暗号資産ポートフォリオの作り方|リスク分散と銘柄配分の考え方

「ビットコインだけ買っておけばいいのか、それともアルトコインにも分散したほうがいいのか」——暗号資産への投資を始めた方の多くが、この疑問にぶつかるのではないでしょうか。

株式投資の世界では「卵を一つのカゴに盛るな」という格言が広く知られていますが、暗号資産の世界でも分散投資の考え方は重要です。ただし、暗号資産特有の事情——ビットコインとアルトコインの高い相関性、プロジェクトの消滅リスク、価格変動の激しさ——を踏まえると、伝統的な分散投資の手法をそのまま持ち込むだけでは不十分かもしれません。

この記事では、暗号資産ポートフォリオを構築するための基本的な考え方から、リスク許容度別のモデルポートフォリオ、リバランスの方法、よくある失敗パターンまで、体系的に解説していきます。暗号資産投資を始めたばかりの方も、すでに複数の銘柄を保有している方も、自分のポートフォリオを見直すきっかけにしていただければと思います。


目次

  • なぜ暗号資産にもポートフォリオ戦略が必要なのか
  • 暗号資産の主要カテゴリと特性を理解する
  • ポートフォリオ構築の基本原則——コア・サテライト戦略
  • リスク許容度別のモデルポートフォリオ
  • 銘柄選定の具体的なチェックリスト
  • リバランスの方法とタイミング
  • ポートフォリオ管理でよくある失敗パターン
  • ポートフォリオ管理ツールの活用法

  • 1. なぜ暗号資産にもポートフォリオ戦略が必要なのか

    1-1. ビットコイン一点集中のメリットとリスク

    「暗号資産に投資するなら、ビットコインだけでいい」——この考え方にはメリットがあります。

    ビットコインは暗号資産市場の時価総額の約55〜60%(2026年3月時点)を占める圧倒的なドミナンス(支配率)を持ち、流動性も最も高く、機関投資家からの資金流入もビットコインに集中しています。ETFという伝統金融からのアクセス手段も整備されており、「安全マージン」という点では他の暗号資産と一線を画します。

    しかし、ビットコイン一点集中にはリスクもあります。ビットコインの技術的な進化は他のプロジェクトと比較して保守的であり、スマートコントラクトやDeFi(分散型金融)のエコシステムは主にイーサリアムやソラナなど他のブロックチェーン上で発展しています。もしブロックチェーン技術の主要な価値創造がビットコイン以外のプラットフォームで起こるとすれば、ビットコインだけを保有することは成長機会を逃すことになりかねません。

    1-2. 暗号資産における「分散」の意味——伝統的投資との違い

    伝統的な株式投資では、異なるセクター(テクノロジー、ヘルスケア、エネルギーなど)や異なる地域(米国、欧州、新興国)に分散することで、特定のリスクを軽減します。このとき重要なのは、分散先の資産間の相関が低いことです。

    しかし暗号資産市場では、ほとんどの銘柄がビットコインの価格変動と高い相関を持っています。ビットコインが大きく下落すれば、イーサリアムもソラナもほぼ例外なく下落します。つまり、暗号資産内で銘柄を分散しても、「暗号資産市場全体の下落」というリスクは軽減できません。

    このため、暗号資産のポートフォリオ戦略を考える際には、二つのレベルでの分散を意識する必要があります。

    • アセットクラスレベルの分散: 暗号資産と、株式・債券・現金など伝統的な資産との分散
    • 暗号資産内の分散: ビットコインを中核としつつ、異なるユースケースやセクターの暗号資産に配分

    1-3. 分散投資の定量的な効果——相関係数で見る暗号資産間の関係

    暗号資産間の相関関係を理解するために、主要銘柄間の相関係数を確認してみましょう。

    2024年〜2025年のデータを基にすると、ビットコインとイーサリアムの日次リターンの相関係数は約0.85〜0.90と非常に高い水準にあります。ビットコインとソラナの相関係数も約0.75〜0.85程度です。

    一方で、ビットコインとステーブルコイン(USDT、USDCなど)の相関はほぼ0であり、ビットコインと金(ゴールド)の相関は約0.3〜0.4程度と比較的低い水準です。

