ち、開発者向けのAPIも充実しています。

まとめ

Across Protocolはリレイヤーネットワークとオプティミスティックオラクルを組み合わせた独自設計により、高速・低コスト・高セキュリティのクロスチェーンブリッジを実現しています。特にEthereumのL2エコシステム(Arbitrum、Optimism、Base等)間での移動に強みがあります。

ACXトークンによるガバナンスと流動性インセンティブも整備されており、プロトコルの持続可能性を高める設計となっています。セキュリティ面でも主要なインシデントのない実績を持っており、信頼性の高いブリッジの一つとして評価されています。

クロスチェーン操作を行う際は、利用するブリッジの仕組みとリスクを十分に理解した上で、適切な金額での利用を心がけましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. Acrossでの移動に失敗した場合、資金はどうなりますか?

A. Acrossは移動が完了しない場合、原則として送信元チェーンに資金が戻る設計になっています。ただし、ガス代は返金されません。問題が発生した場合は、公式Discord(discord.across.to)でサポートチームに連絡することを推奨します。

Q2. リレイヤーとして参加するにはどうすればよいですか?

A. リレイヤーとして参加するには、Acrossの公式GitHubで公開されているリレイヤーソフトウェアを実行する必要があります。複数のチェーンにウォレットと資金を用意し、技術的なセットアップが必要です。詳細は公式ドキュメント(docs.across.to)のRelayer Guideを参照してください。

Q3. AcrossはEVM非対応チェーン(SolanaやSuiなど)に対応していますか?

A. 2025年時点では、AcrossはEVM互換チェーンのみに対応しています。SolanaやSuiなどの非EVMチェーンへの対応は将来の開発ロードマップに含まれる可能性がありますが、現時点では公式にサポートされていません。非EVMチェーンへの移動が必要な場合は、LiFiやWormholeなど他のブリッジを検討することになります。

※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

Bitcoin Analyze 編集部

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