ビットコインに興味を持ち始めたとき、「ATMで買えたら手軽なのに」と感じたことはないでしょうか。実は、世界にはビットコインATM(BTM)と呼ばれる専用端末が数万台規模で設置されており、現金からビットコインへの交換、あるいはその逆を手軽に行えるインフラが広がりつつあります。
海外、とりわけ北米では、コンビニエンスストアやショッピングモールの一角にビットコインATMが当たり前のように置かれている光景を目にすることがあります。しかし日本国内に目を向けると、その状況はかなり異なります。資金決済法や暗号資産交換業に関する規制の影響もあり、日本でのビットコインATMの普及は独自の道を歩んでいるのが実情です。
この記事では、ビットコインATMの仕組みや利用方法を基礎から解説したうえで、世界と日本の設置状況を比較し、利用する際に知っておきたい手数料・セキュリティ上の注意点まで、包括的にお伝えしていきます。暗号資産をもっと身近に感じるきっかけとして、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1. ビットコインATMの基本——仕組みと種類を理解する
1-1. ビットコインATMとは何か
ビットコインATM(Bitcoin ATM、BTMとも呼ばれます)は、現金と暗号資産を相互に交換できる物理的な端末のことです。従来の銀行ATMが現金の入出金を行うのと同じように、ビットコインATMでは法定通貨(日本円や米ドルなど)を投入してビットコインを購入したり、保有するビットコインを売却して現金を受け取ったりすることができます。
ただし、銀行ATMと根本的に異なる点があります。銀行ATMは預金口座から資金を引き出す仕組みですが、ビットコインATMは暗号資産の「売買」を行う端末です。つまり、利用者はATM運営会社を相手に暗号資産取引を行っていることになります。この点は、利用時の手数料構造やレートの仕組みを理解するうえで非常に重要なポイントです。
多くのビットコインATMはタッチスクリーン、紙幣の挿入口(アクセプター)、QRコードスキャナー、そしてレシートプリンターを備えています。利用者のウォレットアドレスをQRコードで読み取り、投入された現金に相当するビットコインをそのアドレスに送信する——というのが基本的な動作の流れです。
1-2. 一方向型と双方向型——2つのタイプの違い
ビットコインATMは、機能の範囲に応じて大きく2つのタイプに分類されます。
一方向型(One-way) は、現金を投入してビットコインを購入する機能のみを持つタイプです。構造がシンプルなため端末のコストが低く、設置・運用のハードルが比較的低いことから、世界的に見ても一方向型が多数派を占めています。特に暗号資産を初めて購入するユーザーにとっては、直感的に操作できる設計となっているケースが多いでしょう。
双方向型(Two-way) は、ビットコインの購入に加えて、ビットコインを売却して現金を引き出す機能も備えたタイプです。端末に現金の払い出し機構(ディスペンサー)が必要となるため、一方向型よりもコストが高く、設置台数は限定的です。しかし、暗号資産を日常的に利用したいユーザーにとっては、利便性の高い選択肢となり得ます。
2025年時点では、世界に設置されているビットコインATMの約60-65%が一方向型、残りの35-40%が双方向型であると推計されています。ただし、新規に設置される端末については双方向型の比率が高まっており、利用者のニーズに応じた機能拡充が進んでいる傾向が見受けられます。
1-3. 対応通貨の広がり——ビットコイン以外も買える
「ビットコインATM」という名称ではありますが、近年の端末ではビットコイン以外の暗号資産にも対応するものが増えてきています。主要なATMメーカーの最新機種では、以下のような暗号資産に対応しているケースがあります。
- ビットコイン(BTC)
- イーサリアム(ETH)
- ライトコイン(LTC)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- ドージコイン(DOGE)
- テザー(USDT)
ただし、対応通貨は端末のメーカーや運営会社によって異なります。すべてのビットコインATMがこれらの通貨に対応しているわけではありませんので、利用前に確認しておくことをおすすめします。
2. 世界のビットコインATM設置状況——北米が圧倒的なシェアを持つ理由
2-1. 世界の設置台数の推移
ビットコインATMの設置台数は、2013年に世界初の端末がカナダのバンクーバーに設置されて以降、着実に増加を続けてきました。特に2020年から2022年にかけては急激な伸びを見せ、2022年末時点で世界全体の設置台数は約38,000台に達しました。
