暗号資産を取引所やウォレットに「寝かせたまま」にしていませんか。もし長期保有を前提としているのであれば、レンディング(貸暗号資産)サービスを活用することで、保有している暗号資産を「働かせる」ことができるかもしれません。
レンディングとは、自分が保有する暗号資産をサービス提供者に一定期間貸し出し、その対価として利息(利回り)を受け取る仕組みです。銀行の定期預金に近いイメージですが、暗号資産ならではの高い利回りが魅力である一方、元本保証がないことや、サービス提供者の信用リスクなど、理解しておくべきリスクも存在します。
この記事では、暗号資産レンディングの基本的な仕組みから、日本国内で利用可能な主要サービス(BitLending、HashHub Lending、各取引所のレンディングサービスなど)の比較、利回りの決まり方、リスク管理のポイント、そして税金の取り扱いまで、レンディングを始める前に知っておきたい情報を網羅的にお伝えしていきます。
目次
1. 暗号資産レンディングの基本——仕組みと種類を理解する
1-1. レンディングとは——「貸して利息をもらう」シンプルな仕組み
暗号資産レンディングの基本的な仕組みは、非常にシンプルです。
銀行にお金を預けて利息をもらう構造と同じですが、暗号資産レンディングの利回りは年率1%〜10%程度と、一般的な銀行預金(0.001〜0.2%程度)と比べて大幅に高い水準にあります。
ただし、銀行預金が預金保険制度(ペイオフ)で1,000万円まで保護されるのに対し、暗号資産レンディングにはこうした法的な保護がない点は、最も重要な違いとして認識しておく必要があります。
1-2. レンディングの二大カテゴリ——CeFiとDeFi
暗号資産レンディングは、大きく分けて「CeFi(中央集権型金融)」と「DeFi(分散型金融)」の二つのカテゴリに分かれます。
CeFi(Centralized Finance)レンディング: 企業(中央管理者)がサービスを提供するレンディング。BitLending、HashHub Lending、各取引所のレンディングサービスがこちらに該当します。ユーザーは企業に暗号資産を預け、企業がそれを運用して利息を支払います。
DeFi(Decentralized Finance)レンディング: スマートコントラクト(自動実行プログラム)によって運営されるレンディング。Aave、Compound、MakerDAOなどが代表的なプロトコルです。中央管理者は存在せず、プロトコルのルールに従って自動的に貸借が行われます。
本記事では主にCeFiレンディング(特に日本国内で利用可能なサービス)に焦点を当てて解説しますが、DeFiレンディングとの違いも理解しておくことが大切です。
1-3. レンディングとステーキングの違い
暗号資産の「貸して増やす」方法として、レンディングのほかに「ステーキング」もよく耳にするかもしれません。両者は似ているようで、本質的に異なる仕組みです。
レンディング: 自分の暗号資産を「貸し出す」行為。借り手が存在し、借り手が支払う利息が利回りの源泉です。BTCやETHなどさまざまな暗号資産で利用できます。
ステーキング: PoS(Proof of Stake)のブロックチェーンにおいて、ネットワークの検証作業に参加するために暗号資産を「ロック」する行為。ネットワークから支払われる報酬が利回りの源泉です。PoSを採用しているETH、SOL、ADAなどで利用できますが、PoWのBTCではネイティブなステーキングは存在しません。
つまり、レンディングは「借り手の需要」に基づく利回りであり、ステーキングは「ネットワーク参加への報酬」に基づく利回りです。リスクの性質も異なるため、自分が何に参加しているのかを正確に理解しておくことが重要です。
2. CeFiレンディングとDeFiレンディングの違い
2-1. CeFiレンディングの特徴とメリット・デメリット
CeFiレンディングは、従来の金融サービスに近い使い勝手で暗号資産を運用できる点が最大のメリットです。
メリット
- 口座開設とKYC(本人確認)を済ませれば、ウォレットの操作やスマートコントラクトの知識がなくても利用できる
- 日本国内のサービスであれば、日本語でのサポートが受けられる
- 固定利率のサービスが多く、利回りが予測しやすい
- 出金手続きも通常の取引所の操作と変わらない