    この数字が示唆するのは、暗号資産同士での分散だけではリスクの軽減効果が限定的であり、暗号資産以外のアセットクラスとの組み合わせが重要だということです。


    2. 暗号資産の主要カテゴリと特性を理解する

    2-1. レイヤー1ブロックチェーン——インフラ層の銘柄

    暗号資産市場の基盤を構成するのが、レイヤー1(L1)ブロックチェーンです。これは、ブロックチェーン技術の「土台」にあたるプラットフォームで、その上にさまざまなアプリケーションが構築されます。

    ビットコイン(BTC): 最も歴史が長く、時価総額最大の暗号資産。「デジタルゴールド」としての価値保存機能に特化。PoW(Proof of Work)のコンセンサスメカニズムを採用。

    イーサリアム(ETH): スマートコントラクトプラットフォームの先駆けであり、DeFiやNFTのエコシステムの大部分がイーサリアム上に構築されています。2022年にPoS(Proof of Stake)に移行。

    ソラナ(SOL): 高速・低コストを特徴とするレイヤー1。理論上は1秒あたり数千トランザクションを処理可能とされており、DeFiやNFTの分野で急速に成長しています。

    その他のL1: Avalanche(AVAX)、Cardano(ADA)、Polkadot(DOT)、Cosmos(ATOM)なども、それぞれ異なる技術的アプローチで競合しています。

    2-2. DeFi(分散型金融)トークン

    DeFiは、従来の金融サービス(貸借、取引、保険など)をブロックチェーン上で分散型に実現するプロジェクトの総称です。

    分散型取引所(DEX): Uniswap(UNI)、PancakeSwap(CAKE)、Jupiter(JUP)など。中央管理者なしにトークンの交換を可能にします。

    レンディングプロトコル: Aave(AAVE)、Compound(COMP)など。暗号資産の貸し借りを仲介するプラットフォーム。

    リキッドステーキング: Lido(LDO)、Rocket Pool(RPL)など。ステーキング中のETHを流動的に使えるようにするプロトコル。

    DeFiトークンの価格は、プロトコルの利用量(TVL: Total Value Locked)や手数料収入との連動性が比較的高いとされています。ただし、スマートコントラクトの脆弱性リスクや規制リスクも考慮する必要があります。

    2-3. ステーブルコインと利回り型資産

    ポートフォリオの「安定化装置」として機能するのがステーブルコインです。

    法定通貨担保型: USDT(Tether)、USDC(Circle)——米ドルに1:1でペッグされたステーブルコイン。暗号資産市場のボラティリティから一時的に退避するための手段として広く利用されています。

    アルゴリズム型: DAI(MakerDAO)——暗号資産の過剰担保とアルゴリズムによってペッグを維持するステーブルコイン。中央管理者への依存度が低い点が特徴です。

    ステーブルコインは「投資対象」というよりも、ポートフォリオの流動性を確保し、市場の急変時に素早くポジションを調整するための「戦略的な現金ポジション」として活用するのが一般的です。DeFiのレンディングプロトコルにステーブルコインを預けて利回りを得ることも可能ですが、スマートコントラクトリスクを伴う点はご留意ください。


    3. ポートフォリオ構築の基本原則——コア・サテライト戦略

    3-1. コア・サテライト戦略とは

    暗号資産ポートフォリオを構築する上で参考になるフレームワークが、伝統的な資産運用で使われてきた「コア・サテライト戦略」です。

    コア(中核): ポートフォリオの60〜80%を占める部分。低コストで分散された資産に長期投資する。暗号資産の場合はビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)がコアに該当します。

    サテライト(衛星): ポートフォリオの20〜40%を占める部分。より高いリターンを狙って、特定のテーマやセクターに集中投資する。暗号資産の場合は、成長期待の高いアルトコインやDeFiトークンがサテライトに該当します。

    この戦略の利点は、コア部分で安定性を確保しつつ、サテライト部分で追加的なリターンを追求できることです。サテライト部分で損失が生じても、コア部分がポートフォリオ全体の大幅な毀損を防いでくれます。

    3-2. コアの配分——BTC:ETH比率の考え方

    コア部分をBTCとETHでどう配分するかは、投資家によって意見が分かれるところです。

    BTC重視型(BTC 80%: ETH 20%): ビットコインの「デジタルゴールド」としての地位と、ETFを通じた機関投資家の資金流入に注目する投資家に適しています。ボラティリティを相対的に抑えたい場合にも向いています。

