ビットコインの価格は、約4年ごとに大きな上昇と下落を繰り返してきました。2012年、2016年、2020年、そして2024年に実施された半減期(ハルビング)を起点に、翌年にかけて大幅な価格上昇が見られ、その後に大きな調整局面が訪れるという「4年サイクル理論」は、多くの投資家が参考にしてきた分析フレームワークの一つです。
しかし2026年の今、ビットコインを取り巻く環境は過去のサイクルとは大きく異なっています。米国でのビットコインETFの承認、機関投資家の本格参入、各国の規制整備、そしてマクロ経済の不確実性——こうした要因がサイクル理論にどのような影響を及ぼすのか、多くの市場参加者が注目しています。
この記事では、過去4回の半減期サイクルを振り返りながら、2024年の半減期後に始まった現在のサイクルがどのような局面にあるのかを分析します。そして「4年サイクル理論がこれからも有効なのか」という問いに対して、複数の視点からアプローチしていきましょう。
目次
1. 4年サイクル理論の基本——半減期とビットコイン価格の関係
1-1. 半減期(ハルビング)とは何か
ビットコインのプロトコルには、約21万ブロック(おおよそ4年ごと)にマイニング報酬が半分になる仕組みが組み込まれています。これが「半減期(ハルビング)」と呼ばれるイベントです。
2009年のビットコイン誕生時、1ブロックあたりのマイニング報酬は50BTCでした。2012年の第1回半減期で25BTC、2016年の第2回で12.5BTC、2020年の第3回で6.25BTC、そして2024年4月の第4回半減期で3.125BTCへと減少しています。
この仕組みが重要なのは、ビットコインの「新規供給量」を直接的にコントロールするからです。需要が一定または増加しているなかで供給量が半分になれば、経済学の基本原則に従って価格が上昇しやすくなると考えられます。これが4年サイクル理論の根幹にある論理です。
1-2. サイクル理論の構造——蓄積・上昇・過熱・下落
4年サイクル理論では、半減期を中心に4つのフェーズが繰り返されると考えられています。
フェーズ1: 蓄積期(半減期の6〜12か月前)
前回のサイクルの下落が一巡し、価格が底を打つ時期です。市場のセンチメントは悲観的ですが、長期投資家やいわゆる「クジラ」と呼ばれる大口保有者が静かに買い集めを行う期間とされています。
フェーズ2: 上昇期(半減期〜半減期後12か月)
半減期による供給減少の効果が徐々に市場に浸透し、価格が上昇トレンドに入る時期です。メディアの報道が増え、新規参入者が増加し始めます。
フェーズ3: 過熱期(半減期後12〜18か月)
価格上昇が加速し、FOMO(Fear of Missing Out: 乗り遅れへの恐怖)が市場を支配する時期です。過去のサイクルでは、この時期に数倍〜数十倍の価格上昇が見られました。
フェーズ4: 下落期(半減期後18〜36か月)
バブルが崩壊し、価格が大幅に調整される時期です。過去のサイクルでは、高値から70〜85%の下落が観測されています。
1-3. なぜ「4年」なのか——供給サイドの構造的制約
サイクルが「4年」になる理由は、ビットコインのプロトコルに組み込まれた半減期のスケジュールに由来しています。約10分に1ブロックが生成され、21万ブロックごとに報酬が半減するため、計算上は約4年(正確には約3年10か月〜4年2か月程度)ごとに半減期が訪れます。
ただし、4年サイクルが繰り返されてきた背景には、供給サイド(マイニング報酬の減少)だけでなく、需要サイドの要因も大きく影響していると考えられます。半減期というイベント自体がメディアの注目を集め、新規参入者を呼び込むという「自己実現的予言」の側面も否定できません。
2. 過去4回の半減期サイクルを振り返る
2-1. 第1サイクル(2012年半減期)——黎明期の爆発的成長
2012年11月28日に実施された第1回半減期は、ビットコインがまだごく一部の技術愛好家のなかでしか知られていない時代に起こりました。
半減期時の価格は約12ドルでした。その後、2013年4月に約260ドルまで上昇した後に一度大きく調整し、2013年11月には約1,150ドルという当時の史上最高値を記録しています。半減期から約1年で約96倍という驚異的なリターンでした。
しかし、その後の下落も急激でした。2015年1月には約170ドルまで下落し、高値から約85%のドローダウンを経験しています。この時期にはMt.Gox取引所の破綻(2014年2月)も重なり、ビットコインの存続そのものが疑問視される局面もありました。
2-2. 第2サイクル(2016年半減期)——ICOブームと個人投資家の参入
