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2021年の初夏、ビットコインのネットワーク全体の計算力を示すハッシュレートは、わずか2か月ほどで半分近くまで落ち込みました。中国当局が国内の暗号資産マイニング(採掘)を事実上全面的に禁止し、世界の採掘設備の多くが一斉に電源を落としたためです。
あのとき、「ビットコインはこれで終わる」という見方が広がりました。しかし現在のネットワークを見ると、ハッシュレートは当時をはるかに上回る水準にあります。この記事では、禁止令の前後で実際に何が起き、なぜネットワークが止まらなかったのか、そして採掘の拠点がどこへ移ったのかを時系列で整理します。
読み終える頃には、規制のニュースが流れたときに「どの数字を見て落ち着いて判断すればよいか」という自分なりの物差しが手に入るはずです。ここでは各国の公開統計や、ブロックチェーンに記録として残っている難易度調整の履歴など、あとから誰でも確認できる情報だけを突き合わせて整理しました。順に見ていきましょう。
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「全面禁止」と呼ばれた一連の通達
2021年5月、中国の金融当局が金融機関に対して暗号資産関連サービスの提供を控えるよう求める通知を出し、続いて国務院の金融安定発展委員会がマイニングと取引行為への取り締まりを明示しました。その後、内モンゴル自治区、四川省、新疆ウイグル自治区といった主要な採掘地域が相次いで電力供給の停止や施設の閉鎖に踏み切ったと報じられています。同年9月には暗号資産に関わる業務そのものを違法とする通達が出され、規制は一時的な引き締めではなく恒久的な締め出しへと性格を変えました。
中国は当時、世界のハッシュレートの過半を占めていたとされます。ケンブリッジ大学の研究機関が公表しているマイニングマップの推計でも、2019年から2020年にかけて中国のシェアは半分を超える水準で推移していました。つまり、世界最大の採掘拠点がほぼ同時にオフラインになった計算になります。
ハッシュレートは半減し、ブロック生成は遅くなった
ハッシュレートとは、採掘者たちが計算問題を解くために投じている計算能力の総量のことです。2021年5月に高値を付けたハッシュレートは、7月初旬までにおよそ半分の水準へ低下しました。ビットコインのブロックはおよそ10分に1つ生成されるよう設計されていますが、計算力が減れば当然その間隔は伸びます。実際この時期には、生成に20分近くかかるブロックも珍しくなく、送金の詰まりと手数料の上昇が同時に起きました。
なぜネットワークは止まらなかったのか
答えは、ビットコインにあらかじめ組み込まれていた難易度調整という仕組みにあります。2016ブロックごと、おおむね2週間ごとに、直近の生成ペースを見て採掘の難しさを自動的に上下させる機能です。遅ければ易しく、速ければ難しくなり、平均10分という間隔に引き戻されます。誰かが判断して発動するものではなく、すべての参加者が同じ計算式で自動的に適用します。
2021年7月上旬の調整では、難易度がおよそ28パーセント引き下げられました。ビットコインの歴史のなかでも最大級の下方修正として記録されています。生き残った採掘者にとっては、同じ設備でより多くのブロックを掘れる状態になり、収益性が一気に改善しました。この「撤退した分だけ、残った側の取り分が増える」という構造が、稼働の再開と新規参入を強く後押ししたと考えられています。
この間、ブロックチェーンは一度も停止せず、記録された取引が失われることもありませんでした。参加者の半分近くが消えても稼働を続けたという事実は、設計思想が現実の大規模なストレスに耐えた数少ない実例です。難易度調整をはじめとする技術的な背景は、テクニカル・技術解説のカテゴリでも取り上げています。
採掘拠点はどこへ移ったのか
電源を落とした設備は廃棄されたわけではなく、多くが国外へ運び出されました。移動先を分けると、それぞれに明確な理由があることが見えてきます。
| 地域 | 禁止令後の動き | 背景にある条件 |
|---|---|---|
| 米国(テキサス州など) | 最大級のシェアを占めるまでに拡大したと推計される | 電力市場の自由度が高く、需給の調整に協力する形で参加できる。上場企業として資金を調達しやすい |
| カザフスタン | 一時的に急拡大したが、その後は縮小 | 中国から地理的に近く電力が安価。ただし電力不足や2022年初頭の混乱と通信遮断で後退した |