    均等型(BTC 50%: ETH 50%): ビットコインの価値保存機能とイーサリアムのプラットフォームとしての成長性の両方を取りたい投資家向け。イーサリアムのDeFi、NFT、レイヤー2エコシステムの拡大に期待する場合の配分です。

    ETH重視型(BTC 30%: ETH 70%): イーサリアムエコシステムの長期的な拡大に強い確信を持つ投資家向け。リスクは相対的に高くなりますが、イーサリアムがビットコインをアウトパフォームするシナリオでは大きなリターンが期待できます。

    2024年〜2025年の価格パフォーマンスを見ると、ビットコインがETFの恩恵を受けてイーサリアムをアウトパフォームしたケースもあり、過去の「アルトシーズン」のパターンが変化している可能性も指摘されています。

    3-3. サテライトの選び方——テーマ投資のアプローチ

    サテライト部分では、特定の「テーマ」に基づいて銘柄を選定するアプローチが考えられます。

    DeFiテーマ: Uniswap(UNI)、Aave(AAVE)、Lido(LDO)——分散型金融サービスの拡大に賭ける
    レイヤー2テーマ: Arbitrum(ARB)、Optimism(OP)、Polygon(MATIC)——イーサリアムのスケーリング問題の解決に賭ける
    RWA(Real World Assets)テーマ: Chainlink(LINK)、Ondo(ONDO)——現実世界の資産をトークン化する潮流に賭ける
    AIテーマ: Render(RNDR)、Bittensor(TAO)——AIとブロックチェーンの融合に賭ける

    重要なのは、テーマの選定に一貫した投資仮説があることです。「なんとなく話題だから」ではなく、「このテーマが成長する根拠は何か」を自分なりに説明できることが大切です。


    4. リスク許容度別のモデルポートフォリオ

    4-1. 保守型(リスク低め)——暗号資産投資初心者向け

    暗号資産への投資経験が浅い方や、大きな価格変動に不安を感じる方向けのモデルポートフォリオです。

    • BTC: 70% ——最も時価総額が大きく流動性の高い暗号資産に集中
    • ETH: 20% ——スマートコントラクトプラットフォームの代表として保有
    • ステーブルコイン: 10% ——下落局面での追加投資用の待機資金

    このポートフォリオの特徴は、暗号資産市場全体の成長からの恩恵を受けつつ、個別プロジェクトの破綻リスクを最小限に抑えることです。ステーブルコインの10%は、大幅な下落時に「押し目買い」を行うための余力として機能します。

    想定されるリターン・リスクの目安として、過去のデータを基にすると、年率リターンは30〜50%程度(上昇サイクル時)、最大ドローダウンは50〜70%程度を想定しておく必要があります。

    4-2. バランス型(リスク中程度)——ある程度の経験者向け

    暗号資産市場の値動きに慣れてきた方向けのモデルポートフォリオです。

    • BTC: 50% ——ポートフォリオの中核
    • ETH: 25% ——DeFi・NFTエコシステムの基盤
    • L1アルトコイン(SOL、AVAX等): 10% ——イーサリアムとの競合・共存に賭ける
    • DeFiトークン(UNI、AAVE等): 10% ——分散型金融の成長に賭ける
    • ステーブルコイン: 5% ——柔軟な資金運用のための待機資金

    この配分では、コア部分(BTC+ETH)が75%を占めており、安定性を維持しつつもアルトコインでの追加リターンを狙う構成です。

    4-3. 積極型(リスク高め)——経験豊富なトレーダー向け

    暗号資産市場の仕組みを深く理解し、高いリスクを許容できる投資家向けのモデルポートフォリオです。

    • BTC: 30% ——価値保存のアンカー
    • ETH: 20% ——プラットフォーム成長の恩恵を取る
    • L1アルトコイン: 15% ——次世代プラットフォームへの投資
    • DeFiトークン: 15% ——分散型金融のアップサイドを狙う
    • テーマ別トークン(AI、RWA等): 10% ——新興テーマのアーリーアダプター
    • ステーブルコイン: 10% ——機動的なトレーディング用

    このポートフォリオはリターンの期待値が高い反面、アルトコイン固有のリスク(プロジェクト失敗、流動性枯渇、ラグプル等)にさらされる割合も高くなります。個別銘柄の調査とモニタリングに十分な時間を割ける方に限定して検討すべき配分です。


