DeFi(分散型金融)の世界で、「利回りそのもの」を売買できるプロトコルが登場したことをご存じでしょうか。
Pendle Financeは、ステーキング報酬や流動性提供報酬などの将来的な利回りをトークン化し、現在の価値で取引できる革新的なシステムです。従来のDeFiでは「元本+利回り」を一括保有するのが基本でしたが、Pendleはこれを分離して、より柔軟な運用を可能にしました。
この記事では、Pendle Financeの基本概念・仕組み・主要トークン・実際の使い方を順を追って解説します。DeFi利回り最適化に興味がある方にとって、Pendleは非常に注目度の高いプロトコルです。
投資にはリスクが伴います。本記事はあくまで情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。
目次
- Pendle Financeの概要と誕生背景
- 利回りトークン化の仕組み:YTとPTとは
- Pendleの主要な構成要素(AMM・vePENDLE)
- Pendle利用の具体的な手順
- 利回りトレーダーとしての活用戦略
- Pendleのリスクと注意点
- 他の利回り最適化プロトコルとの比較
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
1. Pendle Financeの概要と誕生背景
Pendleとは何か
Pendle Financeは、2021年に正式ローンチされたイーサリアム系のDeFiプロトコルです。2024〜2025年にかけて急速に注目を集め、TVL(プロトコルに預け入れられた総資産)が数十億ドル規模に成長しました。
Pendleが解決しようとしたのは「DeFiの利回りを、現在価値に換算して取引できないか」という問題です。従来のレンディングやステーキングでは、将来発生するはずの利回りは「待つ」しかありませんでした。Pendleはそれを変えました。
従来DeFiの課題
Aave・Compoundなどの主要レンディングプロトコルでは、資産を預けると利息が発生します。しかし、その利息を「今すぐ手に入れたい」「利率が下がる前に固定したい」という需要に応える仕組みは存在しませんでした。
Pendleはこの「時間的な価値」を取引可能にすることで、DeFiに新しい資産クラスを生み出しました。
Pendleのチェーン対応状況
2025〜2026年時点でPendleが対応するブロックチェーンは以下の通りです。
- Ethereum(メインネット)
- Arbitrum
- Optimism
- BNB Chain
- Mantle
特にArbitrumは取引手数料が安く、Pendleの主要な取引量はArbitrumに集中する傾向があります。
2. 利回りトークン化の仕組み:YTとPTとは
SY(Standardized Yield Token)
Pendleに資産を入れると、まずSY(Standardized Yield Token)という標準化された利回りトークンに変換されます。SYはPendleが内部的に使用する共通フォーマットで、さまざまな利回り資産を統一的に扱えるようにしています。
PT(Principal Token:元本トークン)
SYはさらに2種類のトークンに分割されます。ひとつ目がPT(Principal Token)です。
PTは「満期日に1単位の原資産と交換できる権利」を表します。例えば、stETH(ステークドETH)を原資産とするPT-stETHを保有していると、満期日にETHを受け取ることができます。
PTは通常、原資産より割引価格で取引されます。この割引率が実質的な「固定利回り」を表しており、PTを買って満期まで保有することで、確定した利回りを得ることができます。
YT(Yield Token:利回りトークン)
もうひとつがYT(Yield Token)です。YTは「満期日までの間に発生するすべての利回りを受け取る権利」を表します。
YTを保有していると、原資産の利回りがリアルタイムで蓄積されます。利回りが高くなると予想する場合はYTを買い、低くなると予想する場合はYTを売ることで、利回りの方向性に賭けることができます。
PT・YTの合計は原資産と等価
PT+YTを合わせると、常に原資産1単位と等価になるよう設計されています。これはPendleの基本的な価格均衡メカニズムです。
裁定(アービトラージ)の機会が生じると参加者がPT・YTを組み合わせて取引するため、理論的には均衡が保たれます。
3. Pendleの主要な構成要素(AMM・vePENDLE)
PendleのAMM(自動マーケットメーカー)
PendleはUniswapのような一般的なAMMではなく、利回りに特化した独自のAMMを採用しています。
PT・YTの価格は時間の経過とともに変動します(満期が近づくほどPTの割引率が縮小し、YTは価値が減少していく)。通常のAMMはこの「時間的な価値の変化」を考慮できないため、Pendleは専用の数式を採用しました。
この仕組みにより、PT・YT・原資産の間で合理的な価格設定が維持されます。
PENDLEトークンとvePENDLE
PENDLEはPendleのガバナンス・インセンティブトークンです。PENDLEをロック(固定)することでvePENDLEが得られます。
vePENDLEの保有者は以下の特典を受けられます。
- プロトコル手数料の一部(スワップ手数料など)の分配
- ガバナンス投票権(どのプールに流動性マイニング報酬を分配するか等)
- 特定プールの流動性提供者への報酬ブースト
vePENDLEはロック期間(最大104週間)が長いほど多く付与されます。ロック期間の終了とともにvePENDLEは消滅し、PENDLEが返還されます。
流動性提供(LP)の仕組み
PendleのプールにPTと原資産(またはPTとYT)のペアを提供することで、流動性提供者(LP)となることができます。LPは取引手数料とPENDLEインセンティブを受け取ります。
4. Pendle利用の具体的な手順
準備するもの
- MetaMask等のEVMウォレット
- 取引するチェーン上のETH(ガス代)
- Pendleで取引したい原資産(stETH・eETH・USDe等)
Pendleにアクセスする
公式サイト(app.pendle.finance)にアクセスし、ウォレットを接続します。公式サイト以外への接続はフィッシング被害のリスクがあるため、URLを慎重に確認してください。
マーケットを選択する