その後、2023年にかけて暗号資産市場の低迷やマネーロンダリング対策の強化を受けて一部の端末が撤去されるなど、設置台数は一時的に横ばいとなる局面もありました。しかし、2024年以降は再び増加傾向に転じ、2025年末時点では世界全体で約40,000台以上が稼働していると推計されています。
この数字を銀行ATMの約350万台と比較すると、ビットコインATMはまだ非常にニッチな存在であることがわかります。しかし、10年ほど前にはゼロだったことを考えると、インフラとしての成長スピードは注目に値するのではないでしょうか。
2-2. 地域別のシェア——なぜ北米が突出しているのか
ビットコインATMの設置台数を地域別に見ると、極めて偏りが大きいことに気づきます。
北米(主に米国とカナダ)が世界全体の約80%以上を占めており、次いで欧州が約10-15%、その他の地域が数%という構成になっています。米国だけで見ると、約30,000台以上が設置されており、これは世界全体の約75%に相当します。
北米でビットコインATMが突出して多い背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず、規制環境の違いがあります。米国では各州ごとに送金業(Money Transmitter)のライセンスが必要ですが、連邦レベルでビットコインATMを一律に禁止する法律は存在しません。このため、州ごとのライセンスを取得すれば事業を展開できるという比較的明確なルールのもとで、多数の運営会社が参入しています。
次に、現金経済の規模が挙げられます。米国では、銀行口座を持たない(アンバンクド)層や、銀行サービスを十分に利用できない(アンダーバンクド)層が人口の約5-6%、約700万世帯に達するとされています。こうした人々にとって、現金から直接暗号資産を購入できるビットコインATMは、デジタル経済へのアクセス手段として一定の需要があるのです。
2-3. 主要なATM運営会社とメーカー
世界のビットコインATM市場は、少数の大手運営会社が大きなシェアを占める構造となっています。
Bitcoin Depotは、米国を中心に数千台規模のATMネットワークを展開する最大手の一つです。2023年にはSPAC(特別買収目的会社)を通じてNASDAQに上場しており、暗号資産ATM事業としては初の上場企業となりました。
CoinFlipも米国大手の運営会社で、低手数料を訴求点として急速にネットワークを拡大してきました。手数料率の引き下げは業界全体の競争を促進する効果があったと見られています。
ATMのハードウェアメーカーとしては、General Bytes(チェコ)、Genesis Coin(米国)、BitAccess(カナダ)などが代表的です。General Bytesは世界シェアの約30-40%を占める最大手メーカーで、カスタマイズ性の高い端末を提供しています。
3. 日本国内のビットコインATM——過去・現在・今後の展望
3-1. 日本初のビットコインATMとその後の変遷
日本におけるビットコインATMの歴史は、2014年にまで遡ります。東京・六本木のバーに設置された端末が、日本初のビットコインATMとされています。当時はまだ暗号資産に関する法整備が進んでおらず、いわば法的なグレーゾーンのなかで設置された面があったと考えられます。
その後、2016年に改正資金決済法が成立し、「仮想通貨交換業」(現在の暗号資産交換業)の登録制度が導入されました。この法改正により、ビットコインATMの運営は暗号資産交換業に該当する可能性が高いと解釈されるようになりました。つまり、金融庁への登録を行わずにビットコインATMを運営することは法的に困難になったのです。
この規制強化を受けて、日本国内に設置されていたビットコインATMの多くは2017年から2018年にかけて撤去されました。法律に準拠した形で運営を続けるためには暗号資産交換業の登録が必要ですが、その取得には相当なコストと時間がかかるため、小規模なATM運営事業者にとっては事業継続が困難だったのです。
3-2. 現在の設置状況と法的位置づけ
2026年3月時点において、日本国内で正式に稼働しているビットコインATMは非常に限られた台数にとどまっています。世界で約40,000台以上が設置されているなかで、日本の設置台数は数台程度とされており、世界全体に占める割合はほぼゼロに近い状況です。
この状況の主な原因は、前述の暗号資産交換業の登録要件にあります。日本でビットコインATMを運営するには、原則として金融庁に暗号資産交換業者として登録する必要があります。登録には資本金要件、内部管理体制の整備、AML(マネーロンダリング対策)/KYC(本人確認)体制の構築など、多くの条件を満たす必要があります。
加えて、日本のAML/KYCルールは国際的に見ても厳格な部類に入ります。暗号資産の取引においては、トラベルルール(送受金者情報の伝達ルール)への対応も求められるようになっており、匿名性の高い取引を前提としたATMの運営はますます困難になっていると言えるでしょう。