2016年7月9日の第2回半減期時、ビットコインの価格は約650ドルでした。その後、2017年のICO(Initial Coin Offering)ブームと重なり、2017年12月には約19,800ドルの史上最高値を記録しています。約30倍のリターンです。
このサイクルの特徴は、イーサリアムの登場とICOブームによってビットコイン以外の暗号資産(アルトコイン)への投機が爆発的に拡大したことです。日本でもcoincheckやbitFlyerなどの取引所を通じて多くの個人投資家が市場に参入し、「億り人」という言葉が流行語になりました。
その後の下落局面では、2018年12月に約3,200ドルまで下落し、高値から約84%の調整を経験しています。各国の規制強化やICO詐欺の横行が下落の一因となりました。
2-3. 第3サイクル(2020年半減期)——機関投資家の時代の幕開け
2020年5月11日の第3回半減期は、新型コロナウイルスのパンデミックという異例の環境下で迎えることになりました。半減期時の価格は約8,700ドルでした。
コロナ禍による各国の大規模金融緩和がリスク資産全般への追い風となるなか、ビットコインは2021年4月に約64,800ドル、さらに2021年11月には約69,000ドルの史上最高値を更新しています。半減期から約18か月で約8倍のリターンです。
このサイクルを特徴づけたのは、機関投資家の本格参入でした。テスラのBTC購入(約15億ドル)、マイクロストラテジー(現Strategy)の大規模BTC蓄積、カナダでのビットコインETF承認など、ビットコインが「デジタルゴールド」としての地位を確立しつつある時期だったと言えます。
その後の下落では、2022年11月に約15,500ドルまで下落し、高値から約77%の調整となっています。FTX取引所の破綻やTerra/LUNAの崩壊がこの下落を加速させました。
2-4. 第4サイクル(2024年半減期)——ETF承認後の新たなフェーズ
2024年4月20日に実施された第4回半減期時、ビットコインの価格は約63,500ドルでした。ただし、このサイクルにはこれまでにない大きな特徴があります。
まず、半減期に先立つ2024年1月に米国でビットコイン現物ETFが承認されたことです。ブラックロック、フィデリティなどの大手運用会社が組成したETFを通じて、株式と同じ感覚でビットコインに投資できるようになりました。これにより、年金基金やファンド・オブ・ファンズなど、これまでビットコインにアクセスしにくかった投資家層が一気に市場に参入しています。
もう一つの特徴は、半減期前にすでに大幅な価格上昇が起きていたことです。過去のサイクルでは半減期後に上昇が始まるのが典型的なパターンでしたが、今回はETF承認への期待から半減期前に約73,800ドルの史上最高値を記録し、その後も高値圏での推移が続いています。
3. 2024年半減期後の市場動向——これまでのサイクルとの違い
3-1. ETF承認がサイクル構造にもたらした変化
過去のサイクルでは、半減期後の価格上昇は「供給減少→需給逼迫→価格上昇→メディア報道→新規参入→さらなる上昇」という、ある程度時間をかけた連鎖反応として進行してきました。
しかしETFの存在は、この連鎖のスピードと規模を大きく変えた可能性があります。ETFを通じた資金流入は日次で数億ドル規模に達する日もあり、供給減少の効果が過去のサイクルよりも早い段階で価格に織り込まれたと考えられます。
2024年のビットコインETFへの累計資金流入は、承認から1年で約350億ドルを超えたとされています。この数字は、同期間のゴールドETFへの資金流入を上回る規模であり、ビットコインの需給構造が過去とは質的に異なっていることを示唆しています。
3-2. 2025年〜2026年の価格推移と過去サイクルとの比較
過去のサイクルに当てはめると、2024年4月の半減期から約12〜18か月後、すなわち2025年4月〜2025年10月頃がサイクルのピーク(過熱期の頂点)に相当する時期です。
2025年に入ってからのビットコイン市場は、10万ドルの心理的節目を突破するかどうかが大きなテーマとなっていました。実際に2025年には複数回にわたって10万ドルを超える場面が見られ、過去サイクルの「半減期後約1年でピーク」というパターンと概ね整合する動きが見られました。
一方で、過去のサイクルのような「数倍〜数十倍の爆発的上昇」は見られていない点も注目に値します。これは、ベースとなる価格水準(時価総額)が過去とは桁違いに大きくなっているため、同じ倍率の上昇を実現するには莫大な資金流入が必要になるという構造的な要因が考えられます。
