分散型金融(DeFi)とWeb3は2021年のバブル以降、急速な修正局面を経て再び注目が高まっています。2022年のTerraLUNA崩壊とFTX破綻は業界全体に深刻なダメージを与えましたが、それらの教訓を踏まえた上でプロトコルの設計が見直され、より堅牢なエコシステムが構築されつつあります。2027年に向けて、DeFiとWeb3はどのような形で「次のステージ」に進むのでしょうか。
本記事では、DeFiの現状と課題を整理した上で、2027年に向けて注目すべきトレンドと技術的な変化を詳しく解説します。特に「機関DeFi(Institutional DeFi)」の台頭と、規制対応型のDeFiプロトコルの増加が市場の構造を変えつつある点に注目します。
DeFiとWeb3は高い技術的・規制的リスクを伴う領域です。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。
1. DeFiの現状:TVLの推移と回復基調
1-1. TVLの歴史と現在地
DeFiのTotal Value Locked(TVL:ロックされた総資産価値)は2021年11月に約2,500億ドルのピークを記録した後、2022年の崩壊局面で約400億ドルまで急落しました。その後、徐々に回復基調を辿り、2024年〜2025年にかけてはビットコインの価格回復と連動して再び1,000億ドルを超える水準まで戻してきました。
TVLの回復は単なる価格上昇だけでなく、実際の利用者数・取引量の増加を伴うものかどうかが重要な判断基準となります。プロトコルのTVLが増加していても実際の利用実態が伴わない「水増しTVL」には注意が必要です。
1-2. 主要DeFiプロトコルの競争環境
Uniswap、Aave、Curveなどの第一世代DeFiプロトコルが引き続き市場をリードする一方で、Hyperliquidのような新世代のオンチェーンデリバティブプラットフォームや、Pendle Financeのような利回り分割プロトコルが新たな需要を取り込んでいます。2027年に向けて、ユーザーエクスペリエンス(UX)の改善と手数料の最適化を実現したプロトコルが市場シェアを拡大すると予想されます。
2. 機関DeFiの台頭
2-1. 機関投資家のDeFi参入障壁
伝統的な機関投資家がDeFiに参入するにあたっての主な障壁は、KYC/AML(顧客確認・マネーロンダリング防止)コンプライアンスの欠如、スマートコントラクトリスク、そして規制上の不確実性です。これらの問題に対応するため、「許可型DeFi(Permissioned DeFi)」と呼ばれる機関向け専用プールが登場しています。
AaveのArc(現在はHauma)や、Compound Treasuryといった製品はKYC済みの機関投資家のみが参加できる仕組みを採用しており、規制リスクを軽減しながらDeFiの収益性を享受できる設計となっています。
2-2. 2027年における機関DeFiの市場規模
機関DeFiは2025年〜2027年にかけて急速に成長する分野とされています。大手銀行や資産運用会社がブロックチェーン上でのトークン化資産取引や債券のスマートコントラクット決済を本格的に導入し始めており、2027年にはトークン化された現実資産(RWA:Real World Assets)の市場規模が数千億ドルに達するという予測も出ています。
3. RWA(現実資産のトークン化)の可能性
3-1. RWAとは何か
RWA(Real World Assets)とは、不動産・債券・株式・コモディティなどの現実世界の資産をブロックチェーン上でトークン化するコンセプトです。ブラックロックのBUIDLファンドやFranklin Templetonの米国債トークンファンドなど、大手金融機関がすでにRWAの実験を始めています。
トークン化された資産は分割所有・24時間取引・プログラマブルな配当分配が可能となり、従来の金融インフラの非効率性を大幅に削減できる可能性があります。2027年には、RWAがDeFiのTVLの主要な構成要素となる可能性が指摘されています。
3-2. RWAの課題とリスク
RWAの普及に向けた課題としては、法的枠組みの整備(デジタル所有権の法的認定)、オラクル問題(現実世界のデータをブロックチェーンに正確に反映する仕組み)、そして発行体の信用リスクなどが挙げられます。これらの課題が解決されるまでは、RWAへの投資には追加的なリスクが伴うことを理解しておく必要があります。