デメリット
- カウンターパーティリスク(サービス提供者の経営悪化・破綻リスク)がある
- 貸出中は暗号資産の引き出しができない(ロック期間がある)サービスが多い
- 利回りは DeFi と比べて低めの傾向がある
- 運用方法の透明性が低い場合がある
2022年に起きたCelsius、BlockFi、FTXの連鎖的な破綻は、CeFiレンディングのカウンターパーティリスクが現実のものとなった事例として記憶に新しいところです。これらのサービスはいずれも高利回りを謳っていましたが、裏側では過剰なリスクを取った運用を行っていたことが明らかになりました。
2-2. DeFiレンディングの特徴とメリット・デメリット
DeFiレンディングは、スマートコントラクトによって自動的に貸借が行われる仕組みです。
メリット
- 中央管理者が存在しないため、カウンターパーティリスクが構造的に低い
- プロトコルのコードが公開されており、運用の透明性が高い
- 即座に預入・引き出しが可能な場合が多い(ロック期間なし)
- 市場の需給に応じて利回りがリアルタイムに変動する
デメリット
- スマートコントラクトのバグや脆弱性による資金流出リスク(ハッキングリスク)
- ウォレットの操作やDeFiの知識が必要で、初心者にはハードルが高い
- ガス代(取引手数料)が別途発生する
- 日本語のサポートがないサービスがほとんど
DeFiレンディングの代表格であるAaveでは、2024年末時点でTVL(預入総額)が100億ドルを超えていたとされています。Aaveではビットコイン(WBTC)、イーサリアム(ETH)、ステーブルコイン(USDC、DAI等)など多数の暗号資産をレンディングに利用できます。
2-3. CeFiとDeFiの使い分け
CeFiとDeFiのどちらを利用すべきかは、投資家のスキルレベルやリスク許容度によって異なります。
暗号資産の操作に慣れていない方や、日本語でのサポートを重視する方は、まずCeFiレンディングから始めるのが無難でしょう。一方、DeFiの仕組みを理解しており、自分でウォレットを管理できる方は、DeFiレンディングの透明性と柔軟性を活用できます。
大切なのは、どちらの方式を選ぶにしても「預けた暗号資産を全額失うリスクがある」ことを前提に、投入額を管理することです。「全保有量の一部だけをレンディングに回す」という考え方が、リスク管理の基本になります。
3. 日本国内の主要レンディングサービス比較
3-1. BitLending(ビットレンディング)
BitLendingは、株式会社J-CAMが運営する暗号資産レンディングサービスです。日本国内の専業レンディングサービスとして注目を集めています。
主な特徴
- 対応通貨: BTC、ETH、XRP、USDT、USDC、DAIなど
- 年利: BTC 約8%、ETH 約8%、ステーブルコイン 約10%(2025年時点の参考値、変動あり)
- 最低貸出額: 暗号資産により異なるが、比較的少額から始められる
- 貸出期間: 基本的に1か月単位の自動更新
- 中途解約: 可能(ただし受け取り予定の利息が減額される場合あり)
BitLendingの利回りは、国内取引所のレンディングサービスと比較して高めの水準にあります。その分、サービスの持続可能性やカウンターパーティリスクについては、投資家自身が判断する必要があります。
3-2. HashHub Lending(ハッシュハブレンディング)
HashHub Lendingは、暗号資産メディア・リサーチ企業であるHashHub(2023年にSBIグループが株式取得)が提供するレンディングサービスです。
主な特徴
- 対応通貨: BTC、ETH、DAI、USDCなど
- 年利: BTC 約3〜5%、ETH 約3〜6%(市場環境により変動)
- SBIグループとの連携による信頼性
- 法人向けサービスも展開
HashHub LendingはSBIグループの傘下に入ったことで、信頼性の面での評価が高まっています。ただし、利回りはBitLendingと比べるとやや控えめな水準です。
3-3. 国内取引所のレンディングサービス
主要な国内暗号資産取引所も、独自のレンディング(貸暗号資産)サービスを提供しています。
コインチェック「貸暗号資産」
- 対応通貨: 取引所で取り扱う全銘柄
- 年利: 1%〜5%(貸出期間に応じて変動)