3-3. 今後の展望——規制緩和の可能性はあるか
日本でビットコインATMが再び普及する可能性はあるのでしょうか。この問いに対しては、慎重ながらもいくつかの前向きな材料が存在しています。
第一に、日本政府はWeb3推進政策の一環として暗号資産関連の規制を段階的に見直す姿勢を示しています。2024年には暗号資産の税制改正に関する議論が活発化し、総合課税から分離課税への移行を求める声も大きくなりました。こうした環境変化は、間接的にではあれ、ビットコインATM事業への参入ハードルを下げる方向に働く可能性があります。
第二に、技術面での進歩も見逃せません。顔認証やマイナンバーカードを活用した本人確認技術の発達により、ATM端末上でのKYC処理がよりスムーズに行えるようになりつつあります。従来は対面や郵送での本人確認が必要だったプロセスが、端末のみで完結できるようになれば、ビットコインATMの運営効率は大幅に向上するでしょう。
ただし、日本においてビットコインATMが北米並みに普及する未来像は、少なくとも短期的には想定しにくいのが現実です。日本はオンライン取引所のサービスが充実しており、スマートフォンアプリで手軽に暗号資産を売買できる環境が整っています。わざわざ物理的なATMを利用するメリットが、海外ほど大きくないという事情もあるでしょう。
4. ビットコインATMの使い方——購入・売却の手順を解説
4-1. ビットコインを購入する場合の基本手順
ビットコインATMでビットコインを購入する手順は、端末のメーカーや運営会社によって若干異なりますが、おおむね以下の流れとなります。
ステップ1: 端末を操作して「購入(Buy)」を選択する
タッチスクリーンで「Buy Bitcoin」や「ビットコインを買う」といったメニューを選択します。対応通貨が複数ある場合は、購入したい通貨を選ぶ画面が表示されます。
ステップ2: 本人確認を行う
取引金額やATMの所在地の規制に応じて、本人確認の手続きが求められます。少額取引の場合は電話番号の入力とSMS認証のみで済むケースもありますが、高額取引では身分証明書のスキャンや顔写真の撮影が必要になる場合があります。
ステップ3: ウォレットアドレスを読み取らせる
自分のビットコインウォレットのアドレスをQRコードとして端末のスキャナーに読み取らせます。ウォレットを持っていない場合、端末がペーパーウォレット(紙に印刷されたアドレスと秘密鍵)を発行してくれる機種もあります。ただし、ペーパーウォレットの管理にはセキュリティ上のリスクがあるため、事前にウォレットアプリを用意しておくことをおすすめします。
ステップ4: 現金を投入する
購入したい金額分の紙幣を端末に投入します。多くのATMでは硬貨には対応していないため、紙幣のみでの操作となります。投入した金額が画面に表示されるので、確認したうえで次のステップに進みます。
ステップ5: 取引を確認・完了する
購入レート、手数料、受け取るビットコインの量が画面に表示されます。内容を確認して「確定」を押すと、指定したウォレットアドレスにビットコインが送信されます。なお、ブロックチェーン上でのトランザクション確認には通常10分から60分程度かかるため、即座にウォレットに反映されるわけではないことを覚えておきましょう。
4-2. ビットコインを売却する場合の手順
双方向型ATMでビットコインを売却して現金を受け取る手順は、購入の逆のプロセスとなります。
まず「売却(Sell)」メニューを選択し、本人確認を行います。次に、ATMの画面に表示されるウォレットアドレス(QRコード)に、売却したいビットコインを自分のウォレットから送金します。ATMがブロックチェーン上でトランザクションの確認を検知すると、対応する金額の現金がATMから排出されます。
売却の場合は、ブロックチェーン上の承認を待つ必要があるため、購入と比べて完了までに時間がかかるケースが多い点に注意が必要です。運営会社によっては、1回の承認(約10分)で現金を引き出せる場合もあれば、複数回の承認を要求する場合もあります。
4-3. 利用前に準備しておくべきもの
ビットコインATMをスムーズに利用するために、以下のものを事前に準備しておくとよいでしょう。
- 暗号資産ウォレット: スマートフォンアプリのウォレット(Trust Wallet、Coinomi、Blue Walletなど)を事前にインストールし、受け取り用のアドレスをQRコードとして表示できる状態にしておきます。
- 本人確認書類: 運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、写真付きの身分証明書を用意しておきます。