3-3. ビットコインの時価総額拡大がサイクルの振幅に与える影響
ビットコインの時価総額は、2012年の第1回半減期時には約1億ドルでしたが、2024年の第4回半減期時には約1.2兆ドルに達しています。約1万倍の拡大です。
資産の時価総額が拡大すると、一般的にボラティリティ(価格変動率)は低下する傾向があります。小型株よりも大型株のほうが値動きが穏やかであるのと同じ原理です。
この傾向はサイクルの「振幅」にも現れています。ピーク時の上昇倍率は第1サイクルの約96倍→第2サイクルの約30倍→第3サイクルの約8倍と、明確に逓減しています。下落幅もピークから85%→84%→77%と、わずかながら縮小傾向にあります。
第4サイクルでもこの傾向が続くと仮定すると、ピーク時の上昇倍率は3〜5倍程度、下落幅は60〜70%程度になる可能性が考えられます。半減期時の価格が約63,500ドルだったことを踏まえると、理論上のピークは19万〜31万ドル程度、その後の底値は6万〜12万ドル程度という推計も成り立ちます。ただし、これはあくまで過去のパターンの外挿に過ぎず、実際の価格を予測するものではない点にご注意ください。
4. サイクル理論を支持する根拠と批判
4-1. サイクル理論を支持する3つの根拠
根拠1: 供給ショックの確実性
半減期はビットコインのプロトコルに組み込まれた「確実に起こるイベント」です。株式市場の景気循環とは異なり、供給サイドの変化が事前に予測可能であることは、サイクル理論の信頼性を支える重要な要素です。
根拠2: 過去4回の一貫したパターン
サンプル数は少ないものの、過去4回すべての半減期後にビットコイン価格が大幅に上昇し、その後に大きな調整が入るというパターンが観測されています。偶然ではなく構造的な要因による可能性を示唆するデータです。
根拠3: マイナーの経済行動
半減期でマイニング報酬が半減すると、マイナーの収益性が圧迫されます。採算の合わなくなったマイナーが撤退し、残ったマイナーが売り圧力を減らす(保有するBTCをすぐに売らなくなる)ことで、供給サイドの引き締まりが強化されるというメカニズムも指摘されています。
4-2. サイクル理論に対する主な批判
批判1: サンプル数の不足
わずか4回のデータでパターンを一般化するのは統計的に不十分であるという批判があります。たまたま4回連続で同じようなパターンが現れただけで、5回目以降は全く異なる展開になる可能性は否定できません。
批判2: 効率的市場仮説との矛盾
半減期のスケジュールは全員が事前に知っています。効率的市場仮説(EMH)の観点からは、予測可能なイベントの効果はすでに価格に織り込まれているはずであり、半減期後に「まだ」大幅上昇するのは理論的に整合しないという指摘です。
批判3: 外部要因の影響力増大
過去のサイクルにおける価格上昇が、半減期「だけ」の効果ではなく、その時々の外部要因(金融緩和、ICOブーム、パンデミック、ETF承認)に大きく左右されていたとすれば、半減期を起点としたサイクル理論の説明力は低下します。
4-3. 「スーパーサイクル」仮説と「サイクル消滅」仮説
サイクル理論の延長線上には、二つの対照的な仮説が存在します。
スーパーサイクル仮説は、機関投資家の参入やETFの承認によって、従来のサイクルとは比較にならない規模の資金がビットコインに流入し、これまでのような70〜85%の大幅下落は起こらないとする考え方です。ビットコインが「成熟した資産クラス」になりつつあるため、サイクルの下落フェーズが大幅に緩和されるという見方です。
一方、サイクル消滅仮説は、市場の成熟化が進むことで4年サイクル自体が消滅し、ビットコインの値動きがよりマクロ経済やリスク資産全般のトレンドに連動するようになるとする考え方です。つまり、ビットコイン固有のサイクルではなく、株式市場や金利サイクルとの相関が高まるという見方です。
5. 2026年のビットコイン市場を左右する構造変化
5-1. 機関投資家の参入規模と資金フローの変化
2026年現在、ビットコイン市場における機関投資家の存在感は過去のどのサイクルとも比較にならない水準に達しています。
米国のビットコイン現物ETF11本(2024年1月承認)の運用資産残高(AUM)は合計で1,000億ドルを超え、ブラックロックのiShares Bitcoin Trust(IBIT)だけでも400億ドル以上を運用しているとされています。この規模は、同社の金ETF(IAU)のAUMを上回る水準です。
機関投資家の参入が4年サイクルに与える影響として、以下のような変化が考えられます。
- 下値の堅さ: 機関投資家は一般的にリバランスを行うため、価格下落時に「押し目買い」が入りやすい