- 貸出期間: 14日、30日、90日、180日、365日
- 特徴: 取引所に口座があればそのまま利用可能
GMOコイン「貸暗号資産」
- 対応通貨: 取引所で取り扱う全銘柄
- 年利: 1%〜3%程度
- 貸出期間: 1か月〜3か月
- 特徴: GMOインターネットグループの信頼性
bitbank「暗号資産を貸して増やす」
- 対応通貨: 取引所で取り扱う全銘柄
- 年利: 1%〜3%程度
- 貸出期間: 1年
- 特徴: 募集制で枠が埋まりやすい
国内取引所のレンディングは、専業サービスと比べると利回りは低めですが、取引所自体の信頼性やサポート体制の面では安心感があります。また、すでに取引所に口座を持っている場合は追加の手続きなしで始められるため、手軽さという点でもメリットがあります。
3-4. 各サービスの比較表
主要サービスの特徴を整理すると、以下のようになります。
| サービス | BTC年利目安 | 最低額 | ロック期間 | 運営母体 |
|---|---|---|---|---|
| BitLending | 約8% | 少額可 | 1か月〜 | J-CAM |
| HashHub Lending | 約3〜5% | 少額可 | 変動 | HashHub(SBI傘下) |
| コインチェック | 約1〜5% | 1万円相当〜 | 14日〜365日 | マネックスグループ |
| GMOコイン | 約1〜3% | 少額可 | 1〜3か月 | GMOグループ |
| bitbank | 約1〜3% | 少額可 | 1年 | ビットバンク |
利回りは市場環境によって変動するため、上記はあくまで参考値です。最新の利率は各サービスの公式サイトで確認してください。
4. 利回りの決まり方——なぜ高利回りが可能なのか
4-1. 利回りの源泉——借り手は誰で、何に使っているのか
レンディングの利回りの源泉を理解することは、リスクを正しく評価するために不可欠です。
暗号資産を借りる主な借り手とその目的は以下のとおりです。
マーケットメイカー・ヘッジファンド: 裁定取引(アービトラージ)やマーケットメイキングのために暗号資産を借りる。取引所間の価格差を利用した利益、先物とスポットの価格差(ベーシス取引)などが収益源。
ショートセラー(空売り投資家): 暗号資産の価格下落に賭けて借りた暗号資産を売却し、価格が下がった時点で買い戻して返却することで差益を得る。
DeFiプロトコル: レバレッジドファーミングやフラッシュローンなど、DeFi内の高度な運用戦略のために暗号資産を借りる。
一般投資家: レバレッジ取引のための証拠金として暗号資産を借りる。
4-2. 高利回りと持続可能性——「うまい話」への警戒
暗号資産レンディングの利回りが銀行預金よりも圧倒的に高い理由は、暗号資産市場の非効率性(裁定機会が多い)、借り手の需要の高さ(レバレッジ需要、ショート需要)、預金保険制度がないことによるリスクプレミアムなどで説明されます。
しかし、「年利10%以上」「月利3%保証」といった異常に高い利回りを謳うサービスには警戒が必要です。過去には、高利回りを約束しながら実際には顧客の資金を過大なリスクにさらしていたサービス(Celsius、BlockFi、FTX Earn等)が相次いで破綻しています。
利回りを評価する際の目安として、以下のような考え方が参考になります。
- BTC/ETHで年利1〜5%: 比較的保守的な運用の範囲内と考えられる
- BTC/ETHで年利5〜10%: やや高めだが、市場環境によっては達成可能な水準
- BTC/ETHで年利10%以上: 相応のリスクを取った運用が行われている可能性が高い
- 年利20%以上: 持続可能性に疑問。ポンジスキーム(自転車操業)の可能性も検討すべき
4-3. 変動利率と固定利率の違い
レンディングサービスには、利率が固定されているものと、市場環境に応じて変動するものがあります。
固定利率: 貸出期間中の利率が事前に確定している。利回りが予測しやすい反面、市場の利率が上昇しても恩恵を受けられない。
変動利率: 市場の需給に応じてリアルタイムに利率が変動する。DeFiレンディングでは一般的な方式。高利回りが得られる時期もある反面、需要が低下すると利率がほぼゼロになることもある。