Pendleの「Markets」タブには、様々な原資産ごとのプールが一覧表示されます。各マーケットには以下の情報が表示されます。
- 原資産名(stETH・USDe・weETH等)
- 満期日(Maturity)
- 現在のYT固定利回り(Implied APY)
- PT利回り(Fixed APY)
- TVL(総預け入れ額)
PTを購入して固定利回りを得る方法
PTを購入するのがPendleで最もシンプルな使い方です。手順は以下の通りです。
- 対象マーケットを選択し「Buy PT」をクリック
- 購入量を入力し、スリッページ設定を確認
- ウォレットでトランザクションを承認
- 満期日まで保有し、満期後に原資産を受け取る
PTの固定利回りは購入時に確定します。例えば「PT-stETH(満期:2026年12月)、Fixed APY 4.5%」のPTを購入した場合、満期日に原資産のstETHを受け取ることで、実質年率4.5%の利回りが確定します。
YTを購入して利回りの上昇を狙う方法
YTは将来の利回りを現在価値で先買いするトークンです。利回りが上昇すると予想する場合にYTを購入します。
YTは満期が近づくとともに時間的価値が減少するため、利回りが上昇しない限り価値が下がっていきます。高リスク・高リターンの戦略です。
5. 利回りトレーダーとしての活用戦略
固定利回り戦略(PTホールド)
最もリスクが低いとされる戦略が、PTを購入して満期まで保有する「固定利回り戦略」です。
市場の利回りが変動しても、購入時に確定した固定利回りは変わりません。DeFiの利回りは通常変動型ですが、Pendleのコアな価値はここにあります。
利回り上昇狙い戦略(YTロング)
現在の市場が利回りを低く見積もっていると判断した場合、YTを購入することで利回りの上昇から大きな利益を狙えます。
ただしYTは時間価値の減少(タイムディケイ)があるため、利回りが予想通り上昇しなければ損失となります。
利回り低下ヘッジ戦略(YTショート相当)
現在保有している利回り資産の利率が下落するリスクをヘッジしたい場合、PT購入によって将来の固定利回りを確保することで、利回り変動リスクを軽減できます。
LP提供戦略
PendleのプールにLPとして流動性を提供すると、スワップ手数料とPENDLEインセンティブが得られます。ただし、通常のAMM同様に非永続的損失(インパーマネントロス)のリスクがある点を理解しておくことが重要です。
6. Pendleのリスクと注意点
スマートコントラクトリスク
Pendleはスマートコントラクトで動作するため、コードのバグや脆弱性によるハッキングリスクが存在します。Pendleはセキュリティ監査を複数の機関から受けていますが、完全なリスク排除は不可能です。
YTの時間価値減少(タイムディケイ)
YTは満期に近づくほど時間的価値が消滅します。利回りが想定通り上昇しない場合、YTの価値はゼロになります。YTを購入する際は「この時間内に利回りが上昇するか」という判断が重要です。
流動性リスク
一部のマーケットは流動性が低く、大口の取引では大きなスリッページが発生する可能性があります。TVLの大きいマーケットを選ぶことがリスク低減につながります。
原資産のリスク
Pendleを使っても、原資産(stETH・USDe等)自体のリスクは消えません。原資産のプロトコルがハッキングや設計上の問題を抱えた場合、Pendle上のポジションにも影響します。
7. 他の利回り最適化プロトコルとの比較
Yearn Financeとの違い
Yearn Financeは、複数のDeFiプロトコルを自動的に組み合わせて利回りを最大化する「利回りアグリゲーター」です。Yearnは利回りの高い場所に自動で資金を移動させますが、利回りを「分離して売買する」機能は持ちません。Pendleとは補完的な存在と言えます。
Convex・Auraとの違い
ConvexはCurve Finance向け、AuraはBalancer向けの利回りブースタープロトコルです。これらは特定のプロトコルのインセンティブを最大化することに特化しており、利回りのトークン化という概念はPendleと異なります。
Spectra・Notionalとの違い
Spectra(旧APWine)やNotionalは、Pendleと同様に利回りのトークン化・固定金利DeFiを提供するプロトコルです。2025〜2026年時点のTVL・取引量・対応資産数ではPendleが最大規模を誇ります。
まとめ
Pendle Financeは、DeFiの利回りを「現在価値」で取引できる革新的なプロトコルです。
- PTを使えば変動する利回りを固定金利に変換できる
- YTを使えば将来の利回り上昇に賭けることができる
- vePENDLEはプロトコル収益の分配と投票権を得られる
- スマートコントラクトリスク・タイムディケイ・流動性リスクへの理解が必須
Pendleは高度なDeFiユーザーだけでなく、固定利回りを求める保守的な投資家にとっても魅力的な選択肢となっています。まずは少額で仕組みを体験し、リスクを十分理解した上で活用してみましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. Pendleを使うのに最低いくら必要ですか?
Pendleの利用に最低投資額の制限はありません。ただし、EVM系チェーンのガス代(特にEthereumメインネット)が発生するため、少額では手数料が相対的に高くなります。Arbitrum等の安価なチェーンであれば数千円程度から試すことも可能です。
Q2. PTは満期後にどうなりますか?
PTは満期日以降も保有できますが、価値は満期時点で固定(原資産1単位分)となります。Pendleのインターフェースから満期後のPTを原資産に換金する手続きを行うことができます。
Q3. PENDLEトークンはどこで購入できますか?
PENDLEはBinance・Bybit・OKX等の主要海外取引所のほか、Uniswap等のDEXでも取引されています。日本居住者の場合、海外取引所の利用には規制上の注意が必要です。国内取引所では2026年3月時点で取扱いが限定的です。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産・DeFiへの投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。価格・利回りデータは過去の実績であり、将来を保証するものではありません。