- ボラティリティの低下: 大口の長期保有が増えることで、流通量に対する投機的な売買の比率が低下する
- サイクルの長期化: 短期的な投機よりも長期的な資産配分の一部としてBTCを保有する投資家が増えることで、サイクルの期間が延びる可能性がある
5-2. マクロ経済環境——金利・インフレ・地政学リスク
2026年のビットコイン市場を語る上で、マクロ経済環境は避けて通れない要素です。
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策は、ビットコインを含むリスク資産全般に大きな影響を及ぼします。2022年からの利上げサイクルが終了し、2024年後半からは利下げ局面に入っていますが、利下げのペースと到達点はインフレ動向に依存します。
一般的に利下げはリスク資産にとってポジティブとされますが、利下げが景気後退への対応として行われる場合は、リスク回避の動きが強まる可能性もあります。ビットコインが「インフレヘッジ」として機能するのか、それとも「リスクオン資産」として株式と連動するのか——この問いに対する市場の答えは、状況によって変わり得るのが現実です。
5-3. 規制環境の進展——米国・EU・日本
規制環境の変化も、サイクルに影響を与える重要な要因です。
米国では、2025年に成立したGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)によりステーブルコインの規制枠組みが整備され、暗号資産市場全体の法的明確性が向上しています。また、ビットコインの戦略的準備金(Strategic Bitcoin Reserve)に関する議論も、米政府レベルで進んでいます。
EUではMiCA(Markets in Crypto-Assets)規制が2024年12月に全面施行され、暗号資産サービスプロバイダーに対する統一的な規制枠組みが確立されています。
日本では、2026年度の税制改正により暗号資産の課税区分が見直される可能性が議論されていますが、現時点では雑所得として最大55%の税率が適用される状況が続いています。
6. サイクル理論を前提とした投資戦略の組み立て方
6-1. サイクルの現在地を推定する方法
サイクル理論を投資に活用するためには、まず「今サイクルのどの位置にいるのか」を推定する必要があります。以下の指標が参考になると考えられます。
MVRV比率(Market Value to Realized Value)
ビットコインの時価総額を実現時価総額(各BTCの最後に移動した時点での価格の合計)で割った指標です。MVRV比率が3.5以上になるとサイクルのピーク、1.0以下になるとサイクルの底値に近いとされています。
ストック・トゥ・フロー(S2F)モデル
PlanBというアナリストが提唱したモデルで、既存の供給量(ストック)を年間の新規供給量(フロー)で割った比率でビットコインの「希少性」を定量化します。半減期によりS2F比率が上昇し、それに応じて理論価格も上昇するという考え方です。ただし、第4サイクルではモデルの精度に疑問を呈する声も増えています。
NVT比率(Network Value to Transactions)
ビットコインネットワークの時価総額をオンチェーン取引量で割った指標です。「暗号資産版のPER」とも呼ばれ、NVTが極端に高い場合はネットワークの利用実態に対して価格が過大評価されている可能性を示唆します。
6-2. フェーズごとの基本戦略
サイクルの各フェーズに応じた基本的な戦略の考え方を整理してみましょう。
蓄積期の戦略
市場のセンチメントが悲観的な時期こそ、長期投資の視点では最も有利な買い場になり得ます。ドルコスト平均法(DCA)を活用し、時間分散で少しずつ買い増していく戦略が考えられます。
上昇期の戦略
ポジションを段階的に構築する時期です。全額を一度に投入するのではなく、上昇トレンドが確認できた段階でポジションサイズを徐々に拡大する「ピラミッディング」が教科書的な手法です。
過熱期の戦略
利益確定を段階的に行う時期です。「もう少し上がるかもしれない」という心理に抗い、あらかじめ決めたルールに従って利確する規律が求められます。
下落期の戦略
リスク管理を最優先する時期です。ストップロスの設定、ポジションサイズの縮小、現金比率の引き上げなどが基本的な対応になります。
6-3. ドルコスト平均法とサイクルの組み合わせ
4年サイクルを意識しつつも、タイミング投資のリスクを軽減する方法として、「サイクル加重型DCA」という考え方があります。