4. Web3とユーザーエクスペリエンスの進化
4-1. アカウント抽象化がもたらす変化
イーサリアムのEIP-4337(アカウント抽象化)は、Web3のユーザーエクスペリエンスを根本から変える技術です。従来のウォレット操作に必要だったシードフレーズの管理・ガス代の自己負担・複雑なトランザクション承認が、アカウント抽象化によってスマートフォンアプリ並みに簡略化される可能性があります。2027年には多くのDAppsがアカウント抽象化を前提とした設計に移行しており、一般ユーザーの参入障壁が大幅に下がると予想されます。
4-2. クロスチェーンインターオペラビリティの進展
現在のDeFiは複数のブロックチェーン間で分断されており、資産の移動にブリッジリスクが伴います。LayerZero・Wormhole・ChainlinkのCCIPなどのクロスチェーン通信プロトコルが発展することで、2027年には「チェーンを意識せずに使えるDeFi」が実現しつつある状況が見込まれます。これにより流動性が統合され、ユーザーにとってより使いやすいエコシステムが形成されると考えられます。
5. NFTとゲームの次なる形
5-1. NFT市場の正常化と新たな用途
2021〜2022年のNFTバブルは崩壊しましたが、その教訓からNFTの「コレクタブルとしての投機的価値」から「デジタル権利・認証・ロイヤルティ管理ツールとしての実用価値」への転換が進んでいます。音楽アーティストのロイヤルティ分配、スポーツチームのファントークン、ゲームアイテムの相互運用性など、NFTの実用的な活用事例が2027年に向けて拡大すると見られます。
5-2. ブロックチェーンゲームの成熟
「Play-to-Earn(P2E)」モデルは2021年にAxie Infinityが牽引しましたが、経済設計の持続可能性の問題から多くのプロジェクトが失敗しました。2027年に向けては「Play-and-Earn(PaE)」という「まずゲームとして楽しめる」ことを前提に、ゲーム内経済の持続可能性を確保したモデルが主流となりつつあります。大手ゲームスタジオのWeb3参入も相次いでおり、品質の高いブロックチェーンゲームの登場が期待されています。
6. DeFiのセキュリティと監査の重要性
6-1. ハッキング被害の現状
DeFiにおけるハッキング・詐欺被害は2022年に過去最高の約36億ドルに達し、その後も年間数十億ドルの被害が続いています。フラッシュローン攻撃・オラクル操作・ブリッジの脆弱性などが主な攻撃手法として知られており、スマートコントラクトの完全な安全性確保はいまだ困難な課題です。
6-2. 監査とセキュリティ対策の進化
こうした状況を受け、CertiK・Trail of Bits・OpenZeppelinなどのセキュリティ監査会社の重要性が高まっています。2027年に向けては形式検証(Formal Verification)やAIを活用した脆弱性検出技術が普及し、スマートコントラクトの安全性が向上すると期待されています。投資家としては、監査済みかつ長期間の実績を持つプロトコルを優先して評価することが重要です。
まとめ
DeFiとWeb3の2027年展望は、機関DeFiの台頭・RWAのトークン化・アカウント抽象化によるUX改善・クロスチェーン統合という4つの軸で進化が予想されます。2021年のバブル期とは異なり、実用性と持続可能性を重視したエコシステムの構築が進む中で、DeFiは金融インフラの一部として組み込まれていく過程にあります。リスクを理解した上で、技術・規制・実用性の変化を注視していきましょう。
よくある質問
Q1. DeFiのTVLはどこで確認できますか?
DeFi Llama(defillama.com)がチェーン別・プロトコル別のTVLをリアルタイムで公開しており、最も広く利用されている参照サイトです。無料で利用でき、詳細なフィルタリング機能も備えています。
Q2. RWAトークンへの投資は初心者でも可能ですか?
RWAトークンは比較的新しい概念であり、規制的・技術的な複雑さを伴います。まずはビットコインやイーサリアムなどの主要資産への理解を深めた上で、RWAについて学ぶことを推奨します。初心者の方は特に注意が必要な領域です。
Q3. スマートコントラクトのリスクを避ける方法はありますか?
完全に回避することは困難ですが、実績のある監査済みプロトコルの利用、単一プロトコルへの集中投資の回避、そして新興プロトコルへの参加額を少額に抑えるといった対策が有効です。