    5. 銘柄選定の具体的なチェックリスト

    5-1. ファンダメンタルズ分析——プロジェクトの質を見極める

    サテライト部分に組み入れるアルトコインを選定する際の基本的なチェックリストを紹介します。

    チーム・開発体制

    • 創業者やコアメンバーの経歴は公開されているか
    • GitHub等でのコードの更新頻度はどの程度か
    • 開発ロードマップは明確に示されているか

    トークンエコノミクス

    • 総発行量と流通量の関係は適切か
    • インフレ率(新規発行によるトークンの希薄化)はどの程度か
    • トークンのユーティリティ(使い道)は明確か
    • VCやインサイダーのロックアップ解除スケジュールはいつか

    エコシステムの成長性

    • TVL(Total Value Locked)のトレンドはどうか
    • アクティブユーザー数は増加しているか
    • エコシステム内のdApps(分散型アプリケーション)の数と質はどうか

    5-2. オンチェーンデータで確認すべき指標

    ブロックチェーン上の取引データ(オンチェーンデータ)からも、プロジェクトの健全性を判断する手がかりが得られます。

    アクティブアドレス数: 一定期間内に取引を行ったユニークアドレスの数。実際の利用者数の代理指標として参考になります。トレンドが上向きであれば、ネットワークの利用が拡大している可能性があります。

    取引量: ネットワーク上で実際に移動している暗号資産の総額。取引量が減少傾向にある場合は、ネットワークの利用が縮小している可能性を示唆します。

    開発活動: GitHubでのコミット数やプルリクエスト数。開発活動が活発なプロジェクトは、技術的な改善が継続的に行われていることの証左です。ただし、コミット数が多ければ良いというわけではなく、質的な評価も必要です。

    ウォレット分布: 大口保有者(クジラ)への集中度。特定のアドレスに供給の大半が集中している場合は、売り圧力のリスクが高くなります。

    5-3. 避けるべき銘柄の特徴——レッドフラグ一覧

    以下の特徴が見られるプロジェクトは、ポートフォリオに組み入れる前に慎重な検討が必要です。

    • チームが匿名: 創業者やコアメンバーの身元が一切公開されていない
    • ホワイトペーパーが存在しない、または内容が薄い: 技術的な詳細や実装計画が不明瞭
    • 非現実的なリターンを約束: 「月利30%保証」などの表現がある場合は、ほぼ確実に詐欺の可能性が高い
    • トークンの大半がチームやVCに偏在: ロックアップ解除時に大量の売り圧力が発生するリスク
    • 監査未実施: スマートコントラクトの第三者監査が行われていない
    • SNSでの過剰なマーケティング: 技術やプロダクトよりも、SNS上のハイプ(話題性)で価格が動いているプロジェクト

    6. リバランスの方法とタイミング

    6-1. 定期リバランス vs 閾値リバランス

    ポートフォリオのリバランスには、大きく分けて二つのアプローチがあります。

    定期リバランス: 月に1回、四半期に1回など、あらかじめ決めた間隔で配分比率を元に戻す方法です。シンプルで感情に左右されにくい点がメリットですが、急激な市場変動時には対応が遅れる可能性があります。

    閾値リバランス: 特定の銘柄の配分比率が目標値から一定以上(例えば5ポイント以上)乖離した場合にリバランスを行う方法です。市場の変動に合わせてタイムリーに調整できる点がメリットですが、価格を頻繁にチェックする必要があります。

    暗号資産のボラティリティの高さを考慮すると、「四半期ごとの定期リバランス + 10ポイント以上の乖離時の臨時リバランス」という組み合わせが実務的に使いやすいかもしれません。

    6-2. リバランスの具体的な手順

    リバランスの手順は以下のとおりです。

  • 現在のポートフォリオの時価評価額を算出する
  • 各銘柄の現在の配分比率を計算する
  • 目標配分比率との差を確認する
  • 配分比率が高くなった銘柄を売却し、低くなった銘柄を買い増す
  • 取引にかかる手数料やスプレッドを考慮し、コスト対効果が見合わない場合はリバランスを見送る
  • リバランスの際に留意すべきは、日本の税制上、暗号資産の売却は利益の実現(課税イベント)を伴うという点です。リバランスのために売却を行うと、含み益に対して税金が発生する可能性があるため、頻繁なリバランスは税務上のデメリットになる場合があります。