通常のDCAは毎月(または毎週)同額を機械的に投入する手法ですが、サイクル加重型では、蓄積期や上昇初期には投入額を増やし、過熱期には投入額を減らす(あるいは積立を一時停止する)という調整を加えます。
具体的には、以下のような配分が一つの例として考えられます。
- 蓄積期: 月5万円を積立
- 上昇初期: 月3万円を積立
- 上昇後期〜過熱期: 月1万円に減額、余剰を現金で保有
- 下落期: 積立を一時停止し、底値圏で再開
ただし、サイクルの各フェーズを正確にリアルタイムで判断することは極めて困難です。「後から振り返れば明らかだったフェーズ」を、その渦中で正確に見極めることは、プロの投資家にとっても容易ではありません。
7. 過渡期における具体的なポートフォリオ戦略
7-1. ビットコインのポートフォリオにおける位置づけ
2026年の現時点でビットコインへの投資を検討する場合、ポートフォリオ全体のなかでどの程度の配分を割り当てるかが重要な判断ポイントになります。
伝統的な金融機関のリサーチでは、ポートフォリオの1〜5%程度をビットコインに配分することで、リスク調整後リターンが改善する可能性があるという分析結果が報告されています。ブラックロックは「ポートフォリオの2%程度」を適切な配分水準として示唆したことがあります。
もちろん、個人投資家のリスク許容度や投資目的はさまざまです。暗号資産に精通している投資家であればより高い配分を取ることもあり得ますし、安定的な資産運用を志向する投資家であれば1%以下にとどめることも合理的な判断です。
7-2. サイクルの「過渡期」に適したアセットアロケーション
2024年の半減期から約2年が経過した2026年3月は、過去のパターンに当てはめると「サイクルのピークを過ぎたか、あるいはピーク付近にある」可能性がある時期です。ただし、前述のとおりETFの影響でサイクルが変容している可能性も高く、従来のタイムラインが当てはまるかどうかは不透明です。
このような「過渡期」では、以下のような考え方が参考になるかもしれません。
- ビットコイン(BTC): ポートフォリオの中核。長期保有分は維持しつつ、トレーディング分については利益確定ルールを明確にしておく
- ステーブルコイン: 下落局面で素早く買い向かうための待機資金として一定割合を確保
- 分散投資: イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)など、ビットコインとは異なるユースケースを持つ暗号資産への分散も検討材料
7-3. リバランスのタイミングと頻度
ポートフォリオのリバランスは、サイクルのフェーズに応じて頻度を調整することが考えられます。
上昇期にはビットコインの配分比率が自動的に上昇するため、定期的に(例えば四半期ごとに)利益確定を行い、元の配分比率に戻す作業が必要になります。逆に下落期には、配分比率が下がったビットコインを買い増すことで、リバランスが「安く買う」効果をもたらします。
重要なのは、リバランスのルールを事前に明確にしておくことです。「いつ」「どの程度」のずれが生じたらリバランスするかを決めておくことで、感情的な判断を排除できます。
8. サイクルの「終わり」に備えるリスク管理
8-1. ストップロスの考え方——固定値 vs トレーリング
サイクルの下落フェーズにおける損失を限定するためには、ストップロスの設定が有効です。ただし、ビットコインのボラティリティの高さを考慮すると、ストップロスの位置設定には工夫が必要です。
固定値ストップロスは、取得価格から一定割合(例えば20%)下落したら売却するというシンプルな方法です。ただし、ビットコインでは日常的に10%程度の変動が起こり得るため、ストップの位置が近すぎると頻繁に発動してしまう「ホイップソー」のリスクがあります。
トレーリングストップロスは、価格の上昇に合わせてストップの位置を引き上げていく方法です。例えば「直近高値から25%下落したら売却」というルールを設定すると、上昇トレンドでは利益を伸ばしつつ、トレンド転換時には自動的に利益を確定できます。
8-2. 段階的な利益確定戦略
サイクルのピークを正確に当てることは不可能に近いため、段階的に利益を確定していく戦略が現実的です。
一例として、以下のような段階的利確ルールが考えられます。
- 含み益が100%(2倍)になったら、保有量の20%を利確
- 含み益が200%(3倍)になったら、さらに保有量の20%を利確
- 含み益が300%(4倍)になったら、さらに20%を利確
- 残りの40%は長期保有分として維持
このようなルールを事前に設定しておくことで、「まだ上がるかもしれない」という欲望と「もう下がるかもしれない」という恐怖の間でブレない判断が可能になります。