CeFiサービスでは固定利率を提示するケースが多いですが、「利率は予告なく変更される場合があります」という但し書きがあることも少なくありません。契約条件をよく確認してから利用することが大切です。
5. レンディングのリスクを正しく理解する
5-1. カウンターパーティリスク——サービス提供者の信用リスク
CeFiレンディングの最大のリスクは、サービス提供者が経営悪化や破綻に至った場合に、預けた暗号資産が返還されない可能性があることです。
2022年のCelsiusの破綻では、約47億ドル(約6,500億円)の顧客資産が凍結されました。BlockFiの破綻でも数十万人の顧客が資産の返還を受けられない事態に陥りました。日本国内でも、2022年にFTX Japanの問題が発生し、顧客資産の返還に時間がかかるケースが見られました(FTX Japanの場合、日本の規制により顧客資産が分別管理されていたため、最終的に返還が実現しました)。
カウンターパーティリスクを軽減するためのポイントは以下のとおりです。
- 複数のサービスに分散して預ける(一つのサービスに集中しない)
- サービス提供者の財務状況や経営体制を確認する
- 日本の金融庁に登録されている事業者を優先する
- 異常に高い利回りを提示するサービスには慎重になる
5-2. 価格変動リスク——レンディング中も価格は変動する
レンディングで利息を受け取っても、元本の暗号資産の価格が大幅に下落すれば、円換算での資産価値はマイナスになり得ます。
例えば、1 BTC を年利5%でレンディングに出した場合、1年後に受け取れるのは1.05 BTCです。しかし、その間にBTCの価格が30%下落していれば、円換算での資産価値は利息を含めても約27%のマイナスになります。
レンディングの利回りは「暗号資産建て」であり、「円建て」の利益を保証するものではないという点を常に意識しておく必要があります。
5-3. 流動性リスク——「引き出したいときに引き出せない」リスク
多くのCeFiレンディングサービスには、貸出期間中の引き出し制限があります。ロック期間中は暗号資産を引き出すことができないため、急な価格変動に対応してポジションを調整することができません。
このリスクを軽減するためには、以下の対策が考えられます。
- 保有暗号資産の全量をレンディングに回さず、一部は即座に売却可能な状態で保有する
- ロック期間が短いサービスを選ぶ
- 複数のサービスに分散し、ロック解除のタイミングをずらす
6. レンディングの始め方——口座開設から貸出までの手順
6-1. 準備するもの
暗号資産レンディングを始めるために必要なものは以下のとおりです。
- 暗号資産取引所の口座: まだ持っていない場合は、国内の暗号資産取引所で口座を開設する必要があります。レンディングに出す暗号資産を購入するため、または取引所が提供するレンディングサービスを利用するために必要です。
- 本人確認書類: 取引所やレンディングサービスの口座開設には、マイナンバーカード、運転免許証などの本人確認書類が必要です。
- レンディングに出す暗号資産: ビットコインやイーサリアムなど、レンディングサービスが対応している暗号資産を保有している必要があります。
6-2. 口座開設からレンディング開始までの流れ
国内CeFiレンディングサービス(BitLendingの場合)の一般的な流れは以下のとおりです。
6-3. 取引所レンディングの始め方
すでに国内取引所に口座を持っている場合は、取引所のレンディングサービスが最も手軽に始められます。
コインチェックの場合を例にすると、アプリまたはウェブサイトにログインし、「貸暗号資産」のページにアクセスします。貸し出したい暗号資産と貸出期間を選択し、申し込みを行うだけです。追加のKYCや外部ウォレットへの送金は不要です。
ただし、取引所のレンディングは「募集制」のケースが多く、応募が殺到すると貸出枠が埋まり、すぐに利用できないことがあります。特にビットコインのレンディング枠は人気が高く、申し込みから実際に貸出が開始されるまで数週間〜数か月待つこともある点にはご注意ください。
7. レンディングの利益にかかる税金
7-1. レンディング利息の税務上の取り扱い
日本の税制上、暗号資産レンディングで得た利息は「雑所得」として課税されます。これは暗号資産の売却益と同じ区分であり、他の所得(給与所得など)と合算して総合課税の対象となります。