    6-3. 新規資金の投入によるリバランス

    売却を伴わないリバランス手法として、新規に投入する資金を配分比率の低い銘柄に集中させる方法があります。

    例えば、目標配分が BTC 50%: ETH 25%: SOL 10%: AAVE 10%: ステーブルコイン 5% のポートフォリオで、BTCの値上がりにより実際の配分が BTC 60%: ETH 22%: SOL 8%: AAVE 7%: ステーブルコイン 3% になっていたとします。

    この場合、新規に投入する月々の積立資金をETH、SOL、AAVEに多めに配分することで、売却(=課税イベント)を発生させずにリバランスに近い効果を得ることができます。


    7. ポートフォリオ管理でよくある失敗パターン

    7-1. 「分散のつもりが集中」——見せかけの分散投資

    10銘柄に分散しているつもりでも、それらがすべてレイヤー1ブロックチェーンのトークンであれば、実質的にはセクターの集中投資です。

    例えば、BTC、ETH、SOL、AVAX、ADA、DOT、ATOM、NEAR、SUI、APTの10銘柄に等分に投資した場合、一見すると分散されているように見えます。しかし、これらはすべて「レイヤー1ブロックチェーン」というカテゴリに属しており、暗号資産市場全体が下落する局面ではほぼ同じ方向に動きます。

    本当の意味での分散を実現するには、異なるカテゴリ(L1、DeFi、ステーブルコイン、RWA等)やアセットクラス(暗号資産以外の資産)にまたがる配分が必要です。

    7-2. 「勝ち馬に乗り換える」——パフォーマンスチェイスの罠

    直近で価格が大きく上昇した銘柄に飛びつき、停滞している銘柄を売却する——いわゆる「パフォーマンスチェイス」は、暗号資産投資で最もよく見られる失敗パターンの一つです。

    暗号資産市場では、短期間で数倍になる銘柄が珍しくないため、「乗り遅れた」という焦りが生じやすい環境です。しかし、急上昇した直後の銘柄を購入することは、高値掴みのリスクを伴います。

    逆に、含み損が出ている銘柄を「取り返したい」一心で過度にナンピン(下がったら買い増す)してしまうのも危険です。プロジェクトのファンダメンタルズが悪化しているにもかかわらず買い増しを続けると、損失が拡大する可能性があります。

    7-3. 「草コインで一発逆転」——小型銘柄への過度な傾斜

    時価総額が小さい銘柄(いわゆる草コインや低時価総額アルトコイン)は、短期間で数十倍になるケースもある一方で、プロジェクトが頓挫してほぼ無価値になるリスクも極めて高い領域です。

    小型銘柄への配分は、ポートフォリオ全体の5〜10%以下に抑えることが推奨されます。「全額失っても生活に支障がない金額」がこのカテゴリの上限と考えてよいでしょう。

    また、小型銘柄には流動性が低いという問題もあります。買いたいときには買えても、売りたいときに買い手がいない——この状況は暗号資産の小型銘柄では日常的に起こり得ます。ポートフォリオの流動性を確保するためにも、小型銘柄の比率は限定的にすべきです。


    8. ポートフォリオ管理ツールの活用法

    8-1. 無料で使えるポートフォリオトラッカー

    暗号資産のポートフォリオを管理するためのツールは数多く提供されています。

    CoinGecko / CoinMarketCap: 暗号資産の価格情報を無料で確認できるサイトです。ポートフォリオ機能を使えば、保有銘柄と数量を入力して時価評価額をトラッキングできます。

    DeBank: ウォレットアドレスを入力するだけで、DeFiプロトコルに預けている資産を含めた全体のポートフォリオを一覧表示できるツールです。複数のブロックチェーンにまたがる資産を一元管理できる点が便利です。

    Koinly / CryptoTax: 税務計算に特化したサービスで、取引履歴から損益を自動計算してくれます。日本の暗号資産税制に対応しているサービスを選ぶと、確定申告時の負担が大幅に軽減されます。

    8-2. スプレッドシートによる管理方法

    ツールに頼らず、自分でスプレッドシートを作成して管理する方法もあります。むしろ、ポートフォリオの仕組みを理解するためには、最初はスプレッドシートで手動管理することをおすすめします。

    スプレッドシートに含めるべき主な項目は以下のとおりです。

    • 銘柄名
    • 取得日
    • 取得価格(円換算)
    • 保有数量
    • 現在の価格(定期的に更新)
    • 現在の評価額
    • 損益(含み損益)
    • ポートフォリオ全体に占める配分比率
    • 目標配分比率との乖離