8-3. メンタルマネジメント——サイクルの心理的な罠
4年サイクル理論に基づいた投資を実践する上で、最も難しいのは心理面のコントロールかもしれません。
蓄積期には「本当にまた上がるのか」という疑念に苛まれ、上昇期には「もっと早く買っておけば」という後悔が生まれ、過熱期には「まだまだ上がる」という過信が膨らみ、下落期には「もう終わりだ」という絶望が押し寄せます。
こうした心理的な罠に対処するために、以下の3点を意識してみてはいかがでしょうか。
まとめ
ビットコインの4年サイクル理論は、過去4回の半減期すべてで「半減期後の大幅上昇→大幅下落」というパターンが観測されてきた実績に基づいています。供給サイド(マイニング報酬の半減)という構造的な要因に裏付けられている点も、この理論の説得力を高めています。
しかし2026年の現在、ビットコイン市場は以下の点で過去のサイクルとは質的に異なる環境にあります。
- 米国でのビットコインETF承認により、機関投資家からの資金フローが構造的に変化した
- ビットコインの時価総額が拡大し、サイクルの振幅(上昇倍率・下落幅)が逓減傾向にある
- マクロ経済環境(金利、インフレ、地政学リスク)との連動性が高まっている
- 規制環境が各国で整備されつつあり、市場の制度的基盤が強化されている
4年サイクル理論は、投資判断の「唯一の根拠」として頼るには限界がある一方で、市場の大きな流れを捉えるための「参考フレームワーク」としては依然として有用であると考えられます。
重要なのは、サイクル理論に固執するのではなく、さまざまな指標やマクロ環境を総合的に判断しながら、自分のリスク許容度に合った投資戦略を組み立てることでしょう。そして何より、事前にルールを決め、そのルールに従う規律を持つこと——それが「過渡期」を乗り越えるための最も確実な武器になるのではないでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q1. 4年サイクル理論に従えば、次の下落はいつ頃ですか?
過去のパターンに当てはめると、2024年4月の半減期から18〜36か月後、すなわち2025年10月〜2027年4月頃に大きな調整局面が訪れる可能性があります。ただし、ETFの影響でサイクルが変容している可能性も高く、過去のタイムラインがそのまま当てはまるとは限りません。
Q2. サイクル理論とテクニカル分析はどう組み合わせればよいですか?
サイクル理論は「大きな流れ」を把握するために使い、テクニカル分析は「エントリーとエグジットのタイミング」を判断するために使うという役割分担が一般的です。例えば、サイクル的に蓄積期と判断される時期にRSIが売られすぎを示していれば、買い増しの好機と判断する材料になり得ます。
Q3. 半減期の効果は「織り込み済み」ではないのですか?
確かに、半減期のスケジュールは全員が知っているため、効率的市場仮説の観点からは事前に織り込まれているはずです。しかし、実際の市場では半減期後に上昇が起きてきた実績があります。一つの解釈として、半減期の「供給減少の効果」は即座に価格に反映されるのではなく、数か月〜1年をかけて徐々に浸透するため、事前の織り込みが不完全だったという見方があります。
Q4. ビットコイン初心者でもサイクル理論は活用できますか?
サイクル理論の考え方は比較的シンプルなので、初心者の方でも基本的な概念は理解しやすいでしょう。ただし、「今がサイクルのどの位置にあるか」をリアルタイムで判断するのは難しいため、サイクル理論だけに頼った投資は避けたほうがよいでしょう。まずはドルコスト平均法(毎月定額を積立)から始め、サイクル理論は「大きな流れの参考」として活用することをおすすめします。
Q5. 4年サイクル理論が「崩壊」するシナリオはありますか?
はい、いくつかのシナリオが考えられます。例えば、主要国でビットコインの取引が全面禁止されるような極端な規制変更、ビットコインのプロトコルに深刻な脆弱性が発見される場合、あるいはビットコインを代替する全く新しい技術が登場する場合などです。また、前述のとおり市場の成熟化が進むことで、4年サイクル特有のパターンが消滅し、マクロ経済サイクルに吸収されていく可能性もあります。
Q6. サイクル理論で最も信頼できるオンチェーン指標は何ですか?
複数の指標を組み合わせることが重要ですが、相対的に参考にされることが多いのはMVRV比率です。MVRV比率はサイクルのピークとボトムを示すシグナルとして過去の実績が比較的安定しており、多くのオンチェーン分析サービスで無料で確認できます。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。