所得税の税率は累進課税で5%〜45%、これに住民税10%が加わるため、最大55%の税率が適用される可能性があります。
レンディング利息の所得金額の計算方法は、利息を受け取った時点の暗号資産の時価(日本円換算額)で計算します。例えば、レンディングの利息として0.05 BTCを受け取り、その時点でのBTC価格が1,000万円だった場合、50万円が雑所得として計上されます。
7-2. 確定申告の注意点
暗号資産レンディングの利息を含む雑所得が年間20万円を超える場合(給与所得者の場合)、確定申告が必要です。
レンディングの確定申告で注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 受取時の時価を記録する: 利息を受け取った日のBTC/ETH等の円換算レートを記録しておく必要があります。レンディングサービスによっては、利息の受取履歴を提供してくれるものもあります。
- 取得単価の計算: レンディングで受け取った暗号資産は、受取時の時価が取得単価になります。その後、受け取った暗号資産を売却した場合は、売却価格と取得単価の差額が再度課税対象になります。
- 複数サービスの合算: 複数のレンディングサービスを利用している場合は、すべてのサービスからの利息を合算して申告する必要があります。
7-3. 税金計算ツールの活用
暗号資産の税金計算は複雑になりがちですが、専用の税金計算ツールを使うことで負担を軽減できます。
Cryptact(クリプタクト): 日本の暗号資産取引に対応した税金計算サービス。主要取引所の取引履歴を自動で取り込み、損益を計算してくれます。
Gtax: 国内取引所に特化した暗号資産の税金計算ツール。レンディングの利息収入にも対応しています。
いずれのツールも、取引履歴のCSVファイルをアップロードすることで自動的に損益計算を行ってくれます。年末の確定申告時期に慌てないためにも、日頃から取引履歴を整理しておくことをおすすめします。
8. レンディング活用のベストプラクティス
8-1. 分散の原則——一つのサービスに集中しない
レンディングにおける最も重要なリスク管理は、一つのサービスに全資産を集中させないことです。
仮に保有するBTCの半分をレンディングに回す場合でも、2〜3のサービスに分散することで、特定のサービスが破綻した際のダメージを限定できます。
一つの目安として、以下のような配分が考えられます。
- 保有暗号資産の50%: セルフカストディ(自分のウォレットで管理)——レンディングには出さず、完全に自分の管理下に置く
- 保有暗号資産の30%: 信頼性の高いレンディングサービスA(取引所系など)
- 保有暗号資産の20%: レンディングサービスB(専業サービスなど、より高利回り)
8-2. 利回りよりも安全性を優先する
レンディングサービスを選ぶ際に、利回りの高さだけを基準にするのは危険です。
前述のとおり、異常に高い利回りは「異常に高いリスクを取っている」か「持続不可能なビジネスモデル」のサインである可能性があります。2022年のCeFi連鎖破綻から学ぶべき教訓は、「利回りが数%低くても、安全性の高いサービスを選ぶほうが、長期的にはリターンが高い」ということです。
サービスの安全性を評価する際のチェックポイントとしては、以下の項目が参考になります。
- 金融庁に暗号資産交換業者として登録されているか
- 顧客資産の分別管理を行っているか
- 運営会社の財務情報が公開されているか
- 過去にセキュリティインシデントがあった場合、その対応は適切だったか
- 運営年数と実績
8-3. 出口戦略を事前に決めておく
レンディングを始める前に、以下の点について出口戦略を明確にしておくことをおすすめします。
- いつまで貸し出すか: 「ビットコインが○○万円に達したら返還を申請して利益確定する」など、具体的な条件を事前に設定する
- ロック期間中の対応: ロック期間中に暗号資産の価格が急落した場合、何もせず待つのか、ロック解除後すぐに売却するのか
- 利息の取り扱い: 受け取った利息は再度レンディングに回す(複利運用)のか、取引所で売却して日本円に変えるのか
特に重要なのは、「最悪の場合、レンディングに出した資産が全額返ってこないことがあり得る」という前提に立って、投入額を決定することです。生活に必要な資金や、失うと困る資金をレンディングに回すべきではありません。