    8-3. 定期チェックの頻度と見直しのポイント

    ポートフォリオの確認頻度は、投資スタイルによって異なりますが、長期投資を前提とする場合は以下の頻度が参考になります。

    • 日次: 大幅な異常値(特定銘柄の急落・プロジェクトのハッキングニュースなど)のチェックのみ
    • 週次: ポートフォリオ全体の損益と配分比率を確認
    • 月次: 各銘柄のファンダメンタルズ(開発進捗、オンチェーン指標など)をレビュー
    • 四半期ごと: ポートフォリオ全体の構成を見直し、必要に応じてリバランス

    価格を常に気にしすぎると、短期的な変動に振り回されて不要な取引を行ってしまいがちです。とくに長期投資を志向する場合は、チェック頻度を意識的に制限するのも一つの戦略です。


    まとめ

    暗号資産のポートフォリオ構築は、「分散すればするほど良い」というシンプルな話ではありません。暗号資産同士の相関が高いという市場特性を理解した上で、コア・サテライト戦略を軸に、自分のリスク許容度に合った配分を設計することが重要です。

    本記事のポイントを整理すると、以下のようになります。

    • コア(BTC + ETH)で60〜80%: ポートフォリオの安定性の土台を確保する
    • サテライト(アルトコイン)で20〜40%: テーマ投資で追加リターンを狙う
    • 銘柄選定はファンダメンタルズ重視: オンチェーンデータとプロジェクトの質を確認する
    • リバランスはルールに従って: 定期的 + 閾値ベースの組み合わせが実務的
    • 失敗パターンを意識する: 見せかけの分散、パフォーマンスチェイス、草コインへの過度な傾斜を避ける

    最後に、暗号資産への配分はあくまで総資産のなかの一部に留めるべきです。株式、債券、預貯金などの伝統的な資産との全体的なバランスのなかで、暗号資産をどの程度組み入れるかを慎重に検討してみてください。


    よくある質問(FAQ)

    Q1. 暗号資産ポートフォリオの最低投資額はいくらですか?
    最低投資額に決まりはありませんが、国内取引所では500円程度からビットコインを購入できるサービスもあります。ポートフォリオとして複数銘柄に分散する場合は、最低でも数万円程度の資金があると、意味のある配分が可能になります。重要なのは「失っても生活に影響しない金額」の範囲内で投資を始めることです。

    Q2. ビットコインとイーサリアムの最適な配分比率は?
    唯一の「正解」はありませんが、暗号資産の初心者であれば BTC 70%: ETH 30% 程度から始めるのが無難と考えられます。暗号資産市場への理解が深まるにつれて、徐々にアルトコインへの配分を増やしていくことも選択肢です。

    Q3. アルトコインは何銘柄くらいに分散すべきですか?
    管理できる範囲内に留めることが重要です。個人投資家であれば、コア(BTC+ETH)+ アルトコイン3〜5銘柄、合計5〜7銘柄程度が現実的な管理範囲でしょう。銘柄数を増やしすぎると、個別プロジェクトの情報をフォローしきれなくなり、かえってリスクが高まります。

    Q4. ポートフォリオにステーブルコインを入れる意味はあるのですか?
    はい、ステーブルコインは暗号資産ポートフォリオにおける「現金ポジション」として重要な役割を果たします。市場が急落した際に素早く押し目買いを行うための待機資金、利益確定後の一時的な退避先、DeFiでの運用による利回り獲得など、さまざまな用途があります。

    Q5. リバランスの頻度が高すぎると何が問題ですか?
    主に二つの問題があります。一つは取引手数料やスプレッドといったコストが累積すること。もう一つは、日本の税制上、暗号資産の売却は課税対象となるため、頻繁なリバランスが税負担を増大させる可能性があることです。四半期に1回程度のリバランスが、コストと効果のバランスが取れた頻度と考えられます。

    Q6. 暗号資産と株式・債券のポートフォリオ全体での比率はどう考えますか?
    総資産のうち暗号資産に配分する割合は、リスク許容度によって大きく異なります。保守的な投資家であれば総資産の1〜5%、中程度のリスクを取れる投資家で5〜15%、積極的な投資家でも20〜30%程度が一つの目安です。暗号資産のボラティリティの高さを考えると、生活防衛資金や必要な貯蓄を十分に確保した上で投資を行うことが大前提となります。


    ※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

    シェアする

    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    フォローする