| ロシア・カナダ・北欧 | 一定の受け皿となった | 寒冷な気候で冷却コストが低く、水力などの電源に余力がある |
| 中東・中南米 | 小規模ながら参入が続いた | 油田で燃やされている余剰ガスなど、他に使い道のないエネルギーを取り込める |
結果として、特定の1か国が過半を握る状態はいったん解消へ向かいました。「どこか1つの政府の判断でネットワークを止められるのではないか」という懸念に対する、実地の回答でもあります。ただし、電力の分散が進んでも、採掘機器の製造やマイニングプール(採掘者が計算力を持ち寄る共同体)の運営が少数の事業者に集中していれば、別の形の集中は残ります。分散を語るときは、電力・機器・プールという3つの層を分けて見る必要があります。
価格への影響はどう評価すべきか
2021年5月から7月にかけて、ビットコイン価格は大きく下落しました。ただしこの時期には、レバレッジ取引の強制決済が連鎖したことや、大手企業による環境負荷に関する発言など、複数の材料が重なっています。禁止令だけを下落の原因と断定することはできません。
むしろ注目すべきは、その後の展開です。ハッシュレートが回復に向かう過程で価格も戻り、同年後半には再び高値圏へ到達しました。ここから読み取れるのは、規制のニュースは短期の値動きを大きく揺らすが、ネットワークの継続性そのものを決めるわけではないということです。もっとも、これは過去に一度そうだったという記録にすぎず、将来の値動きを保証するものではありません。相場材料の受け止め方については投資戦略のカテゴリの記事も参考にしてください。
同じようなニュースが出たとき、どこを見ればよいか
規制報道に接したときに確認したい観点は、おおむね次の4つに整理できます。
- ハッシュレートと難易度の推移。低下がどこで止まり、次の調整でどこまで補正されたか
- ブロック生成の間隔と送金手数料。ネットワークの実際の使い勝手が損なわれているか
- 地理やプールの偏り。1つの国、1つのプールへ集中が戻っていないか
- 規制の性格。採掘の禁止なのか、取引の禁止なのか、事業者への登録義務なのか
特に4つ目は見落とされがちです。採掘への規制は設備の移動である程度吸収できますが、利用者に近い部分、つまり取引所や決済への規制は、その国の投資家にとって直接の影響が大きくなります。日本では登録を受けた交換業者を通じて取引する枠組みが整っており、コインチェックなどの登録業者が公式サイトで管理体制を公表しています。これから始める方は仮想通貨の始め方ガイドで、口座開設から保管までの手順をあらかじめ確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
中国のマイニング禁止は今も続いているのですか?
公式には禁止が維持されているとされています。一方で統計上は、中国由来と推計されるハッシュレートが完全にゼロにはなっておらず、小規模な稼働が続いているとの見方もあります。
これらの推計は接続元のIPアドレスなどに基づくため、VPNの利用によって実態とずれる可能性があります。数字は傾向をつかむ材料として扱うのが適切です。
ハッシュレートが下がると、保有しているビットコインは危険になりますか?
短期的な低下によって、すでに記録された残高が消えることはありません。ブロックチェーン上の履歴は多数のノードに保存されています。
ただし極端に計算力が落ちた状態では、理論上は取引の巻き戻しを狙う攻撃のコストが下がります。実務的な備えとしては、大きな金額を受け取る際に承認数を多めに待つ、といった対応が現実的です。
マイニングの電力消費は問題ではないのですか?
消費量が大きいことは事実であり、評価が分かれているテーマです。禁止令の後は、電力市場の需給調整に参加する事例や、他に使い道のない余剰エネルギーを利用する事例が増えたと報告されています。
電源構成の推計は調査機関によって差が出ます。単一の数字を鵜呑みにせず、複数の出典を確認することをおすすめします。
今から個人でマイニングを始められますか?
家庭用の電力料金では、専用機を使っても採算を取ることは容易ではないとされています。日本国内は電気代の水準が高く、機器の調達に加えて騒音や排熱の管理も必要になります。
ビットコインに関わること自体が目的であれば、まずは購入と保管の方法を整えるほうが現実的な選択です。ビットコインのカテゴリで基礎から確認できます。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。最新の情報は公式情報をご確認ください。