まとめ
暗号資産レンディングは、長期保有している暗号資産に「利回り」を付与できる有効な運用方法の一つです。しかし、リスクを正しく理解せずに利用すると、利息以上の損失を被る可能性もあります。
本記事のポイントを整理します。
- レンディングには CeFi と DeFi がある: 初心者にはCeFi(国内サービス)がおすすめだが、カウンターパーティリスクを理解しておく必要がある
- 利回りの高さだけで選ばない: 異常に高い利回りは、異常に高いリスクのサインかもしれない。安全性を優先する
- 分散が重要: 一つのサービスに全資産を預けず、複数のサービスに分散する。また、保有暗号資産の全量をレンディングに回さない
- 税金への対応を忘れない: レンディング利息は雑所得として課税される。取引履歴を整理し、確定申告に備える
- 出口戦略を事前に決める: いつ、どのような条件で返還を申請するかを事前に決めておく
レンディングは「放置して稼ぐ」ものではなく、定期的にサービスの状況をモニタリングし、必要に応じて配分を見直す積極的な管理が求められます。利回りの魅力に目を奪われず、リスクと向き合いながら活用してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. レンディングの利息はいつ受け取れますか?
サービスによって異なります。BitLendingなどの専業サービスでは毎月付与されるケースが多く、取引所のレンディングでは貸出期間終了時に一括で付与されるケースが一般的です。利息の付与タイミングは、サービスの利用規約で確認できます。
Q2. レンディング中にビットコインの価格が暴落したらどうなりますか?
レンディング中も暗号資産の市場価格は変動し続けます。CeFiレンディングの場合、基本的には貸し出した暗号資産の「数量」は保全されますが、円換算での価値は市場価格に連動して変動します。ロック期間中は引き出しができないため、急落時に売却して損失を限定するといった対応はできません。
Q3. レンディングとステーキングはどちらが得ですか?
一概に比較することは難しいですが、ETHの場合、ステーキングの年利は約3〜4%程度とされており、レンディングの利回りと近い水準です。ただし、リスクの性質が異なります。ステーキングはネットワークリスクが中心であるのに対し、レンディングはカウンターパーティリスクやスマートコントラクトリスクが中心です。ビットコインについては、PoWのためネイティブなステーキングは存在せず、レンディングが利回りを得る主な手段の一つです。
Q4. 海外のレンディングサービスは使わないほうがいいですか?
日本居住者が海外のレンディングサービスを利用する場合、日本の金融庁の規制対象外となるため、トラブルが発生した際の法的保護が限定的になります。また、2022年の海外CeFi連鎖破綻(Celsius、BlockFi、FTX等)の教訓からも、海外サービスのカウンターパーティリスクは国内サービスよりも評価が難しいと言えます。リスクを十分に理解した上で利用を検討してください。
Q5. レンディングの利息で生活することは可能ですか?
理論的には可能ですが、現実的にはかなりの元本が必要です。例えば年利5%のレンディングで年間300万円の利息を得るためには、約6,000万円相当の暗号資産を預ける必要があります。さらに、利回りは変動するため安定的な収入源とはなりにくく、カウンターパーティリスクや価格変動リスクも考慮すると、レンディングだけで生活費を賄うことは推奨できません。あくまで資産運用の一手段として位置づけることをおすすめします。
Q6. DeFiレンディングは日本語で利用できますか?
主要なDeFiプロトコル(Aave、Compoundなど)は、ウェブインターフェースが英語である場合がほとんどです。ただし、操作自体は比較的シンプルで、日本語の解説記事やYouTube動画も多数公開されています。MetaMaskなどのウォレットの基本操作を理解していれば、英語が得意でなくても利用は可能です。とはいえ、DeFi特有のリスク(スマートコントラクトリスク等)を理解するためには、ある程度の技術的知識が必要です。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。