- 電話番号: SMS認証で使用する電話番号です。海外のATMを利用する場合は、国際SMSを受信できる環境が必要になることがあります。
- 現金: 購入の場合は、必要な金額の紙幣を準備しておきます。ATMによっては受け付ける紙幣の種類に制限がある場合もあります。
5. 手数料とレートの仕組み——取引所との違いを比較する
5-1. ビットコインATMの手数料構造
ビットコインATMを利用する際に最も気になるポイントの一つが手数料ではないでしょうか。結論から言うと、ビットコインATMの手数料はオンライン取引所と比較してかなり高めに設定されているのが一般的です。
世界的に見ると、ビットコインATMの手数料率は取引金額の5%から15%程度が標準的な範囲とされています。一部の端末では20%を超える手数料が設定されているケースもあり、少額の取引では特に手数料負担が大きくなる傾向があります。
手数料が高い理由としては、以下のような要因が挙げられます。
- 物理的な端末の設置・維持コスト: 端末の購入費(1台あたり数千ドルから数万ドル)、設置場所の賃料、電気代、通信費、現金の補充・回収にかかる人件費など、運営には多くの固定費がかかります。
- 規制対応コスト: AML/KYC体制の構築・運用、各種ライセンスの取得・維持にもコストが発生します。
- 在庫リスク: 運営会社はATMで販売するビットコインを事前に仕入れておく必要があり、価格変動による損失リスクを負っています。
- 利便性のプレミアム: 24時間利用可能で、現金から即座にビットコインを購入できるという利便性に対する対価という側面もあります。
5-2. オンライン取引所との手数料比較
ビットコインATMの手数料を、主要なオンライン取引所と比較してみましょう。
日本の主要取引所であるbitFlyerやCoincheckの場合、販売所での購入時のスプレッド(買値と売値の差)は約1.5%から4%程度です。取引所形式での板取引を利用すれば、手数料は0.01%から0.15%程度にまで抑えることができます。
海外の大手取引所であるBinanceやCoinbaseの場合、取引手数料は0.1%から1.5%程度が一般的です。
これに対して、ビットコインATMの手数料率は5%から15%ですから、コスト面では大きな差があることがわかります。単純にコストだけを比較すれば、オンライン取引所のほうが圧倒的に有利です。
5-3. それでもATMが選ばれる理由
手数料が高いにもかかわらず、ビットコインATMが利用される理由は何でしょうか。
第一に、銀行口座が不要という点があります。オンライン取引所を利用するには、銀行口座との連携が必要なケースがほとんどです。銀行口座を持たない人や、銀行振込の手続きを避けたい人にとっては、現金で直接購入できるATMが唯一の選択肢となり得ます。
第二に、即時性です。オンライン取引所では、アカウント開設からKYC審査の完了、銀行口座との連携まで、数日から1週間程度かかる場合があります。一方、ATMでは(本人確認の範囲にもよりますが)数分程度で購入が完了するケースもあります。
第三に、プライバシーへの配慮です。少額取引であれば、電話番号の入力のみでKYCが完了するATMも海外には存在します。オンライン取引所で求められるような詳細な個人情報の登録を避けたいと考えるユーザーが、ATMを選択する場合もあると言われています。ただし、各国の規制強化により、ATMでも本人確認の厳格化が進んでいる点は留意が必要です。
6. セキュリティと法規制——安全に利用するために知っておくべきこと
6-1. ビットコインATMに関連する詐欺の手口
残念ながら、ビットコインATMは詐欺に悪用されるケースも報告されています。代表的な手口を知っておくことで、被害を未然に防ぐことができるかもしれません。
なりすまし詐欺: 公的機関や企業を装い、「未払い金をビットコインATMで支払うように」と指示する手口です。税務署やユーティリティ会社を名乗る電話やメールで支払いを促し、被害者にATMからビットコインを購入させて指定のウォレットに送金させるというものです。米国ではFTC(連邦取引委員会)が繰り返し注意喚起を行っています。
ロマンス詐欺との組み合わせ: SNSやマッチングアプリで信頼関係を築いたうえで、「投資のためにビットコインを購入してほしい」とATMでの購入を促す手口です。
QRコードのすり替え: 物理的にATM端末にQRコードのステッカーを貼り付け、利用者のビットコインを自分のウォレットに送金させるという手口も報告されています。
こうした詐欺被害を防ぐためには、公的機関が暗号資産での支払いを求めることは通常ないこと、見知らぬ人の指示でATMを操作しないこと、端末に不審なステッカーなどが貼られていないかを確認することが重要です。
6-2. マネーロンダリング対策と各国の規制動向
ビットコインATMはマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されるリスクがあるとして、各国の規制当局が対策を強化しています。
米国では、ビットコインATMの運営会社はFinCEN(金融犯罪捜査網)にMSB(Money Services Business)として登録する義務があり、各州でのライセンス取得も求められています。2024年以降は、取引金額に応じたKYC要件がさらに厳格化され、高額取引には写真付き身分証明書の提示や取引報告が義務づけられるようになりました。
EUでは、MiCA(暗号資産市場規制法)の施行に伴い、暗号資産関連サービス全般に対する統一的な規制枠組みが導入されています。ビットコインATMもこの枠組みの対象となり、運営会社にはCASP(暗号資産サービスプロバイダー)としてのライセンス取得が求められるようになりました。
日本では前述のとおり、暗号資産交換業の登録が実質的に必須であり、世界的に見ても厳格な規制が敷かれています。
6-3. 利用者として注意すべきセキュリティポイント
ビットコインATMを安全に利用するために、以下のポイントを意識してみてください。
- 信頼できる運営会社のATMを選ぶ: Coin ATM Radarなどのディレクトリサイトで、ATMの運営会社情報や利用者レビューを事前に確認しましょう。
- 取引レートと手数料を事前に確認する: 取引を確定する前に、表示されているレートが市場価格と大きく乖離していないか確認します。
- 操作中に他人の指示を受けない: ATMの操作中に電話やチャットで第三者から指示を受けている場合は、詐欺の可能性を疑ってください。
- ペーパーウォレットの取り扱いに注意する: ATMが発行するペーパーウォレットは、紛失や盗難のリスクがあります。受け取ったら速やかに安全な場所に保管するか、別のウォレットに残高を移すことを検討しましょう。
- トランザクションIDを保管する: 取引完了時に表示されるトランザクションIDやレシートは、トラブル時の問い合わせに必要となりますので、必ず保管しておきましょう。
7. ビットコインATMの将来——キャッシュレス社会での立ち位置
7-1. テクノロジーの進化がもたらす変化
ビットコインATMの技術は年々進化を続けています。最新の端末では、以下のような機能が搭載されるようになってきました。
ライトニングネットワーク対応: ビットコインの第二層ソリューションであるライトニングネットワークに対応したATMが登場しています。これにより、少額取引を低手数料かつ高速で処理できるようになり、日常的な利用シーンでの利便性が向上しています。
生体認証: 指紋認証や顔認証による本人確認を搭載した端末も増えつつあります。従来のSMS認証や身分証明書のスキャンと比べて、よりスムーズかつ安全なKYCプロセスが実現できる可能性があります。
NFCとの連携: 近距離無線通信(NFC)を利用して、スマートフォンのウォレットアプリとATMを連携させる機能も開発が進んでいます。QRコードのスキャンが不要になることで、操作のさらなる簡略化が期待されています。
7-2. キャッシュレス化の進展とATMの共存
キャッシュレス決済の普及が進むなか、「現金を使うATM」という存在は矛盾しているように感じられるかもしれません。しかし、ビットコインATMには現金とデジタル経済をつなぐ「ブリッジ」としての役割があると考えることもできます。
キャッシュレス化の進展度合いは国によって大きく異なります。スウェーデンのように現金利用がほぼなくなりつつある国がある一方で、多くの新興国では依然として現金が主要な決済手段です。特に銀行口座を持たない人々にとって、現金から直接デジタル資産にアクセスできるATMは、金融包摂の観点から重要なインフラとなり得るのです。
ただし、長期的に見れば、スマートフォンアプリやオンラインサービスの普及により、物理的なATM端末の必要性は徐々に低下していく可能性もあります。ビットコインATMの将来は、技術の進化、規制環境の変化、そして人々の暗号資産に対する認識の変化によって左右されることになるでしょう。
7-3. 日本市場へのインパクト
日本においてビットコインATMが果たし得る役割についても考えてみましょう。
日本は銀行インフラが非常に整備されており、銀行口座の保有率も極めて高い国です。そのため、銀行口座を持たない層への金融包摂という文脈では、ビットコインATMの需要は限定的と考えられます。
一方で、インバウンド観光客向けのサービスとしては一定の可能性があるかもしれません。海外から日本を訪れる旅行者が、自国で保有しているビットコインを日本円に換金できるATMがあれば、利便性向上につながる可能性があります。観光地や空港にビットコインATMが設置されるというシナリオは、Web3推進政策との整合性もあり、検討に値するのではないでしょうか。
また、暗号資産に興味はあるが、オンライン取引所の登録に抵抗がある層——たとえばセキュリティへの懸念からインターネット上での個人情報登録を避けたいと考える人々——に対して、対面での取引という選択肢を提供できる点は、ニッチではあるものの一定の価値があると言えるかもしれません。
まとめ
ビットコインATMは、現金と暗号資産の世界をつなぐ物理的なインターフェースとして、2013年の登場以来、着実に存在感を高めてきました。世界全体で約40,000台以上が設置されており、特に北米では日常的なインフラの一部として定着しつつあります。
一方で、日本国内では暗号資産交換業の登録要件や厳格なAML/KYC規制の影響もあり、設置台数は極めて限定的な状況が続いています。オンライン取引所が充実している日本では、物理ATMの必要性が相対的に低いという事情も背景にあるでしょう。
利用する際には、手数料がオンライン取引所と比べて高めに設定されていること、詐欺のリスクがあること、そして規制環境が国や地域によって大きく異なることを十分に理解しておくことが大切です。
ビットコインATMの将来は、技術の進歩、規制の変化、そして暗号資産の社会的受容度の高まりによって形作られていくことになるでしょう。現金経済とデジタル経済のブリッジとして、あるいは金融包摂のツールとして、その役割がどのように変化していくのか、引き続き注目していきたいテーマです。
よくある質問(FAQ)
Q1. ビットコインATMは日本国内のどこにありますか?
2026年3月時点では、日本国内で正式に稼働しているビットコインATMは非常に少数です。設置場所は変動する可能性があるため、Coin ATM Radarなどのオンラインディレクトリで最新の設置状況を確認されることをおすすめします。なお、日本でビットコインATMを運営するには暗号資産交換業の登録が必要とされており、この規制要件が設置台数の少なさに影響していると考えられます。
Q2. ビットコインATMの手数料はどのくらいですか?
世界的に見ると、ビットコインATMの手数料は取引金額の5%から15%程度が一般的です。一部の端末では20%を超える場合もあります。これはオンライン取引所の手数料(0.1%から4%程度)と比較するとかなり高い水準です。利便性や即時性に対するコストとして捉える必要があるでしょう。
Q3. ビットコインATMを使うのに本人確認は必要ですか?
利用する国や地域の規制、取引金額によって異なります。少額取引であれば電話番号のSMS認証のみで済むケースもありますが、高額取引では写真付き身分証明書の提示や顔写真の撮影が求められる場合があります。日本国内の場合は、厳格な本人確認手続きが必要となる可能性が高いと考えられます。
Q4. ビットコインATMで購入したビットコインはすぐにウォレットに届きますか?
ビットコインのブロックチェーン上でトランザクションが承認されるまで、通常10分から60分程度かかります。ネットワークの混雑状況によっては、さらに時間がかかる場合もあります。ライトニングネットワーク対応のATMであれば、より短時間で受け取れる可能性があります。
Q5. ビットコインATMでビットコイン以外の暗号資産も購入できますか?
端末のメーカーや運営会社によって異なりますが、最新の機種ではイーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ドージコイン(DOGE)などに対応しているケースがあります。ただし、すべてのATMがマルチ通貨に対応しているわけではありませんので、事前に確認しておくことをおすすめします。
Q6. ビットコインATMで詐欺に遭わないためにはどうすればよいですか?
最も重要なのは、「他人の指示でATMを操作しない」ことです。公的機関や企業がビットコインATMでの支払いを求めることは通常ありません。また、端末に不審なQRコードのステッカーが貼られていないかを確認し、信頼できる運営会社のATMを選ぶことも大切です。
Q7. 日本でビットコインATMを設置するにはどのような手続きが必要ですか?
日本でビットコインATMを運営するには、金融庁に暗号資産交換業者として登録する必要があると解釈されています。登録には資本金要件、内部管理体制の整備、AML/KYC体制の構築などが求められ、かなりのコストと時間を要します。詳しくは金融庁のウェブサイトや専門家への相談をおすすめします。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。暗号資産への投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。暗号資産の規制は国や地域によって異なり、また随時変更される可能性があります。最新の規制情報については、各国の金融規制当局の公式情報をご確認ください。